3章 見えなくなる前に
ここからはナッツだけの物語が多く小説視点も変わります
※修正点
ジャムルフィンの母親の職設定は『テレサ』でしたが書き溜めでの投稿の際、最初の設定出会った『シスター』の単語がありますが詳しくはテレサであり修正漏れであります、謝罪
『ふあぁ・・・なんだか疲れました』
スカーレット邸についたナッツは2日間泊まる部屋にメイドに案内されて今はゆっくりと寛いでいる
装備を外して荷物を部屋の隅に置くと小さめのソファーにズシンと座った
一息つく彼は首を回して自身のステータスを見直す
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ナッツ・ランドル(男17歳)流剣士【中位】
☆戦術スキル
剣術【5】 剣の熟練度、恩恵により攻撃力と耐久力が中アップ
体術【5】 体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが中アップ
魔術【2】 魔術熟練度、恩恵により魔力量を小アップし・詠唱時間を小短縮
☆補助スキル
食い意地【大】 食事による体力の回復速度が大アップ
安眠 【大】 どんな状態でも寝ることが出来る
痛覚耐性【大】 痛覚を軽減する
逃げ足 【中】 対象から離れる際の速度が中アップ
恐怖耐性【中】 恐怖状態を少し緩和
我慢 【中】 少し耐久力があがる
集中 【中】 術や技の構築時間を少し短縮する
体力 【小】 自身の体力を小アップ
魔力感知【小】 体内の魔力の流れをある程度感じとることが出来る
☆技スキル(開示ステータスに表示されない部分)
居合・骨砕き・・流し斬り・トリックソード・十字斬り・唐竹割
神速一閃
☆千剣技(開示ステータスに表示されない部分)
ハントハーベン
☆称号スキル
千剣の加護 剣術の熟練度が上がりやすくなり特殊な技を覚えることが出来る
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『千剣兵ですか・・・まず条件を知るのと同時にステータスの底上げが必要ですねぇ、何か一つでも今回の修行で上がればいいんですがね』
小さく独り言を口にする
暫くボーッとしていると部屋をノックされて彼は口を開いた
『どうぞ』
静かにドアが開くとメイドの女性が入って来た
ナッツは彼女の顔を見て手の平で顔を隠し頭を垂れる
気まずそうなオーラを放ってはいるが何故そんな行動をとったのだろうと考えたくなるのだろうがそれは直ぐにわかった
『本当に自分を苦しめるの好きねぇナッツ』
女性も何やら顔を隠している彼を見て苦笑いしていた、彼女の手には水の入ったグラス
簡単に言うとただ飲み物を持ってきたただのメイドなのだがどうやらこの2人は知り合いの様な会話をしている
『ベティーナ、最近気づいたがなんで君がここに居るんだ』
ナッツが気まずそうにそう吐き捨てるとベティーなと言う名のメイドは彼の座るソファーの前にあるテーブルにグラスを置きながら答える
『最近就職争いでスカーレット様のメイドを勝ち取ったのよ?ここ待遇凄い良いし福利厚生も完璧よ!』
腰に両手をつけて首を傾げる彼女は自慢げの告げた
ナッツは顔を持ち上げベティーナに視線を送る
実はこの女性はジャムルフィンも知っているのだが学園生活を送っていた時の友人である
いつも彼女に弄られて大変な思いをしていたナッツはベティーナの姿を見て思い出すと深い溜息をついた
その様子に彼女も口を膨らませて彼に口を開いた
『文句でも?』
『全然ありません』
ザ・即答であった
プライベートな個室なのに彼は休めそうな気がしなかった
彼女が持ってきたグラスの水を飲んで再びテーブルに置く
ベティーナは内心彼がなんでそんな強くなることに固執しているのかが理解できなかった
前回彼だけが特訓に来た時にステータスを見せてもらったのだが一人前だと胸を張れるくらいだと感じたのだ、それでもまだ足りないと思わせるほどに辛い時間を過ごす為にここに来る
そんな世界とは縁のない彼女には理解が出来ないと言った世界に少なからず興味があった
ベティーナは近くにあった椅子に座ると口を開いた
『昔は運動音痴だったのにねぇ』
不思議そうにナッツを見つめている、ベティーナの言い草では昔のナッツは今とは全然違うと言った言葉である
それもその筈、ナッツは現在戦士として動いているためスリムな体つきだが学園生活を送っている最中は少し肥満だったのだ、その彼を知っている彼女が軽く驚きながらナッツの体をジロジロ見ている
そんな視線を感じてか、彼は体の前で腕をでバッテンを作りながら答えた
『はいはいわかってますよ、今でもまだ全然足りないんです』
『足りないの?十分強いと思うけど・・・』
一般的に考えるとナッツのステータスはまぁまぁ高い方かもしれない
だがそれは一般的、ナッツが誰と共に冒険者チームとして・・・仲間としているか忘れてはいけない
銀狼のジャムルフィン
首狩りグスタフ
2人の名は流石のベティーナでもわかっている
学園生活でもこの2人は犬猿の仲でかなり有名であり高学年でも手を出そうとしないくらい問題児コンビだったのだ、殆どグスタフがいちゃもんをつけてジャムルフィンと喧嘩になるが殆どジャムルフィンが勝っていた
問題児としての2人をベティーナはよく知っている
国での屈強な戦士としても名を馳せた事も彼女は知っている
一息ついた彼女はナッツに聞いたのだ
『まぁあいつらといるとそうかもしれないのはわかってるけどあんたも頑張ってるじゃん』
『努力はしてます、ですが努力をしていても結果を出さないと戦いについていけなくなるんです』
ナッツは苦笑いしていた
その様子をベティーナは気難しそうな面持ちで半分納得した
現実は非常である、努力をしても彼は結果を出さなければいけないのだ
所詮人のすることなど100個違う事をして10個良い結果を出せたらいい方だろう、人は失敗を恐れて努力にブレーキをかける
やろうとする決意はあっても失敗する覚悟がない、表向きを考え過ぎる人間はそう言った傾向がある
だが結果が出なくとも成功するために力にはなるので無駄と言う事は無い
生きる人の半分以上は努力と言う言葉の本質を見抜けずに生涯を終える
成功しても失敗しても努力は報われる、結果なぞたかが表向きで実感できる唯一の途中経過であることに人は気づかない
努力とは継続能力という隠語のひとつにすぎないことに気付く人間は少ない
そう、結果の実らない努力なんてという言葉は実は存在しない
途中で諦めるか諦めないかだ続ける限りそれは努力である
だがナッツの目標としている事に努力と言う言葉は無慈悲な存在
結果を出さなければあのグスタフとジャムルフィンにどんどん離されてしまうのだ
成果をださなければいけない、絶対に
ナッツは実感していた、ジャムルフィンという先輩はきっと魔天狼になるだろうと
ナッツは確信していた、そんな先輩に背後から迫る勢いでメキメキ強くなっていくであろうグスタフに
俺だけ置いてけぼりを食うわけにはいかないのだ
結果を出さなければいけない、辛いのは必須・・・自身も強くなってきている事は知っている
今以上にもっと高みを目指さないといけない事、彼ら以上に戦いに意識を向けた生活をしないといけない事を
そして自分を生んだ親を知る必要がある事を
『もうあなたのいるシルバーバレットは断トツでゼリフタル一番の冒険者チームよね、そんな焦らなくても』
彼女は少し彼に心配をかけるがその気持ちに気付いたナッツは感謝を感じつつ答えた
『そうなんですよね・・・でも僕は誰かの為に必死になれないといけないと思って』
頭を軽く掻いてナッツは口にした
そんな彼を見てベティーナも口元に笑みを浮かべている
ナッツが寝る様な形でソファーに横になると彼女は彼に話しかけた
『それでも休む時は休まないと本当の目的から道を外すわよ』
『その言葉に感謝するよベティーナ、心技体壊さない程度に無理するよ』
その言葉に彼女は呆れて渇いた笑いが込み上げた
無理しない程度に無理をするよと言う矛盾の言葉によく似ている
昔は怖がりの肥満な子がここまで変わるのかと思うと彼女は自然と彼は一生懸命生きていることを感じた
『まぁいいわ、何かあったら言いなさい?メイドだしそんなたいした事できないけどさ』
『そうする』
久しぶりに学園時代での友人と話したせいか彼女も満足した様子であった
ナッツはベティーナが部屋を出るのを見送ると一人で訓練場へと向かったのだ
鎧はつけずに軽装で
訓練場は別館にある多目的施設である
まぁ殆ど訓練場で良いだろう、建物の作りが闘技場に近いからだ
大きめの扉を開くと訓練場の観客席に出た、少し前に進むとその部屋の全容は伺える
どうやら訓練者はいないらしくナッツのみだ
『流石に時間も夕方ですからね』
観客席の階段を降りて中央の訓練場につくと彼はあぐらをかいて座り込み瞑想を始めたのだ
少しでも魔力感知の熟練度を上げるために彼は自分の体を駆け巡る魔力の波を感じようとしていた
今の彼ではうっすらと体の周りや体内に流れる魔力の波しか感じることが出来ない
見えるか見えないくらいの青っぽい流れだ、熟練度が上げればそれがハッキリと見えてくるとグスタフに聞いたのでナッツは熊を参考に空いた時間で出来ることをしようと決めたのだ
『少しだけしか・・・見えませんね』
ボソッと囁く
体の中に意識を集中すると何かが流れているという事はわかる
だがまだ本流の波が自分の体をどう流れているか見分けれない事に彼は少し悔しくなる
他の訓練もしようとした彼は立ち上がると持ってきた腰の剣を抜いて遠くに見える人の形をした的を見つめた
『距離は20mからいきますか』
ナッツはそう口にすると剣を上に高く投げた、ナッツの頭上を高く舞う剣は回転しながら降下を開始しようとしたのだがその瞬間彼は腕上げて高く舞う剣を指さした
降下を始めようとした剣は紫色の気を惑いながら回転して浮いている、ナッツが指さす方向に軽く移動していた
『どうやら操れるらしいですね』
そう口にしながら遠くの的に視線を向けるとナッツは剣を指さした指をクイっと的に刺して口を開いた
『ハントハーベン』
電撃の様な気流を描いて的に向かって飛んでいく彼の剣は見事に的の中心に刺さったのだがそれ
と同時に剣から紫色の気は消えていく、技の効果が切れたのだろうなと彼は推測した
これはグランドパンサーとの戦いで覚えた千剣技である
当初は振りかぶっていたがどうやら指先で軽く対象を指定するだけで飛んで行ってくれるらしい
そして実はもう一つ彼は技を覚えていた
自分の頭にしか表示されない技を彼は持っている
『ズルク』
その言葉を発すると的に刺さった剣はなんと再び紫色の気で発光を始めてナッツの近くまで戻ってきたのだ、簡単に言うとズルク・・・戻れと言う意味である
正直ナッツは少し格好いい技だなと思いいい気分でいた、実際彼もジャムルフィンの様に特殊な技に憧れていたがそれが自分にも出来るとなるとまだまだ捨てたもんじゃないと思えたし彼らについていく希望が満ち始めたのだ
彼の正面で軽く回転している剣は再びナッツの言葉で的に飛んでいった
『ハンドハーベン』
再び彼の剣が的の中心に深く突き刺さる
ナッツはハンドハーベンとズルクの繰り返し練習をし始めたのだ
どういった訓練かも手探りではあるが特殊技を極めるとなると回数をかけて使うしかないと思ったのだ
技を解くと剣は地面に落ちてしまう気付くとナッツの額には汗が滲み出ていた
集中して技を使ったせいだろうが慣れない技の鍛錬に気負いし過ぎたと言った方が正解である
ここで一つ関係の無い話をしよう
彼はなぜ周りから頭が良いと言われているのか
ジャムルフィンから信用を勝ち取っているか
彼は探求心が人並み以上なのだ
何故?なんで?どうして?
そう思うと調べずにはいられない男である
勉強面ではそれが顕著にでたのだ
直ぐに実行するという素晴らしい性格を持っている
この時ナッツはこの千剣という不思議な特殊技にその性格が現れた
『この技は基本の一つでしょうか』
ふとそう口にすると色々試したくなったのだ
地面に落ちた自分の剣を指差すとその剣はまた浮き上がり彼の目の前で浮遊を始めた、器用に指先を動かしてどうすればどう動くのか試したのだ
右手の指を細かく動かし、回転させたり止めたりと
自分の目の前で回転させる速度をあげた
集中して徐々に回転速度をあげていくが何故そんなことを始めたかというと沢山回転させて相手の攻撃を防いだり弾いたり出来ないだろうかと思ったのだ
『指が吊りそう』
剣の回転が速度を増して風を切る音が聞こえてきた時
彼に変化が起きたのだ、ナッツもその変化に覚えがある
口元に笑みを浮かべた彼は小さく囁いた
『シルト』
右腕を思い切り広げると高速回転していた剣が安定したのだ
肉眼で剣が回転しているとはわからないくらいに速い
綺麗な円を描いたそれは盾そのものに近い
きっと敵の攻撃を防ぐことができて弾くことも可能である、そしてこれに触れると腕が細切れにされそうだなとナッツは少し冷や冷やしてしまう
新しい技にナッツは心の底から喜んだ
だが彼はそこで終わらなかった、もっとあるはずだと予想して探求を続けた
一度剣の回転を止めて剣を腰に納めると右手をかざして集中した
人差し指を立てて気を高めた
『千の雨を降らすなら気で固めた剣を作れる筈、千の剣なんて持てるわけない』
ご自慢の頭脳が彼を開花させる瞬間である
結局技というのは見てから真似しようと思った方が速い、そのおかげで彼が覚えた技があるのだ
それはファルカの助力あってだが
『もし存在するなら出る筈』
集中力を高めながら視線を頭上に向ける
小さく唸り声をあげる彼だが見た事も無い技を脳内で想像するというのは明かりをつけずに迷いの森を歩く行為と同じ事
せめてその技さ見れれば彼なら直ぐに物にするだろう
だが誰も到達していなさそうな職、千剣兵の特殊技を覚えている人を探すよりかは自分で模索した方が遥かに早いと彼は考えた
ジャムルフィンとグスタフ・・・彼らの隣に立つことを許されるであろう力を発見した彼は必至である
ナッツ自身もこんな特殊技無くてもあの2人なら笑って一緒に苦難と共にしてくれるであろうと理解していた、それでも彼は求めた
頼られたいという思いが彼の探求心に火をつけた
的を力強く見つめながら掲げた右人差し指に魔力を集中し始める、まだ薄くでしか見ることが出来ない彼の魔力の流れ・・・それを指に流し込むように想像を強くする
『魔力で作った剣を作れるはずなんだ・・・情報が確かなら』
1時間ずっとそれをやってもその剣が現れることが無かった
落胆したのだろうか?両膝をつくナッツだが微かに右腕には力が入り拳が強く握られている
彼が何故そのように小さく歓喜しているのかというと技も1つ覚えてなおかつステータスにも変化があったのだ
・・・・・・・・・・・
ナッツ・ランドル(男17歳)流剣士【中位】
☆戦術スキル
剣術【5】 剣の熟練度、恩恵により攻撃力と耐久力が中アップ
体術【5】 体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが中アップ
魔術【3】 魔術熟練度、恩恵により魔力量を小アップし・詠唱時間を小短縮
☆補助スキル
食い意地【大】 食事による体力の回復速度が大アップ
安眠 【大】 どんな状態でも寝ることが出来る
痛覚耐性【大】 痛覚を軽減する
逃げ足 【中】 対象から離れる際の速度が中アップ
恐怖耐性【中】 恐怖状態を少し緩和
我慢 【中】 少し耐久力があがる
集中 【中】 術や技の構築時間を少し短縮する
体力 【小】 僅かに疲労しにくくなり自身の体力を小アップ
魔力感知【小】 体内の魔力の流れをある程度感じとることが出来る
☆技スキル(開示ステータスに表示されない部分)
居合・骨砕き・・流し斬り・トリックソード・十字斬り・唐竹割
神速一閃
☆千剣技(開示ステータスに表示されない部分)
ハントハーベン
シルト
☆称号スキル
千剣の加護 剣術の熟練度が上がりやすくなり特殊な技を覚えることが出来る
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ナッツの魔術レベルが3に上昇していたのだ
『これで満足しても大丈夫そうですね』
その通りである、今日と言う余った時間で新技を閃いて戦術レベルを1上げたのだが彼にとってはとても大きな一歩
誰でもその結果に満足してもいいだろう
『ふぅ』
彼は立ちあがると大きく両腕を上げて背伸びをした
誰もいない静かな訓練場で彼の一息が響き渡る、的に向かって軽くお辞儀をするとナッツは自身が泊まっている部屋に行き着替えを持って風呂場へと向かった
まぁ特訓後の汗を流す為であるが脱衣場で彼は先客がいる事に気付いた
木のザルの中には誰かの服が入っているのでナッツは隣のザルを使い服を入れると大浴場の中に入っていった
最初に体の汗を打ち水で流してから大きめの湯船に向かうとふと見覚えのある人物がとても寛いでいる様子であった
その姿を見たナッツは軽く笑いを押し殺す、陽気に鼻歌を歌いながら壁に描かれているムルド大陸の地図を見ているが彼も気配に気づくと鼻歌をやめてナッツに視線を向けた
黄色の長めの髪、普段はナッツの様に鎧を来て冒険者をしている者
彼の二つ名は光の子だったなとナッツは思い出すとそんな彼は口を開いたのだ
『おや・・・珍しい者に会えたもんだ』
彼は首を傾げて微笑んでいるとナッツは答える
『カールさんですね、僕はジャムルフィンさんの後輩の『ナッツ君だろ?知っているさ』』
最後まで言う前に割って入られた、知っている事に多少驚いているナッツ
その様子を察したカールは鼻を高くして口を開いた
『彼の仲間ぐらいみんな知ってるぞ?ナッツ君も無名じゃないんだ・・・中位職だとしても彼らを理解した戦い方が出来るんだ、そうだろう?』
カールが軽く首を傾げ理解を求めてくる
いかに中位職とてジャムルフィン達と共にするメンバー、半端な覚悟じゃついていけないだろうとカールはわかっている
遠回しで今は強くないがそれを埋める何かを持っているのだろう?とナッツに同意の声を求めたのだ
そして何故ここにカールがいたのかと言うと理由は簡単だ、カール自身まだ先があるとジャムルフィンをみて思ったのだ
天位職という高みが俺にもきっとあると信じてスカーレット邸の訓練に日々を費やしていたのだ
ジャムルフィンそしてグスタフ
彼らのせいで触発された者の1人だ、きっとバニアルドも他の大会参加者や彼らの戦いを見た冒険者も夢を高めて強くなろうと動いているだろう、ナッツが尊敬するジャムルフィンに向かってだ
そんな彼にナッツはハッキリと答えた
『僕はよく考えて無理をせずあの2人を上手く活かした戦い方をしているつもりです、僕は彼らの様に強くありません・・・ですが僕がトドメを刺す人間じゃなくてもいいんです、一瞬の隙でも作れればきっとグスタフさんは笑いながらその隙を利用してくれるでしょう・・・一瞬のヘイトを稼げればきっと先輩が活路を開いてくれるでしょう、今はそんな役目でいいのです・・・僕は強くない』
ナッツなりの言葉である
僕は強くない、本当は強くなりたいけど今できることをしなくてはいけない
僕が強くなくても僕は1人じゃない
皆がいる・・・ならばそんな戦いをすればいいと彼は思う
『素晴らしい』
静かにカールは彼に向かって微笑みかけつつもそう言葉を告げた
ナッツは軽く頭を下げた後に湯船に入り彼と対面した
満足げな表情でカールはナッツを見た、彼はナッツが弱いなんて思ってもいなかった
強くないのは武力面での一部、自身を一番理解する事ができているナッツを彼は弱いなんて微塵も思っていなかった
考える素振りを見せるカールはナッツを見つめたまま口を開いた
『あいつの周りは恵まれているな、グスタフもいるし君も・・・そしてスカーレット殿の娘がいる』
正面で腕を組みなおしてカールは続けて話しかけた
『訓練場で頑張っているのは見ていたぞ?気配感知くらい覚えて置け、小でも奇襲を防げる』
『ご助言感謝しますカールさん』
『あの奇妙な技も見ていて面白かったぞ、そのお礼だ』
どうやらカールはナッツの訓練風景を見ていたらしい
ナッツは気配感知が無いので隠れて見ていた彼に気付けなかったのだろう
良いものが見れたお礼と言った感じでカールは彼にアドバイスをしたのである
2人は寛ぎ始めるとナッツから彼の質問をした
『カールさんはここの特訓の成果はどんな感じですか』
その言葉にカールは怪しく笑みを浮かべて答える
『俺に相応しい天位職を見つけた、あと半年もあればきっと』
カールは天位職の目途が立っていた、そのことにナッツは驚くとカールは続けて話した
『ネメシス』
カールがそう口を開くと湯船から上がり入口に歩いていく
ナッツは彼を見届けるとカールは最後に振り返りこう告げた
『来年が楽しみだよ、君達だけじゃないぞ・・・時代に傷跡を残したいと思っている者は』
その言葉を口にして彼は大浴場を出て言った
ナッツは考える、ネメシスとは一体何だろうかと
きっとカールも必死で情報を探して自分に似合う職を見つけたのだろうと感じた
君達だけじゃないという言葉にナッツは心の中で思っていた声を口に出した
『そうですよね・・・』
風呂を終えたナッツは部屋に戻り直ぐに明かりを消して布団に入った
どこよりもフカフカなベットに心地よさを感じるが今日はいつもと違って直ぐ寝付けなかった
考え事をしているからである
今日の訓練で大きく前に進んだのはいいがこの速度を出来るだけ減速させぬよう勧めていかなければいけないと心の中で誓った
布団を深く被る彼は小さく囁いた
『明日はもう少しハンドハーベンを自在に動かせるようにしよう、そして魔力の剣を・・・きっとある筈』
彼は器用に操るようになればそれと並行して他の技も覚えやすくなるだろうと予想する
彼なりに色々な考えを並べてこの千剣の能力を発揮できるか試すことにした