57話 シルバ リヴィーナの花言葉
シルバが何やら綺麗な女性とどこかわからない人が住む村の中で食事をしていた
外から見ると人口300人いるか怪しいくらい小さな村の中だ
建物の中で何やら女性が楽しそうにシルバに料理を食べさせていた
綺麗な女性であった、黒い装束のような服を羽織り白い髪に花飾りをした女性
小さめの民家の中で2人は食事をしている様だ
シルバは苦笑いしつつも正面に座る女性を見て頭を掻いていた
『メリル、お主もいい加減諦めてくれぬか』
彼の言葉にメリルと言う女性はテーブルに並んでいる鳥の唐揚げを口に頬張ると口を開く
『いいじゃん!?あんたびくともしないっしょ!?訓練に丁度いいし付き合ってよ』
『俺は丁度いい殴り役か』
シルバが口元を歪めるとメリルが隣に座ってきた
『あんたしか頼めないのよ~こんな可愛い乙女の頼みじゃん?嬉しいっしょ?』
メリルが肘で彼の脇腹を小突くがシルバは深い溜息をつく
この目の前に並ぶ料理、どうやらすべて彼女の手料理らしい
シルバの為に作ったであろう料理をどんどんシルバは口に運んでいく、その様子を見るメリルは嬉しそうな顔で彼を見ていた
彼に術の威力の実験という名目で決闘を挑んでいるのだが負けるとこうやって料理を作ってくれる
『ノアちゃんヤキモチ焼かない?あの子すっごい純情ぽいよねぇ!まだ夜這いしてないの?』
『ブハッ』
頬張っていたサラダが少し出たシルバ、それを笑いながらメリルは綺麗にする
『もしかしてマジ?』
細い目でシルバを見ていると彼は目を泳がせる
『まだなの?最強なのに心はチキンだったのぉ!ありえなーい!』
メリルの突っ込みに頭を抱えるシルバ
彼は木のコップに入ったパインジュースを飲み干すと静かに言った
『狼と人間だぞ』
メリルが不思議そうに首を傾げて彼に言ったのだ
『なんか問題ぃ?ついてるでしょ?』
『お前直球だな、ド直球だな』
シルバが苦笑いした
大笑いするメリルだが彼の肩を強く叩くとシルバのコップにパインジュースを注ぎ落ち着いた面持ちで口を開く
『女わね?好きな相手なら大抵の事は気にならないのよ?』
皿に盛り付けてある唐揚げをつまみながら彼女が静かに言う
一度メリルは深呼吸をして再びいつものテンションに戻った
『まぁノアちゃんに振られたらいつでもあたしが夜の相手してやるよ!』
『一番実力があるのに・・変わった奴だ』
そう言いながらシルバは出された彼女の手料理を食べる
彼の様子を伺うメリルは口元に笑みを浮かべて静かに彼を見つめていた
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ダークマターのメリルか、スカーレットさんと全然違い過ぎるな
オープンというか全開というか、だけど最後の方はシルバを見る目が女性だったよな
お?また視界が・・・・今度はどこだ・・・
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シルバは何やら大工仕事をしている
何か森の中に家を建てていたが建物はもう少しでできそうな感じだ
残るは玄関前の階段だけの様だ、3段ほどだろうか
シルバは階段用の木の板を抱えていた
家は一階建てで15m四方の家の様だが1人で暮らすのだろうか
彼だけじゃなく彼よりも大きい者がシルバを手伝っている
それはタイタンハンドのアザクタール、シルバに挑んだ天位職の1人であり巨人族の者である
身長は259㎝という人族を筋肉質にして大きくしたような存在だが体は白っぽい
『すまないシルバ』
余った丸太を薪にするために片手で斧を持ち、
木を割りつつ彼にそう言ったのだ
彼の言葉にシルバは笑いつつも持っていた少し大きめの木の板を入り口の前に置いた
『まぁ早く作らないと台風がくるからな、お主から色々美味しい酒の製造法など教えてもらっているからな』
『お前はそんな飲めないのにな』
『熊人族の者がお前の酒が好きなんだよ、国のためになっている』
『そうか』
そう言ってシルバはハメた板に鉄の釘を打って固定させていく
どうやら今迄の記憶の中ではちゃんとした良い関係であるように見える
昔はよくアザクタールが巨人族の英雄として認められたいがためにシルバに挑むがことごとく撃沈してしまったのだ、彼も何度も戦うにつれシルバの良さに気付き仲が良くなったのだ
『家が出来たらうまい漬物があるんだが食べないか?』
アザクタールを手伝おうと出来上がった階段を一度確認してから立ち上がる
割りやすい様に彼の手前に丸太を並べるシルバが返事をした
『お主が作った漬物か、興味がある』
アザクタールが微笑みながら薪を割る
『巨人族の里に帰らぬのか?アザクタールよ』
彼の言葉にアザクタールは少し悲しい顔になるが切り替えて口元に笑みを浮かべて答えた
『いいんだ、俺は村の掟に縛られないで生きていくと決めたんだ・・・』
そう言って地面に座り込むアザクタール
シルバが彼の隣に座るが本当に彼は大きい
巨人族の彼に何がったかはわからないが自由を求めて村を出た事だけはわかった
風が強くなっていき2人は遠くに見える雨雲を眺めた
『今日の夜にはくるだろうな』
アザクタールが言うとシルバが口を開く
『そうくれば後は荷物を中に入れないとな、さぁアザクタール・・・最後のスパートだぞ!』
シルバが立ち上がり彼に視線を送る
アザクタールはニッコリ笑い彼に言った
『ああ!』
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タイタイハンドか、どんな職なのか未知数だが強力なんだろうな
シルバは一体何歳なんだ?
巨人族?俺の時代でそんな種族いただろうか
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狼人族の集落、夜であった
シルバは部屋の中でゆったりと寛いでいるが外が何やら騒がしくて彼はベットから起き上がる
ゆっくりと家の入口に歩き出すと1人の人族の男が泣きながらシルバの家に入ってきた
見た目は30代くらいの男性であり髪がテンパー、パジャマの様な服で泣きながらシルバの家に来た
『はぁ・・・3度目だぞ?』
溜息が出るシルバにその男は口を開く
『すまぬシルバ・・今日は泊めてくれぇ!床でもいいからぁ!』
土下座をして泣いてすがる彼にシルバは腕を組み、聞いた
『今回は何をした?』
『妻と寝ている時に状態異常強化術の効果を調べようと布団の中でおならをして状態異常強化をしたらおならが凄く臭くて妻にキレられたんだ・・・当分帰ってくるなって・・』
軽蔑した様な目でシルバが言った
『馬鹿だろお主』
『効果が適用されるか気になったんだよおぉ!!!』
シルバがリビングの椅子に座るとその男は土下座から上体を起こしてその場にへたり込む
すすり泣く彼にシルバが口を再び開く
『ジハードのマッドよ、いつでも自身の職を研究するその努力は素晴らしいがオンオフを分けよ』
マッドが床にそのまま横になると小さな声で答えた
『俺が発見した職なんだよ、色々解明しないと!君みたいにさ・・・』
彼の言葉に少し笑う
シルバはソファーを指さして彼に言った
『職の事を忘れて寝てくれるならば一日だけだぞ?明日はノアがくるからな』
すすり泣く彼は笑顔になる
『助かるよシルバ!ノアちゃんにもよろしく言っといてくれよっ!』
軽く手を上げてシルバが反応するとマッドも落ち着いたようでソファーに近付いて横になる
彼はジハード、彼がこの職を最初に発見した人族の者である
若い時にこの道を発見して自ら道に入り、研究に没頭しているのだ
いつも自宅で変な実験をして奥さんに怒られて追い出されているのだ
行くところは当然シルバのとこだ
『それにしても便利な職だよ、見たり受けた技や術を自分の物にできるんだもん・・・だけど君の技だけはどうしてもコピーできないんだ』
ソファーに横たわるマッドに彼は台所に行って水を用意し、ソファー前にある小さめのテーブルに置く
すると彼はその木のコップに入った水をゴクゴク飲む
『俺の職は俺自身解明できたがお主のは未知数過ぎるな』
『だろう!?予測だけど特殊扱いはコピーできないんじゃないかって!』
『その線はありそうだぞ?マッド・・・うん?』
シルバは頭を振って冷静になると彼に言いなおす
『職の話は無しだ、寝ろ』
『す・・・すまん』
残念な顔をしてマッドはシルバから渡されたタオルケットを羽織り眠りについた
背伸びをするシルバは外に出て空を眺める、狼人族の警備兵が彼の姿を見ると一礼して仕事に戻っていく
時間も夜は深いだろう
『ジハードか、見た技を己自身も使える奇怪な職よのぅ・・・だが』
マッドは世界最強と人族に噂された彼の職も自分の物にできるかどうかシルバに挑んだが何もコピーできずに打ち倒されたのだ、それでも彼はシルバ相手に善戦したのだがそれはシルバが様子見だっただけであり少し殴ったら気絶したとか
『素早さと詠唱時間短縮さえ極めれば確実に強い職だな・・・だがスキル上達速度が非常に遅くなるのが難点か、コピーしても鍛錬が難しいとなると活かすのは当分先だな・・・・魔力の枯渇が早くて長期戦は出来ぬし』
シルバはそのあと家に戻りながら言う
『不老不死であり生と死を司る職か・・・』
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ジハードが不老不死か、しかも見たり受けた技等を使うとか卑怯臭くないか?
だがシルバのあの話だと使えるだけであり魔力量の少ない様な発言だ
タツタカのヘルトの方が優秀に思えるが軽率な判断だろうか?
あいつは最大火力で魔力量無限という事だろう
そう考えるとあいつは戦闘慣れするとヤバイな・・・
ノアは俺がジハードと出会った事があると言ったな
一体誰なんだ?俺には見当もつかないんだ
永い事生きてたってことだよなそうなると、うーん
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『ねぇシルバ』
森が生きていた時代のアバドンの大樹の下でノアとシルバは青い花が咲き誇る広場で横になっていた
中央付近には見覚えのある石があるがどうやらゼファーが縄張りにしているノアの墓に似ている
それよりも少し大きい感じがするがきっと長い年月で風化したのだろう
『どうしたのだノア』
シルバが反応するとノアが青い花を一凛彼に見せていた
その花のにおいを嗅ぐシルバは仰向けになり空を見上げる
ノアもそれに合わせて空を見て彼に口を開いた
『これね?何の花かわかる?』
『そういえば兄貴、この花の名前知らないっすね』
遠くの木に寄りかかって休んでいるヘクターがそう言うがシルバは知らないらしい
ノアの方を向いて彼女に聞いてみた
『何の花なんだ?』
その質問にヘクターも気になるのか少し近づく
ノアが立ち上がると胸を張って自身満々に答えた
『これはね、リヴィーナって花よ?春に咲く季節を知らせる花!』
シルバも状態を起こしてその青い花を見つめた
ヘクターも一凛手に持って目の前で眺めている
『いつもここに咲いてるよねノア姉ちゃん』
『そうねヘクター、でもなんでここで咲くかはわからないわ』
シルバの横にくっついて彼女は言ったのだ
『2人はこの花の花言葉わかる?』
『花言葉だと?』
『これは知らないなぁ・・』
ノアは空にリヴィーナの花を一凛掲げながら彼らに答えた
『リヴィーナの花言葉は・・・大切な思い出』