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草原の国の野望

サランが悠々と歩いていたのは、草原の国の城である。

自分の正体がばれてしまったという失態を、自身の上司に話さなくてはならない。

サランは足を速めた。


「ただいま戻りました。」


フキノトウの執務室の戸をあけ、目の前の主に深々と一礼する。

部屋の中にはローレルとフキノトウの二人がいた。


「何故、突然戻ってきた?」


疑問を投げかけたのは、フキノトウだった。


「申し訳ございません…。」


サランは下げた頭を上げずに謝罪の言葉を口にした。声は震えていた。


「橙の羽を盗んだのが、我々だとばれました…。まもなく、ここへ向かってくるかと。」


ローレルは絶句したが、フキノトウは対照的に微笑む。


「ほう、気づいたか…王子、いかがなさいましょう?」


「…まだ伝説の鳥は現れていないんだぞ?フキノトウ、サラン、向かい撃て。羽を死守する。」


「仰せのままに」


二人はひざまずき答えた。


草原の国のもう一人の王子スリジエは父の部屋にいた。

病に伏せている国王ではあるが、今日は調子がいいのかベッドから体を起こしてスリジエとの談笑を楽しんでいる。

いつものように愛用のティーカップで紅茶を一口飲むと、スリジエは国王に向かってゆっくりと微笑んだ。


「今日の紅茶は一段と美味しい…父上もお飲みになりますか?」


父を溺愛するスリジエ王子らしいといえばそれらしい行動だが、食事を制限されている国王に無暗に紅茶を進めることは、サイプレスからしてみれば嫌味な行動としか思えなかった。


「王子、国王様はお医者様よりお食事の制限がなされております…許可なしに飲食をすることはできません。」


サイプレスの言葉にスリジエははっとして大粒の涙を流す。


「父上…!申し訳ありません…愚かな僕を許してください…父上の気持ちも考えず、愚かな行動をとってしまった僕を…どうか…!」


頭を垂れて父の体にすがりつく。まるで幼い子供のようだ。

国王は呆れたように、だがどこか微笑んで、スリジエの頭を優しく撫でる。


「気にすることはないよ、スリジエ。私のことを気遣い、紅茶をすすめてくれたんだろう?ありがとう」


「あぁ、父上…!勿体ないお言葉…」


国王親子の会話に、サイプレスはばれないように溜め息をついた。


「あっ!そうだ!この間、ローレルから美味しいお菓子を貰ったんですよ!持ってきますね、サイプレス。」


「はい」


スリジエはそっとサイプレスに耳打ちした。


「――――――。父上に美味しいお水をあげて」


サイプレスはスリジエの言葉に戸惑ったが、すぐにそれに取り掛かった。




火山の国、大海の国の両者は、お互いの共通の敵を認識した。火山の国は、盗まれた羽の奪取。大海の国は自身にかけられた疑いの払拭のため連合軍を組むことにした。そこを草原の国兵士が阻む。


「おかしいな…。」


呟いたのはロットだ


「何がおかしいのですか?ロット殿」


「…俺の記憶では、草原の国は現国王が病に伏せてから荒れたと聞いたが」


「だから荒れてるじゃない」


剣を奮いながらオンディーヌは言った。

何も知らない兵士を殺してはいけない。と、ウンディーネとミストから言われたので木でできた剣だった。

少々不満げだ


「荒れている国にしては、兵士の数が多いような…」


「まさか、これは…幻覚?」


そうジルベルが呟くと、そこにいた兵士は全て消えた。

ジルベルはニヤリと微笑み、オンディーヌは戦う機会が減ったとますます不機嫌になる。

城に続く道が開いた。


「何者だ!?貴様らは!!」


「さすがに門番は幻覚じゃないっぽいね」


オンディーヌがにこりと言った

ふわりと跳躍し、門番の背後にまわる。

門番は後ろを見ようとするが、遅かった。

オンディーヌは首筋に剣を叩きつけ気絶させた。


「皆さん、分かってますね。確実な敵はサラン、関係のない方まで捕らえてはいけませんよ。」


「では、別れよう。」


ロットの言葉を合図に、三方向に別れた捜索が始まった。



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