42章 【武人祭4日目】安静と約束
ナッツ『俺のセリフは?』
ルルカ『ないのだ!』
『ふぅ・・・』
『暫く安静でお願いしますね、傷は治しましたので』
『わかりました』
俺は医務室で検査して治療を施されていた
まぁ治癒術で簡単に治ったけど
それよりも狼気の多量仕様が酷い
完全回復まで多分一日かけても無理かもしてないが仕方がない
彼にはそうして戦わないと勝てないだろうと思った
タツタカも医務室で治療されてるんじゃないかな、この部屋だけじゃないし
てかこの部屋は医務室用に作った部屋じゃないだろうな
多目的部屋な感じがする
『はぁ・・・疲れた』
そう呟いているとドアが勢いよく開く
少しビックリしたが視線を向けるとルッカだった
彼女は心配をしてくれているだろうが不思議な物を見る目でもある
『大丈夫?』
俺の顔を覗き込む、ああ大丈夫だよ
その顔も好きだなぁ
少し意地悪してみよう
『キスしてくれれば大丈夫だと思う』
自分で言っといて臭いなと思ったのだが
ルッカは普通にしてくれた、俺は少しその間固まる
離れてからは顔を赤くしながら俺の頬をブニブニ摘まんだりして口を開いた
『なんかジャン可笑しかったよ?』
『俺じゃない昔の記憶が騒いでた感じだ、心配ない』
『職の記憶とか言ってたけど、なんか凄いわね』
俺もそう思う、職が覚えてる歴史という事だ
遠い昔にあったんだ
摩天狼とヘルトとの闘いが
結果としてはまた彼は地を這う事になったが
違うか・・・壁に埋め込まれただな
『あいつはかなり強かったよ、少し迷惑かけたけどああしないと勝てなかった』
そう言うとルッカは俺の頭を撫でながら答えた
『問題児ねあなたも、でもおめでと・・・明日は決勝よ』
『ああ・・・頑張る』
そう話していたらどんどんドアから人が来た
ナラ村関係者全員とルルカにケインとナッツ、スカーレットさんだ
父さんが心配そうに俺の名前を呼ぶ
俺は軽く手を上げて父さんを安心させる
意外に多いメンツに少し驚くが俺は謝らないといけないと思う
『スカーレットさん、すいませんでした』
彼女は溜息をつき口を開く
『私の魔力だけでも良さそうでしたが念のために会場にいた術者を総動員させました、あれでもギリギリでしたよ』
『・・・ですか』
『摩天狼・・・ですか』
少々スカーレットさんは考える
俺は気になる情報を彼女に教えることにした
『遥か昔に最強の座を巡り摩天狼に挑んだ5種の天位職が5大天位職と称えられたと言う情報を聞きました、出どころは一応伏せます』
その俺の言葉に考えるのをやめたスカーレットさんは真剣な目で俺を見る
『・・・タツタカの事は今は言えませんが彼もその1人でした、そんな彼に俺の職が騒いでました』
『その様ですね、会話は全て聞いてます』
俺は目を細めて彼女を見る
『その5種に反応すると仮定してですが、先ほど戦っている時に職が貴方にも反応していました』
『・・・』
スカーレットさんは無言だ
静かに俺を見て冷たい目をしていた
俺はスカーレットさんに単刀直入に聞いてみたのだ
『あなたも5大天位職の人ですね?』
その言葉を言った瞬間、その場の皆が彼女を見た
慌てる様子もなくいつも通りに静かな女性だった
ルルカが一番驚いている様子だ
『ダークマター・タイタンハンド・ジハード・イビルディザスター・ヘルト』
俺はその言葉のあとに続けて口を開こうとすると彼女が答えた
『私はダークマター、別名は黒賢者ともいいます』
スカーレットさんはそれを言ったらドアに向いて歩いていく
背中を向けながら彼女は最後に言った
『次の道に行けたら色々教えてあげましょう』
『わかりました』
少しスカーレットさんがこちらを振り向き笑ってくれた
なんか怒ってるかなぁと思ったが違うらしい
彼女が去った後に簡単に説明した
タツタカも情報を探していることも
俺たちがケインを送った後アバドンに行くことは決定済みだ
その後の方針も今は決めれないがその時の状況で判断する事も
そのことについての詳細は今は伏せたいと言った
『その場の状況で決めるっつぅのはどういう意味なんだ』
グスタフが俺の頬をつねりながらそう言うが痛いぞ?
諦めて俺は答える事にした
『強敵が複数いるのと未知数過ぎて今の俺たちじゃ無理なんだ、すまないが今はそれだけしか言えん』
その言葉でグスタフが嬉しそうに笑う
俺の肩を叩いて彼は言った
『面白れぇ、強くなれって事だな』
無言で俺は頷く、皆もそれに理解を示してくれているだろう
『大変ねジャフィンも、そろそろ切り替えなさい?固い話は永いと疲れるわよ』
『母さん』
まぁそうだろうな、今はそれは早めに行っただけだ
そうなるかもしれないよって感じでだ
今真剣に考える時じゃない
そうして俺も起き上がりみんなと会場を後にする
ゼルさんにふとお願いをしてみた
『すいません今日はルッカをお借りしていいですか』
『んふぉ!?』
何とも言えない反応だ、言い方を間違えたか
ルッカはゼルさんの隣にいたが目が泳いでいる
なんで泳いでるんだよ!
マリーさんは怪しく口元で笑みを浮かべているが
ヤラシイ事しか考えてないだろう!?
俺もだよ
ゼルさんがニヤニヤしつつ俺の周りを歩き始めた
何が起きるのだ?何故回る?
そして両肩を叩かれて揉まれつつ口を開く
『いいぞ?んっふふ!』
どうしたんだ!?
ルルカとかもニヤニヤして、たく・・・
俺はナラ村の人たちと別れてルッカとグスタフで選手用の宿に行く
歩いてる途中のルッカはモジモジしてて可愛らしいが
そういえばグスタフに聞きたいことがあった
『グスタフ?』
『ああん?』
彼は俺の方を向いて首を鳴らしつつそう返事を下した
『ルルカとなんかあったのか?』
その瞬間ルッカもグスタフも目を丸くした
何?俺なんか場違いな事言った?
『・・・何もねぇよ!!』
少し戸惑うグスタフだが気になる
聞き過ぎると殴られそうでやめとくことにする
宿に着いてからは3人で飯を食って今後の確認とルッカがそれまでにまとめるとの事で落ち着く
飯を終えグスタフは外に出かけていく
ルルカと特訓だってさ、仲が良くなってきたのか
そう言う事か
『あぁ~やっと部屋だぁ』
そう言って俺はベットにボスンと仰向けで倒れる
ルッカは先にお風呂らしくシャワー音が聞こえる
上がったのを確認して次は俺が入るが
少しお湯が熱い、ルッカは少し熱め派だったか!
そう思いながら風呂から上がり2人でベットに横たわり会話をした
『別人の様な言葉言ってたわね』
『職の歴史だろうな、その中での因縁の対決らしかったよ』
『それも5000年前のなんでしょ?なんかすごいわね』
『本当頭の中やかましくて疲れたよ』
ルッカは頭を撫でてくれる
『明日は普通に戦いたいよ』
『油断しちゃ駄目よ?』
俺は笑って頷く
ふとちゃんと言ったかわからなかったので一応確約を取ろうと思った
『なぁルッカ』
『ん?なぁに』
俺の顔を覗き込んでくる、かなり緊張するが
『20歳になったら結婚しよう』
『ほっ・・・』
ほっ・・?ほ?
ルッカは不思議にも頭をくねらせて不可解な動きをする
珍獣か、いいぞ
俺が冷静になれる
『まぁナラ村でどんな感じに俺はなるかは想像もまだできない身だが』
『・・・いいわよ』
ルッカが俺の体に覆いかぶさってくる
普段と違い大人びた感じの顔だった
顔が目の前だ、俺は少し目を丸くしてしまう
『・・プロポーズ?』
『まぁ、そうだ・・・ちゃんと言っていないと思ってな』
『ふぅん、わかりました』
そう言いながら上から抱きしめてくる
俺もそれに答えるように両手を使って抱きしめる
『いいか?』
『ん・・・嬉しい』
『そうか』
その流れで俺はまた獣になってしまう
仕方がない、男の子だもん
いつも通り俺たちはくっついて就寝した
そして決勝と言う明日が俺たちにやってきたのだ
ルルカ『グスタフ先生!なんで今までお母さまにジャフィンの職は反応しなかったのです!?つじつまが!』
グスタフ『戦いの場面にならなかったからだ、あくまで修行だったし互いに敵意を向けないとそうならん!』
ルルカ『流石なのだ!ご褒美をやるのだ』
グスタフ『ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!』
ナッツ『顔赤いですよ?』
グスタフ『殺すぞ?』
ナッツ『いやぁ!!!』