表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/51

少女は白猫の尾を追って、海都を巡る*海都散策編*

 *


「今日も見事に晴れたなぁ……」


 もぐもぐと咀嚼しながら、露台に広げられたパラソルの下。

 空色と雲の白。二色に染め分けられたパラソルを通して差し込む日差しは、海側特有のじりじりとした熱さを含んでいる。運河沿いに吹き抜ける風でも、全てを中和するには至らない。


 海都の大通りを抜け、二つ目の路地を曲がったところで見つけたのは――海都名物の四文字。躍動感に満ちたのぼり旗。それはもう、眩しかった。要するに空腹は誤魔化せないということである。

 海都の門を潜る時から外套の隙間にするりと入り込んでいたクルル。磯の香りに鼻をすんすんさせながら、もぞりと顔を覗かせて「ニャア」と鳴いた。

 クルルの鼻に全幅の信頼を置いている少女は、迷うことなく店のドアを潜ったという経緯だ。

 その判断に、誤りはなかったと言えよう。そんな現在。小さな白い猫を肩に乗せ、少女は新鮮な海の幸をふんだんに乗せた『(セル)(カリア)海鮮麺(・シードル)』を分け合って食べていた。そのボリュームはまさに小高い丘と言った風情を漂わせた冷麺である。これで230ルクは安い。快晴を謳歌しながら、少女と猫の一人と一匹は非常に満足そうな面持ちであった。


「この暑さの下では、新鮮さを保つのも一苦労だろうにな……」

「ウニャン」


 神妙そうな相槌を挟みつつ、クルルの表情はこれでもかとばかりに緩み切っている。いやはや、仮にも『軍神の赤猫』と名を馳せた君がそれでいいのかと。まぁ、思わないことも無かったが。如何せん、美味しいものの前では全てが緩んでしまうもの。それはまさに人も獣も無い。本能であろう。


「クルル、食べ終わったら『大水鳥(グラン・ペリカム)』という魔具商を尋ねる予定でいるんだ。マスター曰く、店主は大陸中の香辛料を収集し尽した変人だと。それを頼りに、案内を頼めるか?」

「……ウニャ」


 やや気乗りしない様子も無理はない。人よりもはるかに優れたその嗅覚は、鋭敏と言い換えて差し支えないそれである。刺激物の類を好んで嗅ごうとは思わない筈だ。

 しかし今回ばかりは頑張って貰うほかない。

 ――おそらく、もう猶予は僅かだ。

 潮騒(シーノイズ)(・サイド)で見上げた火柱を思い返しても、それは明らかである。全くもって疑いようがない。


「……海都の門を通過するのにも、知覚阻害の魔法具を二、三個消費してしまったからね。この先の事を考えたら、早いところ『旅券(シーゲイル)』を手に入れておかないとならない」

「ニャア」

「すまないね、クルル。もう少し力を貸してくれ」


 ――道すがら、海鮮(シード)饅頭(・パオ)も買い求めよう。

 ぼそりとそう呟けば、下火であったやる気もやや上昇傾向に転じたようだ。気合の入った「ニャン」という返答を頂いた。うん、まずまずの流れである。

 最後のエビをつるりと平らげ、尻尾の先まで咀嚼。海鮮の丘はいつしか窪地に転じている。食べ終えるや、海都特有の炭酸水(フローズ)をグラスの半分ほど干して、立ち上がった。

 満腹である。満ち足りた表情の一人と一匹である。

 海鮮麺の代金をカウンターで支払い終え、そこから先は運河に沿って歩き始めた。事前に仕入れていた情報によると、目指す店は海都の北側、運河沿いにあるという。此処からそう離れていない。


「それにしても見事な景観だなぁ……ほら、ご覧よ。クルル」

「ウニャン」


 少女が歩く速度を緩めつつ、指差した先には水面に舞い踊る魚影。水面を透かす陽光に、鱗が煌めいている。それも一つでは無く、複数だ。河川の流れが緩やかになっている処へひらひらと集まったものらしい。

 先ほど腹を満たしたばかりからか、クルルは思ったほどの反応を返してはくれなかった。とは言え、左右のヒゲをひくひくと上下させていた。満更でもない様子である。

 ひらりひらりと運河沿いの敷石の上を軽々とした身のこなしで進む。そんなクルルを傍らに、少女はどうにか辿り着いた海都の街並みを見渡しながら、今後の指針についてつらつらと考えを巡らせている。


 ――最優先は言うまでもなく、平穏無事に大陸を出ることだ。しかしそれが夢物語に等しい展望であることも承知している。

 何にもまして厄介なのは、あれの移動速度にあった。当初予想していたよりも人間離れした追走速度を実現している辺り、やはり今回も巻き込まれているであろうカルの存在。これが大きく影響しているだろう。やれやれ。どうして現実と言うものはこうも儘ならないのだろうか。


 頬を掠める潮風。

 少女の視界に、広がる旅情。

 海都の大通り――『(アイド・)迷路(クレース)』と称される大水路には海側と都側に向けて二つの流れが引かれており、それぞれの支流に沿って小舟(トラゲット)が行き交っている。

 海側へ向かう小舟に、海の蒼を思わせる旗が靡いている一方で。さて都側へ向かう小舟にはためく旗の色彩はと言えば、真白である。この真白は、王家の紋章『(スノウ・)孔雀(プルーム)』から取られたものであろう。

 実物を見たことは無いが、それは美しい鳥だと聞く。そういえば以前、師匠が王宮へ強制召集を受けた際に目にしたと言っていた気がしたな。記憶を頼りに、どのように称されていたかを思い返してみる。


「……貴婦人の(おうぎ)?」

「ウニャ」


 いや、そうじゃないと言わんばかりのクルルの一声。ちなみに真顔である。不正解らしい。

 それを受け、よくよく考えてみれば。確かにあの師匠に限って、そんな洒落た例えをする筈がないと思い直しもする。同時に兄弟子の言葉であったことを思い出すに至る。これには納得を覚えた。うん、言いそう。

 しかし、モヤモヤする。ここまで来たら、どうあっても思い出したい。これまさに心理である。

 うーんと唸りながら、その合間もすたすたと歩を進めた。クルルの尾は水路の縁へ跳んだり、物干し用の縄を曲芸のように渡ったり、オリーブの葉の間に潜ったりしている。視界の端に常にそれを捉えつつ、見知らぬ街路を戸惑う様子もなく歩いていく。

 ざっ、ざっと耳を掠めた音にふと視線を逸らせた路地裏の奥。箒草(ボルケ)を乾燥させ、おそらく余った布地か何かで先端をグルグル巻きにした手作りの箒。それを手に、軒先を掃除している幼子の姿が視界に入った。


「使い勝手の悪い羽箒(はねぼうき)?」

「ウニャン」


 うむ、その通りと言わんばかりのクルルの返答。今度こそ正解らしい。

 あの師匠の目線を考える際には、利便性がキーになる。長年の経験則から、ずるずると引っ張り出してきた答えではあったが、正直なところ複雑な心境を隠し切れない。なぜならば、師匠は事あるごとに言っていたのである。

 曰く。

「白い動物って、他の色と比べても汚れが目立って(洗うのが)面倒だよねぇ……」

 そんな師匠の愛猫が、真白の毛並みをしているという大いなる矛盾。

 それを改めて思い返した後で、どうして心穏やかでいられよう。いや、無理な話だよ。全くもってね。


「クルル、首尾はどう?」

「……ウニャ」


 取り敢えず、これ以上は掘り下げないことにする。話題転換は、時として円滑な関係性を保つ有効的手段だ。位置的にはそろそろ視界に入って来ても良い頃であろうと、先を往くクルルに状況を確認してみた。ふさふさの白い尻尾を左右に揺らしつつ。普段に比べても、どこか緩慢な動作。徐に足を止めてスンスンと鼻を鳴らし、嫌そうな顔をする。

 どうやら近いらしい。ただ、正確な位置を図り切れずにいるようだ。

 そうこうしている間に、いつの間にか水路の上を跨ぐように造られた石橋の上へ差し掛かった。その中ほどまで来たところで、クルルの機嫌は一挙に上向いたようだ。

 ――海鮮(シード)饅頭(・パオ)の露店である。


「ニャッ、ニャ」

「落ち着けクルル。約束通り買ってくるから。待ってて」


 今にも突進して行きかねない様子を見て取り、小声で囁きながら宥めつつ。ぶんぶんと揺れる尻尾は興奮の為か、先ほど見た箒草のように膨れていた。

 よしよしと頭を撫でながら、ひとまず人通りを抜けて橋の端へ移動する。両手が自由であった頃はともかく、今は財布を出すのも一苦労だ。

 背中の荷物を一旦地面へ降ろし、ごそごそと財布を取り出して硬貨を数える。一度、魔具商で両替を頼んでおきたいところ。細かいのがそろそろ底をつきそうだ。ちなみにその間、灰色の塊は小脇に抱え直している。

 露店のおじいさんに声を掛け、今回は奮発して四個買い求めた。ホカホカの海鮮饅頭を手早く包む動作には、一つの無駄もない。熱いうちが美味しいよ。と一言添えて差し出してくる。いかにも人の好さげな老爺であった。

 きっちり480ルクを露台に置いて、包みを受け取った。途端に鼻をくすぐる良い薫りに、束の間の幸福感。

 うん、これぞ旅の醍醐味。ホクホクとした心地でお礼を言い、露店を離れるや否や。足元へ駆け寄って来る白い毛玉――失礼、クルルである。


「クルル、橋の下に降りて食べよう」

「ウニャン」


 提案した言葉に、待ちきれないとばかりの即答が返ってきた。包みと灰色、そして背中の三点のバランスを器用に取りながら。少女はざっと辺りを見渡し、運河沿いに薄黄色の花が咲き乱れる一角に目を留めた。落ち着いて食べられることに加え、景色も綺麗ならば尚良し。

 一旦人混みに戻って、橋を横断。そのまま石畳の階段を降りて木陰に入った。澄んだ水の流れが足元でサラサラと音を立てている。ここならば涼も取れるだろう。

 荷物を降ろし、灰色の塊を膝の上に乗せ直した。この間も腕の隙間からもぞりと顔を覗かせて、頻りとヒゲを揺らしているクルル。それはもう、切実な顔だ。

 よしよし待たせたね、と労いながら包みを開けて海鮮饅頭を中央で割る。ふわりと立ち込める磯の薫りに、ぴんと伸びた背筋。フーフーと息を吹きかけて猫舌のクルルでも食べられる温度まで冷ました。アツアツが美味しいとおじいさんは言ってくれたが、そこはやはり猫舌。そのままでは厳しいだろう。


「ほい、クルル」

「ウニャン」


 適温と思われるところまで冷まし、差し出した二等分。あっという間にクルルの口の中へ消えたそれに少女は苦笑を漏らした。幸福感に満ちた表情を浮かべ、ハフハフと咀嚼し終えるや。クルルはその両手を腕にかけてじっと見詰めてきた。催促である。お代わりを求む、と顔に書いてある。


「はいはい、焦らない。今冷ますから……」

『……何だか良い薫りがするの』


 それは二個目の海鮮饅頭に息を吹きかけて、冷ましている最中のことだ。パチッ、と開いた淡黄色の双眸はいつになく澄んでいる。先ほどまで寝返りすらせず、海溝を思わせる深い眠りについていたとは思えぬ鮮やかな色彩。更に付け加えれば、その視線は既に包みへと固定されている。遠慮という二文字は彼女の中にあって無いようなものなのだろう。

 睡眠に次いで食欲も旺盛らしい、女王竜の次代である。


「おはよう。眠り姫」

『よく眠れたの。清々しい目覚めを終えた今、朝ごはんを切実に求めたいところなの』


 遠回しという概念は、丸ごと削ぎ落とされている。それはもう、簡潔な要望だ。ひらひらと頭上から風に乗って舞い落ちてくる、双眸とよく似た淡い色の花びらにくしゃみをしながらも。その視線は揺るぎない。

 やれやれ食い扶持は増えていく一方か……。

 諦観に染まる思考で、ちらりと包みの中を確認。ここから先は交渉という名の言い含めに取り掛からなければならない。うん、自分も食べたいんだ。その為にお財布の紐を緩めたんだからね。けれども残りは手の中の一つ(既に半分に割ったもの)と包みの中の二つ。

 数には限りがあり、空腹を覚える胃袋は三つ。果たしてその収支は付くのか。いや、恐らく誰かが涙を呑んで譲歩する他にないだろう。

 これは推論というより、確信に近い。


「……クルル、一個と半で手を打てるか?」

「ウニャ」


 論外だ、と言わんばかりのこちらも揺るぎない返答である。まぁ、そうだよなぁ…と。ここで案内役に臍を曲げられては元も子もないのだ。いや、分かってはいた。実際のところね。最終的に涙を呑むのが誰になるかの予想はかなり早い段階から付いていたんだ。


『美味しいの。甲殻類の仄かな甘みと絶妙な塩加減が堪らない逸品なの』

「……うん、美味しいな」


 年長者は敬えという基本姿勢を忘れたつもりはない。残っていた一個と半分を啄める大きさまで千切って給仕した。その表情こそ、今もって読めないものの。根本から、飛竜とは何かと疑問を覚えざるを得ない総評。それに加えて腕の中でモグモグ、ゴロゴロを繰り返す動作から、甲殻類を好物としている雰囲気だけは諸々伝わってくる。

 辛うじて死守した半分の欠片を、出来るだけ長く味わおうとチマチマと食べ進める少女。それでも三口ほどで食べ終わってしまう。若干冷めてしまったが、それでも美味しい海鮮饅頭。熱々の時に齧れば、どれほど美味しいのだろう。それはまさに未知の領域だ。


「さてと、休憩も適度に挟んでそろそろ本番だ。クルル、君の鼻が頼りなんだ。そこのところ、忘れないように」

「ウニャン」


 一人と二匹の中で唯一、腹を十分に満たしたクルルである。任せておけと言わんばかりに、やる気に満ち溢れた様子で尻尾を左右に振り、そのまま階段を身軽に駆け上がってゆく。

 よし、この様子なら多少の出費も無駄にはならないだろう。

 よっこらせ、と荷物を抱え直し、再び眠り姫と化した灰色の塊を両手で抱え上げた。花の間から零れ落ちる陽が眩しい。時間帯からすれば、今は丁度お昼時に入ったところか。

 白い尾を追って、橋の上に戻る。下にいた時に上から漏れ聞こえてくる喧騒で検討は付けていたものの。先ほどよりか、行き交う人々の混雑は増していた。クルルの尾を見失わないようにしながら、人混みを縫うように進む。前と後ろでバランスを取りながら、橋を渡り終えてふと思う。何だか朝よりも軽い気がする。ふむ、気のせいだろうか。

 灰色の塊に視線を降ろし、改めて腕を上げ下げしてみた。うん、やはり軽い。前に言っていた「重量は調節も出来る」という言葉は強ち嘘でもないらしいね。


「……しかし、君。どうして食べた後に体重が落ちるんだ。不思議体質にも程度があるよ」


 ぼそりと件の灰色へ呟いてはみたものの、例の如く返って来るのは寝息ばかり。そうこうしている間に見失いかかった白い尾を、足早に追いかけて角を曲がった。そして掠めた、風。つん、と鼻を突くような臭いがそこに混じる。

 匂いというよりも、臭いと言ったほうがしっくり来る感じのそれだった。涙目のクルルが振り返ってパタパタと尾を振っている。

 どうやら、探し当てたらしい。


「クルル、店の中へは入らなくていい。風上で休んでおいで」

「……ウニャ」


 歩み寄り、クルルの隣で仰いではみたものの。一見したところ看板らしいものは見当たらない。

 廃屋でこそ無いのだろう。そこは何となしに察しも付くところだ。しかし、建物の柱は手入れされている様子もなく所々に錆が浮き出ており、また見える範囲全ての窓には物々しい格子が嵌め込まれている。なにやら退廃的だ。少なくとも真っ当な雰囲気は感じられない。この二段構成に加え、立ち込める香りが――いや、ここは素直に臭いと言おう。頭痛を覚えそうになる不協和音のハーモニーだ。これらが複雑に混じり合い、何人たりとも立ち入らせまいという雰囲気を増長させているような気がしてならないのだ。

 叶うなら、回れ右したいものだなぁ……。だがしかし、そういう訳にもいかない。荷物を抱え直し、灰色を片手に抱え直して――正面の扉のノッカーをゴンゴンと叩いた。


「「どちらさまですか?」」


 おそらく幻聴だろう。同じ声が二つに重なって聞こえた気がする。

 この数日の疲労が、とうとう耳にまで影響を及ぼし始めたのであろうかと。そんな戦慄を覚えつつ。

 殆ど間をおかずに返ってきた扉の向こう側からの問い掛けに、やや首を傾げるに留めた。少女はマスターから事前に聞いていた通りの『文言』を口にした。


飛竜(レバンテ)(コーダ)からの紹介で、蒼褪(セレ)めた双翼(ディア)に魔法具を売りに来た。取次ぎを願いたい」

「「――お客様ですね。畏まりました。暫くそこでお待ちください」」


 丁寧な口調ながら、どこか幼さを感じる声調。そしてやはり同じ声色が二つ重なって聞こえる。

 言い置くや否や、パタパタと走り去っていく小さな音は二対。扉の向こう側は一体どんな光景が広がっているのだろうか。疑問は尽きるどころか膨らむばかりである。

 そして言葉通り、暫く待った。それなりに待った。しかし一向に戻ってくる音は聞こえない。これは遠まわしに依頼を断られたものだろうかと判断に迷い始めた頃。


 ――不意に、騒々しい音が耳を突いて響き渡る。

 まさに騒音。轟音と言い換えても構わないと思われる。家中にある家具を一気に破壊したような音だ。例えが微妙に分かりにくい? うん、要するにそれだけ大きな音だったと伝われば十分だ。そうだね……この場にクルルが残っていたら、耳を逆立てて威嚇していたかも知れない。

 補足がてら、付け加えておこうかな。例えは例えでも、実例である。紛うこと無き、実体験だ。咄嗟に思い浮かぶものが総じて過去に経験したものであるということは、多くが経験する通り。

 一度ならず二度三度と家具がお釈迦になったときの気持ちと言ったら、それはそれは物悲しいものである。


 そして嘘のような静寂。その中をパタパタと戻ってくる音。間をあけずに、開かれたドアの向こう側。


「「お待たせしました。ようこそ『大水鳥(グラン・ペリカム)』へ」」


 やはり、双子。

 少女の視線の先で、声を揃えてお辞儀するのは少年と少女であった。同じ色彩の髪と目。けれども双眸の左右が反転した彼らは――少年が右手を、少女が左手を両手扉に掛けて開け放ち「どうぞ、中へ」と招き入れる。

 その所作はこの上もなく優美だ。


「君たちは……」

「「申し遅れました――私はメリッサ・ラス。横は弟のシトラール・ラスと申します――以後お見知りおきください」」


 背中の荷物を背負ったままでも、ゆとりをもって通過できる広い扉。それを潜ったところで視界に広がったのは表からは想像もつかないほどに――それは、ただ美しい。緑の園であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ