61話 リヴィの正体
シルバの記憶の後
俺達はその瞬間に目が覚めた
驚きにそのまま異常なくらいの汗を流して固まってしまう
ナッツもグスタフもルルカもシュウザーもだ
彼らもきっとシルバの記憶を見ていたのだろう
『おいおいおいおいマジかよ!?』
グスタフが声を荒げて俺達に視線を向けて言った
激しく興奮していた、俺もそうだ・・・心臓の音が耳元で聞こえる
『在りえないです・・そんな』
ナッツが地面にへたり込んだ
自分の両手を見て信じられない様な面持ちだろう
ルルカは目を見開いて固まっていた
シュウザーも驚いてはいるが俺たちほどじゃあない
そんな彼が口を開いた
『凄い歴史だ、情報量が在りえぬ・・・だが』
すると水晶から声が聞こえたのだ
『お前らが一番今知らないといけない事は教えた』
全員その言葉で水晶に視線を送る
グスタフが水晶を叩いて彼に話しかけた
『おい!最後どういうことだ!教えろや!』
俺も知りたい、あの鳴き声は・・・
そんな筈がない!5千年も生きているなんてそんな生命体が?
そうして水晶に中のシルバは答えたのだ
『ヘクターの名はヘクター・ジャピス・ロー・フォオウ・ドラ・バリスタンだ!奴は絶滅した魔羊種の生き残りだ!』
『羊!?どういうことなのだ!?』
ルルカがそう驚くと続けて水晶の中のシルバは念で俺達に言ったのだ
『奴がジハードでありヘクターの名を捨てた、今の名はリヴィ・ネイ・ビーだ』
リヴィ・・・
お前が何で詳しいのかわかったよ
そして知ってる情報全部言わなかったことも
そうだよな、銀閃眼なんてお前が知っているわけないもんな?
傍にいつもいたからだろ?
シルバの傍で強くなるために、魔天狼を超える存在になる為に
2人を生き返らせる気か?どうやってだ?
ノアは俺が魔天狼になれば復活確定だがそれを奴は知らない
そしてシルバの封印の解き方も奴は知らない
ジハードで何を企んでいるんだ
ようやくノアが言っていたジハードと出会った事があるわよって意味がわかったぞ?
断片過ぎる記憶だが十分だ
リビィ、お前は俺を出汁に何かしたいんだろう
色々考えていると水晶の中から光が飛んできた
ナッツが軽く避けるとそれは俺の中に入って来た
『先輩!?』
『大丈夫だナッツ』
急いで近づいてくるナッツを止めると俺の中に入った光は消えていく
これは何だろうか・・・
『奴を終・・わらせてやってくれ、そ・して俺・・・の記憶・・・ノアに・・とどけ・・・よ・・・そ・・・し・・・』
シルバの声が遠くなった
『シルバ様・・・』
シュウザーが悲しそうにつぶやくとシルバの目は閉じてしまった
沈黙が少し流れるとグスタフが真剣な顔で水晶を背に歩き出して言った
『行くぞ』
慌ててグスタフについていくルルカ、その様子を見てナッツもついていこうとするが俺とシュウザーは最後に水晶の中のシルバを見てからこの場を後にした
神殿の外に着くと暗くなっていた、どのくらい時間が経過したのだろうかわからない
ルルカが手の平で炎を出して辺りを照らすが魔物は本当にいない
するとナッツが声をかけてきた
『花の名前を使って偽名を使っていたんですね』
『そうだな、あいつも自分を捨てたんだ』
ナッツと話していると一足先に階段の下に降りていたグスタフが大声で話しかけてきた
『やっぱ大きい気配はないぜぇ!?デュラハンいねぇのか?』
不貞腐れたような顔でこちらを見ている
シュウザーが階段を下りながら彼に答えた
『きっとどこかへ行ったのだろう、このまま帰るぞ』
『ケッ』
つまらなそうに吐き捨てるグスタフ
俺達はそのまま来た道を戻ることにした
道中に魔物にあったが全てグスタフとナッツそしてルルカが対峙した
俺は輝魔石に思い切り狼気を流して明かり担当になっていたので見守る事にしていた
歩いて小休憩を挟みながら行き、6時間後に森を抜けることが出来た
抜けたと思った瞬間ナッツとルルカが地面に座り込むが監視の猫人族と蜥蜴人族の者が俺たちの馬を用意してすぐに戻ることになった
シュウザーとはその場で別れることになった
『楽しかったぞ?』
シュウザーがにこやかに言うとグスタフがそんな彼に口を開いた
『今度勝負しろヤァ!』
『クフフフ!本当に面白い男よ、いつでもこい』
そう言われたグスタフは上機嫌で馬に乗った
狼人族の集落に戻ったのは夜22時であった、それなりに歴史の授業を俺たちはしていたのだ
食堂が明るくて4人で中に入るとルッカとガーランドそしてバウがいたのだ
俺達をみてルッカは直ぐに椅子から立ち上がると俺に近付いてきて体を触りまくる
『どうしたルッカ?』
『怪我してない?大丈夫ジャン・・・?』
心配してくれているらしい、俺は心底嬉しく感じた
シルバの記憶を見てからだと俺は幸せなんだなと十分の思えたのだ
ルッカの頭を撫でて俺は言った
『大丈夫だ、ただいま』
丁度良いタイミングかと思ったガーランドが椅子に座って俺達に話しかけてきた
『すぐに夜食を用意する、そして明日は宴会だ!全族長の族長だけの宴会に参加してほしい』
ガーランドの言葉にバウが重ねて話した
『本当にすまねぇ、恩人を置いて多忙になっちまってな・・・明日はお前らの為にも祝うぜ?』
彼は椅子から立ち上がると深く頭を下げてそう言ってくれた
どうやら族長達で祝う目途がたったんだな、うん!いい事だ!
食事が出来るまで皆で座って待つことにしたのだがそこで全てを話した
シルバの過去にリヴィの正体を
リヴィの話になった時のルッカは顔がかなり強張っていた
俺はルッカの隣だったので彼女の肩をさすると落ち着いたらしく深呼吸したのだ
話を聞くだけで疲れたような様子だ
『シルバの弟分であり弟子がリヴィとか』
ルッカが頭を抱えてそう呟くとルルカがテーブルから身を乗り出して口を開いた
『超長寿なのだ!あいつはジハードで不老不死なのだ!』
ジハードの特性である不老不死を使ってあいつは生き延びている
ノアとシルバを生き返らせるために、なら教えてやればいいだけじゃないか
生き返るぞって、上手くいくだろうか・・・
『飯が出来た様だぜ!?』
バウがいきなりはしゃぎだした
すると奥から鳥の唐揚げとか猪の肉のスープやパンがでてきた
皆でがっついて食べるがバウは鳥の唐揚げだけは手を付けなかったのが意外だった
そうして俺たちは宿舎に行く
皆疲れている、死んだような面持ちで各部屋に戻っていったのだ
俺はルッカと寄り添って寝ようとしたのだが急にアレがアレしたのでルッカとアレをした
俺はなんだか緊張感が無いと言われそうだが幸せな気分になった
『変態、変態』
何やらぶつくさ言っているが可愛い
後ろから抱き着くと大人しくなる、うむ
直接素肌だから心地よい
そんな色恋空気だが俺は真剣な話を唐突にした
『リヴィは俺の魂を食う気だろう』
ルッカは黙ったままだ
俺は続けて言った
『だけど魔天狼になるまで手を出さない気だ、シルバは魔天狼になれば勝てると言っていたし俺はシルバを信じるよ・・・あとは俺の努力次第だ』
まだ黙っている
『俺は魔天狼まで村で鍛える、そして唄は母さんに歌ってもらうよ・・・最後の唄は知っている』
俺が第3に到達した際にはノアからの贈り物の中に記憶があったのだ
魔天狼の唄、最終章を俺は知っている
その唄はノアが作った者じゃない様な気がした、元からの唄であるだろう
そこまで変えることができなかったんじゃないか?
『勝たないと結婚する意味ないからね』
やっと喋った、なんだか不貞腐れた感じの発音だった
ルッカの頭を撫でながら俺は口を開いた
『十天の第1位になれないとな、子供は3人欲しいぞ?多分この力を使って仕事するだろうな』
『・・・そうね』
『シルバはノアに一度も好きと伝えれなくて死んだノアに嘆いていたよ』
『ジャンは私の事好き?』
『大好きだ』
ルッカがモゾモゾし始めた、面白い
そうして俺は良い加減寝ることにした
『頑張るよ、おやすみ』
『お休みね』
☆キャラ詳細☆
リヴィ・ネイ・ビー・ファースト
赤と黒が混じった禍々しい角をもった魔羊種の生き残りであり5大天位職のジハードである
本当の名はヘクター・ジャピス・ロー・フォオウ・ドラ・バリスタン
幼き頃に魔族や人族に忌み嫌われている時にシルバに拾われて弟子になる
シルバは兄の様な存在で彼を兄貴と呼んでいた
戦闘センスが無くて成長が遅かったがとても永い年月を浪費して十天の第1位に君臨した
彼は兄である存在の夢をもう一度叶える為に自身の身を犠牲にしてまでも2人を生き返らせるためジハードとなり5千年を旅して情報を探していた
語られないがジハードはシルバの友であるマッドを殺して魂を食べ職を得た
偽名はリヴィーナの花とブラックネイビーの花からつけた名である
リヴィーナの花言葉は大切な思い出、ブラックネイビーの花言葉は犠牲
彼の特殊能力は対象の魂を食べて自身の力にすることが出来る
レベルも何もかも上乗せで自分に換算できるという恐ろしい能力
この特殊能力とジハードの職の能力でシルバとノアを生き返らせようとするがそんな方法かはまだわかっていない(のちの章でわかる)
彼は目的がもうすぐ達成すると実感し、ジャムルフィンが魔天狼になるのを待っている