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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
第8章 ナッツ
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1話 ルッツ

ルルカ『妖狐族の剣を終わらせたジャムルフィンはナッツを連れてクズリと言う元闇組織ダグマの用心棒でが収容されているポートレアの監獄棟に足を運ぶのだ!!』

次の日俺とナッツはポートレアの警備棟の受付の向かった

移動では何事もなく魔物の一匹も現れず穏やかなもんである


丁度受付の前で鳥人族のワシズという警備棟では警備長補佐という意外と偉い者と話し込んでいたのだ


『怪しいくらいに大人しいもんだぞ、まぁ暴れられても困るのはこっちだが』


溜息をついて彼はそう告げた

クズリは脱獄しようと思えばできる、この監獄の檻では彼を完璧に閉じ込めることができないらしく彼がいる地下2階の巡回の警備兵は毎晩ビクビクしながら警備しているらしいのだ

檻を破壊しようと考えればいつでもできる、だがしない


それは俺との約束でもある


『そんな凄い人なんですか?』


ナッツが多少驚きながら口を開くとワシズは頷いた


『ナッツ、かなりあいつは強かったよ』


『本当に今の先輩を苦戦させたとなると十天の力を持っているんですよね、なんで大人しいのでしょうか』


彼の質問にはとりあえず俺はあやふやに答えとく事にした


『まぁ男の約束だよ、勝ったから言う事を聞いてくれているんだ』


『なんか釈然としませんねぇ』


ナッツは納得してくれなかった、首を傾げている

当たり前だよな・・・はぁ、俺は嘘が下手だな

俺はナッツを連れて警備棟の隣に隣接している監獄棟に入ることにした

そうやらワシズはついては来ない様だ・・・嫌そうな顔つきである


怖いのだろうなクズリが


そうして石材でできた頑丈な棟に入る、受付所は殺風景な空間だ

後ろの棚には色んな書類が並べられてはいるがリストか何かだろう

監獄に続くドアと職員用・・・いわば警備兵の詰め所だろう部屋のドアがある


『面会ですか、クズリでよろしいでしょうか』


疲れ切った顔で受付に立っていた警備兵が口にしていた

あいつが収容されてから何も問題は起きてはいないがあふれ出る彼の威圧に近くを巡回する警備兵の精神をことごとく削るのだ


それほどまでに奴は強い

この受付の者も先ほどまで彼が収容されていた極悪だけが行く地下2階にいたのだろう

地下1階は普通の犯罪者だが特に地下2階は選りすぐりの名のある犯罪者が閉じ込められている

そんな地下2階にいる彼の威圧に疲労したのだろうな


『ああ・・クズリに面会に来た』


俺がそう告げると彼はほっと胸を撫でおろして答える


『出来ればもう少し威圧を抑えるように言っていただければ私らの職務も円滑に進められるのですが』


『わかった、俺から言おう』


『助かります、ではあちらのドアからどうぞ・・・付き人は無しでよろしいですね?』


彼は受付の横にあるドアに視線を移しながらそう答えた

面会の場合は付き人といって警備兵が数人ついてきてくれるが行くのが嫌なのだ

そこは彼らの気持ちを優先しよう


『大丈夫だ・・・いくぞナッツ』


ナッツを呼ぶと彼は真剣な表情で小さく返事をした


『はい』


軽い会話を受付の警備兵としたのだがそのやり取りに何かを感じたらしい

ドアを開けて地下2階まで降りていくが螺旋階段の様にぐるぐると下に降りていく

周りは石の壁であり松明での明かりのみ


俺をついてくるナッツを見る為俺は軽く後ろを振り向いた

考え込んでいるが俺が見ていることに気付くと急に口を開いた


『異常過ぎますよ、警備の人がついていくことを嫌がるなんて・・・しかもここからでも少しチクチクした様な気配を感じます、僕は気配感知が無いのにですよ?でも不思議な感覚も同時に感じます』


不思議な感覚とは何のことだと一瞬考えるがそれはよすことにした

俺は階段を降りつつ答えることにした


『気を張っていないと直ぐバテるぞ?彼から唄について聞くんだ』


『わかりました』


そうして地下2階の入り口である鉄扉を開けた

50m以上の長い真っすぐな通路、その両脇に牢屋が奥まで続いているのだ

檻の中いる最高級の犯罪者と言われている奴らは弱々しくぐったりしているが理由は何となく・・・いや確実に理解している

俺はあいつの気は平気だが他の者にはコタえるだろう

恐ろしいくらいに大人しい囚人たちを見ながら俺とナッツは通路を歩く

一番奥まで近づくと俺は振り返りナッツに口を開いた


『ここで暫く待っていてくれ、安全を確認してから呼ぶ』


『なるほど・・・確かに強い気ですが・・・まぁ僕は待ってますね』


ナッツは少し何かを言いかけたのだが途中でそれを止めた

少し汗をかいている様だがそれでも何故かまだ平気そうな顔をしているのだ、他の囚人や警備兵がこの距離で怯えるというのに

俺はナッツを置いてそのまま地下2階の通路の一番奥まで歩いた


『よぉ・・・今日はどうした?』


俺の姿を見る前にクズリが口を開いた、丁度彼が喋り終わる時に彼の牢屋についた

彼の左腕は俺が吹き飛ばしたが残る右腕と両足には鎖が繋がれており牢屋内の側面の壁に続いていた

自由な行動すらとれないくらいの拘束振りだが彼には意味は無いだろう


この前興奮して簡単に破壊したしな

クズリは俯いているが気配で俺だとわかったんだな

檻の近くまで歩み寄ると俺は口を開いた


『まずこの威圧を止めろ、そうすればお前の十数年の苦労から解放してくれるかもしれない者を連れてくる』


一瞬クズリの体がピクリと動いた

ゆっくりと彼は顔を持ち上げた、元気そうな顔だ

グスタフの様に猛獣の様な笑みを軽くすると徐々にこの場の空気が軽くなっていることに気付いた

一応俺は平気なのだが肩が少し重いくらいは感じていたのだ

それが無くなったということは威圧を止めたんだろうがこれは勝手にあふれ出る威圧を押し込めただけに過ぎない


『助かる、もう威圧すんのはやめろ』


『仕方ない、抑えておくさ・・・まぁ1人目から出会えるとは思っていねぇが気になるから早く連れて来てくれ』


何だか俺が彼の生き別れの息子探しで沢山連れてくる様な感じに言っている

俺はナッツしか知らないぞ?まぁ違っても探してやるけどな


『ナッツ!こい』


俺は通路の中央付近にいるナッツに大声で呼んだ

あいつが歩いてくる間クズリは口を開いた


『ナッツと言う名か・・・残念だが名前からして違う』


そう言うと彼は深い溜息をした、とても残念そうな顔だ

ナッツじゃないのか・・・・俺は大きく落胆してしまう

俺はクズリの話からして彼しかいないと思っていた、彼でいてほしいと願っていた

十数年前にジェミルの孤児院にいきなり現れた栗毛の子供はクズリが言っていた連絡が取れなくなり積み荷の全てが消えた事件と同一時期だったのにだ、生き残りかもしれないという可能性に期待をしていたの

だが肝心な名前が違うという事は致命的だ


『・・・すまないクズリ、俺は俺の後輩だとばかり』


悔しい気持ちになりつつも彼にそう話すがクズリは鼻で笑い答えた


『まぁ慌てても意味はねぇが・・・お前の話を聞いてもしやと思ったんだが、まぁ仕方がない』


『また探すさ、ちなみにお前の息子の名は何と言うのか』


クズリは口元に笑みを浮かべて自慢げに語り始めた


『ふふふ、世界一格好いい名前だぞ?なんせ俺がつけたんだ・・・・とある部族の言葉で名声と戦士の単語を組み合わせた意味を持った名前だぞ』


誇らしげに言う彼は馬鹿親の様な雰囲気を出していた

面倒なタイプだ・・お前は俺の父とどことなく似ていることに気付いて俺は口をへの字にして聞いていた


『俺の血を引く子だし当然強い戦士になるに違いないと思ってなぁ、名前・・・は・・』


クズリは最後まで言わずに目を見開いて我を忘れた







その時丁度ナッツが檻の近くに辿り着いた


『先輩、この人ですね、初めてお見受けしましたが本当にあの大将軍クズリだとは・・・凶悪そうな風貌はグスタフさんと似てますが雰囲気全然おっかない感じがしませんよ?』



前にこいつは最初同姓同名なんだなと思っていたらしいが本物のクズリと聞いてかなり驚いていたな

そして俺以外の人間が怖がって近づかない彼をナッツは怖くないと言った

彼は目を細めて檻の向こうにいるクズリを見つめていたのだが無意識に彼は少しずつ檻に近付いてクズリの顔を真剣に見ていた

クズリは目を見開いて無言でナッツを見ながら口を小刻みにパクパクさせているがどうしたのだろうか

そんな彼の様子を無視してナッツが自然と彼に声をかけた


『なんとかくどこかで会ったことがある様な気がしますが』


しゃがみ込んでまじまじと檻の向こうのクズリを見る

その瞬間、ナッツには聞こえないだろうが俺の地獄耳だけが聞こえるクズリの声が俺の耳に入って来た


『・・・ルッツ』


俺は決してその言葉を聞き逃さなかった

呆けた様な表情でその言葉を囁いたクズリは俯いてしまうとナッツが彼に話しかけた


『すいませんが唄について聞かせてもらってもいいでしょうか?』


『いいだろう』


意外なほどクズリは即答したのだ

俺は場の雰囲気の変わりように大変驚いていた、違うと彼は行ったはずなのにナッツの顔をみるやいなや急に血相を変えて動揺を見せたのである

何が起きたか理解が追い付かないがなぜルッツと彼は口にしたのか俺にはわからない

ナッツもナッツで何故クズリを怖がらないのかわからない・・・ここに運ばれる際に囚人が新人が来たと顔を拝もうとして彼を見た瞬間怯えたくらいだ


極悪人が収容される地下2階の囚人がだ、どこかで見たことがある?ナッツの言葉にも疑問が生まれる

俺の脳もパニックを起こしそうになるが時間は進み彼らは話し始め出した


『唄はどこで知ったんでしょうか?私も理由はわかりませんがうろ覚えで少しだけ思えているのですが』


下を向いたままクズリは答えた


『俺の住んでいたベルテット帝国の森に住んでいたとある部族から聞いた唄だ、俺も気づいていたがあれは太古の職の唄だ・・・唄の内容を聞くとどうやら弱き者を守護する戦士の唄みたいだな、ところでお前は本当に昔の記憶がないのか?』


未だに下を向いてクズリが口を開いている

顔を上げない理由は何だろうか、静か過ぎる地下2階で2人の会話は続く

ナッツは立ち上がると腕を組んで彼に答えたのだ


『僕もわかりません、記憶は孤児院にいた頃からしかないんです』


『そうか・・』


クズリの声のトーンが非常に低い

ナッツが一度俺に顔を向けると口元に笑みを浮かべて小さく頷いて再びクズリに視線を直す

多分だが話し合いは任せてくださいと言う合図だと俺は感じたので静かに見守ることにした


『千剣兵という職について何か知っていますか?』


『・・・歩けば剣の雨が降ると言われる英雄職の1つだろう、一応帝国の書物の保管庫に軽く記述は残っていたが上位職と天位職の2つの道がある』


『二つ・・・』


見守っている俺の少し驚く

千剣兵の職の道は2つか・・俺は4つという面倒な道だが職によって違うんだろうなと感じた

ということは職の実名がなんなのか・・・それを考えていたらやはりナッツがそれについて質問したのだ


『道は2つですか、千剣兵が実名ですか』


『違う』


クズリが直ぐに否定した、殆ど最後まで言う前に否定した感じでだ

ナッツは簡単に情報を吐き出す彼に少しずつ疑問を持ち始めていた

聞かなくてもそう感じているだろうと彼の顔を見ればわかる


『千剣兵から千剣騎士になる、俺が調べた情報は安眠と食い意地スキル所持で中位職の時に唄を聞けば称号に加護が付く・・・それだけだ』


『そうなんですね・・・』


『お前は千剣の加護を持っているのか?』


『持っています』


その言葉を聞いてクズリは体を震わせた

何か小さく何かを言っているがまだ言葉になっていない様である

不気味なくらいにお利巧過ぎるのだが俺はとある事を思いだしたのだ


そういえばジェミニの孤児院には名無しの子が運ばれるケースが多々あるらしい

もしそうならばナッツという名は孤児院で決めた事になるのだが


『立派になったか』


本当に俺の耳でもギリギリ聞き逃しそうな声でクズリは言ったのだ

その言葉で俺は確信した



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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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