28話 恐怖政治の始まり
ナッツ『強そうな種族がたくさん・・』
『戦争経験があるのはバルトだけニャ、彼は昔メルビュニアとゼリフタル王国との戦争に数回参加していた時代があるニャ・・・内緒だニャ』
シャオが俺の横でそう口を開く
まぁ人族と関わっていたって事だしな、ここでは禁句なのだろう
兵法家は実戦経験があるんだな
彼以外はそんな大きな経験が無いと思うが
『シュウザー殿、大丈夫なんだろうな』
虎人族の族長らしき者が真剣な顔でシュウザーにそう言いやる
その言葉に獣王は余裕の表情を見せつけて答えた
『無論だチェスター、防衛すれば耐えきれるぞ?』
虎人族の族長チェスターはその言葉で頷き腕を組んで静かになったが静かになれない者がいた
『馬鹿な!最初は押し込めても防衛の限界があるぞ!長期戦になればいかに我ら獣族が人族より力が勝ろうが疲れと言うものがあるのだぞ!!時間がたつにつれて疲労感を覚えて不安が頭をよぎるのだぞ!?南の広大な領地をどうするつもりだ!?こっちを眠らせずに昼夜続けて攻めてくるぞ、そうなれば数の少ないこちらは寝ずにずっと戦うハメになるぞ!?』
バルトが怒号交じりでそう叫ぶがシュウザーは涼しい顔をしているだけだ
なぜそんな余裕があるのだろうか、俺達にはわからない
ナッツが真剣にシュウザーの顔を見ている
両脇にいる戦争派も不安な様子を見せる中でバルトがガーランドに耳打ちをしていた
そうするとガーランドは懐から同意書を取り出してシュウザーに口を開く
『すまないが勝ち負け関係なく人族との戦争をさせるわけにはいかないんだシュウザー』
『ほう、流石に集めたかガーランド』
シュウザーがその同意書8枚が重なった紙を見つめてそう言い放つ
その紙を近くで見た反対派達が驚きの表情を見せてきた
一気にその部屋の空気が悪くなる、獅子人族の老人がシュウザーに怒りだした
『だから無所属も取り込むべきだったのじゃ!不本意だがなぜしなかった!』
杖を地面につきながら階段を登りシュウザーに近付きながらそう怒鳴り散らす
そうだろうな、しなかったんだ・・・わざとだろう
ここからだ
何が起きるかわからないが悪いことが起きることは俺達反対派は気づいた
シュウザーが口に笑みを浮かべている
『黙れ老いぼれ』
そのシュウザーの言葉に獅子人族の老人も驚いていた
反対派の種族も獅子人族も驚いている
そうした状況で虎人族のチェスターは口を開いた
『どうするつもりだシュウザー殿、8種族同盟は気にするなと言っていたではないか』
『ああ大丈夫だ、何をそんな心配なのだチェスター』
『国の決まりは絶対だ、これをどうするなのだ』
『それがどうした?』
『は・・・』
チェスターは彼の言葉に目を丸くしてしまう
俺達は黙って玉座に座る彼の反応を見ていた
他の戦争派も8種族同盟書を見て慌ただしいが蜥蜴人族の族長も口を開いた
『これで戦争も出来なくなるぞ?シュウザーよ、お主も獣王を降ろされるぞ?』
『馬鹿かお前は?降りないぞ?』
『は・・・』
今度は蜥蜴人族の族長が目を丸くしてその言葉に固まる
だがバルトが彼らの様子を無視して彼に言葉を投げかけた
『どういう事かなシュウザーよ』
俺達の誰よりも前に出て彼にそう言ったのだ
この場の全員が聞きたい質問である
シュウザーはその玉座を立ちあがった
『うぉ・・でけえ・・』
グスタフの声が聞こえた
どうなったらそんな巨体になると言うのだ、他の獅子人族は2mくらいな気がするが
立ち上がった彼を見て俺は予想を見誤った・・・4m・・いや5mか
その大きさを考えるのが馬鹿らしくなる
『ガウガロの絶対とはなんだ、貴様等全種族に聞く』
『大昔から国が決めた全種族の法律じゃ!ガウガロが始まってこれより勝る絶対はない』
階段付近で獅子人族の老人が大声で言っていた
ガウガロの法律か。法に強さを持たせることは抑止力に繋がるからいい事だ
他の反対派の連中もそれに同意を示すかのように皆頷いていた
亀人族のガトは目を閉じて静かにしている、彼の部下もだ
『シュウザーさん?どう考えても無理そうっチよ?あっチらはこれが一歩になると思っているのだが』
鼠人族の族長だ、彼もシュウザーに不満を漏らす
そうしているとシュウザーが地面を見つめながら震えだした
どうしたのだろうかと思ったのだがようやく気付いた
笑っていた
『がっはっはっはっは!何を心配しているのだ?』
顔を上げながら大声で笑いだしそう言い放つ
シュウザーは再び玉座に座ると静かに話し出した
『誰がこの国で一番強い?言ってみろ』
『シ・・・シュウザーさんだっチ』
『お主だシュウザー』
『貴殿だシュウザー殿』
鼠人族・蜥蜴人族・虎人族という順で声が聞こえた
それの後に彼に一番近い獅子人族の老人が口を開く
『お前じゃシュウザー、それは今関係はないぞ』
『いいやあるね』
シュウザーは地面に突き刺していた2つの剣のうちの片方を抜いた
その剣の刃を見ながら皆に聞こえるように話した
『俺は法律よりも強い、獣王とはそういう者だ』
『何を言っているシュウザー!?』
ガーランドが動揺して声を出すがそれを無視して彼は会話を続けた
『獣王こそ絶対なのだ、王とはなんだ?飾りか?今までの能無し獣王もさぞ無能だったのだろうとつくづく笑いたくなるわ』
軽い笑いをしながら彼は俺たち全員にその言葉を投げてきた
やはり破る気だ、俺達反対派はそれは覚悟していた
『貴様!獣王になって血迷ったか!獅子人族の恥さらしになるか!』
獅子人族の老人が怒りを表情にだしている、牙がむき出しだ
その老人の言葉にも面倒くさそうに答えた
『老いぼれが口を出して言い時代ではないぞ?俺が絶対だ、法律も種族も何もかも俺の手の中・・・それが獣王だ・・・ガーランドよ・・・すまないが受理できん、俺を退位させたいのならば獅子人族以外の種族の署名を持ってこい、これが新しい決まりだ!』
持っていた剣をガーランドに向けながら彼が言う
バルトはバウやシルフィーに視線を送るとバウが口を開いた
『予想していてもとんでもないねぇ、これが終わったらちゃんとシルフィーにプロポーズするか』
そうハニカミながらバウが言うと両羽を横に上げながらシルフィーがため息交じりで答えた
『本当に緊張感無いわねあなた・・・終わってから聞いてあげるわよ』
『ニャハハ、ベベル?大丈夫かニャ?』
『う~む、怖いな』
シャオとベベルの声だ、ベベルはシャオの質問に苦笑いでそう答えた
本当に破った、予測していても驚いてしまう
確かに王だし国の法律にもたずさわるのだろうが、シュウザーは今変えた
自分の手で、獣王として今迄変わらず続いていた国の法律を変えたのだ
『そんな事していいと思っているのか!?シュウザー!』
ガーランドが一歩前にでてそう言うとシュウザーは即答した
『いい!俺は獣王だ』
簡潔にガーランドに質問の答えを聞かせた
戦争派の連中もどうなるのかわからずに戸惑っている
そんな中獅子人族の連中はその新しい決まりにヤジを飛ばしていた
王にヤジとは珍しい光景だと思っていたがシュウザーの近くにいた獅子人族の老人が階段を駆け上がり彼の前で不満をあらわにした
『決まりを変えることは許さぬぞ!!これ以上泥をぬるでない貴様、お前は王を剥奪されるのじゃぞ!』
『お前は俺の決まりに従えぬと?』
『当たり前じゃろ!!』
老人の言葉に他の獅子人族も同意の言葉がシュウザーに投げられた
だがシュウザーが次に言い放った言葉は俺達が一番予測したくはない言葉だった
『じゃあ死ねジジィ』
持っていた剣で老人の首を一瞬で刎ねた
老人は声を発する暇もなくその首が胴体と離れて階段を転がっていった
階段を転がってからも老人の首は転がり、ガーランドの手前で止まった
『馬鹿な・・・』
ガーランドの体中が震えている、バルトは真剣な目でシュウザーを見ている
シルフィーは口元を羽でおさえ驚きを見せた
バウは目を見開いていて驚いている
グスタフはいたって冷静、ナッツは深呼吸していた
首が刎ねられた瞬間、この部屋が静まり返った
今見ている光景が本当なのかどうなのか信じられない様な面持ちでだ
そんな状況で虎人族のチェスターが口を開く
『シュウザー殿・・これは・・どうして・・』
『王に逆らう者や侮辱するものは死あるのみだが?俺の命令は絶対だ・・いいかチェスター』
その言葉を発した瞬間シュウザーは一瞬でチェスターの目の前に現れた
あの図体でこんだけ素早く動けるのか・・・ギリギリ見えた
玉座から階段下の外側の正面に参列していたチェスターに一瞬で近づいたのだ
シュウザーは彼の首に巨大な剣を当てていた
『シュ・・シュウザー・・殿』
チェスターの部下は動きたくても動けない、シュウザーに睨まれて固まってしまったのだ
その様子を見てシュウザーは彼に入った
『過去のしがらみを断ち切る為に頑張ったのだぞ?終わりにすべきではないぞ?何千年も続いてきたのだ・・・もよや貴様等もここで怖気づいて降りますなんて言わぬだろうな?』
『シュウザーやめよ!』
バルトの声に目もくれずシュウザーはチェスターの首に剣を当てたまま話し続けた
『降りないよなぁ?何千年も続いた恨みをここで諦めるという事は許さぬぞ?降りるのならば族長の首を持って降りよ』
『何を・・言っている・・シュウザー殿』
『今お前は過去の憎悪を背負うからこそ戦争派としてきたのだろ?、約5000年の全てを背負う・・・貴様等戦争派はそこまで考えてなかったのか?俺はその気で立ち上げたのだが・・・もし降りるならば死んで償え・・・5000年続いた感情が偽物だったのならばここで死ね、そんな優しい問題ではないのだぞ?国の繁栄を滞らせた一つの派閥なのだ』
『シ・・シシシュウザーっチ・・』
絶望を彷彿させる表情でネズミ人族の族長の声が聞こえた
『あり・・えぬ』
蜥蜴人族の族長もそう呟いている
戦争派の声の後にシュウザーは離す
『良し悪し関係なく何千年も続いてきた過去の呪いだ、過去の出来事を悪く思う者、過去だったとこだわらない者で別れた・・・5000年もだ』
虎人族の族長チェスターの首に剣を当てたまま蜥蜴人族の族長ゲイルに視線を送り口を開く
『何千年も続いた感情が本物なら戦え!もしここでやめると言うのならば偽りだったという事だ・・・間違いだったという事になるぞ?そうなれば今までの国の溝を作ったのが我ら戦争派という事になる、貴様等族長1人の首で償える年数じゃないがこの俺が族長の首だけで終わらせてやると言っている・・・今までの全てが間違いだったと思うならば死ね、でなければ従え、どちらも無理と言うならば一族諸共殺しつくす』
とんでもない事を彼は平気で言い放った、在りえない言葉をだ
最悪一族全て根絶やしか・・・冗談にしてはきついぞ
『シュウ・・・ザー・・・』
『どうした?恨んでたのだろう人族を?そして裏切者を生んだ種族を?どうした?今になって億劫になったか』
『なぜこんな事になるのだ』
ゲイルがそれを口にするとシュウザーはチェスターを解放してゲイルの顔の前に剣を向けて口を開く
『ここまで来てしまったのだ、その時代に俺達が生まれただけの事だ・・・恨みだけで終わる生活だと思っていたのか?いいや間違いだ、いつかは清算しなくてはいけない事が今来ただけよ、ゲイルよ、貴様は自分の感じているのは本物か・・・偽物か・・言え』
『お・・俺は・・・過去に散った英霊の・・為に』
『ガーランドの連中を見ろ・・・貴様等見ろ!』
シュウザーの言葉で戦争派の者達殆どが俺達を見ていた
入って来た時に見せた表情じゃなかった、いかにも怯えに似た感情である
『恐怖政治・・・か』
ナッツが囁いた、そうだ
これは暴君の恐怖政治だ、強引に支配しようとしている
老人の首を跳ねたのもそれをするための前座だろう、最初は脅しだろうな
『シュウザー!やめろ!我々の仲間じゃないか!!!』
ガーランドがそう言ってもシュウザーは黙ったままだ
ゲイルは目の前に剣先があることに恐怖を感じて震えていた
『どうだ、こいつらを見て憎いと思うか思わないのかハッキリ言え・・・思わないのならば俺が斬ってやろう、責任とはそういう事だ、今まで彼らに投げかけた罵声や距離感も・・・嘘ならば過去の蜥蜴人族の歴史が間違っていたという責任を持って命を捧げよ』
そのシュウザーの言葉にゲイルは体中震えながら涙を浮かべて答えた
『わ・・私は、先祖達の為に・・頑張ろうと・・しただけだ・・・、ガーランド達に・・・特別な嫌悪は・・・ない・・・だか・・』
涙声でゲイルが続けていった
『自分の為じゃなく・・過去の先祖たちの為に頑張ろうと・・・自分の感情を捨てて育ったのだ・・』
『過去など知らぬ、お前の感情はどこだ?』
『お・・俺は・・・こいつらを心の底から憎んだ事は・・ない』
『じゃあ裏切者は死ね』
ナッツ『設定ですが』
鳥人族は下半身の服だけ着る(上半身は基本着こまない、羽毛があるしそれが服代わりになる)
だけど戦闘員は胸当てなど軽いレザーアーマーやチェストプレート及びブレストプレートを着込む時はある、ファルカはブレストプレートを着ているし部下も来ている
他の種族は人族みたいに服を着る