友人
―大海の国―
「えっ…あなた方は…?ミストの友人ではないの?」
ウンディーネは驚いた。
自分が駆け寄った先にいたのは、自分が待っていた人物ではなかったのだから
「…いえ、あなたの考えに間違いはありません。私は確かに、ミスト様の友人―スリジエ王子の手の者です。」
細腕に似合わぬ力で、フェーユ13世を抱き抱えたサイプレスは静かに言った。
―草原の国―
「ははははは!!!!そうか…やはりそうだったか…可笑しいとは思っていたが…神童は健在というわけか」
「神童か。そういわれるのは随分と懐かしいね」
そういうスリジエの雰囲気は今までと異なるように見えた。
「お聞きします、王子…先程から国王の姿が見えないのですが、まさかあなたが?」
「うん。ここは騒がしくなるとは思ったからね。安全な場所へお連れしたんだ。」
「大海の国か。」
フキノトウはミスト達を一瞥し、問う。
「その問いに答える必要はない。」
スリジエの冷めた瞳がフキノトウを映す。
「なるほど…馬鹿なフリをして、私の目からそれようとしていたのですね。」
「君がやってきてから父上は体調を崩された…目的は分からないけど、その男が術で父上の身体を蝕んでいることを知った。徐々に、城の皆も君のことを古くからいる知将であると扱い始めたとき…僕は君に対して違和感を覚えたのさ。だから、僕は馬鹿なフリ…臆病なフリをして、機会を伺っていた。」
スリジエの透き通るような緑色の瞳は、決してフキノトウを逃さなかった。
「でも…弟を狙うとはね…計算外だったよ。」
「弟君は大変お優しい方ですね…あなたのことを心配なさって暗殺部隊を護衛につけられた」
「あれには驚いたよ…サイプレスとはどうも馬があわなくてね。しかも、彼女からしてみれば守る必要のない相手を守らなくてはならないってこと…そうとうイライラしていたね。…サイプレスにもローレルにも、悪いことをしたと思っている。それだけは後悔しているよ。」
スリジエは机の上にお菓子の袋をおき、壁にかけられている剣を一本抜いた、フキノトウのもとへと一歩歩み寄る。
フキノトウは笑う。
「スリジエ王子、それに大海の国のオンディーヌ王子と策士ミスト。いったい私をどうするつもりですか?」
「あなたは三大国に刃を向けました、これは重罪です。確保し、目的を吐いていただきます。」
ミストとオンディーヌはスリジエの元により、スリジエのように、自らの武器を構えた。
その様子にフキノトウはまた笑った。
「何で笑ってるのさ、不気味だな…3対1だよ。君に勝ち目無いんじゃないの?」
フキノトウの笑みに腹が立ったのか、頬を膨らませオンディーヌは言った。
「確かに…まともにあなた方三人と闘っても無意味でしょう。そう、意味が無いんですよ。だってそうでしょう?私たちの目的は羽だ。羽は今、私たちの手の内にある…このまま逃げれば、良いだけなんですよ」
部屋にある大きな窓を開け放った。
烈風。
風が部屋の中をかき乱す。
そのすきをつき、フキノトウは窓枠に足をかけた。
「待ちなよ」
部屋中に吹き荒れる烈風の中、スリジエは息絶え絶えに声を上げる。
真っ直ぐにフキノトウを見つめた。
「そこから飛び降りるの?怪我だけじゃ済まないと思うけどな…」
「ご心配ありがとうございます。私は大丈夫ですよ。この下は溜池となっていますから、水がクッション代わりになってくれます。」
「僕が心配してるのは、池から出た後なんだけどな…外をよく見てご覧よ。」
フキノトウは不審に思い、外を見た。
徐々に下へと目を向ける。
そこには池を取り囲むように、大軍が待機していた。
その真ん中辺りに馬に乗った男が一人。
「あいつは…逃げ出したはずでは?」
その男は草原の国の参謀だった。
「僕が彼に言ったのさ、逃げたように見せて、国境付近で待機してくれないかい?ってね、彼も君のことが嫌いだったみたいだから、快く承諾してくれたよ…さて、逃げ場はなくなっちゃったね」
スリジエの切れ長の瞳は静かに、だが威圧的にフキノトウを見つめていた。




