4話 隠した本物と玩具の仮面
俺とグスタフそしてルルカの3人でポートレアのギルド依頼から近くの森に出かけて簡単な依頼をこなそうと魔物と戦っている
『おらぁ!』
『ぐるぁ!?』
タイラーグリズリーという懐かしい熊の魔物を投げているグスタフ
もう大剣を振る事をせずに奴の爪の攻撃を難なくかわすと腕を掴みルルカに投げ飛ばしたのだ
『ファイアバレット』
飛んでくるタイラーグリズリーに火球をぶつけてルルカは避けた
すると燃え盛るタイラーグリズリーは大きめの木にぶつかってから暴れ始めるがそれも徐々に大人しくなっていく
死んだらしい、ニコニコしながらルルカが火が消えたタイラーグリズリーの牙を剥ぎ取る
ふと気配を感じてグスタフとその方向に視線を向けてルルカの剥ぎ取りを守る形で体を向けていると珍しい魔物が現れたんだ
『ダークホーンかぁ』
筋肉質な羊だがそんな大きくはない、されどランクはC
真っ黒な体毛に頭部の2本の角は相手に突き刺す意志が感じられるくらい真っすぐ正面に伸びている
グスタフが大剣を抜いて走り出すとダークホーンも素早くそれに反応した
『ブルル!!』
駆けだすダークホーンは頭部のにある2本の角を前に突き出してグスタフに向かってくるがそれを大剣で振り上げてダークホーンの角が弾かれ真上を向くように仰け反ったんだ
『へっ!』
不敵な笑みを浮かべた熊は大剣を直ぐに腰にしまい仰け反って腹部を正面に見せるその部位に攻撃を仕掛けた
『鬼無双!』
この技は直ぐに放てるようになったらしい
ダークホーンは変な鳴き声を出して遠くに吹き飛び木にぶつかるが痙攣している
終わった様だ、というか一発で終わらせようとしてグスタフが強めに殴ったんだろうな
『助かるのだ!』
ルルカはタイラーグリズリーの剥ぎ取りが終わり腰のポシェットに牙を入れてそう口にした
周りを見渡し気配を探っても近くには魔物はいないらしい、遠くに気配は感じるけど無視しよう
グスタフも大剣をしまい満足そうにしているがそれならそれでいい
今日の依頼はグランドパンサー3頭の討伐だが速攻気配感知で見つけて倒したのでかなり時間が余ったのである
だからこうして追加報酬狙いで他の魔物を倒しているのだが
『あん?』
グスタフが奥の森を眺めると俺とルルカに耳打ちをして走り出した
ルルカは俺に首を傾げて見せてはいるけど何か見つけたんだろうか?気配感知能力はまだ熊が上
何か見つけたんだろう
『行こうか』
ルルカそう告げてグスタフの後を追いかけていく
そしたら彼が何故いきなり走り出したか俺はわかった、森をかけていき俺の気配感知でもそれがわかる
魔物が1頭に人の気配4人だがすでに1人は虫の息と言っても可笑しくないほどの気の小ささ
残り3人も小さいがそれほどじゃない所を見ると苦戦中か・・・にしても魔物の気
こんなところにこの気を感じるのは驚くぞ
走っていくとグスタフに追いついて来たんだがそれは彼が俺達に合わせてくれたんだ
グスタフの横にルルカと並びながら俺を口を開いた
『前衛頼むぞグスタフ』
『当たり前ぇ!』
『俺は中衛で後衛がルルカ!』
『なのだ!』
話し合いも終わりその場所に近付くと開けた草原であるが周りは森だ、ここだけ草原地帯
どうやら結構奥まで来たらしいけどその光景を見る事が出来た
『ブルゥゥゥゥ!』
阿修羅猪か、インダストリアルで見た巨躯よりかなり小さいが3mはありそうだな
人間の方に目を向けると冒険者だ、しかも1人右足が膝から欠損しており血が流れている
その怪我人を1人が包帯を巻いて手当をしているが怪我人が苦しそうに動くので手間取ってる
残る2人は阿修羅猪を前に半ばあきらめたような雰囲気をだして剣を向けている
これは不味いか、予定変更を伝えよう
『グスタフ!俺は冒険者の手当てをするからお前とルルカであいつ倒せ!』
振り向いた彼の顔が嬉しそうだ、存分に暴れることができるんだし
『いくのだグスタフ!』
『おう!』
2人は駆けだすと同時に苦戦していた冒険者たちは俺達に気付いた
逃げれたのだろうが怪我人を置いていけなかったんだろ?まぁ仕方がないよ
俺が銀彗星で怪我人の近くに近付くと包帯を巻いていた魔導士のような女性が泣きそうな顔で話しかけてきた
『助けてください!私もう魔力が無くて回復術が唱えれず』
なぁるほど、俺は重症の剣士の前にしゃがむ、彼は非常に苦痛を顔に浮かべて唸っている
『うぅ・・早く逃げろ、みんな死ぬ・・・なんでここに阿修羅猪なんかが・・いてぇ』
偶然出会ったみたいな言い草だが運が悪いな
俺は彼に手を差し伸べて口を開いた
『グレンツェントヒール』
重傷の彼が緑色の光に包まれて欠損した右足が修復されていったがその光景をみて魔導士の女性は口も目も大きく開けて俺を見ていた、ようやく術の効果もおさまり回復終了
重傷だった彼は何が起きたのかと上体を起こして自分の体を見回しているけど回復したんだぞ?
完全回復した剣士は俺に顔を向けると口を開いた
『本当に助かった!あんた何者だよ・・この技はおとぎ話でしか・・』
やっぱりこの術凄いんだな、多分だけど今の時代じゃそうなんだろう
ノアの時代ではもしかしたらそこそこ使える人がいたのかもしれないな
だって人類の力が著しく衰退していたんだし術もそれに近いはず
『俺は銀狼のジャムルフィンだ』
その声で彼は固まってしまうが大丈夫か?さっきの状態の方がマシだったと思うけど・
『十天の・・・ってことはあとの仲間も、シルバーバレット・・・』
魔導士の女性は呑み込みが早い
剣士の肩を軽く叩いて答えて上げたんだ
『大丈夫だ、グスタフがあいつ倒すから少し休んでろ』
そういった瞬間とある声が響き渡ったんだ
『ディザスターハンドォォォ!』
『ブギィィィィィ!』
顔を向けるとグスタフの伸ばした影の中からでた巨大な黒い腕に天高く阿修羅猪が殴られていたんだ
宙に上がるとルルカが阿修羅猪に指を指してヘルファイアと当てると空中で赤い光線が貫通し激しく燃えてそのまま地面に叩きつけられた
そのまま終わる筈がないと思っていたグスタフはすでに次の技の準備を終わらせており燃えながら立ち上がる阿修羅猪の目の前で大声で叫びながら跳躍し大剣を頭部にぶつけた
『共鳴斬』
その大剣は阿修羅猪の頭部に深くまで食い込むとその大剣から連続した超振動が起きる
鈍い振動が俺の耳にも聞こえるが頭部にこの技は凶悪だ、内部に振動が駆け巡りほぼ脳がやられるんだ
『ブギィ・・ブギギ』
流石の阿修羅猪もダメージはデカいが頭を振って大剣を抜こうとするがその前にグスタフがいったん離れた、良い判断である
死ぬまで動き続ける魔物なので、これ以上の攻撃は無駄だろうな
あとは朽ちるまで待つだけなんだ
『ルルカ!仕上げに一発だ!』
『わかったのだからのヘルファイアなのだ!』
いまだに燃え続ける阿修羅猪に追い打ちで赤い光線を放つとさらに激しく燃え上がった
だが暴れることは無く静かになったんだが頭部を直撃したんだろう、流石に暴れることは無理か
ドスンと横に倒れるとグスタフは大剣を腰におさめてルルカとハイタッチしている
『首狩りグスタフかよ・・・』
『助かった・・・』
絶望しながら応戦していた剣士2人がその場に座り込みながらそう口にしていた
もう大丈夫だな
一難は去って魔導士の女性に事情を聞いて見ると普通の依頼をこなしている時に偶然鉢合わせてしまい逃げ回ってここに辿り着いたららしいんだ、応戦したら1人は足を食いちぎられたってさ
雑食の魔物だし人間だって平気で食うんだよなこの暴れ猪・・・
少しボロボロなグスタフだがどうしてか聞いたら一回鼻先で殴られて転がってしまったからだとさ
それでも彼はピンピンしている所を見ると頑丈だ
『いやぁ楽しかったぜ?今日はもう満足だ』
腕を組んでグスタフが口にするとルルカも満足そうに彼の真似をして腕を組んで口を開く
『満足なのだ!』
そんな2人の光景を見て4人の冒険者は苦笑いしている
ふと阿修羅猪と応戦していた剣士が俺に話しかけてきた
『俺はこの冒険者チームのリーダーしていますリンネイと言いますが本当に助かりました、最初は半ば諦めていたけどまさか十天がいるシルバーバレットに偶然出会うとは俺達も運が良かったよ』
『前衛である千剣のナッツさんは今日はいないのです?』
リンネイという男の後に怪我をしていた男が口を開いた
それに対してルルカが答えたんだ
『今は里帰りしているのだ!武人祭もあるしそろそろ戻るぞ!』
『里帰り、なるほど』
納得してくれている
一先ず彼らとポートレアに戻るとギルドに向かい報酬を受け取るが俺達は阿修羅猪の追加報酬もあるので金貨合計40枚貰った、今回は少ないけどまぁいいか
ルッカに冒険者資金を渡しておくか
受付を終わらせると再びリンネイにお礼を言われたんだ
『本当に助かりました、では私たちはこれにて』
律儀に挨拶をすると他の3人も俺達にお礼を述べてギルトを歩いて去って行った
本当に偶然だったがかなり危なかった状態だし放置してれば確実に全員死んでいる
毎年冒険者として死亡するのはどの国でもかなり多いがその死亡原因のほとんどが予期せぬ強敵である魔物との遭遇なんだ
今回の彼らもそれに当てはまるだろう
いつも通りに酒場のマスターに金貨3枚ほど渡してこの場の彼らに1杯奢りをするとみんな喜ぶ
その嬉しそうな顔を見てから俺達はルルカの家にお邪魔したのだがケサラパサラがいなかったんだ
スカーレットさんに聞いて見るとなんとタツタカとゾロアが連れて言ったんだと
とうとうゾロアめ!駆け落ちみたいな作戦をとったか!
まぁそのうち出会うしあとで聞いて見るか
今回特訓は無しで少し宿を借りるくらいであるが2泊3日、グスタフと特訓は今日は訓練場で行うとしてその前に俺は部屋でその為の準備をしていたのだがノックされて返事をすると珍しいお客さんだった
『お久しぶりでのジャムルフィンさん!』
ハキハキと声を出して深く頭を下げる者はアクト・ルーブルム・ハイ・ルーゼット
ルルカの兄であり長男である!ナッツと同い年のとてもいい子なのだ!
『元気にしていたかアクト』
『はい!そちらも大変だったようですがご無事で何よりです』
『用事があってきたのだろうがどうした』
アクトは前回インダストリアルの帰りに寄った時には遠出中だったので会えなかったが今回は会えたな
どうやら俺の言葉で少し気難しそうな面持ちを見せているが大分困った事か
『まぁ・・少し気になりまして』
『とりあえず座ろうか』
『はい』
机の椅子に座る彼に俺はベットに腰かけて話を聞いて見ることにした
本当に気難しそうな顔だがそんな深刻な事だろうかと深く勘繰ってしまう
『ルルカは元気にやっていますか?』
兄として口にしときたい言葉かと首を傾げる
一応妹であるルルカは心配なく元気すぎるくらいなのでその質問に対して俺は答えれる言葉は一つしかない
『元気すぎなくらいだよ』
『そうですか・・・』
不思議な反応だ、元気だよと口にしてもその顔がほころぶ事は無かった
どうしてだろうと俺が不安になりそうだが答えは彼じゃないとわかりそうもない
そんな俺の様子を見てアクトは溜息をついて俯いて口を開いた
『ジャムルフィンさんはルルカが昔からあんな感じだと思ってましたか?』
『どういうことだ?』
『元気すぎるようになったのは理由があるんですが今のルルカは本当のルルカじゃありません、少しでも悲しい顔をしない様に無理を覚えたルルカなんです』
無理を覚えたルルカ?少し覚えがある
グスタフとの会話をした時に一度宿の外で話をした事を思い出したんだ
『ジャムルフィンはどうすれば変えられると思う?』
あの言葉だ、いつものルルカじゃなかったな・・・元気な姿しか俺達は知らない
その時は元気という言葉は微塵も感じられずそれよりも女性の姿を見せてくれた気がするんだ
口調も雰囲気も何もかも違う
まるで別人
『仮面を被っているというわけかアクト』
『父が死んでからです』
幼い時に父を亡くしたと聞いてはいる、その父の願いを叶える為に彼女はルーンナイトを目指している
自分の夢じゃないけど自分の夢、大好きだった父の夢を引き継ぐ事が今のルルカは前に進むための希望となっているというんだろうな
『お前は今のルルカをみてどう思っているんだ』
昔の彼女を知るアクトに向かって質問をすると小さく答えてくれた
『見ていられないのです、昔はあんな口調じゃなかった・・・気を抜くと本当のルルカが出る時もありますがいつもの口調とは違った雰囲気を出したことはありますか?』
『ジャムルフィンはどうすれば変えられると思う?』
『ジャムルフィンはどうすれば変えられると思う?』
『ジャムルフィンはどうすれば変えられると思う?』
あの時だ、一瞬の気にゆるみからでた本当のルルカであり女性としての本来の姿なのだろうな
俺達にそれをどうしろと言われても難しい問題である
まったくもってわからない、ルルカがそうしたいのであればそうさせればいいと思ってしまう俺もいるけども彼はそれは嫌らしいんだよな
でも本当のルルカか、見てみたい気もするな
ほんの一瞬しか見た事ないし興味はあるが女性のすることは繊細過ぎて逆に怖い
『一応頭にいれとくよ』
『・・・そうですか』
彼は昔の彼女に戻してほしいと言いたかったんだろうがあえて口に出さずに頭を下げてから部屋を出た
その後に入れ違いでグスタフが来たのだが俺はベットに横たわると彼に向かって口を開いたんだ
『お前にしてはかなり珍しいな、盗み聞きか』
『ケッ・・・まぁそうだな』
意外にも素直に言ってくれるじゃないか、グスタフは先ほどまでアクトが座っていた椅子に座ると深い溜息をこぼした
こいつが一番ルルカに詳しい筈だがどう口にすればいいもんかと悩んでしまう
正直ルルカはグスタフが気に入っているのはわかるし特別に意識しているのもわかる
だが果たしてそれはアクトのあの言葉から考えると本当なのかどうなのかわからなくなるな
女って難しい
『あいつのことは気にすんな』
その言葉に上体を起こして彼を見た
グスタフは腕を組んで苦笑いしていた、これは俺がでしゃばっていけないと思う
『俺は普通通りルルカと接するよ、そうしてればいつか彼女も自然と戻るんじゃないか』
『・・だといいが俺は戻るとは思えねぇ』
『どうしてだ?』
『ずっと笑っていた方があいつにとって楽だからだ』
『楽?』
『そうだ、あいつの素は俺も何度か見たがそっちの方があいつにとっても良いし俺達にとっても良いだろう・・・今のままじゃ俺も困る』
『困るって何がだグスタフ』
俺は首を傾げると複雑そうな顔を俺に見せる
少し言いにくい質問を投げてしまったかと思ってしまうがそうじゃなかったらしい
奴は静かに答えた
『あいつの今の顔では俺も本音で話す気が無いからだ』
率直な言葉を聞いて俺は言葉を失ったがグスタフは真剣だった
本当の姿をこいつも知っていて当然だが今の仮面のままでは本心かどうかもわからずという事か
女性は猫を何匹でも被れるとルッカに聞いたことがあるがルルカの頭には猫などいない
鉄の仮面でガッチリと本当の自分素顔をかくしているのだろう
再びベットに上半身を倒すと天井を見ながら口を開いた
『お前はどうしたいんだグスタフ』
溜息が聞こえるがその後直ぐにグスタフの声が聞こえた
『俺は戻す』
お前からそんな言葉聞くとは思わなくて内心驚く
正直俺はそれに関与するかと言われたら億劫になりそうで遠目から見ときたい派だ
女性の感情を動かすといったその言葉にどうして彼がそこまで戻したがるか俺はわからないが聞くのもまだ卑怯だろうなと思い言わないことにした
『とりあえず体術訓練いこうかグスタフ』
俺はベットから起き上がりドアに近付くと溜息をついてグスタフも立ちあがる
そうして俺達は訓練場に足を運んで彼と向かい合い特訓をし始めたんだが・・・
『おらぁ!』
グスタフの鋭い右ストレートだが首を横にずらしてかわすと彼の腹部を軽く跳躍して蹴りつつその反動で後ろに飛んだ
掴まれるのが嫌だからだが驚くことに手が伸びてこなかったんだ
蹴られても後ろに下がることなくその場にとどまり続ける熊だがダメージは入っている
だがカウンター的な攻撃が来ない
俺から走り出すとグスタフも同時に走り出したがどうやらタイミングがあったらしい
互いの間合いに入った瞬間俺は一気にしゃがみこんでから足を払おうとしたのだがビクともしない
足腰ヤバいなお前・・・知っててやった俺も俺なんだけど
やっぱ掴まれそうになり手を伸ばしてきたので払おうとした足を引っ込めて立ち上がりながらアッパーをかまそうかとすると回転して避けられてかわりに回し蹴りが飛んできた
『やべっ!』
両手で顔面をガードしても押し込まれて転がってしまうが直ぐに起き上がるとやはり目の前にいる
そうだよね、走って来てるよね!
『シッ!』
そう口にしながら突然姿勢を低くして一気に加速してきた
掴む気か、だが違和感だな・・・
迫る手を掴むとそのまま後方に投げ飛ばしたがグスタフは体を回転させて着地した
だが俺はもう走り出して跳躍しているので奴の着地と同時にドロップキックをしたけどやっぱり両手でガードされてしまう
だけどグスタフは少しよろけながら持ちこたえるがそんなグスタフに俺は静かに立ち上がると服をほろいながら話しかけた
『ルルカか』
『・・・』
何も喋らない・・か、なんだか動きが全体的に鈍いしキレもない気がする
考え事だろうが今のタイミングでならば彼女の事だろうな、お前にしては珍しいな
『ちょいと当分特訓は無しで良いか』
グスタフにしては驚く言葉を言うのだな、やりたがりなコイツからこんな言葉だ
当分というのならば今彼を邪魔している雑念を振り払うために動きたいと言っているのだと俺は理解した
どうやら俺は何もせず今まで通りでいた方が良いんだな
下手に動くと邪魔になると思い知らなかったことにすることに決めた
先に訓練場を出ようと出口に歩くがこのあとグスタフはルルカとの訓練があるからな
出口の前で俺は話した
『気分が乗ったらいつでも言え』
『すまねぇな』
『お前の事情もある、かまわないさ』
軽く手を上げて俺をその場を後にした
直ぐに走って渡り廊下を抜けて自分の部屋に戻るが急いだ理由は俺の心配性のせいだ
ルルカと鉢合わせしたら不味いかなと思ったけど今思うと鉢合わせても何も無いよね
考え過ぎは・・・俺だった!!
今回俺の出番は無さそうだしのんびりとして見るか
ベットに腰かけようとしたがふと壁に立てかけたハルバートに目がいき近付いて手に持ったんだ
『今まで突き技ばかりだったけど払い技の技くらい覚えたいな』
そう口に出してハルバートを軽く回したら声が聞こえた
(狼剣斬と銀剣堕を覚えさせよう)
『はっ?』
頭に唐突に新しい技が流れ込んでくる、おい待て最初から取得させろよ
ハルバートを手に入れてから払い技もとか思ったから覚えさせるとか性格悪いぞ?
『シルバ・・・お前なぁ』
溜息をつきながらハルバートを壁に立てかけてベットにダイブしした
他に斬系の技を覚えても基本俺は突技がメインだしいいか、もうけって事で良しとしよう
ナッツもあっちでクズリと特訓してるんだろうな、あいつの特訓とかきつそうだ
今ごろはゼリフタルに戻っている最中でどこかで宿をとっているんじゃないかな・・・
部屋の明かりを消そうと悩んでいたらまた頭に気になる会話が流れ込んできた
『圭太という名前はあっちで捨てたのさ!新しい命で作り出された僕はそんな死んだ名前もういらないのさ!』
『本当にそれでいいのか?元の世界に帰りたくないのか?』
『帰れないよ、僕はもう死んだんだもん、だから僕は・・・・』
『ヘルトになれたんだ』