意地悪な事を言われたと思ったら…
「やっほー」
通り掛かりの、淳君に手を振る。
その子は少し笑って、軽く頭を下げて通り過ぎた。
するとその光景を見ていた他の男の子達が騒ぎ始めた。
「お姉さんに手を振り返す奴なんかいねーよな!」
ふざけてそう言うのは、男子寮生のリーダー的存在、高3の明希君。
「だよなー。」
と、笑いながら相槌を打つのは、明希君と仲のいい銀牙君。
「お姉さんなんかどっか行っちゃえ!」
明希君がそう言ったのをきっかけに周囲の男の子達が
「そうだそうだ!」
と一斉にはやし立てた。
「もー皆ひどいわー…。」
笑って言いつつも浮かべた笑みに力が無くなるのが分かって、
悟られないように少し俯いた。
すると明希君が小さく囁くのが聞こえた。
「おっおい、お姉さん泣きそうじゃね?」
「あっ本当だ。」
これは銀牙君の声だ。そして明希君達が駆け寄って来た。
「なぁ、お姉さん元気出せよ、俺が手を振ってやるからさ。」
明希君が言い過ぎた、と言う顔をして言う。
「俺なんか腰も振ってやるぜ。」
と、銀牙君。
「俺も。ほらほら。」
「あははっ勝則君まで…もー何やってんのよ…。」
それから彼等の態度は変わった。
もう、そう言う事は言わなくなった。
ある日。
「お姉さん、パソコンゲームしようぜ。」
と明希君が誘ってくれた。
明希君が誘ってくれた時、私はノートを書いていた。
「まーどうしちゃったの?ありがとー。
でもごめん、今これ書かないといけないから。」
「いいよ、待ってるから。」
「でもかなり時間かかるよ?悪いわ。」
「いいって。」
「あのさ、誘ってくれてすごく嬉しいんだけど、
もしかしてこの前の事気にしてるんじゃないの?
気を遣わせて悪いわね、あんなので皆を嫌いになる訳な…。」
「あー別にお姉さんに誰も気なんか遣わねーよ。それより早く書いてよ。」
「分かった、ありがと。」
書き終えた私は待っていた彼の隣に座った。
「何やるの?」
「五目並べ。」
「ごめん、私やった事無いんだ。」
「簡単だよ、白と黒の碁があるじゃん、
それぞれ相手の邪魔しながら先に五つ並べられたら勝ち。」
「分かったわ。」
対戦して3分で終了、私の負け。
あんなに待たせてしまった手前、さすがにへこんだ。
「ごっごめんね…あんなに待っててくれたのに手応え無くて…。
さすがにへこむわ…。」
突然、彼が笑い始めた。
「あはははっお姉さんめちゃよえー!!いいから次やろ、次。
すっげー待ったんだから勝負いっぱいしろよ。」
こんな彼等が可愛くて好きでたまらない。