3話 頑張らなくてはいけない
朝、驚きのトーナメント表を目の当たりにした俺は家に帰ると寝直して昼頃に起きた
まぁ俺の最初の相手はもしかしたら槍の子ハートンだな、もう結構な歳なんだけども彼とは槍術で勝負をしてみたいと思っている
昼食はルッカと何か食べようかと家にいったんだけども父であるゼルさんが薬草をポートレアで売りさばく為の荷物整理で彼女は忙しく誘える状況じゃなかったんだ、ゼルさんは2泊3日で出稼ぎだとさ
ガウガロで手に入れた大量の高級な薬草を摘める姿は幸せそうである
今日はルッカの家でお泊まりという話で決着はついたので俺は退散してグスタフを連れて村の中央広場にある商店街で飯を食う事にしたんだ
中はこじんまりしているけども村一番料理が美味い人が作る店であり小さい建物でもそれなりに人は入っている
俺達は小さいテーブルで牛丼を食べつつもトーナメントの話をしていたんだ
『マジでモリスの兄ちゃん不運だなぁ』
グスタフが苦笑いしているけども1回戦買っても次はシード権のバニアルドである
勝ち目は薄すぎるけども唯一バニアルドに詳しいあの人ならそれなりに善戦するんじゃないかと思っている
俺は村の掲示板以外でも配られた紙に書いていたトーナメント表を眺めてみた
ミミリーに二つ名か、狂女とかまぁ戦闘の仕方まんまである
『俺はバニアルドに勝てばてめぇと当たれるがこっち側にどんだけ強ぇ奴がいるか未知数だが・・・まぁ目の前の対戦相手を倒して行けばいいか』
彼らしい考えである、グスタフの最初の相手は今回初登場の絶対豪壁ヴァルダムという国で一番の盾術使いの男であり俺達が立ち向かった事も無い珍しい武器の持ち主である
盾術の盾はシールドとして相手の攻撃を防ぐ約槍が主な仕事だけどもその他に攻撃技も存在する
打撃の技であり盾を押し当てて攻撃すると言う単純な技だがこれが厄介なんだ
重量のある盾を武器にするので普通の武器じゃまともに押し切られてしまうので殆ど避けるしかない
ちゃんと戦闘している姿を拝んではいないので興味はある
『グスタフの初戦の相手だが気をつけろよ?盾術使いだしそこそこ俺達でも名前は聞いているだろう?』
『ああ知ってるさ、イーリスの街で一番強ぇって言われている野郎だろ?俺達がインダストリアルに向かう為に向かった街だが丁度見ることは出来なかったな』
海の都といわれるイーリスの主と言っても過言じゃない男
彼が今回参加すると言うのも面白いが他にも色々耳に入っている冒険者の名もあるな
その説明はまだいいだろう
グスタフはグラスに入った麦茶をゴクゴクと飲み干してドンとテーブルに置くとおかわりを頼んだ
追加料金銅貨3枚だが全然痛くはない
俺も今日の飲み物は麦茶だけども暑い日にはこれが最高だな
さっぱりした味であり飲みやすい、俺は一飲みしてから再びグスタフに対して答えたんだ
『まぁ会えなかったのは仕方ないさ、なんだか楽しみなんだが』
『なんだおめぇも楽しみなのかよ?』
『なんだろうな、早くやりたいと思うけども理由はわからん』
『ふはは!別に理由なんていらねぇ、そう感じたらそう動くもんだ』
そう感じたらそう動く・・・か
やはりゼファーに認められただけの事はあるな、体で感じたことをそのまま素直に実行しているんだ
俺も彼の言う体で動くようにするって感覚を覚えないとな
グスタフと一緒に目の前にある牛丼を口にかき入れていく・・・上手い
まぁ肉は全部上手いからな!
グスタフのおかわりの麦茶も丁度来て俺達は同時に麦茶をごくりと飲んでテーブルに置いた
『バニアルドと再戦だぞ?俺よりお前の方が待ち遠しいだろ』
『当たり前ぇだ・・・ワクワクするぜ、今回はあいつは前みたいに様子を見たりはしねぇだろうな・・・手の内は互いに見せつくした』
『勝てるか?』
『勝てれば本物だ』
こだわりがありそうな言葉だがぜひとも勝ってほしい
牛丼の皿の中身も空であり俺達は食べつくしてしまったけどまだ食べ足りずに追加で焼きおにぎりを2つずつ注文した
その間にちびちびと麦茶を飲みながら待って追加注文も食べてから早めの体術訓練を昼食2時間後から開始した
日中だというのに暑い
昼食をとった店の魔石での温度は30度と早めの夏が来ているようであり俺もグスタフも薄着だ
でもこの村は比較的涼しい為30度以上はそんな超える事は無い
ルッカの隣の広場ににて俺はハルバートを隅に置いてグスタフと向かい合う
彼もやる気満々で拳をバキボキと鳴らしてニヤニヤしている、なんだか冷やりとしそうだよ
『そう言えば聞いちゃいけない事聞いていいか?』
俺は首を回してから彼に言うと何を言われるか悟ったらしく軽く咳払いした
駄目みたいだ・・・深夜に見たあれ以降の話が聞きたかったけどまだ秘密らしいしいっか
『行くぞ、銀彗星』
俺は先に突っ込んで左拳を握り殴ろうとしたのだがグスタフは笑って俺の顔を見ている
見えている?結構速度をつけて発動させた銀彗星だけどもギリギリ反応は出来ない筈だ
『!?』
俺はそのまま床に叩きつけられた、重さを感じたけどもそういえばこいつイビルハイドになってから重力系の術1つ覚えてたんだ!グラビデル!
範囲は小さいけども範囲内の対象に術者の体重×3の重力を与える術だが鍛錬によって倍率も変わるらしい
『!?』
グスタフの手が伸びるがその瞬間重力が解かれたので直ぐに両足を回転させてグスタフの足を払い後方に転倒させようとしたけどもこいつの足ビクともしない!蹴ってもまるで大樹を蹴ったかのように少しも動かないのでそれを利用して彼の足を押すようにして蹴って地面を滑って距離をとったがあと少し遅れてれば捕まっていた
『チッ、予想より逃げるのが早かったか』
俺は直ぐに立ち上がり愚痴の様にして言う彼を見るが楽しそうだ
重力の術とか迂闊に近づけないけどもそれを活かす使い方を彼はするだろう、今俺は捕まりそうになっていたんだしな
『術で叩き落として掴もうとするなんて悪趣味だぞグスタフ?』
『はっはっ!どこがだよ!』
『掴まれなきゃ俺は勝てる!』
『ほざいてやがれ!』
グスタフは走ってくるが単純に殴り合う気だ
いつもより彼の拳が大きく見えるけど別に技を発動したわけじゃない、彼ご自慢の腕っぷしだからこそそう感じてしまうのである
右手の素とレットが来るが首を横にずらしてからカウンターで脇腹を殴ろうとしたら予見が警告を鳴らし始めた
直ぐに体をしゃがむと避けた彼のストレートが一変して裏拳が横から降られていたんだ
あのまま立っていたら側頭部を殴打されていたけども喰らいたくはない
『チッ』
舌打ちが聞こえるがそのまま彼の腹部に2発ほどパンチをお見舞いしたら上から何かが降ってくる気配がした
直ぐに後方に下がるとグスタフが両手を握って真下に振り下ろしていたんだ
避けた事によってそのまま地面を叩き殴ったけども軽く地面なのにへこんでいる・・・お前殺す気かよ!?
避けられたと思った彼は直ぐに俺に走ってくるが動きも前より早くなってきている
彼の体術レベルはまだ6なのに早くなっている気がしたんだ、もしやレベルが上がらずとも動きが良くなっているのか?
そうなれば体術のレベルが上がるのももう少しかもしれない
『楽しいなぁジャフィン!』
そう言いながら両手を使い連続で殴ってきたがすれすれで避けながら彼の懐に入り体当たりして吹き飛ばそうとしたんだけどもヨタヨタと数メートル後ろに後退しただけで吹き飛んでくれない
お前重すぎるんだよ・・・体浮かないなぁ
少し脇腹が痛いけどもどうやら避け切ったように見えて1発喰らってたか
鈍痛がするがかまいはしない
グスタフはニヤニヤしながら背伸びをし始めたと思い来た唐突に襲い掛かる
今度は俺から殴ってやろうと身を低くして一気に上体を押し上げて奴の顔面を殴ったけども振り切れない
『ぐぬぬぬぬぬ!!』
『マジかよお前!』
凄い形相で耐えている!首の筋肉だけで耐えている
そのまま蹴りが飛んできたのでそれを掴んで振り回し投げ飛ばしたけども本当重くて遠くまで投げれん
あと俺の腹部をめっちゃ痛い・・・掴んだけれども正直勢いを止めきれずに脇腹蹴られてたな
まだそんな動いていないけどもなんだか体が疲れる
一息ついたグスタフは微笑みながら話しかけてきたのだ
『全力で蹴った筈なんだけどなぁ』
『いや痛いからな!多分ヒビは入ったぞ?』
『あとでグレッちゃえばいいだろ?』
『お前も略すなぁ・・・』
『くっはっは!俺もてめぇの殴りで奥歯がぐらぐらだ!あとでグレッて治してくれや』
『はいはいわかりましたよ』
そうして彼とこの後体術の特訓をしたけども一撃後離脱が一番グスタフと戦っていて落ち着く
ずっと接近戦してるといつか捕まりそうでおっかなすぎるんだ
こいつも満足するまでに1時間も動いた気がするし俺達はそのまま着替えを持って領主館の近くの温泉に向かい体を洗った
2人でゆったりと湯船につかっているけども他に客はおらず貸し切りに近い
汗を流した後の風呂は気持ちも良いしグスタフと心地よくしていると彼が話しかけて来た
『ナッツはきっと勝ち進むが問題はカールだな、きっと勝てる見込みは薄いと覚悟はしている筈だ』
少し神妙な顔つきでグスタフが言う
確かに上位職の千剣と天位職のネメシスじゃ差がある
『となるとどちらもその職の質をどこまで高めてるかだな』
『んだぜ・・・カールの技には遠距離でも敵を切れる断罪もあるし天罰っつぅ最強のカウンター技がある』
『断罪はカールの太刀筋を見ればそれに合わせて防げばいいが・・・』
『天罰はそう簡単じゃねぇ、お前のシルバシルヴァも消し切るかも知んねぇぞ?』
そうだな・・・カールのその2つの技の説明でもしようか
断罪は主に遠くの敵に向けて攻撃を与えるが斜めに斬れば遠くの敵が斜めに斬られ、真横に斬れば遠くの敵も真横に斬られると言うその場の太刀筋が遠くの敵に一瞬で届くなんとも可笑しな技
時間のラグはなくほぼ振ったと同時に敵にその斬撃が繰り出される
しかも多少貫通ダメージがあり鎧なども安い者ならば容易く斬り裂いてしまう
今回その技をかなりの頻度で使えるように鍛錬している筈だとグスタフは睨んでいるらしい
決め手を作るにはもっつえ恋の技だからだと自信を持って言い放ったんだ
そして天罰だよ、これは発動後自分を中心に突風を起こし広範囲内の対象の技や術効果を強制的に掻き消してから即座に天から巨大な白い光線が降り注ぐ
ネメシス最強の技だろうが相手の攻撃を無かったことにしてからその隙にカウンターで攻撃を仕掛けるんだけどもその技には流石の王虫クワトロンも避けれなかったというのだ、あの超加速虫が避けれないなら誰が避けれるんだよ!
俺は溜息をついて湯船の壁に背中をつけて答えた
『シルバシルヴァが消されたら流石に洒落にならない』
『だろう・・・それはお前だけじゃねぇ、皆技を撃とうとしたタイミングであれを撃たれちゃ敵わねぇだろうな・・・カウンターだから当たるんだ』
『だが連発も出来ないだろう』
『そう信じろ、そこらへんはまだ誰も知らねぇらしいぜ?』
『内緒かよ・・・てかお前いつグラビデル覚えたんだ!?ビビったぞ!?』
『ぐっはっはっは!驚かせようと思ってなぁ!重力の術はイメージが大事と前々からスカーレットさんに言われてたからコツコツ練習してたら最近覚えた』
マジかよ・・またため息が出るよホント
『おやぁ先客がいるんだねぇ!と思ったら君達か!』
俺達は声の方向に目を向けると領主のエドガーさんが湯船の前で堂々と腕を組んで仁王立ちしていた
何をしているんだとグスタフと目が点になるけどもウケなかったと感じて彼は少し顔を赤くして咳払いして湯船に入って来た
久しぶりにナラ村の領主と出会ったけども少し話をしてみたら依然俺がゼリフタル国王に言っていた南の海に行きやすくするために道を整備しえほしいと言う願いで時折来る大工の人と話し合いをして計画真っ最中だったんだとかニコニコしながら話してくれたんだ
『漁師もかなりその件に関しては大喜びさ、そして武人祭だが2人共頑張ってくれ!今回も上位になれば村の税もかなり減少してくれるかもしれないからね!』
税金がそれなりに減れば村の整備に使えるからだと言うけども確かに色々と村の様子も変わってきている気はしていた
少なかった村の輝魔石の灯篭もかなり増えており夜でも道が明るくなっているからだ
前は暗かったしで歩きにくかったんだよ
『頑張ります』
『頼むよ!』
そんな話をしつつも3人で風呂で寛ぎ夕方にはグスタフと別れて俺は言ったん家に戻りバッグに着替えなどを入れてハルバートを持つとルッカの家に向かった
ちなみに銀彗星で10秒・・・・そんな情報いらないか・・・うん
その話をルッカにした時は大笑いしていたな、隣に住んでるの?とか言いながら腹を抱えて笑ってくれていた事を思い出す
ルッカの家のドアをノックするとルッカママのマリーさんがドアの隙間からひょっこり顔を出してきた
『あらジャフィン君、とうとうお父さんがいない間に娘を奪いに来たのね』
『何を言ってるかわかりません』
真顔で答えていると奥からドタドタと音を立てて何かが近づいてくる
『いいから中に入れてよお母さん!』
ルッカだ、まぁ気配でわかってたけどさ
一度ルッカの部屋に荷物を置いてからリビングに行くと既に飲み物が用意されておりパインジュースの入ったグラスがテーブルに置いてある
俺は椅子に座ってルッカの隣にいるけども正面にはマリーさんだ、ニコニコしている
『娘はどう?』
ド直球ストレートきたわ
ルッカが半口開いて自分の母親を見ているけども何言ってんの?的な言葉が顔に出ているぞ
俺は普通に無表情を決めて答えるしかない
『返答に困る質問ですね、どうとは?』
『もう大人みたいな返しちゃってー!』
なんだかマリーさん楽しそうにはしゃいでいる
『先の事は考えてるのかなって』
『そう言われるとまだ何もしっかりした軸を考えてませんね』
『仕方ないわよね、強くならなきゃ命が危ないもの…それから考える時間はあるわ、んて?好きなの?』
『大好きですが』
『あらま!』
楽しんでるだろ
ルッカは両手で顔を抑えてうつむいてるしマリーさんの眼は輝いている
あれ?ルッカの恋ばな好きはもしかして母親譲りか!?
納得いくような俺の推測だけど確実にそうだろう
やはり薬剤師の家系だけあって綺麗好きだと感じる家の中だ
いつもマリーさんが掃除してるとは聞いてるけど流石専用主婦!
まぁ俺の稼ぎならルッカもそうさせれるけども薬剤師だし動いていたいだろうな
『武人祭のトーナメント表見たわよ?優勝候補の筆頭らしいじゃない』
『少し荷が重いですけど連続優勝出来るように頑張りますよ』
『娘にご褒美ねだっときなさい』
『そのつもりです』
『はっ!?』
最後にルッカが反応して顔を持ち上げた
勿論ご褒美は…うむ!いかんまだ夜じゃないから如何わしい発言はよそう
ゼルさんがポートレアから戻るまでは俺がここに泊まることになったのでゆっくりしようと思う
『夜は静かに楽しんでね?』
笑顔でマリーさんに言われると流石に俺も表情を固まらせる
そんな俺を見て微笑む母親もやり手だな
逃げるようにしてルッカの部屋に向かうが肝心のルッカは夜食の準備でマリーさんの手伝いなのでそれまで俺は待機だ
俺も手伝いがあれば動こうとしたけど大丈夫だから部屋で待ってなさいとマリーさんに言われこうしてルッカのベットに横になっている
やはり良い匂いのベットだが俺は変態か?
いやそれでもいいか、開き直りも武器だ
バックからトーナメント表を見直していたけれど西皇帝グァゾは名前は聞いたことはあるが戦闘スタイルはまだわかっていない
どうやら彼はどこの街かは度忘れしてしまったが西のとある街で活動しており国で一番デカイ冒険者のチームなのだ
総勢500人以上もチーム内にいると噂されてるけど本当かどうかはわからない
だだそのチームのトップであることは知っていた
チーム名は『夢追い』らしいけど今以上の情報はない
『出来たから降りてきなさ……』
ドアを開けながらルッカが来たんだけども俺の体勢が気にくわないらしい
ルッカのベットにうつ伏せで顔をうずめているからだろう
『とうとう本性現したわね』
『ひど!?』
ガバッと起き上がり俺は答えた
その後リビングに降りてマリーさんやルッカの手作りである肉じゃがをいただきながら団欒とした会話をした
内容は殆ど武人祭についてが多いけどもやはり気になるらしい
『また決勝まで行けばカールが来そうだ』
『ノートン大将軍じゃやっぱ厳しいのかしら』
マリーさんが疑問を投げてくる
流石に上位職と天位職じゃ決定的な差は埋めようがない
『無理だと思います、カールは全ての攻撃を半減させる自動盾持ちであり天位職ですからダメージを気にせずカウンターを狙えます』
『あらまぁ、あの人も天位職になれればねぇ』
『そのうちなるとは思いますが武人祭には間に合わないでしょうね』
すぐなれるとは思えない、確かに天位職の書は手に入れたが細かい条件を達成させるために動いても半年以上はかかる筈だ
今回の武人祭、これは今新しき時代に名を売るチャンスでもある
だからこそ俺でも名前を知っていた冒険者がこぞって参加しているのだろう
乗り遅れないためにだ
『でもジャンは本気で銀彗星使えば誰が反応てきるの?』
『シルバシルヴァ発動中ならまずいないな、だから起動前に対戦相手は必ず本気を出す』
『音速以上だもんね、人じゃとうてい反応の限界よ…他の加速技と比べ物にならないくらい高性能よね』
『たしかにな、俺の戦い方は去年完璧見られてるからシルバシルヴァはなんとしても起動させたくないだろうけど銀閃眼はまだ御披露目してないから大丈夫さ』
『撃ち抜く気?!』
『いやっ…そこは狼気調整して打撃系にするよ』
『そうよね』
一瞬ルッカが驚くけども銀閃眼はまだ知られていない筈
いやまてよ?一応バレているという線で考えとくか
必ずトーナメント参加者は俺がシルバシルヴァを発動させるタイミングを見計らうって思ってる、それは確実
使われたら終わりだからだ
本当に最初から最大の技で来ても可笑しくない
『でももしジャフィン君がシルバシルヴァを使う事になれば?』
ふとマリーさんがそう口にするので俺は自信を持って答えた
『本気を出さないと負ける時です』
夜はちゃんとやる事やってという日々を2日間かけて満喫してとうとうゼルさんがナラ村に帰ってきた
俺とルッカそしてルッカママのマリーさんはリビングで寛いでいるとほっこりした顔つきでゼルさんが帰宅したのである
どうやら大収穫だったらしく売り切れで帰って来たんだ
当分金に困る事は無いと幸せそうに口にしていたけども少しは店で使う分として残していたらしい
村にも病気は突然出てくるからね
自分の家に帰宅してからは父さんは武人祭の話しかしてこないけど父さんも楽しみらしい
父さんと母さんはソファーで座り俺は正面のテーブルを挟んで椅子に座っている
『俺と母さんは見に行くからな?』
『だろうと思ったよ』
父さんは笑い出した、息子の勇姿を見に行く気持ちはわかるけど今回だけは大人しく見ていてほしい
前回あんた走り回ったろ?結構恥ずかしい
溜息をつくと父さんは少しだけ真剣な顔つきになり本題だろうと思える言葉を俺に言い放つ
『槍の子ハートンはノートン大将軍に槍術を教えた国一番の槍術の使い手と言われている、去年も参加していたけども槍は右に出る者はいないと言われている』
ピクンと体が反応すると父さんはそれを見てニヤけだす
槍の扱いでは一級品ならば俺は是非ともあの人と槍での試合をしてみたいものである
『父さんはどこまであの人を知っているんだ?』
『よく聞いてくれた息子よ!』
父さんが唐突に元気になる、隣にいる母さんが読書をしているのだけれども少し微笑んで父さんをチラ見した
無邪気な顔だな父さんも
『槍といえば今じゃお前かハートンの名が同時に出る、そしてハートンの槍の稽古は俺も数年住み込みで教わった事があるんだぞ?』
『それ初耳なんだけども、去年の大会で言わなかったぞハートンは』
『いちいちそんな会話あまりしない人だからな、あっちは俺の息子だって知っている筈だ・・・顔を合せたらよろしく伝えといてくれ』
『父さんが言えばいいじゃん』
『よくサボッて怒られてたからちっとなぁ!あはは』
なんだよ・・・たく、若気の至りが父さんにもあったのはあまり聞いたことは無いが新鮮に聞こえる
椅子の背もたれに寄りかかり会話を続けた
『今年も勝てればいいけどね』
『勝てよ?』
ニヘラと笑い父さんが言う
そう言われると逃げれない
ここまで来たんだし大きく期待されるならばそれ相応に結果を出すしかない
となれば優勝しか他人は認めてくれないだろう、頑張ればいいとは思うけれどもそれでも絶対的な結果が必要とされる高見まで来てしまったんだしそれを俺は周りから言われてきている
とうとうただの兵士だったころから国で必ず名が上がるほどの人間になったんだ
それなりの行動をしよう
期待されることに慣れているわかじゃないけどさ
知っている人たちに期待されるのは悪い気がしない
『勝つよ』
父にそう答えた