32章 【武人祭3日目】猛獣に敬意を
ノートン『手加減してね?』
ジャムルフィン『やぁー』
『グスタフ・・・』
俺は選手控室の窓から一部始終を見守っていた
あいつが負けたのか・・・だが・・
『仕方がなかったことだ、残念だが』
そう言って俺の隣に座ってきた男がいた、光の子カールだ
彼がグスタフと決着をつけたかったのだろう
苦笑いしながら俺を見て呟いた
『万全じゃなかったのだろう、そんな動き方だった』
『戦いたかったですか?』
『勿論だとも』
俺の質問にカールは力強く即答した
カールは足を組み始めて続けて言う
『昨日の戦いの後だ、彼は彼のやり方で戦い抜いた・・・身を削ってね、そんな彼に興味が増していた、残念だが一先ずお預けらしい、君も彼の分まで頑張るのだろう』
『そうですね』
『彼に見事だったと伝えてくれ・・・いつか戦おうと』
そういいながら彼は椅子から立ち上がり
次の対戦へと向かう、俺も様子を見に行きたいが言ったらグスタフに怒られるだろう
まずは自分の事を片付けてからだ
グスタフ、お前は底が知れないよ
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『お兄ちゃん・・・』
『グスタフー・・・』
ルーシーとルルカが悲しそうな顔をしていた
ケインはそれを見てルルカの肩を揺らしながら口を開いた
『心配なら様子見に言ったらどうですか?』
そう言うとルルカとルーシーはバッと頭を上げてどこかに走っていく
多分心配で見にいったのだろう
『よくぞここまで、ナラ村からここまでの強者が生まれるのは嬉しい事だ』
レナウスがそう彼を称賛した、隣でマリスがウンウンと笑顔で頷く
ルッカも残念そうな顔をしてたのだがそんな2人の様子を見て笑顔になる
『グスタフも頑張ったしまだ中位職よ、上位になれば化け物になるじゃない!』
『これからが楽しみだねぇグスタフ君もジャフィン君も』
ルッカの父であるゼルが次の試合の準備をするリングを見つめそう語る
ケインは観客席の椅子で足をパタパタさせながらルッカに聞いた
『無理して戦ってたんですよね、凄い根性と言うかなんというか』
『グスタフなりに野望があるのよきっと、無計画に頑張らない熊だし』
ナラ村席ではそのような会話がされていた
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『さぁジャムルフィン・・・一緒に行こうか』
『ははは、いいんですかノートン大将軍』
俺は出番に近付くと将軍にそう言われた、なんか仲良しだな
2人で係員についていきながら話をした
『君の友人は凄まじいな、彼はこの先もっと強くなるだろうな』
『そう信じております』
俺の言葉に軽く笑い反応してみせる将軍
歩いてる途中彼は手を回したり 腰を回したりと準備体操をしていた
互いの入場位置が分かれる為に分かれ道で軽く礼をして俺は向かった
俺は戦うのだ、あのノートン大将軍と
どれだけ強いのかは見ただけじゃわからない、実際の場で見るしかない
まだ色々隠しているような気がしていた、前回の優勝者だ
奥の手も使うかもしれないと考えている
俺は会場内の手前の入り口について呼吸を整える
司会の声と彼女の声が聞こえた
『次は!かなり気になる今日の最終です!前回優勝者のノートン将軍とその兵士であった銀狼のジャムルフィン選手です、彼はノートン将軍の部下でありました!!そんな彼がっ!見知らぬ力を背負ってノートン将軍の前に立ちはだかるのです!』
よく知ってるな、軽く笑ってしまう
これも下剋上の様なものか、俺も戦いたくて待ち遠しいと感じている
『時間です、リングに向かってください』
係員の誘導の声だ、俺は頷きリングに向かう
会場内に俺と将軍が現れた瞬間に大きな歓声が上がる
緊張はしている、見られながらの戦いだ仕方がない
反対側から将軍が笑顔で歩いてくるのが見える、あの人も楽しみにしているのだ
俺は嬉しくなった、理由はわからない
『ジャフィンさん!!!ガンバってください!』
『先輩ぃぃぃ!遅れましたぁぁぁぁ!』
その声に聞き覚えがあり横を見るとキャメルとナッツだ
ナッツ!?!?!忘れていた!!!!
俺は笑いながら2人に手を上げて正面を見直し歩き出す
そして
リング中央にお互い着いた
開口一番将軍が口を開く
俺たち2人の会話が会場に響く
『これが大会の結果を左右する戦いだと思うが?』
将軍は笑顔で首を傾げてそう俺に話を振る
『すみませんが踏み台になってもらいます』
俺ははっきりと将軍にそう言ってしまう
彼は目を見開き大きく笑った、静まった後に返事をする
『記述の力を味わえるのか・・・誉なり』
将軍はそう言って構えた、大きく感じる
場数を乗り越えた人間の威圧を放っている
俺はそれに答える様にグスタフと同じく猛獣の如き低い姿勢で構える
少しずつだが
会場が静まりかえってくる、ここまで静かになるのだろうか
徐々に、そう徐々に観客は俺たちを見守る様に完全に静かになった
『2人の関係が微笑ましいと思える会話が終わったらしいですね、今大会で一番待ち遠しい戦いが今‥始まります』
会場は司会の声でも静かにたたずんでいる
俺は鋭く将軍を見つめた
完全に風の音しか聞こえなくなった瞬間に時は動く
『始めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
ナッツ『やぁ間に合ったよ!!!!』