アルトとウィス
「で、魔王はどこだ?」
アルト・ガルグラは、深さのわからない半径20kmはあるクレーターを前に、仲間に尋ねた。
え?何でクレーターがあるかって?そこに魔王城があったから。ん?意味わからん?だから、王様に魔王倒してこいって言われたから、魔王城に挨拶代わりに隕石落としたんだよ。え?これでもわからない?凄い簡単な説明なのに、何で?
「多分、今ので滅んだと思いますよ。」
仲間の一人のレジア・クラムが呆れ顔で答える。
「え?あの程度で?魔王弱くね?」
「アルトさんが異常なだけです!!もっと常識を考えて下さい!」
レジアが大きい声で怒鳴ってくる。
辞めてくれ、二千うん百歳の耳には悪いんだ。見た目こそ二十そこそこだけど、もう二千歳を軽く超えてるんだから。
「この程度なら、そこら辺の魔術師にでもやらせれば良かったのに。これくらいなら出来るだろ?」
「えぇ、龍刻印の魔術師数百人集めて全員が命を差し出したら行けますよ。」
「ほら、行けるんじゃん。だから俺は常識し一一一」
「これを一人でやるから、非常識って言ってるんです!!」
「そうだぞ、アルト。レジアの言う通りだ。」
もう一人のクラマ・アルベアが言う。
「いや、待てクラマ。お前ならこれくらい余裕だろ?」
「いや、流石の俺でもこれは無理だ。」
「でも、ドラゴン倒すのクラマの方が速いじゃん。」
「それは、アルトが直接的な魔法縛って、素手で戦うからだろ?」
「魔法縛らないと一瞬で終わるからな。」
「それでも、素手は無いだろう、素手は。」
「剣なんて邪魔なだけだ。」
「おい待て、今俺の職を完全否定された気がするんだが?」
「気のせい気のせい」
「いや、絶対しただろ!」
「もう良いですから、早く帰りますよ。」
レジアの呆れた声により、アルト達は、魔王城跡地に背を向け、王城に帰っていくのだった。
さらっと流したが、刻印の説明をしよう。
刻印は持つ力により、その形を変える。
刻印は、5歳の時に発現し、それと同時に、『スキル』を得る。
刻印の種類は上から、龍刻印、虎刻印、蛇刻印、鳥刻印、鼠刻印、呪刻印の6種類だ。
龍刻印は最強とも言われ、魔力が多く、『スキル』が必ず二つ以上恵まれる。龍と言っても、龍の形をしている訳ではなく、ただ単なる呼び名だ。他の刻印も同じようなものだ。
虎刻印は龍刻印程では無いが、魔力があり、『スキル』に必ず恵まれる。
蛇刻印は、虎刻印よりも魔力があるが、『スキル』に恵まれる可能性が低い。
鳥刻印は、魔力は低いが、『スキル』に恵まれやすい。
鼠刻印は、魔力が虎の少し下で多いが、『スキル』に恵まれない。
そして、呪刻印は、魔力は鍛えれば上がるが、『スキル』には恵まれず、逆に、『呪い』にかかる。
『スキル』は、基本はメリットのみ、与えられる。
逆に『呪い』には、デメリットが与えられる。
単純に基礎能力が下がるもの、寿命を削るもの、死に至もの、魂に刻み付けられているものがある。
そして、アルトの刻印は、『呪刻印』に当たった。
効果は、魂に刻み付けられるものだった。
なら、何故あれ程の魔力が使えたか?
それは、アルトの『呪い』に鍵がある。
アルトの『呪い』は、『魔之神』。
効果は、無限の魔力と無限の力。
それだけ聞くと、ただのチートスキルだ。
しかし、それだけの効果では無い。
もう一つの効果は、『スキル喰ライ』だ。
『スキル喰ライ』は、スキルを喰らって、その刻印を『呪刻印』に変化させるものだった。
しかし、ただ喰らうだけでは無い。喰べたスキルをデメリット無しで使えると言うチート性能。しかも、この『スキル喰ライ』は、殺した相手のスキルすらも喰らう。
恐らく、現在『スキル喰ライ』が有するスキルの数は、万を超えている。しかし、どのスキルがあるとかは分からない。
現在分かっているのは数百程度。
そして、その中でも異質なのが、『叡智の書』だ。
『叡智の書』は、並行思考と呼ばれることを可能にする。他にも、思考加速、魔力制御、鑑定魔法、空間把握、時間把握、魔法創作、魔素安定などが使える。言わば、人間の考える力を最大限まで引き上げる能力だ。
しかし、それだけでは無い。『叡智の書』は、魔王に渡っても良いように、制御する為の感情の無い自我を持っていた。
それだけならまだただのチートスキルだった。しかし、アルトはやらかしてしまった。
最初はただ、呼びやすいように、『ウィス』と呼んでいた。ウィスとは、叡智を他国の言葉に訳したものだ。(とある謎の言語で書かれた本を『叡智の書』を使って読んだ時に知った。)
しかし、それを『叡智の書』の名前として呼んだ時、『叡智の書』に変化があった。『叡智の書』が突然、スキルとして現れ、『神格スキル ウィス』になったのだった。『神格スキル ウィス』は、変化後、すぐさま『スキル喰ライ』によって吸収された。それが、『魔之神』に変化を生じさせた。『魔之神』は、『叡智之魔神 ウィス』へと変化した。そして、ウィスに感情を与えた。
その変化が起きた時、アルトはまだ8歳だった。
後になって知ったのは、力を持った者が名前を付けると、名前を付けられた者の同意の元、進化すると言う事だった。
そして、アルトが20歳の時に、ウィスが不老不死の魔法を完成させ、半ば強引に、アルトに使わせた。
その10年後にクラマに出会った。クラマはその時、15歳の子供だった。クラマの刻印は、アルトと同じ呪刻印で、それ故に親に捨てられたようだった。
出会った時はその呪いにより暴れていた。
クラマの呪いは、『狂戦士』。怒りに身を任せ、暴れると言う呪いだった。アルトは、人間を襲おうとしたクラマを、気絶魔法で気絶させ、そのまま目が醒めるまで介抱した。
クラマは目が醒めるなり、アルトに弟子にしてくれと頼んできた。アルトはそれを許可し、ウィス監修の元、クラマに怒りをコントロールする方法を教え、剣の修行をさせた。クラマは驚くほどの速さで成長した。それは、クラマの才能によるものだった。
アルトは、クラマが22歳になった時に、不老不死になりたいかを問い、クラマが了承したので、クラマに、不老不死の魔法をかけた。
それから、二人で色々な事をした。冒険者になり、ドラゴンと戯れ、困っている者を助けた。
そして、もう少しで2000歳という時に、レジアに出会った。
レジアは、とある亡国の、姫様だった。
亡国になった理由は、龍による被害だった。
たまたま逃げれたのだが、アルトとクラマが見つけた時には、既に瀕死の状態だった。
アルトはウィスに頼みレジアを回復させた。
何故か、ウィスが怒っていたが、それが何故なのかはわからなかった。
目を覚ましたレジアは、どうしても龍を倒したいと言ったので、アルトとクラマで鍛え、レジアに龍を倒させた。
その後、レジアにも不老不死の魔法をかけ、それからは3人で世界を旅した。
ある時は、魔王を倒し、またある時は、龍と酒を飲み、またある時は、国を一つ救い、いつしか、3人は不老不死の勇者と呼ばれた。
そんな中、クラマの刻印に変化が起きた。何と、クラマの刻印が呪刻印から、変化したのだ。
その刻印は、勇者刻印と呼ばれ、龍刻印の上となった。
しかし、アルトの刻印に変化は無かった。
アルトは、もしかしたら、刻印の変更が可能なのでは、と思いすぐさまウィスと共に研究を始めた。
しかし、たったの2日で答えがでた。
答えは出来ない。
だが、別の事がわかった。
喰らう力があるように、与える力もあるのだと。
つまり、スキルを与える事が出来たのならば、刻印に変化が生じるかも知れない。
しかし、結果は失敗。理論上可能と言うだけで、スキルが存在しなかった。
その後、何故かウィスが転生の魔法について研究し始めた。
アルトはそんな事もいざ知らず、友達の古龍と酒を飲んでいた。
この古龍は、アルトの一撃で死ななかった古龍だ。
アルトの戦った中でも最強の部類に入る。
そんな古龍とは、戦いの後に友となり、たまにアルトが古龍の住む山で酒を飲み、話をしている。
話と言っても、アルトが一方的に話ているのだが、古龍は山からは滅多に出ないので、楽しそうに聞いている。クラマやレジアは、来ない。というか、アルトが誘っていない。
アルトと古龍は、いつも通り明け方まで飲み明かし、アルトは酔ったまま自分の家に帰った。
家に着くと、ウィスが、
『ようやく出来ました。』
と言った
(何が?)
『転生魔法です。』
(んー?何それ?見せて〜)
『良いですよ。これです。』
頭の中に魔法陣が描かれる。
(んー?起動すれば良いの〜)
そう思いながら、魔法陣を起動する。
『いや、ちょっと待って!!』
何かウィスが慌てている。
……あれ?転生魔法?
…やらかした。
そのまま暗闇に意識が吸い込まれた。
白狐を書いてる途中で思いつき、白狐を中断して書きました。ごめんなさい。




