男の子達に取り囲まれた
何気なく寮の廊下を歩いていると、突然、小学生の男の子達に取り囲まれた。
「ねぇ、俺に「死ね」って言ってよ。」
一人が笑顔でそう言った。
「俺にも」
「俺にも」
と、他の子達も次々に言って来る。
「何で?嫌だよそんなの。」
「今流行ってる遊びなんだよ。言えって。」
「どんな流行よそれ?とりあえず嫌。」
「言うだけだろ!」
「自分との約束で、その言葉は言わないって決めてるんだよ。
そう言う訳で勘弁して。」
すると、男の子が不思議そうな顔をした。
「えっ何で?」
「その言葉が嫌いだから。」
「ふ〜ん・・・お姉さんて変なの。」
私は笑みを浮かべる。
「やっぱりそう思う?実は、よく言われるんだよね〜。」
「うん、だって変だもん。皆普通に言うぜー」
やれやれ、と肩を竦める。
「私は「言霊」って信じているんだ。分かる?」
子ども達が一斉に首を傾げる。
「何だそれ?」
「言葉には何かしらの力が宿ってるって事。
例えばあなたがさっき言えって言ったでしょ、
私が言った事で、その言葉が現実になるかもしれない。」
「はぁ?そんな事ある訳ねーし。」
他の子も小ばかにしたような顔をしている。
「だから私はそう考えてるんだって。
まぁ、要するに君らにそうなって欲しくないからって事。」
するとその子達が笑い始めた。
「あははは!やっぱお姉さん変だ!なぁ、あっち行って一緒にサッカーしようぜ」
「いいよ、でもお手柔らかにねー。」
それから、その子達が私に
「死ねと言え。」
と言って来る事は無くなった。