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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
12章 武人祭 過去に呪われた天罰者の鎖を解き放て
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13話 武人祭3日目 不運な男

『さぁ3日目となり最初は優勝候補である銀狼のジャムルフィンそして連撃のリースです』


聞き慣れた司会の声に聞き慣れた歓声を耳に入れて入場口から歩いてリングに向かうがここから客席を見て回ると負けてしまった参加者がチラホラ前の方に座っていた


『さぁ頑張るか』


右手をグルグル回してリングに登るとそれと同時にリースさんが俺と同じタイミングでリングに上がってきた 

それよりもリング直すの早くないか?どうやって直したんだ?

今はそれよりもこの戦いに意識を注ごう


彼の表情はとて穏やかそうであり、この戦いに何かを見出だしている様な気がした、力の差はあるのだがそれでもリースさんは策を使うに違いない


『俺はいつでもいいさ』


木剣をこちらに向けてそう言ってくる

最前列の観客が前のめりにリング上を見ようとしているのが見えるけども楽しみにしていたのだろうな

見世物ではないけども今回はそれでもいいかもしれない

ナラ村が座る客席に顔を向けると父さんは大人しくしてくれている様にも思えるけども顔が引きつっている


ああそっか、隣で母さんが睨みを利かせているのが見える

ルッカは笑顔を見せながら胸のあたりでガッツポーズしてくれているけども頑張るしかない

レイさんもエドガーさんもあまり見ないくらいの満面の笑みである・・・まぁいいか


リースさんに視線を戻すと既に準備が出来ているらしいので俺も槍を肩に担いでから一言だけ話してみることにしようか


『過小評価しているつもりは無いですが対人戦として色々この職を試させてもらいます』


『ははっ・・・ナッツ君が話していた通りマイペースな人だな君は』


『周りに流されたくないので』


『良い事だ』


そんな他愛のない会話をしていると中央にいる審判が少し離れてから口を開こうとしている

多分巻き添えが嫌なんだと直ぐにわかるけれどもそれほど危険な技は持っていない


ごめんあった天銀、でもこれ使うと全員死ぬから使わないよ


『始め!!』


合図で先に動けるのは俺である、何故か?俺は人には持っていない動体視力と反射神経を持ち合わせているから瞬時に動く事が出来直ぐに判断をすることが出来る

だがここは試しだ


リースさんはきっと俺に突っ込もうとしていたのだろう、彼は床を思いっきり踏み込もうとしていたのだがその前に俺が行動を起こす

ドンッ!っと大きな音と共に俺の右目から銀閃眼を撃ったが散弾である


『くっ・・・!!』


リースさんの足元に向かって放ったが散弾によって彼の前の床が広い範囲でエグられているがそれを見た彼は息を飲んだ

殆どこの技は発動時間が無いに等しいので即座に撃てるのが便利だ

隙が無い技を見せられて彼でも足が止まったのだろうけども僅かに笑みを浮かべたと思ったら走って襲い掛かってきた


木剣を俺の右肩に向けて突いてくるけども触れることは出来なさそうだ、だって触ればデバフという能力ダウン系の効果を受けそうだからだ


『止まるわけには!』


そう口にした彼は左手に込めていた魔力を俺に向けて放ってくる


『エアショット』


空気の球だ、無属性の術とは初めて対面したと思いながら目の前から放たれる術を後方にバック転しながら避けると同時に銀閃眼の通常弾を彼の太ももを狙い撃ったけれども貫くほど狼気をこめていない

打撃系くらい弱めているから通常の威力よりも低い水準でこの大会撃つ予定だから問題ないが本当に強いと思った時は通常の威力を行使する事も辞さない


『ぬんっ!』


彼は俺の通常弾をギリギリで避けたんだ、俺に向かって跳躍しながらである


『おっ!』


俺も驚きに声が出るが直ぐに切り替えた

何故避けれたのだろうと少し考えをしてみたけども予見スキルもない彼は感覚で撃たれると察してジャンプしたのだと思う、それはマグレとかではなく彼の経験から狙われるんじゃないかという勘が働いたのではないか?


それだけでもこの人は相当の実力者だ、この状況でそれを活かせるか

木剣の闘気をこめている彼はそのまま飛び掛かりながら剣を振り抜いてくるけれども技じゃない

これはデバフが付与されているんだ


『銀閃眼』


斬りつけられる前に彼を通過する同時に槍を払って腹部を殴ると苦痛を浮かべた彼を遠くに飛ばす

転がるかと思いきや体を回転させてしゃがみつつも着地すると真空斬を放ってきたが色が可笑しい

白い筈の真空の塊が薄く青く俺には見えている


触りたくないなぁ

試しに弾いて見るかという目論見もあったけどもそれで相手の思うつぼになってしまうのは格好がつかない

避けるしかないなこれ


『これ触れたくないんだすよね』


そう言いながらリースさんが放った真空斬を避けながら槍を回転させて走って近付くと彼の表情が少し悔しそうな感じを見せて来た

触ってほしいんだろうけどもそれは興味があったとしても嫌だ


『エアバースト!』


ボスン!と少し強みがない様な音と共に前方放射型のバースト系の術を使ってきたけどもこれも少し青みうぃ帯びている


『全部の使う術や技に使えるんだな』


『そうだよジャムルフィン君!』


ネタバレしてくれたけどもそんな事どうでもいい、だってあっちだって俺にバレているってわかってたろうしさ

銀閃眼で真横に大きく避けた俺はその技を使用し続けて縦横無尽にリング上を不規則に走り続けた

走るという表現が良いのだろうか俺にはわからないが走っているというよりも一度床を蹴ればビュンとリングの端まで移動できるから飛んでいると言った方が正解かもしれない


流石のリースさんも目で追えない速度に翻弄されているけども少ししてから中央に移動してピタリと剣を構えたまま動かなくなった


『流石ですねリースさん!下手に目で追うより来るべく時に備えて用意した方が正解です』


『だよね、目で追っていたら絶対的な不利を自ら招くことになるからさ!我慢しながら君を待つよ・・・僕にはその速度は残像でしか捉えれない』


俺はリースさんんお評価を一段階上げた、この人はどんな状況でも冷静に一番近い正解を導くことが出来るのは強さでもある


動き回るのも彼に悪いと思い銀閃眼で通常弾を撃つと彼は後ろに飛んで避けようとしたが音を聞いてからじゃ遅い


『ぐはっ!』


腹部に当たると彼はよろけるけども直ぐに構え直して音を聞き始めた

痛そうな顔をしているけどもだからと言って急いで行動を起こす事は無いようだ

あんたの盤面を作る気は無い、動き回るのが得意なのは俺だって同じだ


その勝負で負けた時あんたはどう動く?


槍を突いて技を放つ、狼撃破である

10頭の銀狼が彼に牙を向けて駆け抜けるが放たれた俺の技に向き直して1頭ずつ丁寧に斬り捌いていく

あんたは頭がいいし経験を活かして動くのはわかるけどもそれが命取りになる


最後の10頭目を斬ろうと彼が剣を振り抜こうとしたタイミングで俺は一気に彼に向かって一直線に銀彗星を発動して飛び込んだ


『!?』


リースさんの目が見開いているのがわかるし彼の剣に闘気が込められているのがわかるけども俺が飛び込む前から彼は溜めていた

あんたはこの銀狼をフェイクに使うと思っていただろうが正解だ!

だけどもリースさんの思い通り俺は接近戦をするつもりは無いんだよ


『終わりです』


『!?!?』


銀狼諸共散弾を放ち彼をリング外まで吹き飛ばしたが肝心の俺の技は粒子となって儚くも上空に消えていく

念のために槍を構えて彼を警戒するけども俺の視界からじゃリング下に落ちた彼を見ることは出来ない

リースさんは10頭目を斬る気は無かったんだと思う、彼は10頭目に来るであろう俺に備えて一撃を用意していた筈だ


最後の銀狼は意地でも耐えるつもりだったと俺は思う、というよりも彼はそうしてくると俺は信じていた

身を削ってチャンスをつくるしかない状況だったからな・・・そう動くようにさせてもらったよ


不思議と観客が静かだが盛り上がっている訳じゃなく本当に立たずを飲んで見守っている様だ

槍を軽く回してから肩に担いでリングの端に歩み寄る


徐々にリングの下が見えてくるけどもリースさんは腹を抑えながら唸りながら片膝をついていたのだ

俺に気付いた彼は顔を持ち上げるけども辛そうな表情でありモロに食らう散弾がいかにとてつもないダメージかが伺える、熊帝でも近くて撃てば頭吹き飛ばせるんだし多少威力を抑えて撃っても人間は致命的だろう


『ぐ・・・最後切り込んでくると思って覚悟決めてたんだけどなぁ、飛び道具だとは思わなかった』


苦笑いを見せながらそう言ってくる

ゆっくりと立ち上がる彼は少し体を傾けながらこちらに歩いてくるけどもリングに登ろうと言う気は無いらしい

それよりも俺を見上げて深い溜息をついている

彼は頑張った、長期戦は俺に分があるけどもダラダラとしているつもりは無く決めれる時は決めるべきだと思いトドメを刺しに行った


『去年はタツタカのせいであなたの強みを知れなかったけども今回わかってよかった、最良の行動を即座に導き出すあんたは強い、だが今時点では俺が強いです』


『ははは・・・不完全燃焼だったよ去年は、まぁ認めてもらえて光栄さ、だが最初の散弾は俺にやってもビビらないからな?逆に億劫になればもっと事態は悪かったろ?』


『そうですね、多少警戒心を高めてほしかったですけども意味がなかったです』


頭を掻きつつ彼に答えた、億劫になると思ったけどそうならなかったな

俺の意味違いだ


彼は剣を手から離して足元に落とすと両手を上げて一度舌をちょこんと出してきた、直ぐに戻すと彼は口にした


『降参だよジャムルフィン君、続けてもジリ貧だ!逃げも強くなるために必要だ』



大正解、だからあんたはまだ強くなれるんだよ


『賢明な判断です、あなたはきっと今の時代を走り抜けれる人でしょうね』


『ありがとう、持論だけども俺はこの大会で強みを認めてもらえることが新しい時代を生きる資格があるのだろうと思ってるよ』


最高の結果を求めず最低限の評価で乗り切ると言う彼に俺は深い感銘を受ける

これよりもずっと強くなることを俺は願う


『勝者!銀狼のジャムルフィン!』


司会の声でこの戦いは締めくくられた

色々と彼の事はわかった気がするしなんだか俺も見習う事が多そうだ


リースさんは腹部をおさえながら自分が出てきた入場口に戻っていくがその姿を俺は見えなくなるまで見守っていた


『去年は運悪くあの黒い仮面の悪魔タツタカと初戦で戦い残念な結果でしたが今彼の強さを私司会もわかった気がします』


『綺麗な終わり方でしたね、ですが次の試合は綺麗にいくでしょうか』


『次は因縁の対決じゃないですかスカーレットさん!去年を見た人には非常に気になる戦いですよ!熊と熊がぶつかり合います!その前に30分の小休憩となります』


その解説を聞きながら俺は入場口から姿を消した

長い廊下を歩いていると前方からグスタフが歩いてくる

とても静かな気であり穏やか過ぎると思うくらいグスタフらしさが見えない


歩いてくる俺に気付いた彼は小さく頷きながら微笑んでくれたけど俺は綺麗な言葉を送る必要はないと感じたのですれ違う瞬間に一言だけグスタフに口を開いた


『暴れてこい』


返事も何も帰っては来ないが伝わっただろうと俺は勝手に思いつつも控え室に戻っていった


部屋に入るとノートン大将軍が床でストレッチをしているしマルスが奥の隅で俺を見てニコニコし始めているから軽く会釈してあげたよ、グァゾはなんだか黙想しているんだろうか?何やらマルスとは反対の隅でボソボソと何かを呟きながら目を閉じているが俺の地獄耳でも聞こえない


他にも多少参加者がいるけども椅子に座って他の参加者と話しているようである

ノートン大将軍は俺を気付くと口元に笑みを浮かべて話しかけてくる


『おめでとう』


『ありがとうございます』


首を回しながら近くの椅子に座り一息つく

グスタフとバニアルドが終わればノートン大将軍とグァゾ

そして最後はナッツとカールだな

どれも見過ごせない戦いであり明らかにその者達は胸を張って強いと言える集まりでもある


『お友達が気になるか』


『そうですねノートン大将軍、去年を知っているとかなり気になります』


『ははは、確かにな…大怪獣決戦はこの大会見物であろう』


大怪獣決戦か、その表現に思わず口に手を添えて笑ってしまう

間違いじゃないよな

だがグスタフは勝てるかがわからない

普通にバニアルドの方が確実に格上であるし去年は油断を誘ってようやく勝てたんだ

今グスタフは上位職だとしてもあらゆる面でバニアルドが優勢であり彼は絶対去年のような過ちはしないだろう


『その大怪獣決戦を見ときます』


『それがいい』


ノートン大将軍はそう答えると再びストレッチを始めたけども次の出番のためにギリギリまで体を作りたいのだろうと思いながら軽く会釈をし、俺は窓際に移動した


まだ小休憩中だが今からでも何故か目が離せない

ガヤガヤと観客の声が開場に響きわたるがリング上だけは嵐の前の静けさの様にたたずんでいる


この時何故リングが綺麗に補修されたかがわかったのだがどうやら役員が壊れたリングの石床を交換していたのだ

手際が良く直ぐにリング上のちょっとした瓦礫を取り払うと代わりの石板をはめ込んでいる


なるほどな


『ノートン大将軍殿とグァゾ選手は準備をお願いします』


役員が部屋に入るとそう口にする

部屋の隅で瞑想をしていたグァゾは無表情で役員に近づくとノートン大将軍もストレッチを終えて立ち上がり、二人は部屋から出ていった


あの戦いも俺は見なくちゃな、グァゾの能力を少しでも知るために


『あと少しでも次の対戦が始まります、開場の皆様は観戦のご準備をお願いします』


司会のハキハキした声が拡声術によって開場に響き渡ると徐々に静かになっていく

その司会の声で始まると思い、他の参加者も真剣な顔つきで窓際に歩いてやってきた

やっぱみんな気になるんだな、腕っぷし同士の原始の戦いに近いこの勝負は本当に見物だ


頑張れよグスタフ





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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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