緑髪と羽の行方
火山の国は騒がしかった。
「ちょっと聞いたかい?城に盗賊が入ったらしいよ。」
「なんでも盗まれたのは、たいそう貴重な宝だとか。」
「貴重な宝…?いったいどんな宝なんだろうね。」
「先日嫁いできた大海の国の姫の嫁入り道具らしいよ。」
「噂で聞いたよ。嫁入り道具って、あの、伝説の鳥の羽なんだってな。」
昨晩のうちに城内でおきた盗難事件は瞬く間に火山の国中に広まってしまった。
ただでさえ、内乱から時間がたっておらず、新しい王に国民が完全に信頼しきっていない。
そんなときに起きた事件である。多くの憶測と中傷が飛び交い、火山の国は混乱していた。
もちろんそれは城下に限った話ではない。
火山の国の城も慌ただしかった。
「すぐに城下の混乱を抑えるんだ…心配いらないと、国中に伝えろ。」
ジルベル国王の鎮座する玉座の間。
その横にいたロットは兵士たちに次々と指示を出す。
ロットの顔は青ざめ「心配いらない」どころではないようだ。
自らの言葉に拳を握りしめる。
「ロット…無理をするな。」
短くそういわれ、ロットはジルベルへ顔を向けた。
この城で自分のことを名で呼ぶのは、ジルベルただ一人である。
「俺は羽の安否より…お前の身が心配だ…。」
「心配性だな…ジルベルは。俺はもうお前に守られてた子どもじゃないんだぞ?…お前が表にたって国民を安心させ、俺は裏側で国を守る。そういう約束だろ?」
心労で少々身体にがたがきていることを気取られないように、気丈にふるまう。
ジルベルは革命により、国王の地位を手に入れた。
この地位につくまえは、なんてことはない国境付近の田舎町で幼いロットと、母親代わりの女性と三人で過ごしていたという。
ジルベルとロットの間には幼馴染以上の信頼関係ができているのだ。
王になってしまった彼を支えると、ロットは彼が国王になったのと同時に誓ったのだ。
このトラブルは自分で解決しなくては、火山の国の人々の不安を増やしたくはなかった。
「こっ、国王様!!!」
かけている眼鏡がずれる勢いでやってきたのはサランだった。
息があれているのを直す間もなく続ける。
「こちらを、羽を保管していた部屋で発見しました…」
サランが取り出したのは、一本の髪の毛。
注目すべきは、その色だ。
色は緑色、混じり気ない、純粋な緑色だった。
昔から、この三大国の人々の髪色は決まっている。
大海の国は青。
火山の国は赤。
そして、草原の国は緑。
勿論、例外はいる、火山の国王であるジルベルは黒髪だし、丞相のロットは金髪だ。
しかし、その例外は本当に一握り、ごくわずかしかいなかった。
「草原の国の者が…この国に?」
「では、まさか羽は…」
「草原の国か…?」




