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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
第6章 5000年の想いと国を賭けた聖戦
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36話 国を賭けた聖戦⑤ 全てを救う為に

シュウザー『ガードしなけりゃ危なかった』


ジャムルフィン『そう見えねぇよ』

俺と彼の周りはまだ天銀での影響で砂煙が舞い5m先もわからない


目の前にはシュウザー

あの一撃で俺は死ぬのだろうか?

いや確実に死んでしまうだろうな・・・誰が見てもわかる

俺は動けないのだ


狼気がゼロになるまで必死で戦っても勝てなかった相手

十天の第7位に位置するシュウザー・アングラード・セブンスはそれほどまでに強いのだ

シルバシルヴァ解放の天銀の直撃を喰らっても立っていたのが信じられなかった


俺の道は今第2の白銀武槍シロガネブソウ、第3だったら・・・

うつ伏せで俺は両手の剣を振り下ろそうとする彼を見てシュウザーが口を開いた


『・・・お前を待つ人族もいよう、だが俺はやる』


何故お前はそんなに悲しい顔をしているのだ?

何故お前はそんなに泣きそうな顔をしているのだ?

何故そんなにも何かを恨んでいるんだ?


それを知るために








俺は死ねない


『グスタフゥゥゥゥゥゥ!!!!』


声が裏返る程俺は大声で叫んだ、シュウザーがその声に目を見開くと俺の背後から砂煙を巻き上げて彼が飛んできた、俺と目が合いと直ぐに彼はシュウザーに視線を送り鬼の様な形相で地面の影を巨大に広げた


『ぬっ人族め!』


シュウザーが両手剣を下に降ろしてガードの構えを取ると同時にグスタフの技が炸裂した

グスタフは精一杯歯を食いしばりこの一撃に全ての全力を込める気持ちで放った


『ディザスターハンドォォォォォォォ!!!』


影から5m以上の腕が地面から現れてシュウザーを正面から殴った

悪魔の様なその巨大な腕はシュウザーを振り抜いて玉座の後方まで吹き飛ばした


俺の体を触る者がいる、ナッツとベベルだ


『あぁ・・先輩、すいません・・すいません・・』


涙を流しながらそう言うが責任を感じる事は無い

俺が戦うと決めたのだ、今更何をナッツは無く

ベベルが俺の上半身を軽く起こすと深呼吸して口を開いたのだ


『話は聞いておる!ワシに掴まれ!狼人族の集落にテレポートするぞ!』


『てめぇは急いでアバドンに行けぇ!雷狼ぶん殴ってでも走らせろ!!!ここは俺達がやる!』


ベベルはテレポートが使えるらしい、タツタカ以外で初めてだな

ナッツは俺の手を強く握っているがどうやら彼は来ないらしい、ナッツが静かに俺の手を離すと腰の剣を抜いてグスタフの横に並んだ


すまない2人とも・・・俺は賭けることにしたよ

ナッツの考えはわかった・・・お前・・・リヴィの時の様な奇跡を信じてるのか

腕も再生すればいいんだけどな

部屋中に突風が吹き荒れた、シュウザーの吐いた息だ


それによって砂煙は上空に舞い上がり周りの光景が映し出された

後方に透明な術壁が展開されていた、なるほど・・・あれで天銀を防いだのか

怪我人はいそうだが死人はでなかったらしい感じだ


そうしていると玉座の後ろからゆっくり彼が歩いてきた

階段手前で立ち止まると牙をむき出しに口を開く


『小癪な、まぁ良い!遊びたいなら遊んでやる!そいつはどのみち助からん』


『へへっ、ナッツ付き合えや』


『ええグスタフさん、今日生きてたら明日の特訓は無しでお願いします』


『クフフ!俺も当分そうしてぇな、ルルカに言われてもしねぇ』


2人はそんな会話をしながら前に歩き出した

俺の横を他の者が通り過ぎた


『償いの為に戦うか・・・くっそ・・』


愚痴を吐きながら虎人族のチェスターが前に出て来た

彼の部下はもう戦える状況ではなさそうだ、後方の壁で5名倒れていた


そしてまたシュウザーに向かって歩き出す者がいる


『ようやく誇りを全身全霊みせる時がきたか』


『お供します』


『我らファルカ様と共にあり、シルフィー様の武の存在が逃げる事は出来ぬ』


鳥人族の衛兵長ファルカと部下2名が体毛を赤く染めあげた状態で彼らも歩き出した

ファルカはご自慢の槍、黒鵙クロモズを持ち部下と共に歩く


『勝てる勝てない関係ない、国の為に動くか動かないかだ』


ボロボロの姿でガーランドが俺の横を通り過ぎた

生き残っている獅子人族も少数名乗りを上げていた

バルトは立ち上がろうとしているがお前が大丈夫なのか?


『生きてたらラフィーナちゃんにデート誘うニャ』


殆どシュウザーの吐息で吹き飛ばされていたシャオもトボトボ前に歩き出した


バウは倒れたまま動かない・・・生きているのかもわからないくらい動きを見せない

俺は彼らを見守りたい気持ちはあるができない


ベベルが俺の手を握り口を開いた


『テレポート』


俺の視界が一瞬グニャリとなったと思うとすぐに目の前が狼人族の集落についたのだ

話はタツタカから聞いていたよ、他人の手を握るとその手の主も移動できると

言った事がある場所に

アバドンは流石に言ったことないらしくここから向かう様に俺が一騎打ちしている時ナッツが計画していたらしい、本当に有難い奴だよお前は


『・・・そんな、嘘でしょジャン』


横を見ると食堂の入り口でガーランドの妻であるクローディアさんと一緒にいるルッカがそこにいた

偶然にも目の前に出てきてしまったか

ルッカは俺に近付いてくると腰につけていたポシェットから薬草を取り出して左腕が無い部分に押し付けた、止血だろうな

ルッカの治療は必要だ、じゃないと出血多量で死ぬかもしれん



『ぐおおぉ・・・う』



思い切り押されたので鈍痛に似た痛みが襲う


『なんでこんなことになんで・・・なんでこうなるのよ・・』


『シュウザーはセブンスだった・・・勝てなかった』


『そんな・・・』


ボロボロと泣き出したルッカは俺の服を無理やり脱がして体の正面にも薬草を塗ろうと芝生に仰向けにされた、そうしているとベベルが小さく呟いた


『娘・・・絶対にアバドンにこやつを・・死ぬ気で連れ・・・て・・いけ、そうじゃないとシュウザーには・・・かて・・ぬ』


そう言ってベベルは倒れてしまう、魔力切れだろう

攻撃に術を沢山使って最後かなりの魔力を使ってテレポートしたんだカツカツだった筈


ありがとうベベル


『ジャフィンさん!?』


ルッカから薬草を塗って貰っている最中に食堂の中からケインが現れた

直ぐにケインにお願いをした、一刻を争うのだ・・・最悪時間をかけると俺が死ぬ


『ケイン・・吠えて雷狼を・・呼べ早く』


俺の耳には腎臓が脈打つ音が大きくなる、早くしないとマズイ

そのうち意識も途切れそうだ、血が傷口から沢山出る


『あ。。は・・・はい!』


ケインは直ぐに遠吠えの様に泣き始めると俺はルッカにも頼みを言った


『ルッカ頼む、何としてでも雷狼をアバドンに連れて行くように説得してくれ、彼は人族の言葉がわかる』


『わかったわ』



俺たちの宿舎である大樹の上の家から勢いよく雷狼が走ってきた

彼が俺の近くに着くと同時にルッカは治療を終えたらしく

近付いてきた雷狼をいきなり全力でビンタした


ケインとクローディアの目が点になっている、俺もだ


『死ぬ気でアバドンに連れて行きなさい!ゼファーの願いが叶わなくなるのよ!?それでもいいの!?』


雷狼も似合わないくらい目を見開き耳をピンと上に伸ばして固まっていた

今の展開を予想できなかったんだろうと感じるリアクションだ

雷狼は切り替えたらしく俺に歩み寄ってきた、傷口の匂いを嗅いでいるが何をしているのだろうか


『何をしてるのよ・・・早くしないとゼファーが待ち焦がれた魔天狼と会えなくなるのよ!』


ゼファーの今一番楽しみなイベントだ、彼は魔天狼の者に会えると知ると高速で尻尾を振る愛らしい犬になる、主の願いを潰す行為が部下の雷狼はしないと思いルッカがそう言ったのだろうな、良い


だが雷狼の行動は意外な事となる

軽く後方に飛ぶと大きく息を吸い始めた、何かをする気だ

それがわからなかったがケインが即口を開いた


『耳を閉じてください!!!!!!!!!』


『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!』


強大な咆哮が響き渡る、なんて大きい声だ

鼓膜が破けるかと思ったぞ?ない左腕はある部分からギリギリ耳を隠せたので大丈夫隠せた

だが二の腕で耳を隠すと言う行為に慣れず不完全であった為、左耳だけじんじんしている


『ケイン・・今のはなに?』


ルッカがそう質問するとケインは簡潔に答えた


『主に危険を知らせる種の咆哮です』


『なぁケイン、雷狼は何をしようとしてるのか聞けるか』


俺のお願いにケインはハイと頷いて雷狼と軽く話した

直ぐに声に出して説明してくれた


『ゼファー様に貴様の危機を伝えた、主は直ぐにでもここに駆け付けるだろう』


ケインが雷狼の真似をしてそう言うと俺は聞く

俺達が言った方が都合が良いと思うが


『いつ着くんだ』


『ウォン!』


雷狼は一回吠えるとケインが直ぐに口を開いた


『・・・もう来たぞ』



ケインの声が終わると同時に巨大な雷が上空から狼人族の集落に降り注がれた

周りの狼人族はその異常な光景に混乱していたが俺はとある気配を感じた

俺が空を見上げると1本の雷が俺たちの近くに落ちた、地面を深く抉り砂煙が舞う


砂煙から異常なほど大きいシルエットが現れた

狼人族の民やクローディアは恐ろしい物を見る様な目をしていた

その煙の中から声が発せられた



『お主は約束がある筈だジャムルフィンよ、死ぬことは許さぬ・・・』


真剣な顔で俺を睨む

十天の第10位である雷帝ゼーブル・ファー・テンスが10秒でアバドンから来た

獣王シュウザーは5mで驚いたが彼は10m、久しぶりに見るとヤバイ

規格外過ぎて俺達は声が出なかったし彼の姿が現れた瞬間全ての狼人族は深く彼に平伏した

額を地面につけるくらいのレベルだ


『ここではゼファーさんは神様として崇められているんだって父から聞きました』


ニヘッと笑いケインがそう言う

雷狼はフッと鼻を鳴らす、俺が呼んだんだがどうだ?みたいにこっちを見るな・・だが助かった


俺は痛みと遠のく意識に抵抗しながら彼に言う


『ゼファーすまない、今すぐアバドンに連れて言ってくれ頼む!君が興奮して気絶しそうなくらいの魔天狼の情報がある・・・』


『なに!?!?』


大きく驚くゼファーが高速で尻尾を振る

可愛いが真剣な話をしなければ


『アバドンで職の道に入る、雷狼で向かうからその間獣王シュウザーを抑えてほしい・・・頼む』


俺の言葉にゼファーはお座りし即答した


『転移石使ってアバドンに行けばよい、一瞬だぞ?2つやろう・・・最初のはアバドンに指定している転移石だ、2個目はここの集落に設定しよう』


ゼファーは軽く頭を揺らすと彼の首周辺の体毛から石が2つ落ちてきた

これが転移石というのか・・・


彼は2個目の転移石?と言うのに何かを込めて光らせた

光ったと思えばその光は直ぐに消えた、多分ここの場所の設定か・・・


そんなアイテムがあるのか・・・てことはこれでアバドンに即転移できて終わったら即ここに戻れるのだ

なんて有り得んアイテムだ


『時間が無ないぞ番のメス、彼と一緒に石を握ってアバドンと言え!戻る時は狼集落と言うのだ』


『狼・・し・・集落』


ゼファーの説明にルッカは少し名前のセンスに困った様だがすぐに切り替えて転移石2個を拾うとアバドン転移用の石を2人で握りしめた


『さて・・・互いの利益のために少し戯れにいこうかバッハよ』


『ワオン!』


雷狼の名前はバッハというらしい、バッハは尻尾を大きく揺らしてゼファーについていく

嬉しそうだな


ゼファーはバッハと神殿のある方角へと歩き出す瞬間俺は彼に忠告した


『ゼファー!獣王はセブンスだぞ!!!』


『それがどうした?』


振り向いてゼファーがそう強く言う、彼の表情は無表情に近い感じであった

失礼を承知で俺は再び口を開いた


『ゼファーでもキツイ相手なんだぞ』


『それはお主がまだ我との闘いで我の力を測り切れていない証明だぞ?まだまだだな・・・まあよい、番のメス!はよいけ!こやつが死ぬぞ!!墓には部下が待機しておる!』


『アバドン!』


待てと言おうとした時には俺たちはアバドンの中央である巨大な大樹の下にある広い場所へと転移していた、目の前には墓がある、本当に凄い石だ・・・後でほしいから聞いてみよう

ゼファー、頼んだぞ・・・死ぬな


『ワン!』


『きゃ・・・』


ルッカはすぐ横にいた別の雷狼に驚いていた

数は20頭くらいいる、意外といるな・・・・

ヤバイ意識がだんだん薄くなる・・・もう少しだ


『ジャン・・・もうすぐだからね?もうすぐよ?』


泣き止んではいたがまた泣きそうな顔をしてルッカが言う

墓迄2m、ルッカが必死で引きずってくれた

墓の周りをゼファーの部下である雷狼が囲んでいた、守ってくれてるのだろうか

俺はルッカの頭を撫でて約束をした


『大丈夫だ、待ってろ』


『わかった』


ルッカが俺を墓の正面に座らせる

俺はゆっくりと目を閉じて唄の第一節を唄った



銀色の丘で犬が泣く

何を願って吠えるのか

何に向かって歌うのか

どこまでも続くその咆哮

十年百年千年と

時代を超えて届く声

未来に乗せて吠えるのさ

貴方の想いは大地へと

私と共に眠るけど

あなたを照らしてくれるでしょう

銀色の犬が立ち上がる


お前の為に敵を討つ







唄い終わるとノアの声が聞こえた


『彼の帰りを待ち続ける』



俺はガウガロの存亡をかけて深い意識の底に落ちていった


ゼファー『まぁ為せば成る、行くか』


シュウザー『なんか寒気がする』


グスタフ&ナッツ『??????』

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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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