22話 十天第4位ケサラ・パサラ・フォース
ルッカ『えぇ・・何でいるの・・・』
『君達僕に何か用があるの?』
その綿の物体はそう俺たちに言い放つ
このフワフワした綿の物体はケサラ・パサラ・フォース
そう十天のフォースである
どうしたもんかと緊張が走るが答えが出ない
『いや、ただ館を散歩してたら不思議な物があるなぁと』
俺はそう言うと綿はぴょんぴょん跳ねながら俺たちを見回している
迂闊な質問をすれば殺されるんじゃないかと言う不安が3人を襲う
『まぁ見た目が変わってるからね、僕は花の精霊だし』
『花の精霊?』
綿の言葉にルッカが呟く
精霊?はて・・そんな稀な存在は滅多に見れない筈だ
十天に精霊がいたのかと驚きを隠せない
無謀なのか勇敢なのかルッカはその綿を持ち上げて質問を投げかける
『精霊さん起こしてごめんね?ただなんでこんなところにいたのかなって』
『少し事情があって逃げ回ってるんだ、それで夜だし人族の領地を借りて寝てたんだけど』
どうやら訳ありらしいが十天が逃げる存在?気になる
俺はルッカに続いて質問してみた
『誰からか言えますか?』
ルッカの手のひらの綿はすぐに口を開く
『ファースト!さっきまでいたけどもう遠くにいったらしいし』
俺たちは再度固まる、あいつから逃げていたのか
理由は怖くて聞けないが・・・まてよ?
リヴィが初めて会った時もポートレアでも言っていたじゃないか
探し物って
コイツの事か!?
ナッツが綿を目の前にマジマジと見ている
余程珍しいのだろうか、こいつは花の精霊だと言う
害は無さそうだが逆鱗に触れない様に聞いてみよう
『あの羊にか、なんで逃げているんだ?』
『多分僕の力が必要なんじゃないかな、他の十天から聞いたから詳しくはわからないけどあいつ不気味で逃げてるの!魂食われそうだし』
『魂?』
『うん!あいつ魂を食えばその者の力を使えるの!』
初耳だ、そんなことが出来たのかリヴィは
取り合えずこの状態は俺たちが不味い、彼女に怒られそうだがこの精霊を説得してみよう
『ここじゃ寒いし館の中の方が暖かいぞ?』
『ほんと!?ご飯ある!?』
『沢山あるわよ?』
『わぁい!』
ルッカの手のひらで喜ぶ十天のフォースである綿
こいつ・・・害を感じられない
俺たちはそのまま館に戻ると丁度スカーレットさんとルルカにである
怒られると言ったのは彼女の事だ、十天だしボコボコじゃすまないかもだが
説得できるだろうか
『あら、ジャフィンさん?手に持っているのは一体・・・あれ?』
スカーレットさんの目が細くなり綿を凝視する
隣のルルカは何だろうな的な顔で綿を見やる
すると彼女は驚いた顔で口を開いた
『花の精霊!?どこで見つけたんですか』
そう言うとその綿は口を開く
『始めましてお姉さん!僕花の精霊のケサラ・パサラ・フォースだよ!』
『フ・・・フォース・・・』
彼女も固まったらしいがルッカが直ぐに説明をする
隣のルルカも固まっていた
『待ってくださいスカーレットさん、この子リヴィから逃げている害のない精霊なんです』
ルッカの言葉に彼女は少しずつ肩を震わせる
ふつふつと怒っているかと思えば、笑っていた
静まると彼女は口を開く
『まさか幸福の精霊と言われた存在が十天でしたか、花の精霊は争いを好まないのは有名ですし大丈夫です・・・何か食べますか精霊さん?』
スカーレットさんが両手を差し伸べるとルッカの手からピョンと飛んで飛び移る
『うん!僕!果物が食べたい!!』
『あらあら果物ね、今用意しますよ』
『わぁい!』
食堂の方へ消えていく彼女と・・・綿
その光景を俺たち3人は何故か見送った
『フォース・・・花・・・精霊・・・』
ルルカの声だ、彼女も取り残されていた
そのまま俺たちも食堂に行くとテーブルに果物が並べられており
綿は元気よく食べていた
その横でスカーレットさんが笑顔で見つめていた
『スカーレットさん、知ってるんですか?』
俺たちも椅子に座り質問するとすぐに口を開いた
『昔から花の精霊は幸福の精霊とも言われています、豊作も幸せも愛も司る精霊として大昔から人に祭られていた精霊ですよ?』
要するに人間にとってご利益がある精霊か、なるほどな
俺は館の中で見つけたことを彼女に話した
『フフフ、今年は良い事がありそうですね・・・楽しみです』
嬉しそうだ、だがフォースだ
『精霊さんは何でフォースなの?』
ルッカが唐突に聞くとフォースのケサラ・パサラが答える
『僕と仲が良かったフォースが寿命で死ぬときに傍にいたんだけどなんかくれたんだ、僕戦う力ないんだけど』
仲間の最後を看取る時に託された感じか
そう言った理由で十天になったのかぁ
十天の事情も何かと深いのだろうなと無駄に俺は考える
『精霊さん、隠れ家にしたいならいてくれてもいいのよ?ここならバレないわ』
スカーレットさんがそう言いながら綿に林檎をあげると
綿は即答した
『うん!いる!ここ居心地良い!』
『えぇ・・』
ナッツの声だ、予想外ですよみたいに囁いた
俺は色々と綿に質問をしてみる
そするとかなり重大な事を聞けたのだ
『精霊さんを捕まえて何をしたかったのだろうか』
『多分森の復活術!僕はこう見えて花の精霊王なんだ!だから枯れた森一つを元通りにする力があるんだけど森が大きすぎると僕の命も危険なんだ・・・だから僕を食べてその術も奪って僕の魂を使って森を復活させたいんだと思う!そう他の精霊から聞いたんだ!』
『精霊王・・・』
スカーレットさんが目を見開いて固まる
そんな芸当できるんですかスカーレットさん
俺たちも固まる、花の精霊の王か・・
『木じゃなく花なのか?』
俺が質問すると綿は即答する
『木の精霊も元々僕らの存在から変わった精霊さ!花が元祖なんだよ、僕の魂を代償にアバドンを復活させたいんじゃないかな』
アバドンと言う言葉に俺は目を細めた
リヴィがアバドンを復活させたい
答えが出てこなかった・・・
するとナッツが質問したのだ
『なんでリヴィがアバドンを復活させたいんですか?』
『彼にとって思い出の場所を治したいらしいよ?詳しくは知らないけど』
スカーレットさんも口元に手を添えて考えている
俺たちもだ、あいつも何か関係しているのか?
『彼にことについてどこまで知ってますか?』
ふとスカーレットさんが言う
果物を食べ終わった綿はテーブルの中央に移動して話し始めた
『一番強いけど謎が多い者かな?僕も千年生きたけどアバドンに固執してる理由はわからない・・けどねぇ』
綿、ケサラ・パサラ・フォースは続けていった
『大事な時間を取り戻すためってのは僕が小さい精霊の時に聞いたかな』
大事な時間?今の俺にはこの言葉に意味がわからなかった
グスタフ『俺は部屋でうたた寝してて気づいてないんだよな』
ルルカ『暴れるから駄目なのだ!』