11話 教育の違い
グスタフ『特訓だぁ』
ナッツ『』
俺は食堂で夜食が用意できるまで待つことにした
テーブルの反対側には熊人族のバウと鳥人族のシルフィーが座っている
バウはグラスに入った何かのジュースを飲みながら料理を待つが
『ねぇバウ?それお酒よね?』
『シルフィーいいではないか!今宵は人族も含めた同盟だぞ?』
『はぁ、調子いいんだから』
シルフィーが肩を落として額に手?いや違う羽を当てている
どうやら彼は酒飲みらしい、豆からできた酒とバウは言っている
シルフィーをよそに彼はグイグイ酒が進んでいる
『ごめんねぇジャムルフィン君』
『いえいえ、お気になさらず・・・仲が良いですねぇ』
『まぁ理由はわかんないけど昔から熊人族とは腐れ縁なのよ』
俺とシルフィーが話しているとバウも会話に入ってきた
『がははは!シルフィーを口説いても中々落ちないんだよなぁ!』
『残念ねぇ、私は鳥人族よ』
『盛大に振られたわ!』
そう言われてバウは笑い飛ばす
そんな彼の性格が俺は羨ましく思う
酒を飲めば言えることも言えるようになるか・・ふむ
バウがグラスをもう一つ用意して豆酒をつぐ
そして俺の前に置いたのだ
『さぁ大人の階段だ!同盟の盃としようじゃないか!』
絡みが面倒なおっさんにしか見えん
俺の村にもそういやいたなこんな人
誰だろうか・・・・くっ・・・父さん!
『都合のいい言葉使って飲ませようとして・・・』
シルフィーがバウの頭を翼でバサバサ叩く
バウは心地よさそうだが俺は構わず渡された酒を飲んだ
『おお!おお!人族もやるもんだな!』
グビグビと俺は一気に飲み干した
少し苦いし美味しいとはまだ俺には感じない味だ
大人になればわかるのだろうか
『付き合ってもらって悪いわね』
『初めて飲みました』
『えぇ!?本当?大丈夫』
『はい』
シルフィーさんが俺の顔を覗き込むが俺はポーカーフェイスを決め込む
喉が少し熱いかな、それもすぐに収まったと思いきや
『気に入ったぞジャムルフィンよ!』
彼は俺を認めながらグラスに再び酒をついでいた
シルフィーがあなたの真横で細い目で見ているのだが
多分彼の顔は赤いのかもしれないが毛で見えない
そして気づいていないのだろう
幸せな性格だな
『そういえばここの人達は5000年前の出来事を最近の歴史だったみたいに話してますが・・』
俺がそんな事を言うとシルフィーは答えてくれた
『簡単よ?人族は100年生きれるかどうかわからないじゃない、獣族は普通に過ごしてれば200歳は軽く超えるの』
『そこらへんは聞きました』
『あとは簡単よ、人族は途方もない世代を重ねるけど私達は長生きな種族でも400歳よ?だいたい15世代分くらいだし人に例えると1000年前みたいな間隔かなぁ、歴史の勉強で昔の事は習うでしょ?』
『1000年前の歴史は濃く教わりますね』
そういう感覚か、確かに人とは違い長生きだから捉え方がまったく違うんだ
しかも大事な歴史は先の時代に残すからシルバの時代の歴史は各種族でも記録が多いらしく学びの題材になるんだとか
『だが種族毎に5000年前の歴史の学び方が違うのがなぁ』
バウが酒を飲み干したらしく再びグラスに注ぎながらしんみりと俺に口を開いた
『確かにねぇ、あたしはシルバ様は神化されてたわ』
『俺は熊人族の好敵手扱いだったなぁ!』
またバウが笑いだす、俺はそのことについて少し聞きたくなった
シルフィーに視線を向けて俺は聞いてみた
『種族によってシルバはどんな印象何ですか』
『種族によって先入観が違うのよ、悪く教える種族もあるわね』
『どんな感じにですか』
『シルバ様は判断を誤った人族と関わらなけばこんなことにならなかったとか国を捨てて逃げた裏切者だとか色々よ』
シルフィーが眉をひそめてそう俺に答える
人間でもある偏見教育か、話によると種族による学校があるのだ
そのせいで種族で先入観が違ってくる
起きた事実は正しく教わるらしいがどう思うか違うのだ
それではガウガロにも弊害が起きる
『今迄の獣王はそれをやめさせなかったのか?』
『各種族長が反対したらしいぜ?獣王の言葉でも動かない硬派な性格だこってぇ』
やけ酒気味にバウが一気に飲み干す
溜息が聞こえた、シルフィーだ
『はいバウここまで!お酒は料理が来てから!』
『ぬ・・頼むよシルフィー』
熊の耳が垂れている、酒好きの様だ
そうシルフィーに頼んでもシルフィーが羽をバッテンにクロスして反対の意を示す
バウの頭が垂れた、諦めた様だ
俺は少しその学び舎について不信感を感じた
ここはガウガロ国の筈だが獣王でも動かない決まり事でもあるのか
確かに民主主義ならトップの判断で勝手に変えるなどしにくいだろうな
『昔は平和は国って言われてた筈なのになぁ、そういえば70年前かなぁ・・確か【獅子族の集落で誰かが死んだ】って聞いてから少しずつガウガロも溝ができ始めたわね』
『溝?』
『そうよ?何があったかはわからないわ、多分獅子族のがあまり表に出したくなかったのかは知らないけどぱったりその話が無くなったのよね・・・何があったんだか、まぁ種族の問題だしいいけどさ』
シルフィーが羽を広げて首を傾げていた
死人が出ても種族の問題だからそんな表立っていないのだろうか
『シルフィー』
擦れられた犬、いや捨てられた熊の様な顔でバウはシルフィーを見て呟く
シルフィーはまた彼の頭を羽で叩いて口を開いた
『避けは料理が来てから!』
『ぬぅ・・』
とことんシルフィーに弱いなバウ
『バウの種族はシルバは具体的にどんな教育で教わるんだ?』
バウは腕を組み胸を張った
『熊人族と真正面から肉弾戦をしてくるわかっている奴だった!てさ、己の肉体のみで熊人族と力勝負してたらしいし酒の飲み比べも良くしてたらしいぜ!』
酒・・・それはいいか
『シルフィーは?』
『慈悲深き思いやりのある獣王であった!とかどんな種族でも決して見捨てない良き王だった!とかよ・・・信仰でも始めるつもりかしら鳥人族は』
軽く俺は笑ってしまう
この2人の種族の教え方は良い姿で教わるのだろう
色々聞こうとすると食堂にクローディアとケインが入ってきてケインが口を開いた
『夜食が出来たので運ぶの手伝ってもらっていいですか?』
『酒ぇぇぇぇっぇ!!』
『うるさい!!!』
バウが立ち上がりテンションが上がるがシルフィーのの羽がバウの顔面を叩き彼は顔を抑えて椅子に座り直す、もう夫婦でいいんじゃないか?種族が気にならなくなってきたよ
『俺は2人を呼んできてから運ぶの手伝います』
俺は食堂をでてグスタフとナッツを呼びに走り出した
バウ『酒・・・』