女だと思われていないようだけれども
朝、管理室で軽い掃除をしていると、ドアを開ける音がした。
見ると、駿君と洋平君が顔を覗かせていた。
「あら、おはよう。早いのね」
早く仕度が出来て学校行く時間まで余裕があると、
子ども達はよく遊びに来た。
「入ってらっしゃいよ、お茶ぐらい出すから」
それから二人と喋っていると
「えっと俺さぁ、お姉さんの事を女だと思ってないから。」
駿君がふざけてこんな事を言い出した。
「俺も俺もー。」
と洋平君が相槌を打つ。
「まー二人ともひどいわー。でも別にいいけどね、これで皆と対等になったって感じかな。」
「うわっまた何か言ってるぞ。」
オーバーリアクションな駿君が手を振り上げた瞬間、
「あっ」
お茶を持っていた洋平君の腕に当たって、
運悪く駿君のズボンにかなりかかってしまったのだ。
「ヤベエ!着替えなくちゃ!」
「おい待てよ!」
駿君が慌てて戻って行くのを洋平君も追いかけて行った。
と、その際、洋平君がハンカチを落として行った。
やれやれ、そそっかしいな〜と思いながらハンカチを届けにいくと、
丁度駿君が着替える所だった。
「あっお姉さん、着替えるから外出ててよ。」
「あれ?ついさっき私を女だと思って無いって言ってなかった?
私は気にしないのにそっちが気にするのねー。」
「別にいいだろっ。」
「あはは、分かったよ。」
そして洋平君の方を向く。
「洋平君、ハンカチ落としたわよ。ここ置いておくから」
「サンキュ」
それからこみ上げてくる笑いを抑えきれずに一人で爆笑していると
「お姉さん笑い過ぎ!」
「うるせーぞっ。」
と彼等の声がした。
私の笑いはしばらく止まりそうもなかった。