フューラーと話した
カメラ頭の一人が部屋を出て、白いシャツを持ってきた。そのカメラ頭からシャツを渡され、カミシロは着替えた。不思議と今着ているシャツとまったく同じものだった。サイズも同じだった。用意がいいんだな、とカミシロは思った。
「さて」フューラーがそう言った。「君はまだ、ガイドを殺した今でさえ、やりたい事を見つけていないと見える。殺人鬼にすらなりたくないわけだ」おれが殺人鬼に?そんなこと、とカミシロは言いたかったが、やめた。確かにそうだ。おれはもう一人か一匹かを殺している。何を言っても、しょうがない。「そもそも私はあんな男がガイドになる事はまったく反対だったんだ。もともと、ポップだか、なんだか、そういう名前で、ずっとマリファナなんかを吸ってるイカれ頭の奴がな。あのふざけた格好を君も見たろう? 」ええ、確かに、ふざけた格好でしたね。
フューラーは頭が花の蕾をしているだけで、身なりはきちんとしていた。カーキのスーツを着ていた。「私が、この私が。神に選ばれた、この私が、ガイドになるべきだったんだ。そう思わんかね? 」ええ、そうかもしれませんね。フューラーさん、ガイドよりはまともそうだし。「そうだろう、私もそう思う。しかし、これはまったく完全に偶然で選ばれるものだ。正しさだとか信念なんてものは、神には通じない。私はそれを悲しく思うよ。」それで、あなたは何をしてる人なんです? 「決まっているだろう! ここに座って、貴様らが馬鹿な事をせんか見張っておる。スコープスや、ドッグスを使ってな。」スコープス? ドッグス? 「お前の横にいる奴がスコープスで、入り口のところに、ほら、青い服を着た奴が立っていただろう。彼らがドッグスだ。あの服はいいだろう。我が配下のデザイナーがデザインしたんだ。」
スコープスの一人とカミシロの目線があい、スコープスは腰を曲げ会釈をした。それって、別にあんたが居なくてもいいんじゃないの? 「とんでもない! 私がいなければ、だれが正と負を決めるのか! 」おれが決めるし、スコープスもドッグスも決めるよ。ガイドだって決められる。「これだから子供と話をするのは疲れる。スコープス! そいつをしばらく独房へ入れておけ。」
どうも、ガイドを殺してから、気が大きくなっているらしい。おかまとセックスをしたからかも。馬鹿みたいな事をいっちまったな、と思いながら、カミシロは大人しくスコープスに連れられ、オフィスの一室に入れられた。スコープスは何も言わなかった。外には南京錠がかけられていた。スコープスはカミシロを中に入れると、外から鍵をかけたられたらしかった。
どうでもいい。どうせなら、この馬鹿げた遊びに死ぬまでは付き合ってやろう、とカミシロは思い、眠った。