40話 国を賭けた聖戦⑨ 何が起きていた?
ケインを故郷に送るためにガウガロに来たジャフィン一行
事前に知ってはいた情報だがガウガロの危機に直面して国を壊そうとする獣王と戦う事になり先輩は瀕死の重傷を負ってしまう、獣王に勝つには道に入るしかなかった
各獣族の族長達と彼の仲間が第3の道に到達するまでの時間稼ぎをしている最中、雷帝ゼファーも参戦した
金獅子の獣王シュウザー・アングラード・セブンス
彼はゼファーの提案で待つことを了承したが武銀帝狼眼になりその場に来た先輩は先輩じゃなかった
グスタフ『今回あらすじかぁ?』
『え?』
俺はとっさにそんな声が出た
目の前のシュウザーは目が点になり俺を見つめている
どうしたのだろうか?なんで俺はここにいるのだ、俺はアバドンにいたのだ
静かに周りを見て確認してみた
ゼファーはすぐ後ろで尻尾をブンブン振って怖いくらい超ご機嫌がいい
そんな彼の隣でルッカが心配そうな感じに見ていた
バッハが細い目で俺を見ている
ナッツはグスタフに肩を借りて立っていた
2人とも不思議そうな顔で俺を見ている
シャオは何故か俺に向いて触れ伏している
バウも同じく・・・てかシルフィーもゲイルもチェスターもチュリオもファルカもだ
獅子人族達は部屋の壁際で怯える面持ちで見ている
銀色の狼は四つん這いで大号泣していた
誰だ!!!!????
『何があったんだ俺?』
ふとそう言うとルッカが口を開く
『戻った様ね、本当に在りえないわ・・・意味がからないわよ』
頭を抱えてしゃがみ込むルッカ、そんな事を言われても俺にはわからない
ナッツやグスタフも近づいてきて俺の顔をマジマジと見てきた
俺は首を傾げてしまうがナッツが話しかけてきた
『今は先輩ですか?』
『いや俺だよナッツ、俺が意味が分からないよ』
その様子にシュウザーが静かに口を開いた
『説明してやれ、少しは待ってやろう』
彼の言う言葉の後にまず最初にルッカが話しかけてきた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『入った様ね』
彼の体が光に包まれて欠損部分が治っていく
ジャムルフィンを支えていたルッカがそう呟いた
周りのゼファーの部下である雷狼もきちんとお座りをして待機していた
彼女は深い溜息をついた次の瞬間である
彼の体が動いたのだ
あまりの出来事にその場の全ての者が驚く
雷狼を即座に立ち上がり彼を見やる
ルッカが彼の顔を覗くと次第に目が開いてきたのだ
彼女は思った、今回は早く目覚めたのだろうか
それにしても早すぎる
そして気づいた、ジャムルフィンの右目が銀色に変わっていた事に
一匹の雷狼がルッカの背中から服を噛んで彼から引き離した
『えっ!?ちょ!?』
彼女をいきなりの事で動揺した、彼女の前には雷狼が数匹おりジャムルフィンに威嚇していたのだ
ジャムルフィンは静かに立ち上がった、するとルッカも立ち上がる
『ジャン?起きたの?』
ルッカの言葉に帰された言葉は違うものだった
『まだだ女、俺を神殿に連れていけ・・・』
その声はジャムルフィンそのものだった
だけど声を聞いた彼女は彼じゃないと悟った
未だに雷狼が在りえないくらいに牙をむき出しに威嚇していると彼が口を開く
『静電気の犬ッコロめが』
『誰なの?ジャンはどうしたの?』
雷狼からルッカに顔を向けるジャムルフィンはそんな彼女に答えた
『時間が無いと言っておるだろう女、はよ連れていけ!貴様の仲間が死ぬぞ!』
ルッカは時間が無い事に気付き残りの転移石をカバンから取り出して握った
『大丈夫よ・・・多分敵じゃないから』
そう言いながら雷狼達を押しのけてジャムルフィンのもとに行く
ルッカが彼の目を再び見るがやはり右目が銀色に染まっていた
そして顔つきが普段の彼じゃないと確信した
彼女はもしかしたら彼は・・・と考えるとジャムルフィンの手を握り言葉を発した
『狼集落』
2人の視界がグニャリと変化して一瞬で狼人族の集落に転移する
いきなり現れた2人に外にいた狼人族の者たちは心底驚いていたが彼は構わずルッカをお姫様抱っこした
『ちょ・・・ちょっと!』
『急ぐぞ女!銀彗星!』
『ちょ!ええええええええええええええええ!?』
周りの視界が見えないくらいの超加速をするジャムルフィン
何故かいきなり巻き込まれたルッカは慌ててしまいそんな声をだした
体中にぶつかる風が重く感じ、凄まじい速度だと彼女は感じる
『私もなんで連れて行くのよ!』
『ふむ、そうだな・・ふははは!すまんなジャムルフィンの番よ』
『番?え?、あなた・・・もしや5000年前の・・・そんな事・・・』
銀彗星によって超移動している彼が彼女を見た
そんな彼は軽く鼻で笑うと再び正面を向き直した
『女、こいつが力に溺れそうになったら引っ叩いてでも戻せ、この道からは精神力が必要だ』
『そんな軟な人じゃないわ!』
『そうか、着くぞ?』
そう言って急に速度を落とすとルッカにやっと視界が見えた
本当に速すぎてどこにいるのかも検討がつかなかった
そこは神殿の入り口であった
ルッカを降ろして口を開く
『着いてくるなら守ってやろう、歩け』
『はぁ・・・本当に在りえない事ばっかり起こるわね、はいはいついていきます』
ため息交じりに彼女はそう言うと彼は歩き出す
それに続いて彼女も歩き出す、奥まで進むがやけに静かであった
自分たちの足音だけが響いている、ルッカが不思議と思い彼に質問をした
『戦ってるんじゃないの?もしかしてみんな』
『違う・・・俺に気付いたのだろうな、面白い奴らよ・・怯えておる・・・戦いをやめて警戒しているぞ』
ルッカは彼の後ろに隠れて進むことにした
そして最後の扉を通る、そこは先ほどまでジャムルフィンが死闘を繰り広げた玉座の間であった
恐る恐るルッカは彼の背中から顔を出すと声が彼女にかかる
『ルッカさん?』
『ナッツ君?大丈夫』
彼はあまりのダメージにグスタフに肩を借りて立っていた
他の族長たちは一同揃ってジャムルフィンを見ていた、ゼファーもシュウザーもだ
ナッツがルッカに何かを聞こうとした瞬間、ゼファーが大きく牙を向けながら放電し始めた
ジャムルフィンがゼファーに近付いたのだ
ゼファーが大きな声で口を開く
『貴様!ジャムルフィンじゃないな?何者だ!!!』
ゼファーは姿勢を低くして彼を睨む
肉食動物が餌に襲い掛かるかの様な前傾姿勢でジャムルフィンに向いていた
ジャムルフィンの様な者が口を開いた
『静電気の犬風情にここまで強くなる傑物がいようとはな、お主には感謝せねばなるまい』
『何を言っている?』
『感謝しよう、貴様は歴代の雷狼の中でずば抜けて強い・・・俺がもし生き返ったら全力で相手してやろうゼーブル・ファー・テンスよ』
『・・・貴様・・いや、あなた様はもしや!!??』
警戒を解いたゼファーは驚く素振りを見せるがジャムルフィンはそのままシュウザーに向いて口を開く
『お前は最後だ、しばし待て』
『な、なんだと?』
シュウザー自身も異様な彼の変わりようには気づいている
強くなった感じじゃなく、中身が変わった感じだと
ジャムルフィンはバウの顔を向けると話しかけた
『熊人族よお前はヘタレだ』
『な!?何をいきな・・・』
ジャムルフィンがバウを指さすとバウが言葉を止めた
続けて話しかける
『好きな女くらい夜這いくらいの度胸をみせよ、熊の癖に度胸が無いとは5000年前の貴様の族長タンカーが聞けば爆笑するぞ?』
『何でお前がその名前を・・・』
驚きに体を一歩さげたバウ、ジャムルフィンはシルフィーに向き手言い放つ
『強くなくていい、そこのファルカがお前の出来ない場面を必ず埋めてくれよう・・・そういえば俺がバルファニアを攻めた時、共に城に入った友であるソルは鷲種だった・・・鷲種は300年に1人しか生まれぬ鳥人族最強の鳥種だ・・・大事に鍛錬させろ』
『え・・バルファニア、えぇぇ!?!?もしもしかして!?!?』
シルフィーの驚きも無視して意識を取り戻していたシャオに向くジャムルフィン
『猫人族はのんびりしている姿が一番だが戦うなら無暗に飛ぶな?地を這う感じがシャム種は一番強い、俺のとこに泊まりに来ていた猫人族のニャルマーもお主そっくりだ』
『ニャ!?ご先祖様の名前はニャあしか知らないのに!?』
プルプルと震えながらそう反応を見せるシャオをよそに次はチュリオに口を開いた
『・・・気絶しているか、ファーラン動揺怖がりな種族よ』
軽く鼻で笑うと今度は蜥蜴人族のゲイルに話しかけた
『嘘に踊らされおって、昔の族長ゲラードが聞けば泣くぞ?』
『ゲラード様を何故・・・』
再びゲイルを無視して虎人族のチェスターに口を開く
『俺の時代はドワーフと仲が良かった筈だ、力仕事に困ったる筈だから助けてやれよ?』
『あ・・・ははっ!仰せのままに』
自然と膝をつくチェスター
そして猛牛人族バルトに顔を向けるとバルトは即座に気を付けの姿勢になる
『策士としては未熟だな!いつでも冷静が大事だ、軍師バリアンヌは戦争の席でも笑って酒盛りしているくらい異常な奴だったが作戦は素晴らしかったぞ?』
『バリアンヌ様を・・・そんな逸話が!!!』
ジャムルフィンはガーランドだけは目の前まで近づいた
ガーランドは信じられないものを見ている顔でジャムルフィンを見つめていた
『ガーランド、もう俺の為に動くのをやめよ・・明日からは自分の時間を作れ、汚名?知った事か!・・・俺はノアがいれば何もいらぬ!余計な事をして時間をつぶすな!』
『はい・・はい・・・わかりました・・』
ボロボロと泣き始めたガーランドは彼に平伏した
『不器用な行動しか目立たぬ貴様だが大儀であった』
『ありがとうございます・・ありがとうございます・・・』
そしてジャムルフィンは人族達に向かって大声で言う
『こやつはそのうち起きる!多分あと10分とかからぬうちにな、しばらく我がこやつの体を借りておるわ』
ナッツもグスタフも上手く反応出来ない
情報量が膨大過ぎてどう動いていいのか声をかけて良いのかわからないのだ
ジャムルフィンはそのまま中央に戻り彼の槍を拾い上げて大きく声を出した
『愚か者共めが!こうまでガウガロが衰退していようとはな、まるで賊の集まりの様な烏合の衆にしかみえぬ!今まで何をしていた!今までの獣王は何をしたのだ!!!』
その激高に獣族は慌てて触れ伏した
自然とそうしてしまったのである、彼に向けて膝をついて頭を垂れていた
『・・・貴様の行動は正しい、シュウザー』
ジャムルフィンがゆっくりと玉座に顔を向けながらそう呟く
その言葉を聞いたシュウザーは毛が一気に逆立った、目を大きく見開き2つの剣を抜いて立ち上がる
『お前は・・・ジャムルフィンではないのか?』
シュウザーの言葉を聞くと階段を登り玉座まで歩き出した
近付く彼に獣王は武器を構え警戒した瞬間にジャムルフィンが口を開く
『俺は何もせんから安心しろ、もし襲ってくるならば』
ドパン!!と彼の右目の手前から光線の様な物体が放たれた
多少その攻撃の反動でジャムルフィンの首が大きく揺れた
その光線がシュウザーの肩をかすめて後ろの壁に命中すると大きく爆発して大穴を開ける
シュウザーの体サイズの穴だ、振り返る獣王は穴を見てからすぐ彼を見る
反応出来ないくらいの攻撃であった、命中していたら体が残っていたかもわからない威力の攻撃をだ
『お前程度なら瞬殺できるぞ?選択を誤るな?貴様はガウガロにはまだ必要だ・・企みは即座にわかったが俺はネタ晴らしはしないでおくぞ?有難く思え獣王の資格を持つ者そして・・自らを犠牲にできる獣王よ』
彼の言葉にシュウザーがギリギリと剣を握る
そんな獣王は一番誰もがジャムルフィンの口から言ってほしい言葉を聞きたいと願う質問をした
『お前は、誰なんだ』
ジャムルフィンは首を傾けた
正したのちに彼は静かに答えた
『俺の名前はシルバ・シルヴァ、今では最強の職である魔天狼の親みたいな者だな・・・五千年前の者だが今は彼が眠っている間は俺が表に出ている』
『そんな馬鹿な、あなた様が・・・』
『ふむ、ちとこやつらに説教をしようとな』
ジャムルフィンの体を借りているシルバは階段の下で平伏している獣族を見ると彼らは一斉にビクンと体を動かした
ジャムルフィンは深い溜息をつく、そのため息も部屋中に響くくらい静かだ
ガーランドを向いてジャムルフィンは口を開いた
『ガーランド、貴様には真実を言わねばらなぬ!表をあげぃ!』
『ははっ!真実とは・・・シルバ様』
ボロボロと子供の様に泣く彼が必死で声を出して聞くとジャムルフィンは答えた
『貴様の名前は俺がつけた!ザシュール・メルヘルムは俺とノアの息子であるギースからだ!俺とノアの子と当時の人族に悟られぬ様に名を変えたのだ!貴様の本当の名はガーランド・シルヴァだ!!!』
『はっ!?!?!?』
全員同じ声がでた、シュウザーも後ろで驚いていた
彼は説明した、シルバは異種交配の特技をガウガロの森に住むプルスライムという魔物を食って会得していた、それでノアと行為に及んで狼人族の子が生まれた
銀色に染まったギーズ・ザシュール・メルヘルムを
何故名前を変えたかと言うと当時人族はシルバを恐れ恨んでいた
バルファニアの戦争後に恨みなどで子孫が狙われない様にするために名前を変えたのだ、偽名である
そして銀色の毛並みを呪いで灰色にして隠したのだ
戦争後にそういった偽名を使いシルバが呪いをかけたのだ
その事実にガーランドは顔を隠して泣き口を開く
『私はノア様とシルバ様の正当な血を受け継いだのですね』
『そうだ、解くまで未来永劫続く色を変える呪いだがもう必要ないな・・・とある言葉で誰でも解呪できる・・・・【リヴィーナの花に思い出を】』
そう彼が言うとガーランドが光り輝いた
ガーランドが自分の体を見渡すと彼の体毛が銀色に輝きだした
眩い光が彼を包むと徐々に消えていくがガーランドの体毛は銀色のままだ
気高く見えるその色はシルバの王族としての証となる銀である
彼の変わりように皆驚くと大きくガーランドが泣く
『有難き幸せ・・こんな・・事が』
『後は好きにしろ、名を変えてもそのままでも・・・』
『ははっ!!』
ガーランドを見ていたジャムルフィンはふとゼファーが近づいてくるのが見えた
ゆっくりと姿勢を低くして・・・
『俺の頼みを聞いてもらえぬか?ゼファーよ』
『何なりと申しつけよ最強の存在よ』
『俺が復活したらお前の頼みを聞いてやろう、その変わりアバドンの墓に眠るノアを守れ!この体の者が魔天狼になればノアは息を吹き返す!その後に保護してガウガロに連れてまいれ!ガーランド!ノアを頼むぞ!3年もかからぬ筈だ!俺が眠るティクティカに一度連れてこい!』
『ではアバドンで墓を守るとしよう』
『わかりましたシルバ様!!!』
ゼファーそしてガーランドが答えるとジャムルフィンはシュウザーをみる
彼は真剣な顔でジャムルフィンを見つめていた
持っていた槍を床に刺して腕を組み話しかける
『もうこやつは起きる!シュウザー・・・俺としては貴様は獣王として大儀であった、だが彼が目覚めたのちに真剣にぶつかれ!今までの企みも何もかもだ!戦いで吐き出せ!』
『気付いているのか』
『こいつ体の記憶からでも簡単にわかるぞ?俺は言わぬがな』
『・・・・シルバ様』
『なんだ?言ってみよシュウザー』
『俺は間違っているのか』
『俺は正しい事だと思うがな?フフフ・・・俺はノアの為にバルファニアを滅ぼしたのだぞ?フッハッハッハ!!・・・だがお前には引き際があると見た!』
『引き際・・?』
『お前は1人じゃない事を忘れるな・・・』
その会話の後にジャムルフィンは頭を押さえて呟いた
『起きるか・・・貴様等!今度分裂でもしてみろ?生き返った俺がガウガロを滅ぼしにいってやる』
その言葉に獣族は動揺しつつも深く触れ伏して反応を示した
ジャムルフィンが暫く沈黙になる
どうなったのだろうと思い彼らは平伏しながら彼を見る
ナッツやグスタフそしてルッカもだ
すると彼がいきなり辺りを見回した
酷く動揺している面持ちであるが口を開いたのだ
『何があったんだ俺?』
ガーランド『銀だ!名前もシルヴァだ!』
ゼファー『浮かれおって』