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迷走部は今日も騒がしい。  作者: りん
第1周期
7/11

PART4.隠し事(2)

「あー………えっと、こんにちは?」

「疑問形になってるよ。でもちょっと会えてよかったわ」



偶然渡り廊下で鈴姉さんに遭遇してしまった。

鈴姉さんなんでスルーしてくれなかった………!たまにすれ違うてきもあったけどそのときはスルーしてくれたじゃないか……!

よりにもよってこのタイミングで、エロ本を隠し持ってるタイミングで声をかけてこなくてもいいんじゃないだろうか。

そんな俺の疑問が態度に出ていたか鈴姉さんが要件を伝えてくる。



「実は今日の部活は私も久美子さんの手伝いに行くことになったから遅れるの」

「あ、はい。了解です」



そういえば連絡手段を持ち合わせていなかったもんな。

阿賀野先輩の手伝いということはまた生徒会関連だろうか。

だが今の俺はそんなことを気にする余裕はない。

そして周りが騒がしくなってくる。



「おいおい、なんであの二原様があの冴えない男なんかに……!?」

「ありえねぇ………」



君達よ、それがクラスメイトにかける言葉かな?

鈴姉さんは3学年美人ランキングトップ1、2を争う猛者であり、誰にでも優しくおしとやかな姿から全学年から大人気を誇っている。でも滅多に男子と話そうともしないことから男嫌いとも噂されていたりする。

だからこそそんな人が俺と話しているというこの状況は他の人にとって異様そのものだ。ただの部活話だけど………。



「…………」

「どうしました?」

「なんとなく違和感があるような……」



思わずビクッとしてしまう俺。微笑みながらそんなことを指摘されては冷や汗が止まらない。

鈴姉さん勘が鋭すぎますって……。まあ今現在進行形で背中に隠したはいるけど。



「あ、そういえば次の授業も移動でした!そろそろ行きますね!」

「うん。またね」



バレる前に離脱することにする。これ以上ここにいたら100%バレてしまう。それもクラスメイトの目の前で。それだけは避けたいため文字通り逃げるように歩いてく。

ただ去り際に聞こえてきた話が少々気になった。



「あれが同じ部員の七城君って子?」

「そうよ」

「へぇ~………」




―――――




「さあて、今日の昼飯は何にしようかな」



無事午前の授業を乗り越えて昼休み。

俺は弁当派ではなく学食派なので食堂で飯を選ぶ。俺の唯一(二人)の友達である葛城と田村も一緒だ。

ちなみに再度葛城に返却を試みたが見事にスルーされた。あとで葛城のバッグにでもコソッと入れておこうと思う俺は外道だろうか。

相変わらず背中にはエロ本を隠しておりタイミングさえ来ればいつでも捨てるつもりだ。



「僕は今日は定食にしようかな」

「俺はカツカレーで!」

「それじゃ俺は………」



俺は牛丼、葛城はカツカレー、田村は日替り定食を選び席を探す。食堂は広くて全ての学年の生徒が利用している。そのため空いている席を探すのも容易ではない。そうして探し歩いているとたまに俺の数少ない知人に出くわすこともある。

そう、今みたいに。



「あ、宮斗先輩。お昼ですか?」

「よ、よう……遠野」



そこにいたのは遠野とそして側に友達と思われる女子が二人いる。なぜよりによって今日はこんなに知人に出くわすのだろうか。

俺は知人が少ないからそう簡単に会うことはないのだが。

一応言うとコミュ障ではないから信じてほしい。

言葉を交わすと遠野はいきなり訝しげな目で見てくる。嫌な予感が………。



「…………………」

「遠野、いったいどうした?」

「な~んか今日の宮斗先輩妙に背中がピンとしているというか……」



思わず背中からエロ本を落としかける。

なぜその小さな違いに気づく!?直感ではなくピンポイントで当てられると余計に怖い。

あれか。皆何かしらのセンサーをお持ちなのだろうか。

話をそらそうとしたら先に遠野の友達と思われる女子が喋りだした。



「もしかして風さんがいつも話題に出してる宮斗先輩ってこの人?」

「へぇ~、予想より声が高いね」

「ちょ、ちょっと!?」



二人ともフレンドリーな感じだ。コミュ力高そう………。

……………俺はコミュ障じゃないから!本当だから!

どう反応しようか悩んでいると二人が先に喋りかけてきた。



「こんにちは。風の友達をやってる天野(あまの)(りん)と言いま~す。よろしくです」

出水(いずみ)綾子(あやこ)です」



天野は若干フレンドリー過ぎる気もするが悪い気も起こらない。これがコミュ力というやつか。それに対して出水は礼儀正しいというかお嬢様って感じだ。

性格は真逆に見えるけどいい友達みたいだ。



「ああ、よろしく」

「ところで、宮斗先輩の噂はいろいろ聞いてるんですけど」

「ん?名前呼び?」

「あ、風も名前呼びなんで。迷惑でした?」

「別に構わないよ」



と言っても遠野が俺のことを名前で呼んでるのも遠野が無理矢理言わせてくださいって頼んできたからだけどな……。

ん?今天野は何て言った?



「あのさ、噂って…………」

「おっと、そろそろ食べないと昼休みの時間が無くなりますね!それでは失礼しま~す」

「え、凛ちゃん?あ、えっと、それじゃ宮斗先輩。またあとで」

「失礼します」

「……………………おう」



ちょっと無駄に立ち話もしたし他の人にも少々迷惑になっていたようだから俺も葛城と田村の元に戻る。

ただ天野が言っていたことが非常に気になった。

噂って何?俺何かしたかな。全然身に覚えないんだけど。

そして葛城と田村が既に席に座っているのを見つけ俺も同じところに座ったら早速葛城が口を開いた。

何故か俺を睨むように。



「…………リア充死ね!」

「何故に!?」

「七城君、それで自覚ないなら相当だよ」

「田村まで!?」



何故か俺が責められた。しかも滅多にそういったことをしない田村まで。

何を言うのだろうか。葛城が言うまでもなく俺だってそう思っているというのに。ほら後ろのテーブルにだって男子と女子が向かい合わせで笑い合ってやがる。

………リア充死ね!



「…………七城、お前のその気持ち。わかるぞ」

「わかってくれるか。同士よ」

「どこから突っ込めばいいのかな」



この時、エロ本事件のことを水に流し友情が深まった瞬間であった。




――――――




「あぁ………やっと終わった………」



やっと今日の分の授業が終わり机にへばりつく。

飯を食べ終わったあとにあることに気づき実行したとこうまくいった。あることとは、バッグに隠しておけばいいんじゃね?ということ。

よく考えればわざわざ自分で持ってる意味がなかった。むしろ自分からエロ本持ってますよアピールしてるも同然。

人のバッグなんて普通は漁らないから入れておけばよかったものを朝の持ち物検査のせいですっかり忘れていた。

今日一日の努力の意味とは……………。

あとは学校帰りにごみ捨て場所に寄ってコソッと捨てれば完璧。

掃除も早々に終わらせさあ帰宅だというとこで美季が声をかけてきた。



「宮斗君、もう帰るの?」

「掃除も終わったんだしもうここにいる意味は…………」

「部活があるよ」



美季が決定的な事実を突きつけてくる。

わかってました。わかってましたよ。忘れていませんでしたよ。

鞄に入れてる以上バレることはない、はずなんだけども。それでも迷走部だと何か起こりそうだと思わずにはいられない。

できるだけ危険を避けるべく今日は退散しあとで適当な理由を伝えようと思っていたが美季に見つかってしまった。

しょうがない。心苦しいがここは嘘をつこう。



「実は今日…………」

「宮斗先輩!部活行きましょう!」

「遠野ちゃん!?なんでここに!」



ヤバい泣きそう。

遠野が何故かドアの前を陣取りこっちを見ている。

遠野が名前を呼んだせいで俺と美季と遠野に周りの視線が集まる。

そして同時に聞こえるチッと舌打ちのような音。君達には分からないだろうね。遠野に見つかれば逃げることはできないということが………。それがどれだけ今の俺の現状には辛いことか……!



「さあ、早く行きましょう~。きっと鈴姉さんも待ってますよ」

「あ、そういえば今日は鈴姉さんと阿賀野先輩遅れるって」

「了解です!それでも早く行きましょう!」

「ちょ、ちょっと宮斗君。バッグ!」



俺が遠野に引きずられるように教室を出ていく。

なんでこんなに急いでいるのかわからないが視線が集まるのでやめてほしい。

現在も男子からは嫉妬と狂気の視線が女子からは嫌悪と興味の視線が注がれる。正直言って居たたまれない。

そんな教室から抜け出しいつも通り部室に行く。

部室にたどり着き遠野がドアを開けた。今日はまだ誰も来ていない。



「たく、これなら早く来る意味あったか?」

「だって少しでも長く先輩と一緒に居たかったんですもん」



遠野が無邪気な笑顔を見せる。

本当にこうして見るとまるで本物の妹を持った気分になる。俺には兄弟がいないからそれが少し嬉しかったり。

そんな風に感想を抱いていると遠野と美季がコソッと俺には聞こえない声で何か話す。



「宮斗先輩はいつになったら一人の女性として見てくれるのでしょうか………。さすがにそろそろ自信が無くなりそうです」

「私なんてもう何年も一緒にいるのに…………」



話している内容は聞き取れなかったが表情を見るに聞いてよさそうではなかっのであえてスルーする。

もういつもの定位置になりつつある長机の椅子に座る。その際バッグをテーブルの上に置いておく。ちなみにまだ鞄の中にはエロ本がある。

いつも通り勉強を始めようと思いバッグのチャックを開ける。

そのタイミングで部室のドアが開いた。



「あ、峰入ちゃん。どうしたの?今日は弓道部の助っ人じゃなかった?」

「部室に忘れ物をしていたことを思い出してな。取りに来たんだ」



入ってきたのは峰入だった。

肩に弓道部で使うと思われる弓ケースを持っており、弓道部に行こうとしていたことが容易に想像がつく。

峰入は忘れ物を取るために入室する。そして俺の横を通りすぎる際に弓ケースが俺のバッグの取っ手に引っ掛かった。

峰入はそれに気づかずに歩きそのままバッグが床に落ちる。その拍子にチャックを開けっ放しにしていたため中身が散らばった。



「あ、ゴメンなさい。気づか……な……………」

「あ」



峰入が言葉を失った。

俺たちの視線の先には中身が散らばったことでバッグからはみ出ているエロ(・・・)があった。

やっちまったぁぁあ~~~~~!

みるみるうちに峰入から殺気が膨れ上がっていく。様子に気がついたのか美季と遠野もこっちを見て顔を真っ赤にした。



「七城?」

「………………………は、はい」

「これはいったいどういうことだぁぁあ~~~!」



峰入が弓ケースを構えて俺を襲う。

折角今まで隠し通してきたのになんでこのタイミングでぇ!

とりあえず許しを乞うために速攻で土下座をして言葉を捲し立てる。



「ち、違うんだこれは!誤解だ!」

「ほうほう、貴様のバッグから出てきたようにしか見えないのだけれど?」

「のぉう!人の話を聞けぇ!弓ケースは鈍器として扱う物じゃありません!」

「貴様を始末するためにある」

「いいのか!?それでいいのか!?弓ケースが可哀想や!」



俺はひたすらに誤解を解くために必死になって説明する。このあと鈴姉さんたちが現れてくれなければきっと俺は消し炭になっていただろう。

なんとか友達に押し付けられたと説明しやっと納得してもらえた。

だがそのあと相川が言った言葉に絶句した。



「コソッとその人のバッグに隠せばよかったんじゃないですか?」

「……………………あ」



その考えに至らなかった俺は相当焦っていたんだと思う。

次のお題は猫です。(ネタバレ)

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