#08 【生の躍動/Eros】 ●三馬鹿
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
OK社に再訪したRを待ち構えていたのは、ぷりぷりと頬を膨らませた〈水玉〉だった。
「あんた、サイテーね」
開口一番、水脈が蔑んでくる。
「外道よ、ゲドー」
「おい、この猫に何吹き込まれた」
やべぇな、心当たりが多すぎて分からねえ。
Rがプロトタイプの〈猫人〉を小突くと、ショコラSMは福々しい笑みを浮かべて見上げてきた。猫特有のωな口元が鬱陶しい。
「みゅふふ、どうやら水脈ちゃんはビギナーさんのようでミャ、この世界のルールについて、ざっくりと説明していたんだミャ」
「で、なんで俺が『最低』呼ばわりされるんだ?」
「そりゃ~、アバターには温度調節機能があることを、すぐに教えなかったからだミャ」
「おい、そりゃ先生も……」
「さらに!」
ショコラはRの台詞を遮った。
「胸揺れの制御を教えなかったのは、なんでかミャ~、むっつりRク~ン?」
「えっ……、い、いやぁ~。ナンノコトカナァ」
Rが空トボけると、ショコラが鼻で笑った。
「ま、年頃のヤローはそーゆーモンだと分かってるミャ。各種設定についても、色々と指定をやり直してあげといたから、感謝するようにミャ」
「へへー、ありがとうごぜぇまずだ」
「あと、外道っぷりのレクチャーもしといたミャ。具体的には、魔法のコンビネーションについて、ミャーがRのDRLコンボを引き合いに出しといたミャ」
「へへー……って、待てやオラ」
Rがフサフサの猫耳を引っ張ると、「ぶみゃっ」とツブれたような声を上げた。
「そっちはディープすぎンだろ。コイツ素人だぞ?」
「何を言うミャ。【武装解除】で武器を落としーの、【名称変更】で自分のモノにしーの、【忠誠武器】でそれを回収しーのと、あまりの手際の良さに、『犯罪に限りなく近い無法行為』と讃えてやっただけミャ」
「うわぁ、嫌味たっぷりだな、先生。何の恨みがあってそこまで腐しますかねぇ」
「あら……、それ言う、R?」
にわかに演技をやめるショコラ。目をスッと細めて切れ長になると、途端に大人びた表情になる。
「もちろん、こんなコンボを作られて、マホロバの武器群が一度全壊したからよ。いくら魔法を重視した世界とはいえ、凶悪すぎるでしょ、あのDRL?」
ショコラは溜め息混じりに腕を組んだ。しなやかな黒のスリーヴレスに包まれた、凶悪すぎる双子山嶺がぐぐっとせり上がり、コケティッシュな猫の魅力が一段と強調される。
「調整を加えるのが大変だったのよねぇ、マホロバの開発部としては。コスプレ用の武器が全部パーよ、パー?」
「やべぇ……。そうだ、あんたマジで恨みがあったな」
「で、こんな話の最中にも」
すり足で寄ってきたショコラが、Rを上目遣いで覗きこんでくる。
「青少年のRクンは、どこを見てるのかしらねえ」
「えーっ、先生の魅力にメロメロですよ、ははは」
腕に柔らかくて幸せな感触がある。絶対ワザと当ててやがるが、からかいながらも目はマジだ。天国と地獄の圧迫面接にRは視線を逸らすと、茶色に黒のメッシュが入ったクセっ毛頭を優しく撫でてやった。
「いやあ、改訂版の【戻る武器】って先生のご発案ですか? あれ、最高ですよねぇ。よく調整した! キャッ、すごーい☆ 素晴らしいワ、子猫ちゃん♪」
「うっさいR、キモチ悪い」
「俺もそう思う」
猫なで声、終了。
ショコラの長い尻尾に、黒バニーの尻をペシペシと叩かれたRは、水脈ともどもOK社の会議室へと連れて行かれたのだった。
※ ※ ※
【生の躍動/Eros】
緑/レベル1/ロークラス
分類:瞬間
効果:術者のマナを2点回復する。
発動条件:直前に使用した呪文の色が緑であること。
「存分に死に抗え。それがスパイスになる」 ――死霊術士(初版)
93/350
収録版:初版、改訂版
※ ※ ※
会議室の中は、落ち着いた焦げ茶を基調としていた。和紙で作られた雪洞が四隅に設置され、そこから淡く光を投げかけている。家財はいずれも重厚かつ優美で、【背景音】ではジャズが流れていた。寺院のような匂いも漂っているから、香炉の【芳香】では沈香が焚かれているのだろう。和洋が巧みに入り混じることで、喧噪に塗れた都会のただ中に、穏やかな空気を醸し出していた。
「うわぁ……」
水脈は感嘆の息を漏らしつつ、しきりに首を巡らせた。
「ショコラさん、ここってすごく豪華ですね」
「みゅふふ。まぁほんの一例だけどミャ? さて御客人方、どうぞゆるりと寛ぐミャ」
お言葉に甘え、暗赤色に金糸が縁取られた二人掛けソファに水脈と腰掛けた。尻が沈み込みそうなほどふかふかで、こたつの呪縛に匹敵する心地良さである。
ショコラが軽やかにマナップすると、お茶の入った湯飲みが三つ、マホガニーの猫足テーブルに出現した。
「今日は狭山茶を用意したミャ。ちなみに、実は入間市が主な産地だミャー」
「出たな、埼玉の回し者」
「みゅふふ、何のことかな深谷ネギ」
確実に彩の国が放った刺客であろうショコラは、向かいのソファに腰掛けたのち、客より先に湯気が立つ熱々の茶に口を付けた。
「ほぅ……」
少量をゆっくり嚥下したショコラは、甘酸っぱい吐息を漏らす。
「みゅふ~ん、トゥレ・ビア~ン。ほれぼれするような旨さだミャー」
「おい、フランスかぶれ。猫舌の演技はいいのかよ」
「ふふふのふ、ミャーは鍛えているから平気だミャ」
「猫も吠えるんだな」
「うっせ、オマケ」
本当、こまごまと素に戻るよな。
Rもゆっくり飲むと、適度に温くて心地よかった。
「――ってこれ、湯気の量を盛りすぎだろ」
「ほっとけミャ」
ショコラは茶色の尻尾で器用にしっしっと払っていた。
「それよりR、ミャーに聞きたいことは何だミャ?」
「ああ、そうだ。実はな、先生……」
話を切り出そうとしたRは、ふと、目の前のショコラを巻き込んでいいものかと逡巡した。
かつては「見えざる手」の先達としてマホロバのルールを叩き込んでくれたショコラだが、今やすっかり体制側だ。転生した事実を知られたら、昼夜を問わず人体実験されるかもしれない。
もっとも、Rは別に自身の立場が不利になるのは厭わなかった。それよりもむしろ、ショコラが頑としてRを庇い立てすることを危惧していた。
――ったく、手に余ることもいっぱい抱えちまって、すーぐイッパイイッパイになっちまうからな、この人は。
Rが悩んでいると、ショコラは相好を崩した。
「大丈夫、先生に何でも話してみるミャ」
ショコラは大袈裟に胸を叩いて見せた。はずみで、黒く豊かな稜線がポヨンと波打つ。
「どうせRのことだから、ミャーの立場が危うくなるとか、ミャーには処理しきれないとか、ツマンナイこと心配してるミャ?」
「先生……」
「ハンッ! ヘソで茶ァ沸かすミャ!」
戸惑うRに対し、ショコラは親指を立ててみせると、ピンッと鼻を撫でてみせた。
「ミャーも今やOK社の端くれ、オマケに心配されるほど弱っちい生きざましてねーミャ。だからR? 大船に乗ったつもりで、ドーンと任せるミャ」
目を瞬いたRは、大きく息を吐いて弛緩した。
「分かりました、先生」
敵わねえな、ったくよお。Rは頭を掻くと、横でニマニマ笑う水脈を「やめろ」と手の甲で払ったのち、防犯会社のチームにやられて死んだ旨を、違法部分は除外して伝えた。
疑問点を適宜補足しつつ、〈岩石〉として復活したことまでしっかりと話し終えたとき。
「え、えぇっ……? ちょちょ、ちょっと待って……?」
ショコラはどうしようもなく狼狽えていた。
はあ~ぁ……、分かってたよ。助け船のショコラ丸は泥船だったよ、コン畜生。沈め。
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キリが良いので、ここで一旦締めます。
これだけだと短いので、三馬鹿のデータでも記しておきます。
#エネミーデータ01:フェン
名前/Name:フェン・リール
種族/Race:〈月狼/Lunawolf〉
形態/Form:原型/Prototype
筋力/Strength:4
機敏/Dexterity:4
容貌/Looks:獰猛/Fierce
年齢/Age:20
身長/Height(cm):186
体重/Weight(kg):75
領土/Domain:【竜の巣/Nest of Dragon】
デッキ名「ガイアドラゴン・トライアングルスター赤」
レシピ
才能 2枚
《獣の咆哮/Beast Roar》
《痛み止め/Painkiller》
赤7+4 42枚
【緋色の竜/Scarlet Dragon】4
【焼けつく竜/Scorching Dragon】4
【混沌の竜/Chaos Dragon】
【ウォードビアの竜騎士/Wardobian Dragoon】
【不死鳥/Phoenix】2
【紅玉アリ/Ruby Ant】4
【竜の巣/Nest of Dragon】3
【竜の鱗/Dragon Scale】
【不意打ち/Ambush】2
【襲来/Onset】
【溶岩の籠手/Gauntlet of Lava】
【爆発/Explosion】4
【電光/Lightning】3
【落雷/Thunderbolt】3
【誘導爆弾/Smart Bomb】2
【集中/Consentration】2
【装甲破砕/Armor Crush】4
銀1 5枚
【鋼鉄の竜/Steel Dragon】4
【水晶の竜/Crystal Dragon】
特技 13枚
【容量超過/Over Capacity】4
【呪文の達人:赤/Spellmaster:Red】4
【魔法熟達:赤/Magic Adept:Red】4
【戦女神/Athena】
特殊 2枚
【開始/Start】
【終了/Quit】
計64枚
#エネミーデータ02:臥龍
名前/Name:臥龍・ドラゴネス
種族/Race:〈竜人/Dragonewt〉
形態/Form:原型/Prototype
筋力/Strength:5
機敏/Dexterity:3
容貌/Looks:荒々しい/Wild
年齢/Age:19
身長/Height(cm):190
体重/Weight(kg):90
領土/Domain:【母なる大地/Gaia】
デッキ名「ガイアドラゴン・トライアングルスター緑」
レシピ
才能 2枚
《竜の翼/Dragon Wing》
《鱗の鎧/Scale Armor》
緑7+3 40枚
【母なる大地/Gaia】4
【循環/Circulation】4
【融合/Fusion】2
【戦闘の歌/Battle Song】
【導きの糸巻/Ariadne】
【森の戦術/Sylvan Tactics】4
【生の躍動/Eros】4
【猛毒の竜/Poison Dragon】4
【鶏蛇/Cockatrice】
【牝山羊/Chimera】2
【猛獣使い/Beast Tamer】
【強欲の宝石/Jewel of Greed】
【森妖精/Nymph】3
【山査子/Hawthorn】2
【樫の古木/Old Oak】3
【中和/Neutralize】3
紫1 4枚
【暗黒胡蝶/Night Butterfly】4
緑紫 4枚
【月見草/Evening Primrose】4
特技 12枚
【魔法収束/Magic Convergence】
【呪文の達人:緑/Spellmaster:Green】3
【魔法熟達:緑/Magic Adept:Green】4
【容量超過/Over Capacity】4
特殊 2枚
【開始/Start】
【終了/Quit】
計64枚
#エネミーデータ03:スマ虎
名前/Name:スマ虎・マレー・アムール・ベンガル5世
種族/Race:〈虎牙/Tigerfang〉
形態/Form:原型/Prototype
筋力/Strength:5
機敏/Dexterity:3
容貌/Looks:野蛮/Brute
年齢/Age:18
身長/Height(cm):191
体重/Weight(kg):88
領土/Domain:【桃源郷/Xanadu】
デッキ名「ガイアドラゴン・トライアングルスター紫」
レシピ
才能 2枚
《魔力視覚/Mana Sight》
《獣の咆哮/Beast Roar》
紫8+2 51枚
【幽霊竜/Spectral Dragon】4
【濃霧の竜/Mist Dragon】4
【黄昏バク/Twilight Tapir】2
【暗黒胡蝶/Night Butterfly】4
【魔力の管理人/Mana Warden】4
【人造人間/Homunculus】4
【オーロラの壁/Wall of Aurora】2
【魔力充填/Mana Charge】4
【共鳴/Sympathy】2
【エーテル産出/Yield of Ether】4
【桃源郷/Xanadu】4
【魔力譲渡/Transfer Mana】4
【心の平穏/Peace of Mind】2
【空虚/Blankness】2
【狂暴化/Berserk】2
【魅了/Charm】
【よろめき/Aphrodite】
【無感情/Insensibility】
特技 9枚
【呪文の達人:紫/Spellmaster:Purple】2
【魔法熟達:紫/Magic Adept:Purple】3
【容量超過/Over Capacity】4
特殊 2枚
【開始/Start】
【終了/Quit】
計64枚




