おかまにあいにいこう
そんなわけで、おれは今退屈してるんだ、とカミシロはガイドに言った。ガイドは公園のベンチで寝転んでいる。カミシロはガイドを見下ろしている。蝿が一匹目の前で静止しているのが見えて、複眼を見ると、不気味に光っていた。
「そうかよ。やりたい事は?」とガイドは体を起こし答えた。いや、まったく。とカミシロは答えた。二人の間に沈黙が流れた。糸の両端を引っ張ってピンと張った時のような緊張と、まったく糸を引っ張らずたわんだ時のような倦怠感の、その丁度間のような感じが二人の間に流れた。そういえば、とカミシロが切り出した。「君らの中に、女はいないのか? 」「いないよ。おれたちはみな、雄だ。欲求不満か? 」とガイドが聞いた。カミシロはそういうわけじゃいけど、と言おうとしたが、やめた。「いや、そうかもしれないな。好奇心からだったんだけど、あるのかもしれない。」カミシロがそういうとガイドは、はははと笑った。「女はいない。だが、間は居る。」「それってまさか、おかま? 」「そういうこと。」カミシロはうえっ、勘弁してくれよ。と思った。はっきり嫌悪感があった。だが、こいつらのおかまというものは、どういうやつなんだろうと好奇心もあった。
「どうする? 案内はしてやれるぜ。それがおれの仕事だからな。」カミシロは少し考えた。そして、今日は好奇心が勝った。「わかった、頼むよ。」