22話 妖狐族編 交流
ルルカ『闇組織ダグマの本当の本拠点で捕らわれていた妖狐族の女の子ジーンであるがその子をルーカストア南奥深くに隠れて住んでいる集落のもとに届けたのだ!』
『お父さーん!お母さーん!』
必死に叫んで村の中に走っていくジーンを見て俺達は顔を見合わせて微笑んだ
『ここで待とうかナッツ』
『そうですね』
まぁ彼女が何とか説明してくれるだろう、それにしても集落の入り口に見張りがいないのは少々気にかかる
暫くしてジーンが警備兵のような雰囲気を漂わせている妖狐族の者や親だろうと見受けられる人物をつれて歩いてきた
彼らは俺とナッツを見ると警戒心を表に出して様子を伺うがそれに気付いたジーンが笑顔で説明してくれた
『この人たちが連れて来てくれたの!危ない人じゃないよ』
父親の様な人物にそう言うと彼は腕を組んで俺達を見定めだした
一応彼らとは一定の距離を置いている、俺達から行動を起こすよりもあちらの出方を見たほうが良いだろう
そしてまずジーンの母親が動き出した、確実に母親だろう・・・そんな言葉を口にした
『娘を助けていただき本当にありがとうございます!もう戻ってこないかと』
深く頭を下げて俺達に感謝の言葉を送ってくれた
奥の方から他の警備兵がチラホラ集まってくるのが見えるがジーンの母親に話しかけることにした
『いいんですよ、俺達も少し妖狐族にも用事があったのですから』
『用事?』
俺の言葉でジーンの父親が首を傾げて反応していたがどうやら警戒を解いてくれたらしい
依然警備兵は少し警戒をしているようだが仕方がない、それが仕事だ
のしても森の奥にこんな集落があるのか・・・人間がそうそう来たいと思わない地区だな
『そうです、族長と話をしたくてきたのですが』
とりあえず詳しく彼らに話した
人族の闇組織を壊滅しに行った際にジーンが捕らわれていたのでこちらで保護して彼女をここまで連れてきた事をだ
それでガウガロが妖狐族と会いたがっている事も伝えると警備兵も驚いて口を開けたのだ
当然ジーンの親も驚いていた
『お父さん!お母さん!この人たちがガウガロの統一を手伝ったんだよ!今は大昔の話で聞いたような国になってるんだよ!』
まぁジーンには一通り話したし彼女の押しが必要だろう
彼女は父親の腕を掴み、揺らしながらそう口を開いたのだ
警備兵もお互いの顔を見合わせて情報の整理がつかないような顔をしている
無理やりガウガロに住んでもらう!なんてそんな事は言えないので飽く迄もうガウガロは昔の様な国にもなったし現在の獣王は妖狐族の集落も元通りにしていつでも帰ってくれるようにしている事を伝えるだけだ、無理やりは逆に不味い
『信じられん、あそこは今まで隣国と一触即発状態だったじゃないか』
ジーンの父親が俺に質問してくるがそれは形だけで実際戦争なんてする気も無かったし国内の統一のために獣王が動いていたことを告げると深く考え始めた
『今は次の獣王が継いでますが普通に全種族仲良く国の復興や隣国との付き合い方に努力してますよ』
『それは本当の本当なのか?』
まだ信じられないらしい
俺の横でナッツが少し笑いを押し殺している
まぁ5千年くらい続いた問題だったのが自分たちの代で解消されたとなると疑心暗鬼になるのも無理はない
『使者をガウガロに送ればすぐに分かりますよ』
『・・・族長に聞いてみよう』
ジーンの父がそういうと俺達に頭を下げて再び口を開いた
『我が娘が戻ってきた、感謝する人族の者よ』
人助けも悪くはない人じゃないけどね
ナッツはそんなやり取りをしている間辺りを見回していた
まぁこいつの良い所だ、色々と俺が話している間周りを見てくれている
そうしていると集落の奥から警備兵と共に1人の女性が走ってきた
やはり妖狐族は狐耳に尻尾が人間についているだけの種族なのだな
あれは族長のベトラミという者だろうか、綺麗である
その女性その場の者達全員視線をその者に移した
俺達の近くまで来ると一先ずジーンたちを見てから俺を凝視し始めた
あまり良い印象はなさそうだが果たしてどうなんだろうか
『お前が村の者を助けた人族の者か?』
最初の言葉としては普通である
『ああ、そうだが』
『私はこの妖狐族の族長をしているベラトミと言う者だ』
やはり彼女が族長のようだ、モテそうな顔つきにいい体つきである
勿論下心は無いぞ?あるのはルッカにだけだ
俺も自己紹介したほうが良いな、ナッツも俺を見て流れに乗る様に頷く
『俺は人族のジャムルフィンだ、隣にいるのは仲間のナッツだ』
『どうも』
そうした自己紹介をするとベラトミはジーン達に声をかけた
『すまないが少し話をする、戻っていてくれないか』
『わかりましたベラトミ様』
ジーンが答えると親と共に村の中に消えていく
大事な話とはどんな内容だろか、ガウガロに関してならいいのだが
ナッツも首を傾げているがそのまま2人でベラトミに視線を移す
警備兵が10人くらいに増えている、まだそれなりに警戒されているらしい
気難しい感じの面持ちでベラトミが口を開いた
『私の名はベラトミと言うここの族長だ、人族がこの村を知ってしまうのは不味いのだが』
なんだか不都合があるらしい
ナッツが俺に顔を向けて話しかけてきた
『彼らにとって隠れ家的な場所ですから人間に知られるのは嫌なんでしょうね』
『そうだ』
ナッツの言葉にベラトミは直ぐにその意を言葉にした
これ以外方法は無かったと思う、ジーンを森の中にぶん投げて帰るのも酷だ
実際森には魔物の気配もそれなりにあったのだからそんな選択肢は無かった
ベラトミは両手を腰につけて困った様子を見せている
『なら魔物がいる森にぶん投げて帰った方がよかったか?』
俺も少々嫌味たらしく言ったかもしれないが彼らもそれは望まない筈
警備兵も困った顔をしていると彼女が溜息をついたのちに言った
『悪気はないんだ、すまない』
『いや大丈夫だ、こちらも嫌味っぽかった・・・すまない』
こちらもちゃんと謝ることにしよう
そうするとベラトミの口元が少し微笑んだ様な気がした
彼女が後ろを振り向いて集落を見てから再び俺達に視線を送りながら口を開いた
『異例だが一先ず集落に招待しよう、客人用の部屋もある』
ようやく少しは受け入れてくれた様だ
ベラトミの後に続いて俺たちは歩くのだが警備兵に囲まれて少し待遇がどんな状態なのかが気になるがそこはあまり気にしない様にしよう
警備兵の視線がナッツは気になるようだがそのまま集落の中を歩いた
見た目はガウガロの狼人族の集落と変わらない作りであるが木の上に家を建てる様な大きい木が無いため全て地面に家がある、気になるのは川が極端に小さいくらいか
『本来人族にここを知られたくはないのだ』
まぁそっちの事情は薄々わかる
表に出したくはないのだろうな
歩きながらベラトミがそう口にするとナッツが彼女に質問をしたのだ
『失礼を承知で話しますが住みにくく無いですか?』
『まぁそうだろうな』
本人もそう感じてはいるらしいな
集落の中を歩くのだから勿論村人ともすれ違う
俺達は人族なのだからそりゃあ口を開けて驚いている
話はナッツに任せようか
俺は二人の会話を聞くことにした
『この森の限界でしょうね、立地が良い場所はあると思いますが見つからない事を前提に探した様な気がします』
『そうだ、今まで先祖は遊牧民の様に暮らしてきたらしいが場所を固めようとしたらこうなってしまった』
移動した生活が疲れるから止めたのだろうがそうして見つけたここが今の妖狐族の集落である
そうして俺たちは集落の会議所の様な場所に案内された
中の作りは狼人族のガーランドと話し合った空間に似ているし奥に更に部屋がある、なんの目的の部屋だろうか・・・ドアなのでわからない
椅子じゃなく座布団とは風流だなと思いながらも丸をかいて皆座布団に座った
俺達の他にベラトミは勿論だが一際強そうな警備兵や老人の様な妖狐族の者がいる
話し合いするにはもってこいの場所だがそんな真剣な顔でするものかと皆の様子を見てそう思ったのだ
村の者が戻り一安心、とはいった様子ではない
俺の隣にいるナッツが首を傾げて俺の耳元で口を開いた
『面倒な雰囲気ですよこれ』
『どうしてだ?』
『集落を見られた事根に持ちそうなタイプの種族です』
今迄こんな辺境の地まで人は来ない、だが今回俺達が来たんだ
数千年も隠れながら住んでたのならばそれなりに人に出会ってはいるだろうがその時の対処はどうしたのだろうか
『先輩、村から出るまで警戒しといてください・・・バレない程度に』
『そうか』
ヒソヒソ声で彼と話すが嫌な予感がしたのだろうか
ナッツの考えに俺は賛同することにして一先ず様子を伺おうと辺りを見回した
良い日だと言えない様な空気である、何故そんなにも重くなる必要があるのだろうか
そう思っていたらベラトミから声がかかる
『今回仲間を救出してくれたことに関しては嬉しく思う、だがだ』
座布団に正座をして俺達2人に気難しそうな面持ちでそう告げると続けて言った
『村をバレたくはないんだよ』
悪い方向に行きそうだと俺も薄々感じた
一応みんなかかってきても苦戦はしないだろうけど
『ガウガロにいけばいいじゃないですか』
ふとナッツがそう彼女に軽く言い放つ
彼の言葉にベラトミや他の妖狐族も目を細めて不思議そうな顔をした
こいつらはどこまで外の情報を持っているのだろうか、まるで今迄のガウガロに似ていると一瞬感じた
閉鎖的過ぎて外の状況を把握していないようなそんな感じである
『そうはいってもあそこは今や死んだ国ぞ』
警備兵の男がそう口にするがそれをナッツが即否定した
『いや、情報来てないんですか?もうガウガロは大昔の状態に戻って全種族手を取り合ってますから平和ですよ・・・あとはあなた方種族の場所だけ空席なだけであって現在の獣王もあなた方がどの時代でも戻ってこれるように領地を昔のまま残してるんですけど・・・』
『なに?』
皆非常に驚いていたが口を開いてベラトミが一番驚いているのが見てわかった
彼女はナッツの顔を覗き込んで何かを考えている
周りの者もなにやらヒソヒソ聞こえるが信じられない様子の言葉である
簡単に言うと半信半疑
『ナッツ、だれかガウガロに使者でも送らせればいいんじゃないか?』
俺はハッキリと皆に聞こえるように話した
『それが一番ですね、ベラトミさんは誰か使者に差し向けれる人材をお持ちですか?』
ナッツの言葉でベラトミが正座したまま腕を組んだ、下を向き何かを考えている
その姿に他の妖狐族の人達も彼女を見守るが少しして溜息をついてからベラトミは口を開いた
『そうだな、使者を送るか・・・イゴ!マゴ!』
『はっ!』
『なんでしょうか?』
壁際にいた他より屈強そうな警備兵が一歩前に出た
兄妹だと即理解できた、ベラトミはそのまま彼らに話した
『今からガウガロに向かってほしい、もし本当なら移住も考えねばなるまい』
『はっ!』
声を揃えてイゴとマゴは返事をした
兄妹の警備兵は俺をチラ見してから再びベラトミに視線を戻すと彼女がまた彼らに言ったのだ
『我が種族の為の行動なり』
その言葉で2人は静かに頷いてこの場を後にした
何かのおまじないの言葉だろうかと首を傾げて思っていたのだがやたら老人たちの顔が冷たい
俺達に向ける表情がだ、あまり好まれてはいないのは明白である
人助けも大変だなぁとこの身に感じた
損が出来る男にならないと人助けもできないもんだが今回は裏目にでたのだろうか
ナッツは部屋を出た兄妹の後姿を見送ってから部屋中を観察していた
『今の獣王は誰なのだ?』
ベラトミが質問してきたのだが俺が返そうとしたらナッツが答えた
『猛牛人族のバルト・バトラーです』
いってもわかる筈もない、ただどの種族が王なのかが一番知りたいのだろう
俺でもわかることなんだけど基本閉鎖的な場所と言うのは村の外の情報に疎い部分が大きい
信じる前にまず疑うのは大事だと思うのだがあまりにも疑心暗鬼が表に出ている
普通は失礼なんだが
『そうか、お主たちはガウガロには行った事があるのか?』
『そうですよ、獣王と友好関係にあります・・・隣国のルーカストアそして僕たちの国であるゼリフタル・・・この3か国で友好を結ぶ手筈を今整えております』
会話はナッツに任せるか
『そんな馬鹿な』
ベラトミが口を開けて信じられない様な顔をした
ナッツは横目で俺を見てから再び彼女と会話を始めたのだ
『まぁ見なきゃ信じないでしょうね、今までの生活に適応してしまい外の情報が全てうそにしか聞こえなくなるのは仕方ないでしょうから一先ず使者の帰りを待ってみてはいかがですか?それまで大人しく僕たちはここで待ってますから』
『・・・・・・そうしてくれると非常に助かる』
彼女はそのまま立ち上がるとそれに合わせて他の者も立ちあがった
ベラトミと警備兵1人残して皆外に出てしまったのだ
そうして警備兵の者が俺達に近付いてきた
俺とナッツも立ち上がると警備兵は口を開いた
『一先ず仲間を助けてくれたとこ感謝する、今日は奥の客室で休むが良い・・・明日の夕方には使者も戻ろうぞ』
そう言うと彼も部屋から出て言ったのだ、残るものは俺達とベラトミだけだ
さっきの警備兵だが多分警備長だろうな
貫禄が伺える様子だったのだ、種族観察も安易ではあるがしてみたのだが俺は本音があまり聞けなかった様な気がした
『今日は休んでくれ、客人としてもてなす』
まぁそんな悪く見られてはいないようだが念のためナッツの言う通り大人しくしながら静かに警戒だけしておこうベラトミにはジーンとの出会いから一通り話したのだがそこらへんは納得してくれて頭を下げてくれた
少しベラトミと話をして皆寝静まる時間になったので彼女もここを出て俺達2人だけになったが建物の外には警備兵が数人囲んでいる様な気配を感じる
『客人としての警備ですかね、なんだか不思議ですね』
ナッツが奥のドアを開けながら言うと奥にはベットが4つ用意されていた
壁際に机と椅子がありどうやら安易な客室なのだろう、ナッツが部屋の明かりをつける
ナッツに続いてその中に入るとそれぞれ寝るベットを決めて槍をベットの横に置いた
ベットに横たわると彼も真似をして寝る体制になる
『少し不可解だな』
『ですよね先輩』
何とも皆複雑そうな何というかどうとらえていいかわからない
明るい感じで接待された気がしない
確かにここは大昔にガウガロにいた妖狐族達なのだろうが度重なる生活の苦難により思想が徐々に変わっていったのだろうか
どこにでも事情はある
『念のために今日は1日起きていた方がいいですね』
ナッツが提案するが俺も少し不安であったのだ
彼に同意するしかない
『お前は無理だろ?安眠スキルのせいで』
俺の言葉でナッツは苦笑いするが彼は寝ながら親指を立てて答えた
『寝たいと言う意識を捨てれば大丈夫ですよ?寝ようと思えばすぐ寝てしまいますが』
スキルのコントロールはできるか、流石だな
彼の安眠スキルはいかなる状況でもぐっすりと眠ることが出来る
ふとお互いのステータスを確認したところナッツの変化に気付いた
・・・・・・
ナッツ・ランドル(男17歳)流剣士【中位】
☆戦術スキル
剣術【5】 剣の熟練度、恩恵により攻撃力と耐久力が中アップ
体術【5】 体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが中アップ
魔術【2】 魔術熟練度、恩恵により魔力量を小アップし・詠唱時間を小軽減
☆補助スキル
食い意地【大】 食事による体力の回復速度が大アップ
安眠 【大】 どんな状態でも寝ることが出来る
痛覚耐性【大】 痛覚を軽減する
逃げ足 【中】 対象から離れる際の速度が中アップ
恐怖耐性【中】 恐怖状態を少し緩和
我慢 【中】 少し耐久力があがる
集中 【中】 術や技の構築時間を少し軽減する
☆技スキル(開示ステータスに表示されない部分)
居合・骨砕き・・流し斬り・トリックソード・十字斬り・唐竹割
神速一閃
☆称号スキル
千剣の加護 剣術の熟練度が上がりやすくなり特殊な技を覚えることが出来る
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャムルフィン・フォースター・セブンス(男18)武銀帝狼眼
☆戦術スキル
槍術 【8】 槍の熟練度、恩恵により素早さが大アップ
銀の意思【7】 全ての身体能力が大アップ
体術 【6】 体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが中アップ
基礎術 【槍】 技の威力が小アップ
十天 【七】 全ての身体能力が中アップする
銀閃眼 特殊な銀弾を使うことが出来る
☆補助スキル
千里眼 遥か遠くの景色を見ることが出来る
俊足 速度が特大アップ
予見 相手の行動を感じ取ることが出来る
威圧 【大】 恐怖無効未取得の対象を確実に恐怖状態にする
我慢 【大】 耐久力が大アップ
痛覚耐性 【大】 痛覚を大軽減
努力の極み【大】 熟練度補正により上昇率が大アップ
気配感知 【中】 それなりに生物の気配を察知
魔力感知 【中】 体内の魔力の流れを感じとることが出来る
運 【中】 少し運がいい
☆称号スキル
賢者の加護【大】 消費する魔力・闘気を半分にし構築時間を軽減する
狼王の加護【大】 全ての身体能力が大アップ・呪い無効
生還者 【大】 素早さが大アップ
解放者 【銀】 身体能力が大アップ
武人 【槍】 槍の熟練度が上がりやすくなり、恐怖無効
十天 【七】 第7位の称号・熱気・冷気耐性
☆技スキル(開示ステータスに表示されない部分)
狼撃破・銀の爪・残歩・シルバーバスター・シルバーダンス
銀超乱・銀彗星・銀狼乱舞・銀帝次元槍
グレンツェントヒール【光】
☆特殊技(開示ステータスに表示されない部分)
通常弾・強化弾・連射弾・狙撃弾・散弾
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『ナッツ、そのステータスの変わりようだが』
俺はそう口にすると彼は自信満々に答えたのだ
『先輩がルッカさんと夜な夜なキャッキャしてる間にスカーレットさんとこでルルカさんと稽古していたんですよ?』
どうやら鍛錬していたのだな、先にある計画には上位職は絶対条件
彼らもそれに向けて頑張っているのだろう、という事はだ・・・ルルカもかなり鍛錬を積んでいる筈だ
あそこでの特訓は異常な上達速度だ、自分と同じ強さの人形とギリギリの戦いをするのである
短期間でステータスなんて上がらないが自分と同等の強さを持つ傀儡と戦う事によって上達速度も格段にあがるのだ
そこらの弱い魔物では時間がかかり過ぎるのである
ギリギリの戦いを何回も何回も1日でやる地獄だがそれに対しての恩恵が素晴らしい
流石ダークマターの館
『お前が上位職になればもう怖いもんはないな、安心して後ろを任せられる』
ナッツもその言葉が嬉しいらしくニヤニヤしている
今迄は戦争で人間相手に彼に背後を任せていた
だが俺たちは着々と次元が違ってきた戦いに身を置いてきている
魔物だ、敵兵とは比べ物にならないくらい獰猛な生き物なのだ
グスタフは勝手に暴れさせればいいしそれにルルカがあわせる
彼女はそれが上手いからなぁ・・上手くグスタフのアシストをするのだ
ナッツは今まで通り俺の死角をカバーするのが良いだろう、一応死角も予見スキル等で反応できるのだけども彼に背後を任せるだけで目の前の敵に集中できるという気負いのない戦いが出来るだけで格段と俺のやりやすさが増す
俺は彼に期待している
『今日はよく眠れそうな言葉を貰いました』
『寝るな?』
『あっ!』
忘れていたらしい、俺は思わず笑ってしまうとナッツも笑い出した
お前は安眠スキルがあるんだし危ないぞと口元に笑みを浮かべてそう思っていた
こいつは旅には重要な頭脳である、色々と俺やグスタフの脳筋類が考えれない事をしてくれるのだから
『気配感知で変化があったら知らせる』
『わかりました・・・』
部屋の明かりを消し、俺達2人は安心できない夜を過ごすことにした
集落の皆も寝静まったであろう時間になる、ここにも時計はあるが既に日付が変わっている
考えすぎかもしれないが一応用心に越したことは無い
『ナッツ』
俺は囁く様な感じで彼に声をかけた
すると予想外な返事を聞くことになってしまう
『ZZZZZZ』
マジで寝てんのお前?起きていられるっていったよな?
この状況下でも彼の意志に反抗して安眠スキルが発動したのである
ハッキリいって呪いだこれ
冗談で寝る男じゃない、少し気を抜いたのだろうな
だけど仕方がない・・
クズリにクレームいれるか
『マジかよナッツ、仕方ねぇな』
溜息をついて普段しない独り言を吐き散らした
寝返りを打つナッツの横顔は幸せそうな表情であり少し羨ましいと思えた
まぁ帰ったら次はクズリの件を処理しないとな、ナッツが本当にクズリの息子だという可能性は大きいな
その前にこの状況だ!
暫くして鳥の鳴き声も聞こえなくなった頃合いにふと少数の気配を遠くに感じた
数人か?気配に集中していくと徐々に数も増えてきている
最初は4人ほどだったかこの建物の周りに15名ほどの気配を感じる
あれれ可笑しいな?
この気配はイゴとマゴもいるぞ?
そして警備兵長らしき気配もである
用事があってきたのならノックして起きて終わりなのだがそういった事も出来ないのだと悟った
何故そこにイゴとマゴがいるんだ?
我が種族の為の行動なり
ベラトミのこの言葉で彼らは気配が少し変わったのは俺は気づいていた
俺も馬鹿じゃないさ・・・
最初から行く気は無かったか、そして優しくノックなんてするわけないよな?
数人の気配が話し合いをした部屋に侵入してきたと察し俺は再びナッツの寝顔を見た
凄い気持ちよさそうに寝ている
この状況で彼の寝顔を見たのが間違いだった
少しイラッとした
ナッツ『眠くなりそうですね』
ジャムルフィン『おいやめろ』