21話 【知らなかった事】
ナッツ『会話の回ですね』
『新兵のジャムルフィンじゃないか』
俺は少し動揺してしまう、いやそうなる
ノートン将軍に言われたというよりも俺を覚えているというのが驚きなのだ
俺は普通の兵士だったんだぞ・・・
暫く俺は目を丸くしながらノートン将軍を見つめる
そうすると彼から口を開いたのだ
『・・・そうか、ベリトの奴・・・こういう事だったのか・・ふふふ』
ノートン将軍は口元を抑えて笑う、俺も落ち着いてきたのか
彼に声をかけてしまう
『お久しぶりです、というよりは話すのは初めてですねノートン大将軍殿』
俺は抜け切れてない様で彼の前に膝をつこうとするが彼が手を前に出してそれをやめさせる
『よいのだ、もう兵という肩書ではないだろう・・・あ奴の推薦なら納得だな』
ノートン将軍は腕を組んで何回も頷いている、何が納得なのだろうか
それにしてもこんな形で会うとは俺は思わなかった、業務はどうしたのだろうと
無駄な事を考えていると彼から会話が飛んでくる
『お前がやめたと聞いた時はすこぶる残念だったぞ』
『俺が・・・ですか?』
『そうだ、お前がいる部隊は一番安定するしな・・・話では新兵のジャムルフィンという兵士が遊撃隊の前線で何度も活躍していると私の耳に入るのだよ』
どうやら上官の話に俺が出てくるようだった
正直嬉しいと感じる、うん
『そ・・・そうなんですね』
ノートン将軍は俺の体を観察しながら会話を続けた
『お前を昇格させようとはしていたのだが、いかんせん他の文官連中がうるさくてな・・・早めに手を打っておけばやめることもなかったのかもな、お前がいる遊撃隊がいるとやりやすくて本当に助かっていたのだがなぁ』
『それでも俺はやめていたと思います』
俺は将軍に即答する、いつかはやめる様な気がしていたのだ
キッカケがあればすぐにでもやめていただろう
ノートン将軍はため息をつく、本当に残念がっていた
『そうか、にしてもだ・・・兵士の話では聞いてはいたが、それ以上だなお前は・・・なるほど、やめなければいけない理由があったんだろうな』
『すいません、色々事情がありまして』
『大丈夫だ、気にするな・・・そしてガリオの件はすまなかったな、だがまだあ奴の代わりがいないのだ、1カ月の謹慎でお灸を添えたつもりだが、知らぬ間に500人将になった様だ・・・違う権力が働いている様だが本当に文官は余計な事をする』
『ははは』
俺は素直に笑ってしまう、この人こんな柔らかい会話できる人なんだと意外であった
もう少し根性論!的な人かと思ってはいたんだけど違う様だ
何故か俺は安心した
『とても強いのだろうなお前は、目を見るとわかる・・・遠くで何度か見ていたが、兵士の頃よりも生き生きしている』
見られてたんだ!そうなのか!また意外だ
その時のノートン将軍の顔はとても穏やかであった
将軍ではなく、1人の人間としての顔であった
『勝ち進めば戦えますね』
そう言うとノートン将軍は笑顔で答えた
『一番の楽しみだ!』
彼はその言葉の後、控室から出て行った
なんだか俺は悪い気分ではなかった
もっと話してみたいなと思うくらいの人だと思った
そう考えているとグスタフが口を開いた
『感動の再開はもういいのかい?』
ニヤニヤしながらグスタフは俺を見てきた
そんなほどじゃないさ、俺は返事をした
『まぁな、で・・・始まるぞ』
『おう、俺は行ってくる・・・一回戦目だからな』
俺はグスタフの背中を叩き
彼の為の言葉を贈る
『決勝で待つぞ?負けたら特訓でボコな?』
『ハーッハッハ!!面白ぇ!言ってくるぞ』
俺は彼が控室から消えるまで
彼の背中を無言で見送った
開始まであと10分ほど
俺たちの挑戦が始まる
ノートン『寂しいなぁ』
ルッカ『可愛くないわねぇ』