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迷走部は今日も騒がしい。  作者: りん
第1周期
10/11

PART7.自販機

自動販売機あるあるを並べてみました。

「あぁ暑い…………。もう夏か、夏なのかこれ!」


今日はこの時期にしては珍しく気温が上昇している。

そのせいで長袖の制服を脱いで袖を捲る生徒が続出していた。

今俺はそんな中廊下を歩いている。

なぜなら


「クソッ……今日は負けたが明日は負けねぇぞ……!」


毎日恒例パシりジャンケン大会(参加者2名)において15回のアイコを繰り返した後負けてしまったからである。

昨日も負けたのに今日も負けてしまうとか散々なこの頃だ。

廊下を歩いていき自販機のある場所にたどり着いた。

運良く誰も………いた。


「あら、七城君じゃない」


「こんにちは。なんでこの階にいるんですか。三年生は上の階の自販機使いましょうよ」


「お目当ての物がこっちの階にしか無いのよ。……あったあった」


自販機の前にいたのは阿賀野先輩だった。

この学校は3階構造になっており1階に1年生、2階に2年生、3階に3年生がおり主な実践室等は別棟になっている。

そしてそれぞれの階の階段の傍に自販機が各1台ごとに設置されているため自販機を利用するのに他の階に移動する必要が無いはず。

しかし販売している中身は違うらしく部長が欲しかった物は2階の自販機にしか無かったようだ。


「阿賀野先輩はコーヒーですか……。大人ですね」


「コーヒー飲めるからと言って大人というわけじゃないわよ。そういう七城君は飲まないの?」


「俺は甘党派なのでコーヒーは飲みません。今更ですけどお嬢様なのに自動販売機を使ったりするんですか?」


「良くない?こういう風にお昼に自動販売機でコーヒーを買うことって青春みたいで私好きなんだけど」


「迷走部で毎日元気に騒いでいる人が今更何を言ってるんですか」


阿賀野先輩がコーヒーを買い今度は俺が自販機の前に立つ。

確か葛城はコーラだったよな………。

小銭を入れてボタンを押そうとして気づく。


「…………………げっ」


「どうしたの?」


思わず顔をしかめる。

コーラのペットボトルは陳列されているがボタンには売り切れが赤く点灯していた。


「コーラが売り切れていたんです」


「あら、それなら別の物買ったら?炭酸なら他にもあるわよ」


「葛城がコーラじゃなきゃダメだって言うんですよ。でも困ったな。3階にコーラありますか?」


「あったはずよ。行く?」


「めんどくさいけどしょうがない。行きます」


阿賀野先輩と共に3階に行く。

3階の自販機には既に先客がおり3年生と思われる男子生徒がサイフ片手に立っていた。

男の先輩が俺と阿賀野先輩に気づくと驚きの表情をする。

早速嫌な予感がするなぁ。


「あ、久美子様!こんなところで出会えて光栄です。一体どのようなご用件で?」


近くにいた男がそんなことを言い出す。

同級生に様付けはないわー。

阿賀野先輩はお嬢様だから間違ってはないだろうけど同年代でそれはねぇ。

それでもなお阿賀野先輩は表情を崩すことなく言葉を返す。


「自動販売機でコーヒーを買っただけよ。あなたたちはここで何をしているの?」


「私たちはこちらの自動販売機にて飲料水をご購入させてもらっております。それにしてもここの自動販売機にコーヒーが無いなどあり得ませんね。学校側に伝えておいたほうがよろしいのではないですか?」


「いやー別に。面倒だから気にしなくていいわよー」


「仰せのままに」


「(………………このやり取り何!?)」


同級生というより明らかに上下関係が存在しているぞ。

この先輩はあれか。阿賀野先輩のファンクラブ的なやつの会員みたいなもんなのかな。

でも同級生にこの態度は俺だったら悲鳴あげてるよ。

よく阿賀野先輩は耐えてるものだ。どちらかと言ったら慣れてるという表現が正しいか。


「……ところで久美子様。こちらの怪しげな男はいったい誰ですか、…はっ。もしやストーカーですか!?登下校の際にいつも陰ながらお側にいさせてもらってる身でありながらこのような小物の存在に気付けなかったとは……!今すぐ仕留めます!」


「聞きました?バカ正直にストーカー発言しましたよこの人。告訴したら俺勝てますよ」


てか俺はストーカーじゃねぇ。

この先輩自分がストーカーしたことを棚に上げてるどころか空まで上げてるぞ。


「恵さんがいつも捕まえてるのだけどしつこいぐらいについてくるのよね。……………ホントにうっとうしい」


「阿賀野先輩、裏の顔見えてます。ポロッと本音出ちゃってます」


警察に言わない先輩も随分と優しいもんだ。

黒い顔をしている先輩が突如名案を思い付いたとばかりに顔を明るくする。

やべぇ。この顔はロクでもないことを考えてるときの顔だ。

阿賀野先輩は俺のことを逃がさないように腕を抱き寄せて男の先輩に向かって言い放った。


「たぶん知ってると思うけどこの子があの有名な七城宮斗君よ。部活の後輩にして私の彼氏!」









一瞬だけ時が止まった。










「「…………………………………は?」」


「だから、私の彼氏」


「は!?いやちょっ……」


「どういうことですか久美子様!?このような男があなたの彼氏だと言うのですか。そしてこの男があの七城宮斗だと?女タラシで軽薄鈍感な童貞の七城宮斗が久美子様の彼氏!?」


「ちょっと待って。前から気になってたけど俺の噂っていったいどうなってんですか」


根も葉もない噂が流されてるぞ。

てか誰だ童貞なんて噂流したやつ!

嘘じゃないけども!


「そうよ。何か文句ある?」


「わ、私は認めませんよこのような男………!ハーレム気取りで平凡な上、何の才能も無い冴えない顔をしているこの男を私は認めない!」


「余計なお世話ですよ!」


「俺は認めないぞぉぉお!!!!」


「なぜ逃げるぅぅ!?」


名前も知らない男先輩は叫び声をあげながら廊下を走り去っていった。

すれ違った人たちに白い目で見られながら。

とりあえず阿賀野先輩に聞きたいことが一つできた。


「……………先輩」


「どうしたの?」


「なんで俺が彼氏だなんて嘘を?」


「面白そうだったから」


最低だこの部長!


「まぁまぁとりあえずコーラを買うわよ。元々それが目的で来たんだし」


「そうか、こうやって有りもしない噂が流れるのか………はは……」


一部諦めムードで自動販売機の正面に立つ。

サイフから金を取りだし200円入れたところでコーラのボタンを……………ボタン、を…………。


「あら、無いわね」


「3階の自販機は役立たずか!」


自販機を思わず蹴ったのは言うまでもない。


「もう1階行きます………」


「面白そうだから私も行こうっと」


「今思いましたけど阿賀野先輩って疫病神ですよね?」


3階から1階に向かうべく階段を歩いて降りる。

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