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関わりシリーズ

関わらなくて良かった

作者: 三月

彼女も壊れました。

どうしてこうなった。




 2年になって転入してきた鈴木 音舞さんは、とにかく変な人でした。

 まず、転入初日から私に随分と馴れ馴れしく話しかけてこられました。ですがそれは、隣の席ですしまだわかります。

 問題なのは自己紹介をする前から、私のことを名前で呼んできたことなのです。許可もなく相手の名を呼ぶという非常識さもそうですが、私の名前は佐々木 結愛。大抵の人はまず『ゆあ』と読みますが、正解は『ゆうな』です。1度で当てる人などほとんどいないのに、彼女は最初から私を『ゆうな』と呼んできました。

 まぁそれも、絶対に読める筈が無い訳ではありませんし、偶々当てただけかもしれません。無理矢理そう思って、それからも妙に私の好みに詳しい彼女に対する不信感からは目を反らし続けました。


 けれど、彼女が来て2週間後、唐突に生徒会役員達の詳しいプロフィールを訊かれた時には、彼女を心底気色悪く思ってしまいました。

 私の家は彼らの家と特別親しいわけでもなく、私自身も生徒会と何の関係もなくて、クラスメイトですらないというのに、何故私が彼らの詳しいプロフィールを知っていると思うのでしょうか。

 挙げ句に私が何も知らないと知ると、それなら調べるのに協力しろと言ってきました。当然断ると、私のことを無能と言い捨て、時間を無駄にしたと叫びながら教室を飛び出して行かれました。

 あれには、クラス中の人がビックリして固まりました。


 それからの彼女は凄かった。どうやってか生徒会役員と個々に接触し、あっという間に皆様を全員落としてしまったのです。

 彼女の悪口を言った生徒はいつの間にか姿を消すようになってしまい、今は教室内が異様な緊張感に包まれています。彼女の不況を買えば、破滅してしまう。1種の独裁体制が出来上がってしまいました。


 そんな状況がついに打開されたのは、10月の半ば頃でした。

 生徒会役員の皆様と鈴木さんが、横井様の婚約者であった楠木 沙那様を取り囲んで責め立てたのです。

 7月頃から、楠木様が鈴木さんに嫌がらせを行っているらしいという噂が流れました。最初は誰も信じてはいなかったのですが、次々と『証拠』が見つかり、今では校内の殆どの人が信じてしまっています。

 私からしたら馬鹿な話です。明らかに楠木様は横井様に興味すら持っていなかったのですから。そんな楠木様が嫉妬の余りに嫌がらせ?あり得ません。この事から私の鈴木さんに対する疑念はもはや決定的なものになっていきました。


 第3者である私にすら明確なことなのに、私の目の前で皆様は楠木様を取り囲んで、『証拠』を突きつけて謝罪を要求しています。

 彼らの後ろで鈴木さんは震えているようですが、あれ、明らかに笑いを堪えているでしょう。何故皆様は至近距離で気付かないのでしょうか?

 楠木様はどうやら気付かれているようで、とても冷めた眼差しで皆様を見ておられます。


 事態はどんどん進んでいきますが、あら?真木様、楠木様と横井様の婚約は確か夏頃に破棄されていますよ?母が楠木様のお母様から聞いたと言っていましたから、間違いありません。

 楠木様も吹き出してしまわれました。その上お腹を抱えての大爆笑です。ええ、お気持ちはわかります。正直私も腹筋が限界です。


 役員の皆様は訳がわからず、楠木様に詰め寄っています。楠木様は鞄から何やら分厚い紙を取り出し、皆様に渡されました。

 読み進めるうちに皆様と、特に鈴木さんの顔色が悪くなっていきました。恐らくは彼女の調査報告書といったところでしょうか。


 鈴木さんがヒステリックに叫び、皆様が彼女を守るように立ちながら、楠木様を罵っておられます。

 ですが、流石楠木様!真木家に調査依頼をされていたようです。これでは皆様、信じないわけにはいきませんね。

 呆然と立ち尽くす皆様の横を堂々と歩いて立ち去るそのお姿は、同い年ですが思わずお姉様と呼びたくなるほどご立派なものでした。

 お姉さまが立ち去った後、皆様それぞれのご実家から何やら連絡があったご様子で、青い顔をして急いで帰られました。


 その後にされた説明によると、お姉様は鈴木さんの悪事を暴くために、危険を顧みず、自ら悪役の汚名を被っていたそうなのです。

 なんて素晴らしいのでしょう!流石は私のお姉様です!

 全校生徒代表がお姉様に謝罪することになり、当然私も代表に立候補しました。

 お姉様は慈愛溢れる笑顔で、愚かな私達を許して下さいました。もう一生お姉様についていきます!


 役員の皆様は、それぞれ違う国に飛ばされてしまいました。きちんと反省して、自分の行いに責任を持てるようになるまで帰国禁止だそうです。

 鈴木さんは、噂では精神病棟に強制入院させられたそうです。何やら、自分はこの世界の主役で、皆から愛されるべき存在なのだと主張し続けているのだとか。

 ゲーム脳、怖いですね。


 今の私は、お姉様を愛でる会を作り、会長を勤めています。3ヶ月で随分と会員が増えました。日々、遠くからお姉様の姿を愛でる有意義な毎日を送っています。写真は1枚300円からです。利益はお姉様の学院生活が円満なものになるよう活用させて頂いています。

 勿論、会長であろうと私もきちんと購入していますよ?一般生徒に売っているものから、会員限定の写真までフルコンプしましたが何か?


 もしも、あのまま鈴木さんに流されて協力させられていれば、今のこの幸福は手に入らなかったでしょう。

 ああ、本当に関わらなくて良かった!






無駄な裏設定

 ・結愛はゲームではヒロイン様の親友役で情報提供者でした。

 ・現実にはヒロイン様が気色悪すぎてドン引きしています。

 ・本気になれば、愛でる会を作れるくらい統率力があります。

 ・お姉様(笑)が眼鏡に追われているときも見ていました。

 ・救世主様に先を越されて残念に思っています。

 ・取り敢えず眼鏡は愛でる会を敵に回しました。

 ・この後、学院の購買にクマ○ングッズが増えました。

 ・愛でる会では、私物を盗むようなことはしないしさせません。

 ・盗聴は流石にしていないはず。

 ・いつかお姉様(笑)と手を繋いでデートしたいですが、憧れであって恋愛感情ではないです。

 ・でもきっと色々妨害するので、お姉様(笑)は下手すると婚期を逃します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 関わりシリーズ面白いです! 続きもぜひ読んでみたいです。
[一言] すっきりですねぇ
[良い点] 眼鏡ってw 眼鏡ファン、眼鏡に憧れていたことが黒歴史になってるんですねv
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