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迷走部は今日も騒がしい。  作者: りん
第1周期
6/11

PART3.隠し事

お題は「エロ本」です。

えーと思った人は「隠し事」と思ってください。

星桜学園は部活動が盛んというだけあって敷地の面積はトップクラスを誇る。運動部から文化部まで様々あり偏る、ということは滅多にない。もちろん運動部はそれなりに強いところもあればビリ争いを繰り広げる部もある。ようするに部活動が盛んというだけで決して強いわけではない。

そんな運動部たちが声を出して朝練している様子を見ながら俺は校門を通る。


自分のクラス2―Bの教室に足を踏み入れると今日もどことなく騒がしい。ただほとんどが朝の部活動に勤しんでいるため人数は少ない。俺の席は窓際というどこのテンプレ主人公だというベストポジションを獲得している。まあテンプレなのはあくまで席だけだが。俺が席につこうと1歩歩いた瞬間声がかけられた。



「あ、七城ーこっちこいよー」

「お前は今日も騒がしいなぁ」



俺に声をかけてきた人物は葛城(かつらぎ)英治(えいじ)。ちょっと特殊な性格をしているが根はいいやつで人付き合いもいい。俺の数少ない男友達の一人である。言うまでもないことだが女友達は迷走部の部員以外にはいない。

ちなみに葛城はこのクラスどころか学年で有名だ。葛城の通り名は『星桜の英雄』。そう呼ばれている理由はというと――――。

俺は葛城がいるところに近づく。



「どうした?」

「これだよ」



何となく予想を抱きつつ葛城の机に置かれている物を見る。

そこには、雑誌が置かれていた。

タイトルは『バキューン!』や『ズキューン!』と書かれている物が。決して言葉には出せない。

ようするにエロ本だ。

そうです。この男葛城は変態×エロ人間なのです。



「新作をなんとか入手に成功してな」

「なんでそんなドヤ顔できるんだよ!」



しかもこの男はオープンTHE変態である。

女子からも絶賛見下す目で見られているのに葛城は気にした様子を見せない。

一応友達の名誉のために擁護はするけど、友達想いでいいやつなんだよ?本当だよ?



「葛城、少しは自重しろって。女子にめっちゃ引かれてるぞ」

「構うもんか、俺は我が道を進む!」

「我が道逸れすぎだアホ」



…………………本当にいいやつなんだ。いいやつ、のはずなんだ…………。

と、そこへ朝練を終えて教室へ入ってきた男子たち。

女子たちはこっちのほうを見るなり思いっきり引いていた。

それに比べ男子の半分はエロ本に食い付き葛城の机の周りに群がる。正直者多いなこのクラス。残りの半分は直接エロ本に関わろうとはしないが気にする素振りを見せる者と本当に興味無さそうにする者に別れていた。

よかった。クラスの男子全員変態じゃなくて。


俺はもちろん大して興味が無い組に属する。

いやちゃっかりエロ本読んだけど違うよ?そういうことちゃうよ?…………はい正直に言おう。少しは興味ありました。

そりゃね?俺も健全な現役男子高校生だから。むしろここで興味持たなかったらただのホモだから。

けど俺まで白い目で見られたくないからさっさと自分の席に戻る。

と、バッグのチャックが空いていた。全然気づかなかった。

チャックを閉めて机の上で時間を潰していると先生が教室に来る。



「席についてー。HRやるよ」



このクラスの担任は学校中で噂になっている。理由は簡単。めっちゃ美人。女子も羨望の眼差しを向けるくらいに。あと巨乳。ゴメンこの情報はどうでもよかった。

担任の名前は藍崎陽花。男性の先生の間でも狙ってる人は多く、人望も厚い。この先生も学校の皆はまた別の名で呼ぶ。

その名も『理想郷』。もはや名前ですらない。

藍崎先生は教壇につきHRを始める。



「えーと、突然なんだけどこれから持ち物検査をします」

「「「えー」」」

「皆抑えて抑えて」



藍崎先生が皆を宥める。

この学校では持ち物検査は事前に教えてはもらえずそれは藍崎先生も例外ではない。だから普段から持ち物に関しては気を配らなくてはならない。

でも皆の反応を見る限り…………アウトだな。ご愁傷さま。

もちろん俺は変な物なんて持ち込んではいない。必要性を感じないんで。



「それじゃ皆鞄出してねー」



先生の声に皆渋々鞄の中を見える状態にして机の上に置く。もちろん全員ではなく中には普通に対応する人もいる。美季とか。

俺も鞄を机の上に置きチャックを開く。

すると見覚えのない物が入っていた。


『新任教師の(バキューン!)』


思わず全力でチャックを閉じる。

………………あれ?見覚えのない物があるんですけど?

もう一度チャックを開いて確認する。


『新任教師の(バキューン!)』


アウトぉぉお~~~!

再びチャックを閉じて強制的に視界から外す。

落ち着け。俺よ落ち着け。冷静に考えよう。

なんでだ。なんでエロ本があるんだ。原因は…………

そこでふと思い当たり葛城を見る。

目が合った。



「(テヘッ♪)」



テヘッじゃねぇえ~~~!お前がやったのか!

何の恨みがあってこんなことを!

そのやり取りの間にももうすぐ先生が俺の許まで来る。

一か八か、と思い教科書を敷きその下にエロ本を突っ込むことで見た目だけではバレないようにした。

そして藍崎先生が俺の鞄を見る。藍崎先生は見ただけで何も言わず通りすぎていく。どうやらうまく誤魔化せたらしい。

これで厳しい先生例えば剛島先生(生徒指導部)だったら間違いなく隅々まで調べられて社会的に俺は死んでいただろう。

藍崎先生は一通り見て回り再び教壇についた。



「皆不要物は持ってこなかったわね」



その言葉を聞いて皆の様子を見るとどうやら上手く隠しきれたらしい。藍崎先生チョロいッス。

そのあと簡単にHRを終える。

そして俺は終わったと同時に葛城に詰め寄る。



「葛城、これはどういうことだ」

「別に布教しようとかそういうわけじゃないんだよ。良さを知ってもらおうと思ってな」



俺が問い詰めるも葛城はどこ吹く風とばかりに受け流す。

というかそういう魂胆だったのか!確かに前に「俺にはエロ本の良さが分からないなぁ」「ならあとで俺が教えてやるよ」的な会話はしたよ?でもまさか本当にするとは思わねぇよ。

しかもこの様子だと知らぬ存ぜぬを突き通す雰囲気。

ここで下手に周りに俺がエロ本持ってることがバレたらマズいことになる。

なんとか手を討たねば………!




――――――




一時間目終了後俺はある行動を開始していた。

今エロ本は俺の背中のブレザーの下に隠してある。なぜそんなことをしているのかというとある場所までバレずに持っていくためだ。

ある場所というのは、そうごみ箱。俺にとってエロ本は不要物。=ゴミ。ならばゴミはごみ箱へ。完璧な作戦だ。

ただここで問題が発生する。それはごみ箱まで誰にも見つからずに捨てるということ。

ごみ箱は廊下側の後ろにあり俺の席とは真逆に当たる。

少しずつごみ箱に近づいていく。なるべく不自然にならないように慎重に慎重に…………。

そして残り2mというところで邪魔が入った。



「宮斗君?どうしたの?」

「え?」



声の主を見ると美季がいた。

美季とは同じクラスなためここにいても何ら不思議ではない。だが状況がマズイ。なぜなら今俺の背中にはエロ本がある………!

俺はバレないようにごく自然に会話をする。



「いや、ごみを捨てようと思ったんだけどそれが?」

「なんか動きに不自然が出てるというか変に緊張しているような気がしたから………」



俺の心情が思いっきりバレていた!

もしかしたら隠していたつもりなのに結構表情とかに出ていたのだろうか。しっかりしろ俺……!

バレたら学校で生きていけなくなるんだぞ………!



「気のせいじゃないか?それよりも次は移動教室だろ。早く移動しようぜ」

「あ、うん」



美季は俺の言葉に今気づいたように自分の席に戻っていった。

ふぅ………とりあえずこの場は凌いだ。だが俺もそろそろ移動しなくちゃいけないな。とりあえずエロ本を捨てるのは後回しにして俺も移動しよう。

最初のごみ捨てポイポイ作戦は失敗に終わった。




――――――




俺は今物凄いピンチに陥っている。それも自分のミスで。

なんでこんなことをしてしまったんだ。

なんで………なんで………!

なんでエロ本を持ってきちまったんだぁぁあ!

一応弁解すると決して家から持ってきたわけじゃない。俺が現在エロ本を持っている理由は皆の知っての通りだ。

だが問題はそこじゃない。俺がやらかしたのは、移動教室なのにわざわざエロ本を持ってきてしまったことだ。

ついね?置いてくるのは忘れてしまったんだよ。正直これはやっちまったと思う。自ら墓穴を掘ってるから。



「次教科書P35開いてー」



初老の理科担当教師である大川先生が指示をしてくる。今エロ本は背中にはない。椅子に座る際に落ちそうになったから咄嗟に隠し場所を変えたのだ。だが変え場所をミスった。

今エロ本はファイルの中にある。もし周りの人が注視していれば100%バレるだろう。だが今のところは俺の腕で隠すように置いているためなんとかバレずにすんでいる。

なんとかやり過ごせ…………!

そして大川先生の新たな指示が。



「と、その前にファイルを出してプリントを挟んでおいてくれ」



NO~~~~!

それだけは!それだけはダメッスよ先生!ファイルをノートに挟む際に開いて中身を見せなければいけなくなるじゃないか!

俺が躊躇している中周りの同級生たちはファイルにプリントを挟んでいく。

俺はこの状況を凌ぐ術を考える。かなり考える。

考えていると隣にいる俺の数少ない男友達の一人、田村(たむら)光太郎(こうたろう)が声をかけてきた。



「七城君?どうかしたの?」

「あ、いやその。プリントをファイルに挟むくらいあとでいいかなと思って」

「あ、そうなんだ」



自分で言って思うが正直これは苦しい言い訳だ。

しかし田村はその言い訳で納得したのかあっさり引き下がってくれた。助かった………。

だが田村よ。少しは人を疑うということを覚えておけ。

しかしこれ以上難関は訪れないだろう。疲れた……。

そこで俺は油断をしてしまっていた。まだ難関が目の前に迫っているというのに…………。



無事移動教室を乗り切り教室に戻るため渡り廊下を歩く。

渡り廊下というのは俺たち2―Bに限らず移動教室等で人が行き来している。だから知ってる人と遭遇しても何ら問題ない。

もう一度言おう。俺は危機を乗り切ったというということで完全に油断しきっていた。だから



「あら?七城さん」



鈴姉さんと遭遇してしまうという事態に陥る。


神様、あんたはそこまで俺は社会的に死滅させたいのか。

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