10話 男子会
グスタフ『あれなんだ?』
ナッツ『けつ!』
『おいおい・・なんだこりゃ・・』
俺たちは風呂の為に脱衣場にきたのだが
不可思議な物を見てしまったのだ
黄色く長い髪が目立つその男のうつ伏せの姿
『・・・死んでるんですか』
ナッツがボソッと呟く
俺はその光景を無言で見ていた
ケツを出して大の字で倒れる男
多分だが風呂に入ろうとして頑張ったのだろうがそれも虚しく
脱衣場で意識を失ったのだろう
グスタフが軽く蹴ってみる
『・・・ぐぉ・・』
生きているらしい
俺は声をかけて見ることにした
『・・・カール?』
『その・・声は・・』
カールだ、スカーレットさんが言った通りに今日まで特訓と言う名の合宿だったのだろう
終わって最後の風呂に入ろうとして気を失ったのだ
そんな出来事に出会いながら俺たちは風呂に入る事となる
共に戦った者同士なんか悪くはない感じである
風呂場にカールも入れて俺の戦術スキルの予想会が始まっていた
湯船につかりゆっくりとだ
『俺は剣術だと思ったが彼が使う姿を想像できぬな』
カールが湯船で寛ぎながらそう口を開く
確かに剣は本当に使ったことないし使い方をあんましらない
『武器スキル以外ですかねぇ』
ナッツがそう言う、稀に武器スキル以外でもつくのだ
戦術スキルとは戦闘によって取得できるスキルが主だ
武器だけじゃないけどそれ以外がつくのは稀らしい
『武器スキル以外はてんで知らねぇなぁ』
グスタフが諦めた様子で背伸びをする
武器以外での戦術スキルか
確か・・・一撃とか技強化とかあったな学園で勉強した時に
その類かなぁ
『にしてもだ』
カールの言葉に皆目を向ける
彼は頭に乗せていたタオルで顔を拭きながら続けて言う
『先ほどの呪いの話が本当なら今でも真の本気じゃないのだろう?』
そう言われればそうだがこの職に限っては戦術スキル1つは微々たる物じゃないのかと俺は思ってしまう
職自体の能力が高すぎて1つくらいなくても強いのだ
でも何が隠されているかはわからないが発動できずに成長は続けているだろう
期待はしている
『俺も今日でなんとか魔術レベルが1上がったのだ、これで魔力感知はもともと【中】だったし術の構築時間さえ軽減できれば・・・』
カールは俺と同じ地獄の特訓を味わっていたのだから上がるだろう
痛覚耐性も所得したってさ、痛かったろうな人形の激痛攻撃
来月は体術も1くらいは上げたいと意気込んでいた
『来年が本番だぞグスタフ』
カールがグスタフを見てそう言い放つ
『俺も出る予定だ、今度こそ決着つけようぜ』
グスタフも嬉しそうに答える
ナッツはまた湯船を軽く泳いでいた、広いのだからまぁ気持ちはわかる
『そういえばだが俺も冒険者で仲間を作ったのだ』
彼はそう言うが実はカール
今迄は1人で頑張っていたという事を今暴露した
仲間も作らずに1人黙々と冒険者として
そして依頼があれば王国の警備などもこなしていたというのだ
『お前ぇ1人だったのかよ・・・』
『ああ・・・』
グスタフの言葉にカールが返事をする
実はこの黄色髪男、勇気が無くて冒険者を増やせずにいた真実を語った
それならなんで俺たちと話してるんだよと思うが
彼なりの苦労があるのだろう
『誰と組んだんですか?』
ナッツがおもむろにそう言うとカールは苦笑いしながら答えた
『ミミリーさ』
なんだなんだ?面白い展開じゃないか
何故か俺たちはカールを囲む
少し彼は驚くがすぐに会話を続けた
『大会後意気投合してしまってな、今はエーデルリッターと言うチームで活動するつもりだ』
チーム名も出来て2人で頑張っていくのか
今迄よりもやりやすいクエスト消化が見込めそうだと彼は口にする
昔から声を掛け合う程度の付き合いはしていたらしい
今回を理由に手を組んだのだ
俺たちは普段しないようなトークを楽しむ
カールは既婚ぽい話を聞いたことは選手席で聞いたような気がするが
独身の20代前半らしい、いつもの噂による・・かもしれない、が
・・・だろうになった話だ
ミミリーは20歳に来年なるという事を聞く
『俺の噂は殆ど嘘だぞ?独身だ!』
顔を赤くしてカールは言う
そんな戯れた会話を俺たちは湯船で楽しんだのだ
カール『何故こう出会うのだろうか・・』