少女は黒磯の海街を散策する*結*
*
赤々と燃え盛っている。
何が燃えているかと言えば、それは領主の館だ。
「そっちの彼、大分やられてるね。血臭が酷い」
「……っ、ヨハンは闘争の際に『凶戦士化』してしまうの。だから、致命傷を受けても自分自身で逃げることも、止まることも出来ないのよ」
「成程ねぇ……しかし傷が深いな。うーん」
すぐ横に膝を付き、血塗れになったまま浅く息をするだけのヨハンの体表を一通り観察する。
深い傷は三つ。辛うじて心臓には達していないようだが、素人目にもこれは一刻を争う状態だと分かった。
ごそごそと懐を探り、取り出したのは『女神の恩寵』である。
その効能のほどは、カイル少年の件で実証済みだ。
「……残るは2滴くらい? ま、いいか」
生きるも死ぬも、結局は時の運。
どちらにしても、自分自身に使う予定もない。
少女は瓶の蓋を開け、そっと振りかけようとしたところで――見知った声に止められる。
「お待ちを。このくらいの傷であれば、それは必要ありませんよ」
ふわりと浮かんだのは、無数の水色の魔法式。
あっという間に体表を埋め尽くし、温もりと輝きを宿し、速やかな治癒が始まる。
「……早かったね、商人殿」
「ええ、流石に止めを刺すことは叶いませんでしたが……」
純黒の髪を靡かせ、少女の傍らに並んで膝を着いた商人。
珍しいことに、やや陰りを帯びた表情を隠さなかった。
「もしかすると、厄介なモノに目を付けられたかもしれません。旅程を急いでも構いませんか?」
「買い出しの方は問題ない?」
「ええ、襲撃の前に一通り済ませましたので」
「なら、早々に旅立つとしようか。長居をしたら、それこそ面倒事が増えそうだしねぇ」
殆ど迷うことなく、少女は旅立ちの意図を固めた。
目の前の治療が終わり次第、出来るだけ速やかに海街を出る。出来ることなら、夜明け前にも。
「待って。貴方たち本当は……ねぇ、一体何者なの?」
水色の魔法式がぼんやりと辺りを照らし、未だ背後に燃え盛る領主の館を余所に。
淡々と旅立ちの相談を終えた少女と商人、その二人に交互に向けられるフラウティーナの問い掛け。
ポリポリと頬を掻きながら、少女は「うーん」と困った様子で言い淀む。
一方の商人は、いつもの通り口許に笑みを浮かべて、さらりと「商人と依頼人それだけですよ」と定型句のように言った。
「あなたの大切な相棒は、もう間もなく回復します。完治とまでは言わなくとも、自力で歩けるくらいには治療していきますよ。だから、安心してください」
「それについては、本当に感謝するわ。治療費についても、今回は私の方で立て替えを……」
「それは結構ですよ。これは善意の手助けに過ぎません」
「……待って。正気で言ってるの?」
丸々と見開かれたフラウティーナの表情は、急に首を摘まみ上げられた野良猫を思わせるものだった。
そしてその心境をして、察して余りある。
大陸は違えど、普通ならばあり得ない話だからだ。
治癒士の稀少さと、その治癒の対価は時として、黄金に値する。実しやかにそう囁かれる風聞も、時として誠を言い当てるのである。
タダで治癒を受けられるなんて話は、早々転がっていないのだ。
「ええ。ここだけの話ですが、私は既に治癒士の看板を返上した身分なのですよ。危急であると判断して今回は治癒を行いましたが、本来はしてはならない事なのです。故に、代金も頂くわけにはいきません」
「……これだけの能があるのに、返上したの?」
「治癒士という身分は、思っていたよりも窮屈だったものですから。ふふ、出来れば口外しないで頂けると幸いです」
にっこりと、笑顔という名の仮面で言い含めようとする商人を横目に少女は空を見上げていた。
その内心は、善意という名の蓋ほど人の口を塞ぐのに適したものは無いのだなぁ、という感慨に満ち溢れている。
「貴方、相当やり手の商人ね……分かったわ。今回、治療費という面では甘えさせてもらうわね」
「ええ、ご安心ください。けして悪いようにはしませんから」
言葉にこそ出さなかったものの、フラウティーナの表情には苦いものが混じっている。
無償で治療を受けてしまった手前、これ以上の詮索は出来ないだろう。
「ねぇ、ルーア。貴女は私の命の恩人よ。本当に、ありがとう」
不意に、伸ばされた指先。
空から視線を下ろしてきた先、蒼髪の少女は今にも泣き出しそうな笑顔でそう言った。
瑪瑙色の髪を靡かせ、少し気恥ずかし気にルーアは差し出された手を握る。
その温かさに、小さく頷いてから応えた。
「フラウが無事で、良かった。間に合っただけで十分だよ」
夜風が、辺りを攫うように吹き抜ける。
ぽつぽつと、次第に降り始めたのは雨だ。
血と建物が焼ける臭いで煙った海街を、少しずつ洗い流す雨滴はどこまでも透明だった。
*
「……ふふ。あはは。本当に、この世って面白いことに溢れてるんだなぁ」
月明かりの下。
血塗れの石畳の上で、肩を震わせながら仄暗い目をした少年は笑う。
頭上から降るように近づいて来た幾つもの影は、一つ一つが大海蛇の首である。
切り落とされて尚も、再生に必要な栄養――路上に散らばった鼠たちの死体――を貪ることで順次、切り口から首を生やすことができる。
原種たる大海蛇の固有能力であった。
「ねぇ、シーラ。気が変わったよ。本当は兄さんの目の前で引き裂いて殺そうかなぁって思ってたんだ……でも止めた。勿体ないもの。だから、今度は本気で掴まえに行くことにするよ」
口許には禍々しい笑み。
双眸は昏さを湛えながらも、ゆっくりと一つ一つの首を撫でる仕草はどこまでも優しい。
一撫でされる度、大海蛇は満足げに目を細め、グルグルと喉を鳴らした。
『番にでもするのか?』
「……あは。それも良いね。でもあの子を組み敷くのは相当大変だろうなぁ……」
『古の神獣、美味しそうな匂いがした』
「駄目だよ、シーラ。あれは僕の獲物だもの。お前にはやらないよ」
『……残念』
飄々と会話を繋げる彼らの背後は、夥しい数の死と血の匂いで塗りつぶされている。
そして、そんな彼らを少し離れた屋根の上から見つめる三対の目。
大鷲、虎、蛇の獣人たちは、闇の中で目を交わし、声に出すことなく意思を交わす。
『分かってはいたけど、あいつ完全に狂ってるわ』
『同感だ。さっきの少女と男、完全にあれに目を付けられたらしいな』
『やれやれ。それにしても凄い血の匂いですねぇ。毎回こんな殺し方をしていたら、捕捉されるのも時間の問題かと思いますが』
そんな三人の思考を遮るように、ツイと向けられた視線。
少年は、微笑んで彼らに告げた。
「お前たち、匂いや気配を辿ることは出来るよね? あの子たちの後を追って、行く先を突き止めておいで」
「「「御意」」」
低く押し殺された三人の返答に対し、宵闇の双眸は満足げに弧を描く。
差し込み始める朝日。
薄靄を隔てて、それぞれの歯車はゆっくりと歪に回り、巡り続ける。
*
「おーい、無事なのか?!」
「ルーア、見つけた! 無事! 良かった!」
ようやく延焼が止み、薄ら赤い街道の先。
降り注ぐ霧雨のなかに響く足音。
弾けるような二つの声につられ、振り返ると獣姿のリーゼロッテとカイル少年が駆け寄ってくるところだった。
「あぁ、無事だったね二人とも。良かった」
「……そっちこそ無事かよ。傷は……見たところ無さそうだけど」
「ルーア、強い! でも心配したよ!」
緋色の混じった銀の毛を靡かせ、歩みを止めたリーゼロッテ。
背中からカイル少年が下りると同時に、安心したように獣姿のままで頭を摺り寄せてくる。
しっとりとした羽毛越しに、温かい体温が伝わってきた。
「……心配してくれて有難う、リーゼ。ふふ、くすぐったいな」
「まさかついて早々こんな暴動に巻き込まれるとはなぁ……」
しみじみと呟くカイル少年に、ルーアは苦笑して返した。
「災難だったね、カイル」
「それはアンタもだろ」
で、どうするんだと言わんばかりのカイル視線の無言の視線が向けられる。
チラッと再度商人殿と視線を交わしてから、ルーアは端的に告げる。
「朝が来る前に、海街を出るよ」
「ん、アンタなら多分そう言うんじゃないかと思った」
「大丈夫! 準備は万端!」
リーゼロッテの言葉に、少なからぬ違和感を覚えてルーアは微かに眉を寄せる。
それを予想していたのだろうカイル少年は、一歩前に出た。
そして、口火を切る。
「俺たちも、途中までついて行く」
「そう来たかぁ……」
「アンタの周りが血生臭いのは、元より承知の上だ」
「……うーん。それでもお勧めはしないよ」
「地元民しか知らないような道もある。きっと役には立つだろうし……」
「命の保証が出来なくても?」
常とは異なる、ひどく冷え切った少女の声。
一瞬だけ臆したように息を呑んだカイル少年を、ひっそりと商人は観察していた。
碧の双眸は、凪いでいる。
治療もあと僅かで終了だ。
先の遭遇があった以上、朝を迎える前にどれだけ距離を稼げるかが肝心と言える。
――ここ数百年、あれほどに面倒そうな存在に遭遇した経験は思い返す限りない。
恐らく少女以上に、あれの危険性を垣間見た。
「お二方、悪いことは言いません。ここで引いておくのが身の為ですよ」
だからこそ、彼は少なからぬ善意を込めて忠告する。
これは稀といっていいことだ。
息を呑む二つの双眸を真っ直ぐに見つめ、内心で苦笑した。
我ながら丸くなった、と感じる。
商売が絡めば、状況次第で線引きをする事に拘らない自分。
どこまでも非情になり切れると自負している自分。
それらを自覚していれば、尚の事だ。
少年と炎狐。
ひとりと一匹の逡巡は、けして短くはなかった。
けれども静かに少女と商人は、彼らの答えを待つ。
次に発せられた言葉が、別れの挨拶になることをどこかで予期していたからだ。
――けれども。
止んだはずの雨。
ポタポタと銀の毛並みを濡らす涙に、初めに息を呑んだのは誰だったのか。
「……優しいね。ふたりとも、優しい」
リーゼロッテが泣いていた。
獣の姿は次第に淡くなり、美しい女の姿へと変化する。
けれどもカイル少年に縋って泣き続ける彼女は、まるで幼子のようだった。
「……リーゼ」
名を呼び、そのまま声を詰まらせたカイル少年は何かを堪えるように眉を顰め、俯いて目を閉じた。
そして再び向かい合った眼差し。
そこに、もう迷いは無かった。
「リーゼと俺は、今までいろんな土地を転々としてきたよ。そうしなきゃ一緒には生きていけなかったし、一処に留まれば、必ず誰かが出自を嗅ぎつけて、金稼ぎや売買を目的にしてすり寄ってきた。だから……俺はいつからか、リーゼを守ることだけを第一に生きるようになった。誰も、本当の意味では信用なんてできないからさ」
「……うん」
「アンタたちの事も、正直に言えば心から信頼してるわけじゃないよ。たぶん俺たちはあんまり長い間、人を疑うことに慣れ過ぎたんだと思う。その生き筋を、今更違うことはできない」
「そうだね」
小さく、穏やかに相槌を打つ少女にカイル少年は薄暗い眼差しを隠そうともしない。
けれどもふと、微かな苦笑が混じった。
薄曇りの空に、ほんの僅かに途切れた切れ目。そこから、微かな陽光が差し込むように。
「でもさ、俺たちにだって心はある。あんた達はさ、言ってしまえば強者だよ。俺たちなんて及びもしないような強者だ。だから俺たちを利用するとしたら、精々捨て駒くらいなもんだろ? それ位の事は分かるよ。それなのに、アンタたちはそれすらもしない。突き放すような態を取ってまで、俺たちの意思を尊重してくれた」
「……買いかぶり過ぎだと思うけどねぇ」
ぽりぽりと鼻の頭を掻く少女に、カイル少年は穏やかな眼差しを向けた。
そして握りしめた拳を、ぐっと前に差し出す。
「俺たち、アンタの役に立ちたいんだ。出来ることはたかが知れてると思うけど、それでも恩に報いたい。それが紛れもない俺たちの意思で、それを受けるかどうかはアンタに任せる」
「……」
見開かれた翡翠の双眸に、突き出された拳が映る。
沈黙は、長くも無ければ短くもない。
やがて、微かに呟かれる声にならぬ音。
モゴモゴとそれが口の中に消えた後、結局残されたのは、諦念に近い笑みだった。
「……負けたよ。分かった。商人殿と共に、俺がこの大陸を進むための道しるべになってくれる?」
「あぁ、任せとけ」
「道案内、頑張る!」
突き出された拳の上に、手のひらをそっと置く。
すかさず駆け寄ってきたリーゼに抱きしめられた状態で、少女はくすくすと笑み零す。
けれどもその双眸は、凪いだ色を隠さない。
「ただし、命の危険を君たち自身で感じたその時は、すぐに身を隠すこと。君たちは護衛では無くて、案内人なんだから。いいね?」
「……アンタ、つくづく思うけど相当甘いよなぁ」
「カルーア、優しい。大好き」
カイル少年の心底呆れたような声に被せるように、リーゼはゴロゴロと喉を鳴らしてより一層、ギュッと少女を胸の中に抱き込んだ。
その圧迫感に機嫌を害したらしく、少女の頭の上で灰色のモコモコが苦し気に身じろぎする。
それでも起き出さない睡眠への執念には、苦笑するしかない。
――本当に、それでいいのですか?
商人殿から、無言で向けられる眼差しに少女は微かに頷いて返す。
――俺は、商人殿ほど優しくはないからね。
微かに見開かれた碧の双眸に、少女は柔らかく目を細めた。
眩しくて、温かい。
柔らかくて、脆い。
過ぎれば毒になり兼ねないモノばかりが増えていく。
気付けば、周りも傍らにも、腕の中にさえ、温かいものに溢れているのだから正直言って、困ってしまう。
結局は、我儘なだけだ。
言ってしまえば、臆病で諦めが悪いだけ。
そして思いがけずに与えられた温もりに、もう少しの間だけでも微睡んでいたいだけ。
けして優しさなんてものではないのにねぇ、と。
自らにも、その周囲にも、苦笑を向けるしか他にないだけなのだ。
「さて、じゃあそろそろ出発しようか。商人殿、治療の目途は?」
「問題ありませんよ。今の時点で出来る治療は既に終えました。……案内人殿、後を頼みます」
「……分かったわ。本当に、ありがとう」
少女の号令に応じて、商人殿がおもむろに立ち上がる。
今の今まで展開されていた水色の魔術式は薄れるようにして霧散し、血塗れで横たわっていたヨハンは、今や穏やかな寝息を立てていた。
顔色は蒼白であったが、命の危機を脱したことは素人目にも明らかである。
「行くのね、ルーア」
「うん。短い間だったけど、世話になったね」
「……本音を言うとね、私もあんまり友達がいないのよ。こんな仕事してるでしょう? だから、もっと貴女と他愛のない話を沢山したかったわ……」
「ふふ、そんなこと言ってもらえたの初めてだ。嬉しいもんだねぇ」
ふわりふわりと夜風が通る。
宵の微かな明かり。
細い路地に、二人の少女の影がユラユラと揺れた。
「ねぇ、ルーア。もし、もしもだけど、この大陸で再び会える機会があったら……今度こそ、私に道案内させてくれる?」
「……フラウ?」
「仕事じゃないわよ。ただ、友人と一緒に見たい景色が沢山あるの。他でもない貴女と、一緒にね」
陽光のように眩しい蒼髪の少女の笑顔が、真っ直ぐに差し込んでくる。
それを真正面から受け取った少女――ルーアは本心から、思った。
参ったなぁ、と。
こんなにも暖かなモノばかりに囲まれていたら、とてもじゃないけど身が持たない。
「うん、ありがとう」
たったそれだけの返答をするのに、少女は根こそぎの精神力を使い果たしたような気持ちになった。
これ以上、ここで削られるわけにいかない。
互いに未練を残せば、辛いばかりになるだろう。
だからこそ、外套を深く被り直し、身を翻してからは早い。
「じゃあ、元気でね」
後ろ背に手を振り、フラウの返答を待たずして夜風を切るようにして歩き始めた少女。
その足取りは大股だ。
慌てた様子でリーゼとカイル少年が、後方でフラウと別れの挨拶を交わしていく。
殆ど時間を空けることなく、すぐ横に追いついて来たのは商人殿だろう。
その何かしら言いたげな双眸にも、見ない振りをして。
少女は、新しく開ける地平を前にずんずんと歩き始めた。
*
ざあざあと耳の奥に響くのは、布越しに擦れ合う砂の音ばかり。
吹き荒ぶ風は、砂嵐の一歩手前を思わせる。
真っ白な砂漠に、点のような黒ひとつ。
よくよく目を凝らせば、それはひとりの青年の様だった。
一歩一歩踏みしめていく足は、傍目にはどこか頼りないようにも見えるだろう。
けれども、今までと違って『彼』にはちゃんとした目的があった。
久方ぶりの、数少ない友人と呼べる者からの手紙。
胸の奥底にしっかりと仕舞いこみ、緩む口許を彼なりに必死に抑えながら。
ゆっくりゆっくり。
一歩一歩。
「あぁ……幸せだなぁ」
しみじみと噛み締めるように『彼』は呟く。
その双眸は澄み切った水底のように、柔らかな碧の色彩を湛えている。
そこから絶えず零れ落ちるのは、透明な涙。
どこまでも幸福そうに微笑みながら『彼』はひたすらに歩いていく。
その歩みはまるで亀の如し。
ユラユラと左右に揺れながら、振り子のように手足を揺らした。
「うーん。でも、やっぱり寝起きって、上手く体が動かないものなんだねー」
ふむふむと尤もらしく頷きながらも、歩みだけは止めない。
乾いた風に、時々目を擦りながら『彼』は進む。
目指す先は、紫と白の交わる場所。
そこで『彼女』を待つのだ。
「あー。楽しみだなぁ。初めて誰かに会うときって、どうしてこんなに胸がワクワクするんだろ。僕のこと、気味悪がらないでくれる子なら良いのになぁ……。はぁ、でもあんまり期待しちゃ駄目だよねー」
長い長い独り言を挟みつつ、白い砂を掻き分けるように、歩き続ける。
手紙をもらってから歩き始め、気付けば五日が過ぎた。
このままのペースで進めば、目的地まではあと五日ほど。
丁度折り返し地点といったところである。
「よーし。まだまだ頑張るぞー」
高らかに声を上げながら、青年は白い砂漠を進む。
その先で『彼』は思いがけない出会いを果たす訳であるが、それはまだ数日先の話。
知り得るわけもない。
今はただ、ひたすらに歩くばかりであった。
ここまでお読み頂き、感謝ばかりです。
亀の歩みの如く、今暫く紡いで参ります。




