私の知人の話
私の先輩二人が、以前この志岐沢寮で働いていた。
この寮に勤める事が決まったのを先輩達に報告したら、
是非とも自分たちの事を覚えているか聞いてほしいといわれたので、
たまたま近くにいた深谷君と薫君に聞いてみた。
「あのさ、もう辞めちゃった人なんだけど、以前ここにいた
美沙さんて人と、沙羅さんて人… 覚えて無い?」
すると二人は少し考えてから
「あっあいつだ!」
「そうだ思い出したっ。」
と口々に言った。
「すごいっやっぱ覚えてるんだね」
「あのゴリラだっ!」
「そうだそうだ!あと何かいつもどっか行っちゃう奴」
あまりの言い草にガクッと来る。
「ちょっと何て事言うの…」
彼等が笑う。
「だって本当の事だしー」
「うんうん」
と薫君。しかし、二人は口ではそんな事を言っているが、
顔はとても楽しそうだった。
「そんな事言って…いい人達なんだよー」
「そんな事言ったって知らねーし」
「お姉さん、あのお姉さん達に俺らの事聞いてたの?」
深谷君が聞いてくる。
「ううん、ここに来たのは知ってるけど詳しくは聞いて無いよ。
でも半年以上も前なのにちゃんと覚えてるんだね、ちょっと感動した。」
彼等が悪戯っぽく笑う。
「まーな、でもお姉さんの事は辞めてもすぐ忘れるぜ」
「言えてるっ」
「ひどいなー。まぁ、私みたいな人がたくさん来るから仕方ないよね、
もし辞めたとしても、私は忘れないけど」
この寮は入れ替わりが激しい事で有名だった。
何故なら各地に異動させられるから。
「えーっお姉さん、どうせ他の所に行くんだろ?」
「何言ってるの、皆で最後よ。」
私の場合は移動させないで欲しいと予め契約していた。
「そうなの?」
「うん。それより美沙さんや沙羅さんと何して遊んだの?」
すると深谷君が笑って薫君を指差した。
「こいつ、お姉さん倒して遊んでたんだぜ」
「そーそー」
私は脱力した。
「あらら…女性にそんな乱暴しちゃいかんよ」
その光景を思い浮かべ、苦笑しながら思った。
先輩たち、大変でしたね!