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迷走部は今日も騒がしい。  作者: りん
第1周期
11/11

PART8.自販機(2)

※星桜美女写真集

葛城が作製した星桜高校生美女が全員載った写真集。男子勢の間でよく愛用されている。

「ここかな……?あ、違った」


1階に降りるとそこには2階、3階と同様に自販機が置いてあった。

自販機にはまた先客がおり俺と阿賀野先輩は待とうと思ったが目の前の光景に思わず足が止まる。


「それともこっちかな………?そう奥にはいってないと思うんだけど……………!」


スカートを着ていることから女子生徒なのだろう。

青みがかった黒色の髪。整った顔立ちはまさしく美少女。

というか知り合いにとても似ている顔だ。

だが残念なことにその少女は―――。



「うまくとれないな…………んん」



「「(うわぁ…………なんかいる………………)」」



床に這いつくばり手を必死に自販機の下に潜り込ませていた。


周りを見れば遠回しに見ている人もいるが目を逸らして見なかったことにしている。

当然だ。こんなことを平然としている高校生と関わりになりたくないと思う。漫画ならやる人はいるかもしれないが現実でやる人はほとんどいないだろう。

でも残念ながらそいつは知り合いだった。


「(お前は何をやってんの………!遠野ぉ………!)」


恐らく自販機の下に落ちたであろう金を必死に取ろうとしているのは迷走部の後輩の遠野だ。

というか間違いなく。

必死に探している後輩はこちらの存在に気づくことはなかった。

だがこの体勢をマズい。恐らく遠野は気づいてないだろうが膝を地面につけて手を自販機の下に入れて顔を覗かせてる格好のためスカートの下が見えそうになっている。

思わずそこに目がいきそうになり………。


「痛ぃっ!?」


阿賀野先輩が無言で踏みつけてきた。

これは100%俺が悪い。

その声に気づいたのか遠野が探すのをやめて立ち上がりこちらを振り向く。


「あ、宮斗先輩に久美子先輩。こんにちはです」


「お、おう。ところで何をしてんの?」


「よくぞ聞いてくれました!実はオレンジジュースを買おうと思い100円玉を二枚取り出したところ、一枚落としてしまいそのままコロコロ〜と自販機の下に入ってしまったんです。それでこうやって必死に探していたのですが……」


「いや100円くらい諦めよ、な……?」


「今私のサイフには1万円札と100円玉しかないんです。落ちた100円を見捨てたらオレンジジュースが買えないじゃないですかぁあ!」


「逆になんで1万円札しか無ぇの?」


自動販売機は全国共通1000円札までしか使えないのが基本だ。

自動販売機という壁に1万円札は無能なのだ。


「しょうがないな。それなら100円くらい俺が出すよ。だからもう変な行動はするなよ?」


「……え、先輩が出してくれるんですか?」


「後輩が目の前で困っているのに100円くらい出さないほど俺は甲斐性無しじゃないんだよ。いいから自販機の前空けろ」


「きゃー。七城君かっこいいー」


「棒読みになるくらいなら無理して誉めないでください」


「……え、えっと。その、ありがとうございます……」


遠野が顔を赤くしながら礼を言ってくる。

今さら今まで自分がどれだけ恥ずかしい体勢でいたのか理解したのか。


サイフから100円玉を取り出し自動販売機に入れようとして。


「ちょっと待ったぁぁあ!!!!!!」


「!!??」


突然大声が聞こえその弾みに100円玉を落としてしまう。

そしてそのままコロコロと転がっていき100円玉は自動販売機の下に潜り込んだ。

口を開けて絶句しているところに声の主がやってくる。


「間に合ったー。コーラ買うのになんで1階にいるんだよ。別に2階にもあるだろ?あ、そうか。売り切れだったのかそりゃすまん。…………七城さん?なんで俺の襟を掴み上げるのかな?」


「葛城ぃぃ!!お前は余計なことしないでエロ本だけ読んでろぉぉお!!!!」


「女子の目の前でなんてこと言ってくれてんだっ!?」


お前のせいで、お前のせいで俺の100円玉がぁぁあ!!!!!


「俺はコーラやめてココアにしようと思ったんだよ。ちょうど暑さが無くなって少し肌寒くなってきたからさ。間に合わなかったらそれはそれでよかったんだけど」


「ならコーラでいいだろ!」


俺が葛城に対してキレていると肩に手を置かれた。

後ろを振り向くと遠野が優しい目をして俺の肩に手を置いていた。


「…………先輩、一緒に100円玉発掘しましょう?」


「その生易しい目をやめろ!」


あんな恥ずかしい行動はしたくない。

冷静になってみれぱたかが100円玉。落としてもまだ俺のサイフにはもう一枚残っている。

いざというときは1000円札を使えばいい。


「おぉっと、そういえば貴女方は三年生の阿賀野さんと一年生の遠野さんじゃないかな!?」


「私たちの名前を知ってるの?」


「知らない人はこの学校にいないと思いますよ?」


彼が持っている星桜美女写真集については何も言わないでおこう。

俺もたまに借りるから焼かれたら困る。


「本当にお前は羨ましいぞ。こんな学校を代表する美女たちにお近づきになれるなんて。どうですかお二人さん。今度俺とお話でも………」


「「七城君(宮斗先輩)で間に合ってます」」


「死ね七城!」


「俺のせいかこれ!?」


それにどちらかというと手を焼いてんのは俺のほうなんだけど。

と、そんなことよりも早くコーラ買わないともうすぐで昼休みが終わる。


「今度は邪魔するなよ?」


再び100円玉を取り出し自動販売機に入れようと………。


「お、あれ女子のパンツ丸見えじゃね?」


「えっ?」


葛城が呟いた声に反応しそちらを向くと同時に手に持っていた100円玉の軌道がズレ引っ掛かってしまった。

その拍子に手から100円玉が転がり落ちていき再び自動販売機の下へ。


「「「「…………………」」」」


何とも言えない空気が四人を襲う。

もう一度葛城の言った方向を確認してみたがそれらしき女子はもういなかった。

ちなみにこのとき阿賀野先輩と遠野は般若のような顔をしていることをお知らせする。


「…………………七城君?」


「…………………宮斗先輩?」


「いやぁあ!?見つけたのは葛城だし!俺は見えなかったから残念とか思ってないから!本当だから!」


こればかりはしょうがないと思う。

俺だって健全な男子高校生。反応してしまうのは男性の遺伝子レベルに刻み込まれているので直しようがない。

ちなみに元凶である葛城は発言した瞬間に阿賀野先輩に目潰しされていたことをお伝えします。


「でも困ったな。こうなったら千円札しか残されていないぞ……」


「宮斗先輩!ここは100円玉を探しましょう!」


「私がさせないからね?遠野ちゃん。というかいい加減諦めて普通に買いなさい。」


阿賀野先輩の意見に物凄く同感する。

俺が千円札を取り出し自動販売機に入れようとすると。





キンコンカンコーン……………





「………………………」


昼休み終了の合図が鳴り響いた。

まだ教室に戻っていない生徒が走って教室に向かっていく。



「…………………教室に帰ろうか」



結局コーラどころか自分の分さえ買うことはできなかった。

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