勝負有り
後ろに気配を感じ、ジルベルは振り返った。
淡い青色の髪が日光に照らされて美しく輝く。
「…君か。心配はいらない。君の命は助ける。…君の家族の命は分からないがな。」
ジルベルは悔しげに呟いた。
その言葉に首を傾げる。
「何故、火山の国の王であるあなたが、私の家族のことを心配なさるのですか?」
「…。」
「答えてくださいな。」
「…。」
無言を貫き通すジルベルに軽く舌打ちをする。
「自分の父を殺したあなたが、何故、他人の家族を気にするんだ?闇の王、失望したよ。あなたがどんな人なのか。とっても楽しみにしてたっていうのにさ。…がっかりだ。」
徐々にジルベルに近づき、スカートを軽く託しあげる。
思わずジルベルは目を反らそうとしたが、そこから出てきたものに驚いた。
出てきたのは、剣だった。
「何故、君が剣を…?」
「ふふ…ここの警備は随分と杜撰だね。見直すことをお勧めするよ…ねぇ、カラスさん。」
抜いた剣を構え、ジルベルに向かい、薙いだ。
捕らえた。そう思いニヤリと不気味に微笑んだ。
しかし、そこにジルベルの姿はなかった。
横を見るとジルベルと彼を庇う青い髪の少女がいた。
「なんだよ。ねぇ、どうしてカラスさんを庇うの?ウンディーネ?」
ジルベルに剣を向けていたのは、オンディーヌだった。
ウンディーネは彼の姿を見て顔をしかめる。
「私みたいな格好しないでよ。似合いすぎて気味が悪いわ」
「酷いな。僕だってこんな格好したくなかったよ。でも、仕方ないじゃないか。君を連れ戻すために、君のフリをして城に乗り込んだんだからさ。…ついでにカラスさんとも戦えて、良い役回りもらっちゃったな。」
そう言ってオンディーヌは再びジルベルに剣を向けた。
「国王、下がっていてください。」
ジルベルの前に庇うように立つ。
ジルベルが腰に携えていた剣を奪うように抜き取ると、同じようにオンディーヌに対峙した。
「姫、なにを?」
「あなたは国王。怪我をしたらいけない存在なのでしょう?この阿呆の面倒は、私がみます。」
「ウンディーネが相手とか、笑えない冗談は止してよ。」
「冗談じゃないわよ。オンディーヌ。それに、私は火山の国に嫁いだのよ。火山の国の人間なの。正々堂々かかってきなさい。」
剣を持ったウンディーネはオンディーヌに全く怯む様子がない。
それどころか今にもくってかかる勢いだ。
「あはは。せっかくカラスさんを食らってやろうと思ったのに、残念だな。」
オンディーヌはそういって強がった。
彼は強がっていた。
手は震えていて頬は冷や汗がつたった。
「ウンディーネを傷つけたら、絶対僕が怒られるじゃん…」
さて、場所は火山の国と大海の国が対峙している戦場に移る。
火山の国は何も仕掛けてこない大海の国に痺れを切らしたのか、一斉攻撃を仕掛けていた。
「このままいけば、大海の国の国境の要所は落とせる…次は城へ目標を定めるぞ。」
自分たちの勝利を確信していたロットであったが、すでにミストの術中に嵌っていた。
「ロット丞相!!大変です!後ろから大海の国が!!!」
「なんだって…?」
大海の国の国の要所はミストの仕掛けた囮であった。
ミストはロット軍が怒りにまかせて攻めてくるのを読み、背後に伏兵を仕掛けていたのだった。
退路を断たれた火山の国に打つ手はない。
大海の国側では、自らの作戦成功にミストが淡く微笑んでいた。




