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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
第7章 轟く名の者達
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27話 千剣兵の芽

※集中スキルなどの魔術レベルの説明文にある『軽減する』を『短縮する』に変更します

たまにナッツの家がある街のジェミニをジャミニと間違いますがそっとしといてください・・・

ナッツ『三大英雄職?』


ナッツが不思議そうにしながら口を開く

俺もその言葉に対して興味を惹かれてしまう

今迄でそんな類は五大天位職というネーミングしか俺たちは知らない

その他に三大英雄職という職が存在しているらしい


ベラトミが静かに座ると一息ついて再び口を開いた


『人族に平和をもたらす為にその昔魔族との戦争で活躍した職達だな、その戦いの詳細は詳しくは知らないが東の国にいけば分かるだろう・・・』


東の国か、レバルドルかディロアの事だろうな

あそこは昔から魔族との紛争は絶えないと聞くがそれは魔族領土と隣接しているからである

南大陸は殆ど魔族領土であり年々人族の領土が侵食されていると聞く

俺もそれに関して詳しい事はよく知らない


『どんな能力かわかるか?』


俺の言葉でベラトミは一度俺に視線を向けてからテーブルに乗っているグラスを見つめて答えた


『剣を自在に操る戦士、彼が歩くと剣の雨が降る・・・悪いがこのくらいしか知らない』


彼女は顔を上げると両手を小さく横に開いて首を傾げるが可愛い

おちゃめな女性の様に見えるが少し男勝オトコマサりである

それでも情報としてはゼロじゃない、それだけ聞ければ十分だ


『ありがとうベラトミ、ガウガロで新しい生活を楽しめよ?』


そう言うと彼女はニコリと笑ってお礼を言ったのだ


『本当にすまない、そして本当にありがとう』


お礼に俺とナッツは移動で乗っていた黒馬を貰ったのだが世話に苦労しそうだ

これは家で世話するしかなさそうだ、ナッツも家にも流石に連れていけないとの事で彼の分の馬も俺の家で管理してほしいと懇願していたがナラ村にも馬の飼育施設があるのでそこに預けておくことに決定した


『馬ぁ、ふふふ・・・君の名前はエリザベスですよ』


彼と黒馬に乗り妖狐族の集落を抜けてナラ村に戻る帰り道でそう呟いていた

控えめに言って少し気持ちわるかったが嬉しい褒美なんだろう

内緒だが俺の馬もお前の馬もオスだ


ナラ村までもう少しと言うところで俺たちは魔物と出くわして取り合えず今日の運動もそんなしていないので倒すことにした、草原のど真ん中にグランドパンサーが2頭


馬を降りたナッツは腰から剣を抜いて魔物に歩み寄る


『グルルル』


『グルルルァ!』


どっちも戦う気満々だ

俺は後ろで見守ることにした


『よっ!』


地面を踏みしめてナッツが魔物に襲い掛かるとグランドパンサーは二手に分かれた

分かれたと見るやナッツは右側に軽く飛んだグランドパンサーに狙いを定める


『神速一閃』


一気に加速して魔物の目の前まで行くと直ぐ剣を横に振って首を斬り落とした

ナッツは即座に振り向いて背後に迫っていた残り一頭のグランドパンサが振り落とす爪を剣で流そうとするがあまりの腕力に剣を弾かれて遠くに飛んでしまったのだ


迂闊ではない

彼はまだ中位職であり腕力はある方じゃない

その為受け流し戦法で魔物を倒さないといけないのだが今回魔物の攻撃を受け流すタイミングがずれてしまったのである

手放した剣をナッツは視線で追うがその隙にグランドパンサーが口を開けて彼に噛みつこうとしていた

不味い、手を伸ばしても届かないぞ


『ナッツ!』


急を要すると思い俺は銀閃眼での攻撃をしようとしたのだがふと不思議な光景を見てしまった

ナッツが手放した剣が軽くだが紫色に発光し始めた、その変化に俺も目を奪われてしまった


助けないといけないのにだ

ナッツはその発光した自分の剣に手を伸ばすと彼は囁いた


『ハントハーベン』


弾かれた反動で後ろに倒れそうになりながらも彼は手を伸ばしても届かない後方の剣に手を伸ばし、そのまま魔物に投げる様に振りかぶった

その瞬間、紫色の気を纏って魔物に飛んでいった彼の剣が大口を開けたグランドパンサーの口に深く刺さる

見た事も無い彼の技に俺は口を開けて驚いてしまう


『ガボボァ・・グガ』


グランドパンサーは痙攣し始めてヨタヨタ歩くとバタンと横に倒れて絶命した

尻もちをついてしまったナッツは息絶えた魔物を見てから俺の方を見た

あいつもかなり驚いているが俺もだ


『ナッツ・・・今のは何だ?』


ナッツは自分の両手を開いて交互に見ている

いつのまにかあの薄い紫色の発光もおさまっている

普通に考えると新技を覚えたのだろうがなんだが魔力を使ったような剣術とは言いにくい感じがした

あの紫はなんだろうか

技なら闘気だ、でも違う

術なら魔力だ、それも違う


ナッツは立ち上がり息絶えたグランドパンサーの口から剣を抜くとこちらを向いて口を開いた


『技を覚えたらしいのですが特殊技の様です』


そう言うと剣についた血を振って落とし腰におさめ、馬に乗った

ナッツはまだ気難しそうな面持ちでいる

俺は馬を歩かせてナッツの近くに移動すると彼は再び言ったのだ


『千剣の加護の詳細からすれば多分その加護の特殊技なんでしょうね』


今彼には千剣の加護と言う称号スキルがある

それにはこういった説明が乗っているのだ


千剣の加護 剣術の熟練度が上がりやすくなり特殊な技を覚えることが出来る


それをふまえて考えると答えは一つしかない


『多分正解だろうがその千剣の称号はなんでついたんだ?』


『それがわからないのもモヤモヤですね、ですけどずっと考えていた推測があるんです』


『推測?』


ナッツに向かって首を傾げると彼は腕を組んで答えた


『千の勇姿が見守るぞ、決意を胸に希望をその手にいざ進め・・・降る雨は敵を打ち倒し・・・千の剣にて弱者に光を幸福を、我らが守る人々に安眠と食事と平和を与えたまえ・・・人々の心に我はいる、体全てを武器と化せ、心も全て武器と化せ・・・・愛ある体に栄光を、全てを数えて千とする我が剣帝千剣騎士』


唐突にあの歌を口にしたナッツ

それはあの千剣兵という天位職の唄、彼はその中にヒントがあるのだと言う


『無理やりな推測ですが唄の中に安眠と食事を与えたまえってありますが僕の保有する安眠と食い意地スキルの事なんじゃないですかね』


『・・・あまり言いたくはないが愛のある体に栄光をという内容も憶測に入れているだろ』


俺がそう口にすると彼は悲しい顔をした

言わなかった方が良かったと俺は心の中で思ったのだがその不安も無駄に終わる

ナッツは少し口元に笑みを浮かべると俺に言い放った


『多分僕は本当の親に大事にされていたんだろうと思います、でも何かに巻き込まれて離れ離れになってしまったんじゃないかと・・・記憶さえあればいいのですが』


悔しそうな顔をしていた

彼はそのまま会話を続ける


『そうじゃないと安眠スキルも取得できないらしいですが食い意地も幼少期にしか取れないスキルだって知ってました』


安眠スキルの取得方法は妖狐族の娘であるジーンに聞いたが食い意地は最初から幼少期までに取らないといけないスキルだと知っていたらしい

そして食い意地スキルもそう簡単に取れるもんじゃないらしい。これも1万人に1人の確率で取れるスキルだと彼は調べがついていたのだ

親の愛を受けないと取得できない2つのスキルにナッツは決して捨てられたんじゃないという自信を持った

俺はこの時どうしてもこいつの親があいつであってほしいと願った

だが今俺が言うべきじゃない、そう感じる



それはクズリの本心じゃないと悟ったからだ

彼は実の息子が見つかっても俺が父親だと告げない様な事を戦いの場で口にしたんだ


知らねぇよ馬鹿、生きている事実だけ知りたいんだ・・・キツイ生活をしているのか、もしかしたらいい人に買われて裕福な生活をしているのか、それだけでも俺は知る必要はある



あいつはそう言っていた、素性をばらしたくない様な言い草だった

ただ知りたい、それだけの為に最高の称号が最低の称号に堕ちてしまった男がそう言っていたのだ



まだ確定ではない関係に俺は静かにこの問題の行く末を願った

愛を受けて育っていたナッツは千剣の資格を得ていたのかもしれない

詳しい条件は不明だが今はそう考えておくとしよう


『ナッツ・・・実の親に会いたいか?』


『会いたいですね、真実を知る権利があります・・・僕はもう大人です』


真剣な表情で俺を見つめてそう答えた

ナラ村にはその後夕刻過ぎには戻った

俺はナッツと父さんや母さんに旅の内容を聞かせてから夜食を取りルッカとナッツと共にグスタフを呼んだ

そういえばナッツは今日はお泊まりである

明日の昼前に馬車で帰るがそれには俺も一緒に行くことになっている

予定があるんでな


ナラ村での日常であるルッカの家の隣の空き地というか広場で特訓をしていたのだ

そういえばイビルハイドになったグスタフの体術は本当に怖い

掴まれると流石の俺でも本気でいかないと離してくれないので内心ビクビクしながら彼と体術の特訓をしたのだ


それを見学していたナッツは笑いながら俺をぶん回すグスタフを見て怯えていたのは覚えている


グスタフはナッツと魔力の流れを感じ取る為に瞑想をしている

俺はその間ルッカと座ってその様子を見ていた


ナッツが魔力を感じ取ろうと体をビクンビクンさせているが面白い


『それにしても寝る時間削ってまぁあんな距離最速で言ったわね』


ルッカが苦笑いしながらそう言うがその通りである

ルーカストアの南の森の奥なんだからガウガロまで本当に遠い

何度眠りそうになった事かと考えると移動とはこんなにも疲れるんだなと改めて実感する


『戦って疲れた方がマシだ』


パタンと寝そべって俺は答える

彼女は微笑みながら俺の頭を撫でてくれた


『お疲れ様』


その言葉だけで俺はやり切った感じになる

まぁ一番労いの言葉を貰いたい相手から貰うのだし

それと話は変わるが何故ナッツが瞑想する事になったかという事だ

ナッツは魔術レベル2もあるのに魔力感知がついていない

普通に考えると技や術の失敗に繋がりやすくなるから無理やり覚えさせようとしている


稀に魔力感知が乏しいと不発になるといった例がそれなりにあるのだ

戦いの場でそれは生死にかかわるし魔術レベルが上げにくいんだ

これも稀にあるが魔力感知無しに魔力を具現化しようとすると魔術レベルが上がる事もある

彼はその類で上がったらしいがそれはスカーレットさんの館での特訓でグスタフの真似をしてみようとしてこうなったんだと聞いている


こいつも意外とでたらめな奴だったか・・・


『ありましたーー!』


ナッツが目を見開いて叫ぶとグスタフも目を開く


『ナッツ・・・ステータス見てみな?』


グスタフが彼の肩を軽く叩くとナッツは自信のステータスを確認した

その後ウキウキしながら俺達にステータスを見せたのだが・・・





・・・・・・・・・・・・・


ナッツ・ランドル(男17歳)流剣士【中位】


☆戦術スキル

剣術【5】 剣の熟練度、恩恵により攻撃力と耐久力が中アップ

体術【5】 体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが中アップ

魔術【2】 魔術熟練度、恩恵により魔力量を小アップし・詠唱時間を小短縮


☆補助スキル

食い意地【大】 食事による体力の回復速度が大アップ

安眠  【大】 どんな状態でも寝ることが出来る

痛覚耐性【大】 痛覚を軽減する

逃げ足 【中】 対象から離れる際の速度が中アップ

恐怖耐性【中】 恐怖状態を少し緩和

我慢  【中】 少し耐久力があがる

集中  【中】 術や技の構築時間を少し短縮する

体力  【小】 自身の体力を小アップ

魔力感知【小】 体内の魔力の流れをある程度感じとることが出来る


☆技スキル(開示ステータスに表示されない部分)

居合・骨砕き・・流し斬り・トリックソード・十字斬り・唐竹割

神速一閃


☆千剣技(開示ステータスに表示されない部分)

ハントハーベン


☆称号スキル


千剣の加護 剣術の熟練度が上がりやすくなり特殊な技を覚えることが出来る



・・・・・・・・・・


『技は見えてないかもしれませんが千剣技センケンギってのが増えています』


『なんだぁ?』


『なぁにそれ?』


グスタフとルッカが反応するとナッツは軽くグランドパンサーと戦った時の事から説明していた

説明し終えるとルッカがニコニコしながら彼に口を開いた


『ナッツ君やったじゃん!英雄職なんでしょ!死ぬ気で頑張って』


死ぬ気と言う言葉に少々ナッツは複雑な表情を見せるがグスタフはそうはいかない

不気味な笑顔を見せてナッツの首根っこを捕まえて悪魔の様に吐き捨てた


『今すぐなれ、特訓だ』



『いやぁ!』


ナッツはその後熊と剣術の稽古をして体力を使い果たし俺がおぶって家まで運んだのである

だが残念なことに彼の剣術は上がらなかった、しかし上位職まで剣術があと1

その日も確実に近いと確信していた


俺の部屋で呻き声を上げて寝ようと頑張る彼を他所に俺は笑いを堪えている

体中筋肉が悲鳴をあげているのだろうし明日は確実に筋肉痛だな

明かりを消した部屋で俺は話しかけた


『楽しかったか?』


夜でも目が利く俺は凄い形相で俺を見つめるナッツを捉えた

何言ってるんですか?って顔だな


『地獄ですよ・・・グスタフさん一気に強くなり過ぎじゃないですか?』


『今迄中位職であいつのポテンシャルを発揮できてなかったんだろうな、それが今開花したんだよ・・・俺でも相手辛いもん』


『先輩が辛いなら僕死んでますよ』


『加減してるさあいつは』


めっちゃ深い溜息を吐いている

その様子に軽く笑うと再びナッツが言う


『そういえば明日じゃポートレアで囚人に会うんですよね?確かこの唄を知っている人と聞いてますが』


面白くて忘れていた

慌てて俺はそれに対して答えた


『ああ!ナッツもいるんだし丁度その唄を知っている者だったんだ!何か情報があるかもしれないだろ?』


『なるほど・・僕も興味あります』


『頼む』


そうして俺たちは大人しく眠ることにした

意識が遠のくまで俺は色々考えた

これまで死ぬ思いをしながら動いた旅であった、俺の名もなんか広まりタツタカもいい具合に仕上がってくれている様だ、メルビュニアは彼がいれば敵にはならないだろう

黒い仮面の悪魔タツタカか・・・まぁ似合うんじゃないか


そうしてグスタフがイビルハイドになった事も村ではかなり有名であるし武人祭で戦ったやつらの耳に入るのも時間の問題だ

確実に彼も強さのレベルを乗り越えた世界に足を踏み入れてきている

黙ってみているほど甘くはないだろうな、カールもバニアルドも・・


一先ず彼と共にポートレアの位置する警備棟の隣に隣接している監獄棟

一度こいつをクズリに合わせてみよう、



それで何かがわかる

俺はそのまま眠りについた


第7章 轟く名の者達 完



次回 第8章 ナッツ







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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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