わたし消ゆ。
「ちょっと用事があるからもうそろそろ帰らないと。また連絡するね。それじゃ」
そう言ってあなたはわたしに背を向けて玄関を出てゆき、もう、振り返らない。
あなたは知らない。これから訪れる孤独で、わたしが消え入りそうなことを。
昼がきたのち夜が訪れるのと同様、あなたが居なければ孤独が来てしまう。
けど、わたしにとってあなたは昼であり太陽よ、なんてそんなキザは厭。
いや、違うな。そんな素敵なものじゃないんだ、あなたという人は。
「今日はいっしょに居て。夜通しくっついていて。今日だけだから」
そう言ったって聞いてはくれない。孤独から救ってほしいのに。
──或る時、わたしは気づいてしまった。事のからくり。
あなたはわたしを独りから救う救世主じゃなかった。
だって、わたしに孤独を与えるのはあなただもの。
いつでもわたしを独りにするのはあなただった。
独りになると毒が這い廻る。体を隈無く。
その毒素がわたしを不安にさせてゆく。
夜が明けるまでのひたすらの不安。
「今日こそ、もう駄目みたい」
独りごちた台詞は枯れてる。
独りは毒だ。孤独は毒。
孤独と毒。どくどく。
廻る廻る。廻れ。
「寂しいんだよ」
「たすけてよ」
「救って…」
わたし
消ゆ
。