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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
第10章 時代の成長期
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インダストリアル編 また闇組織?

ルッカ『インダストリアル行きまであと僅かであったんだけど移動中に盗賊に襲われたの、その盗賊の目的がジャンが良くしてもらっている貴族だと知ると彼は急いでアポスにいるブール伯爵の元にいくのよ!次の敵は闇組織デスター、猶予は3日間!』

ブール伯爵には詳しく事情を説明した

彼は口を出さずに黙々と俺の話す内容を一言一句耳に入れていたのだが話し終えた時にふと口を開いたのだ


『多分採掘権の書類か、まさかジェリコ公爵か・・ありえぬぞ』


意外そうな面持ちだなにやら深いものがありそうである

今ブール伯爵が狙われているのは明白でありそれを実行したのがもしかしたらその公爵だというのか?

公爵は貴族の中でも最高位と言っても過言じゃない


国のトップとも言っても良い奴がそんな事ありえないと思っても不思議じゃないな

俺は一息つくと彼とその件について話し合った


『ブール伯爵は心当たりおありと?』


『来月から爵位があがるからブール侯爵でいいぞ?むふふふ』


なんだか大変な事態なのに嬉しそうに彼が言う、てか侯爵か

国に何かしら貢献していたからこそ王族から侯爵の地位を彼に与えたのだろう

俺もなんだか嬉しいな


『話がそれたな、先月だがインダストリアルでの採掘権の権利がジェリコ公爵から私に譲渡すると王から進言されてな、不可解な事に今年になって公爵の採掘での利益が横流しされていてかなり計算が合わない事が多々あったのだ・・・それに関しては公爵は管轄外での問題であるから調べろと申されても限界があると言ってな。痺れを切らした国王は私にその権利を譲ったのだ、その時の公爵の顔と言ったら絶望した感じの顔つきであったな』


『あく迄予想で言いましたね』


『そうだ、確定じゃない・・・採掘権の書類を奪えば内容でどんな鋼材が眠っているかどの程度採掘されているかが鮮明に記載されている、書類は再申請して作ればいいが奪われた場合情報が漏洩してしまうので管理には非常に神経を使わなくてはいけない、この国を潤す為の資金源でもある』


『闇組織ですか、ダグマの件を思い出しそうです』


『あれは正直助かったよ・・ふふふ・・だが君は誰もやらない損をした役回りだ、だがそれができる・・・行使できる君がいる。それは隠れた正義でもある』


『表上の行使じゃダメな場合があるけれどもその役割が俺なんですね』


『すまないがそうだ、損が出来る男といえば聞こえはいいだろうが』


そこまで話すとブール伯爵がテーブルに置いてあった林檎ジュースを一飲みして再び口を開いた


『疑問である、予想でしかないがもしそうならどこに?合わない利益が飛ぶ?わからないんだ・・もう他国もそれなりに平和が見えつつあるこの時期にだ、どこの誰に?己の肥やしにしているなんて公爵となれば金に欲は無い筈・・・であれば別の目的だが不明過ぎる、だから私は疑う事もあっても考え過ぎたと思い重く考えなかった』


ジェリコ公爵は一度だけ顔を見たことがある、まぁ王城ですれ違って挨拶しただけなんだけどね

優しそうな雰囲気の彼にそんな裏の顔があるとは俺も思えないんだよなぁ・・・


俺も手前に置いてあるパインジュースを飲んでテーブルに置いた

ブール伯爵が侯爵になるか・・・いい事だ

採掘権がジェリコ公爵からブール伯爵に移るとなってこんな面倒な事が起きそうになったのだがそれは公爵の差し金かはたまた彼の知らない場所からの陰謀かこれは動くしかわからない


『これは私にとって今後とても大事な事である、もし動いてくれるならナラ村の半年分の税を免除するよう王に相談しよう・・そして村には桃金貨10枚の寄付をする、これから君の村にも人が立ち寄りやすい様に道の整備費といえばわかりやすいだろう』


村の活気に繋がるか、悪くない

そんな契約しなくともブール伯爵とは約束された関係があるからそんなものなくても動かなくてはいけない事は考えていた


俺は静かに立ち上がると槍を担いで軽く首を回す

その光景を伯爵は微笑ましく見届けている


『深刻な用事があると聞いてはいるがすまないな』


労わりの言葉を彼から頂くが俺の行動は伯爵には伝えている、インダストリアル行きの話もな


『三日以内に終わらせてきます、その後の処理は任せます』


ブール伯爵は静かに頷いた、その後の処理という意味は理解してくれただろう

インダストリアル行きは変更はできないからな

そのことを知っている伯爵はそれだけでも自身で動いてくれるはずだ、武力面は俺だけでいい

知能面は彼に任せよう


その部屋を出ると直ぐにケヴィン男爵と会うが盗み聞ぎしていたらしく不味い顔をしていた

肩を上げて苦笑いしているが面白い事をするなぁ


『面白い趣味だなケヴィン』


『あはは・・・足音が無いのでわかりませんでした』


そうなのか?初めて知ったけどそんな意識してないんだけどな


『聞きましたが公爵の採掘での利益はイーリスの街で仕分けされているのですがそこで何かあるのだと思います・・・全て予想なんですけど闇組織デスターに流すにしてもインダストリアルの鋼材はとても上質で莫大な金になるので闇組織に全て流れていると考えられません、もしかしたらこの国じゃない別の場所の線を僕は考えますよ』


唐突に真剣に彼が話した

インダストリアルではエイジ鉄も取れるしミスリルも取れる・・・豊富にあるのだ

しかも純度がかなり高いようでありインダストリアル産はというだけで高値で売れる

闇組織デスターに流れている可能性は低すぎると言いたいんだろうがそう思う、金貨にして毎月1000枚相当の量が消えている

闇組織が使うには勿体ない・・・どこに消えた?


『ケヴィン・・・アポスの冒険者ギルドには確か多術のマリアヌと双剣のマルスがいるからそいつらにブール伯爵の護衛依頼を3日間するんだ、金貨20枚あれば彼らも動くし銀狼のジャムルフィンからの頼みだといえば多分動いてくれる』


そう言った後に俺はケヴィンに金貨20枚を手渡した、気難しそうな面持ちであるが彼は静かに頷く

まだ若い彼にもどういった意味かは理解できたはずだ、ブール伯爵の次男坊だ

俺が前だけ見て動けるように伯爵の安全を固めろという遠回しの依頼を彼は感じた筈


『では早急に冒険者ギルドで極秘依頼としてその2人に相談してきます』


『直ぐに行け!俺はもう動く・・・今度一緒に飯でも行こうか』


『はい!』


元気な返事をするとケヴィンは走ってこの場を後にした

俺は直ぐに館の玄関に移動するとドアを開けて銀彗星で走り出そうとしたのだが懐かしい人物に声をかけられたのだ


『忙しい奴め』


『・・・ルドルガ』


『男爵をつけろよ!』


良いツッコミだ、彼に微笑むとどうやら諦めた様であり深い溜息をこぼしていた

前みたいに迷走した言葉を発することは少なくなったと伯爵から聞いているがまだ荒いな

だが前みたいに尖がった荒さは見受けられない、それだけでもマシだろうな


彼は面倒くさそうな面持ちで腕を組んで玄関の外にある花壇の近くで立っている

どうやら庭の手入れをしていたようだが可愛い奴だ、花が好きか?俺と気が合いそうだ


『イーリスとバッジはジェリコ公爵の領地だが予想だと公爵は裏で動いている様には思えない・・・内部犯の可能性がある、そして消えた物流は外には流れていない・・足がつくからだ』


『どういうことだ?しかも内容を知っている?』


『盗み聞ぎスキルで庭から応接室の窓を意識していれば微かに話は聞こえる』


聞いてたのかよぉ、にしてもこいつ素直じゃないなー!悪い奴じゃないのはわかったよルドルガ

負けず嫌いな性格がナラ村では変に揺さぶられたんだろう・・・少しずつ距離が縮まりそうだと感じる

すると彼は再び話した


『街の外に出して金を使わなければ表に出ないが金は使わなければ意味がない、ならばインダストリアルから物流を仕分けるイーリスのどこかだ・・・闇組織に流れれば確かに金は裏でやり取りするから表には出にくいが闇組織如きにあの資金は無理だ・・多分あれも下請けだと考えても良いだろうな』


『闇組織デスターも下請けか』


『そうだ、本当に流れている場所は別にあると俺は睨んでいる・・・多少の資金は表に出ても尻尾を切るだけでいいが切らずに済むならばインダストリアルだ』


『インダストリアルだと?』


『ただの島じゃない筈だ、誰が決めたか定かじゃないが奥まで進むなという絶対的な決まりだ・・・強い魔物がいるのはわかるがそれなら冒険者を雇って進めばいいだけの話、それすらも良しとしなかったから余計に怪しいぜ?俺の目は誤魔化せないがな』


『お前は何があると睨んでいる?ルドルガ男爵』


男爵をつけて呼ぶと彼は少し口元に笑みを浮かべた

機嫌が少し良くなった気がするし今度からそう呼ぼう

一息ついた彼は俺に向けて驚きの言葉を発する


『誰かが住んでいると思うぞ?大勢の何者かがな』



そうして俺は予定された盗賊が引き渡す予定だったバーに辿り着いて彼らを待つことにした

服装は変えたし槍には布を巻いて隠している、紫林檎は俺のシンボルと言ってもいいからバレるかもしれないしな、顔も念のために帽子を買っていたんで深く被る

そして胸にワシの形をしたバッジをつけて4人用のテーブル席に座りオレンジジュースを飲む

これが目印だと盗賊の生き残りから聞かされた


俺はオレンジジュースを飲みながら色々考えた

消えた利益はインダストリアルに戻っている?ならば炭坑用の月に一回でる船はジェリコ公爵の手のかかった可能性も高い、勿論炭鉱夫もだ

となれば彼らの乗る船に乗っていく旅も少し警戒が必要だ

着く前から何かが始まっているのかと思いつつも時計は18時を回っていることに気付きそろそろ現れるだろうと俺は深く深呼吸をする

俺の横には黒い革製のカバンが1つある、ダミーだ

だけど失敗したことがバレていればこないだろうな・・・それだけが心配である


『やったようだな・・・』


その声に俺は顔を上げた、普通の一般市民にしか見えない服装であり怪しい感じが一切しない

俺は多少驚いてしまうがそれを顔に出す程甘くはない

数は2人だが手練れだと感じるし闇組織の者の線は高いな・・・まぁくるのは組織の者って聞いてたけど下っ端じゃない


『苦労したんだぜ?死ぬかと思ったし相応の報酬は貰えるんだろうな?他のもんは偶然居合わせた冒険者に切られて俺だけ生き残ったんだぞ?』


俺は悪者の振りをしつつも軽くテーブルを叩いて彼らの反応を伺う

口では大変だったといいつつ横にある革製の黒いバックを彼らにちらつかせる作戦

俺って策士!?


すると彼らは俺の正面に2人座った

何かを頼む素振りもなく互いに目配りしているがなんの合図だろう

どちらも優しそうな顔つきだが見た目で人はわからないな・・・こいつらがダスターの関係者かと思うと信じられない


善人の顔なんだ


『ここじゃ大事な話は出来ないし移動しないか?』


微笑みながらそう言われたので俺は小さく頷いて立ち上がると彼らも立ち上がった


『会計くらいしてくれよ?』


俺は彼にそう言った

潔くOKを貰いタダで飲み物を飲めただけで俺は少し嬉しい

会計を済ませるとそのままアポスの繁華街を練り歩くが会話はない、俺は何か情報を引き出そうかと思い話しかけようと思ったのだが変に怪しまれるのも嫌だったので無言を貫き通す

2人に挟まれて静かに向かう先はどこだろうか?一切俺に視線を向けないまま薄暗い裏通りに向かうが冒険者ギルドの裏手である


日中日差しがかからない場所であり向かいの建物に2人は視線を向けて俺にやっと話しかけてきたのだ


『入るぞ?』


俺の返事を聞く事もなくその建物の中に入るが薄暗く多少の輝魔石の光だけで照らされている様である

中を進み物置の様な部屋に入るとそこの床を足で3回叩いていた


音から察するに空洞のような音、床じゃないな?

空っぽい音なので考えれる事は一つ、通路だ


『来たか、早く入れ』


やっぱり床が開いた、周りは石材でできた床であるがそこだけ石のように色を塗った木材使用だ

奥は階段、結構長く続いている・・・

床を開けてくれた小太りな男は俺とすれ違う瞬間不敵な笑みを浮かべていたが


わかっているぞ?俺を馬鹿だと思っているだろうが馬鹿はお前らだ

易々と逃がすつもりはないんだろうなぁーああわかりやすいわかりやすい

逃がさないのはこっちの台詞だ


階段の15mくらいの通路であり両脇に扉が1つずつ、人の気配は僅かながらに感じるが正面のドアの方がかなりいるとわかる、ドアの正面には1人男が見張りで立っている


『ここはどこだ?』


これくらいの質問は大丈夫と思い口を開くと直ぐに正面を歩く男が答えたのである


『俺達の組織の詰め所だ』


残念、詰め所でした!

そうなると骨が折れるな・・・本拠点を潰さなければいけないか

正面のドアまで近づくと見張りの男が俺に話しかけてきた


『ここから先は武装は解除してもらうから預かるぞ』


ジロジロと俺と槍を見てそう口にしたのだ、俺は帽子で顔を見られない様に逸らしながら彼に答える


『良いぜ』


刃の部分を布で巻いた槍を彼に預けると鼻で笑いだした

少し気に障るがまぁいい、お前は最後に殺すか

両脇の男は無表情で正面のドアを見つめているがこの建物に入った途端本性が現れたかのようにも見える

善人の様な顔はそこにはない、凍てつく様な表情である


見張りの男が正面のドアを軽くノックすると鍵が外れたような音がした

そうしてドアが開かれると不敵な笑みを浮かべて見張りの男は俺に話しかけてきたのだ


『どうぞごゆっくり』


『ああ・・・存分に楽しむよ』


本心からの俺の言葉だ

2人の男が中に入ると俺も歩を進めて中に入っていった

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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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