32章 国を賭けた聖戦① 十天第7位の金獅子
『狼撃破!』
俺は槍を思い切り突き出して狼気で固めた銀色の狼をシュウザーに3発飛ばした
狼気がかなり込めた、それに追従して獣化したバウが彼に飛び込む
『これが貴様の力か!滑稽な!』
シュウザーはそれを両手の剣で軽く斬り裂いた、かなり本気だったんだけどなぁ
だが斬った瞬間に斜め横から炎の球が飛んできて彼の頭部が燃え出した、命中だ
猿人族族長のベベルだ、彼は術師らしいな
『ファイアバレットじゃ』
そう言いながらニコッと笑いながら部下を前にして後ろにさがる、怖いらしい
『小癪な!』
炎を消そうと頭を振るがもうバウが目の前だ
バウが頭部の炎を消そうとする彼に体当たりをして吹き飛ばそうとしてシュウザーの体に激突するがビクともしなかったのだ、彼は両手に剣を持ったままガードもせずに受け止めたのだ
よくみるとシュウザーは目を開いていた、燃える頭部を無視して見ていたのだ
バウが1ミリも動かないシュウザーに驚いた
『馬鹿な・・・』
『足腰が入ってないぶっきらぼうの突進などこの程度よ、出直してこい』
シュウザーは剣を空中に投げると彼の顔面を掴んで後方に投げた
地面を削りながら一番後ろの壁に激突して止まった
空中に投げたシュウザーの剣は既にシュウザーが掴んでいた
シュウザーが思い切り頭を振ると炎が消える、ワザと隙だと思わせていたんだ、炎を消そうと思えば直ぐ消せたのか・・・
『ぐ・・おおお!』
奥でバウが立ち上がろうと力を込めている
俺達は直ぐにシュウザーにとびかかる
ナッツが前に飛び出してグスタフと俺が続く、ガーランドが横から先に飛び出していたがシュウザーが剣の腹部分で彼を吹き飛ばして斜め後ろに吹き飛んでいった
シュウザーはナッツを見て剣を振り下ろす
それを受け流そうと剣を上に構えたのだがシュウザーは大きく息を吸ってフッと大きく吐いた
『えぇ!本当ですかぁ!』
風圧でナッツが吹き飛んだ
『マジかよ!』
グスタフがそう囁きながら彼に突っ込む
そんなにナッツは吹き飛んでいない、階段の下に転がっていた
俺はそのまま銀彗星で間合いを詰めたのだがそれに反応で来たらしくシュウザーの裏拳をモロに食らってしまいグスタフに当たり彼と仲良く階段下に転がり落ちてしまう
器用な奴だ、剣の間合いじゃないだろうと思ったのだが超接近されて持っていた剣の拳で殴って来たか
場数はあるらしい
『くだらん!バウよ!貴様の獣化は飾りか!?族長の癖にその程度か!』
シュウザーの大声にバウは彼に走り出した
『バウはこの国でもシュウザーの次に強い筈なんだがな』
倒れて立ち上がる俺とグスタフの横でバルトがそう言っている
バルトは状況判断で最初は動かない様にしている、まぁ交代しながらだ
もしシュウザーと戦う事になった場合の作戦だ
皆で向かわずに交代で休ませない作戦だ
疲労は最大の敵だ、どんなに強くても疲れたら終わりなのだ
生きる物には疲れが絶対に襲い掛かるものだ
『百花乱舞!!』
ファルカが槍を使いシュウザーに襲い掛かる
無限とも言える槍の突きがファルカの手に握る槍から放たれるがその技を巧みに両手剣で全て弾いていた
在りえないとばかりにファルカが驚く
『馬鹿な!』
『早いだけで力がこもっておらぬ』
『ぐお!』
シュウザーの剣撃をギリギリで避けて後方に飛ぶ
バウの部下も各種族の兵も彼に襲い掛かるが子供と遊ぶかのように剣の腹で殴ったり蹴り上げたりしていた、何人かの部下はもう動けないくらいのダメージだ
当たり前だ、規格外の大きさの重量をモロに食らうと立てない
最悪死ぬだろうが獣族だから死にはしないだけだ、俺はまだ体が震えていた
シュウザーの裏拳のダメージが消えない
『回復してろ!』
グスタフが俺の肩を叩いて走っていくとナッツも走る
俺はほんの少しこの震えを止める事にした
彼にとっては俺は小さい、1つの攻撃が致命的
俺があいつに体当たりしても部分的な痛みしかないだろう、痛みは無いと思うが
逆に俺が彼に突進されると体全体で受ける事になる
そんな感じのダメージだ、痛いと言うより重い
グスタフの重さが軽く感じるくらいに
『ヘルファイア!』
ベベルがファイアバレットの上位術を放った
赤黒い熱線がシュウザーに向けて飛ぶ、凄まじい速度だがシュウザーはそれを剣で受け止めて術は斜め後ろの壁に飛んで行った
その壁は激しく燃えて次第に溶けだしていく、すごい威力だ
炎系の最上位の術に近いと聞くが
『火傷しそうな火だな、火遊びは感心せんぞベベル』
『あの速度で飛ぶ術に反応するのか・・・驚いた』
ベベルは驚きながら固まった
グスタフはシュウザーと軽く3回ほど剣激を交えると口から吐く彼の息でバランスを崩して俺と同じく裏拳されて吹き飛んできた
俺が立ち上がると吹き飛んできたグスタフが口を開いた
『へへへ・・・やれることはやったぜ?』
なんの意味だろうと思った瞬間にシュウザーが口を開いた
『貴様・・・初めからこれが狙いか・・・』
『避けようと思ってねぇさ・・・』
シュウザーの手の甲にグスタフの大剣が刺さっていた
貫通している、その大剣を直ぐに抜いて階段下に投げた
グスタフらしいよ、俺との模擬戦闘でもよくやるあいつの手だ
肉を切らせて骨を断つ、自分を犠牲にダメージを与えるのはグスタフの十八番だな
シュウザーは油断した
だが彼は負傷した左手でまだ剣を持っている
『シルバシルヴァ!』
発動させて俺は全力で槍を突いてシルバーダンスを放つ
彼と同じくらい大きい4m以上の銀狼がシュウザーに襲い掛かる
『面白い犬だ、散歩してやろう!』
シュウザーは右手に持っていた剣でシルバーダンスを斬ろうと真横に剣を振るがそれを飛び越えてシュウザーの肩に噛みついた
シルバーダンスの牙が彼に食い込むとシュウザーが口を開く
『主従関係がまだのようだな・・・俺が上だぞ犬めが!』
思い切り噛みついたシルバーダンスを斬りつけて消滅させた
俺は彼がシルバーダンスを斬った瞬間に銀彗星で一気に加速してシルバーバスターを彼に当てていた
大きい爆発により再び吹き飛ぶシュウザーだがガードが間に合ったらしく今度は踏ん張りギリギリ壁の手前で押しとどまった
両手に持った剣をダラダラと揺らしながら彼は玉座の位置まで歩き出しだ
彼の肩からは血が出ていた、シュウザーはそれを見ると深い溜息をついていた
『ここまでとは、貴様は危険だ・・・俺の野望の邪魔である』
『野望』
『そうだ、俺の野望だ』
シュウザーは獰猛な笑みを浮かべて恐ろしく大きい牙を見せると言った
『俺はガウガロが生んだ恨みそのものだ!!!俺が本当の恨みを知る男だ!』