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お姉さんがやって来た  作者: 中華
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寮で勤める事になって初日に突然、叩かれた

その日、私は電車の中で見つけた広告に匿名で掲載してあった小説に、何気なく目を通していた。

ふうっと一息ついて、広告から目を離す。

志岐沢(しきさわ)高校(付属で小・中学校もある)の寮に副管理人として配属された私、佐東友香(さとう ともか)20歳。

寮に到着してから、一通り先輩から寮について説明を受けてから、一人で小学生の男の子達が使う図書室へ行ってみた。

そこには男の子が一人いるだけだった。

ちらっとランドセルを見ると"(あつし)"とペンで書いてあった。

男の子がこちらを向く。

と、突然、男の子が側に来たと思ったら頭と頬を叩かれた。

驚きと痛さで涙が滲むのが分かった。

思わず泣きそうになるのを我慢して言った。

「あのね、叩かれたら痛いでしょ?嫌でしょ?」

「…」

男の子は無言だった。

「私は嫌なんだよね、これ以上叩かれたら泣いちゃうかも。だからやめて」

「…」

男の子は相変わらず無言のまま自分を見つめた。

もう叩いては来なかった。

しかしホッとしたのもつかの間、今度は輪ゴムを取り出して飛ばして来た。

腹に当たった。

全く痛くない。

落ちた輪ゴムを拾い、ほら、と男の子に返す。

そして男の子に背を向けて離れようとすると背中に何かが当たった。

ゴムだった。

でも全く痛くない。

また落ちた輪ゴムを拾い、男の子に返す。

(もしかして、自分を引き止めてる?)

それが数回続いた時、確信した。

「外してくれてるから痛く無いけど、やっぱり他の人に向けて飛ばすのは危ないよ。万が一目に入ったら大変だしね」

と軽く注意してみた。

すると男の子は

「なら、自分はいいの?」

と、輪ゴムを自分に向けた。

「自分はもっとダメ。自分を大切に、傷つけちゃだめだよ」

と慌てて言うと、その子はちらっと笑った。

それからと言うもの、私に気付く度に抱き着いて来るようになった。

ある時、私の方が先に男の子(敦君)に気付いた。

彼が気付かないように近付き

「あ〜つし君、ここにいたの。会いたかったよ〜」

と言ってみた。

「どうして?ねぇ、どうして?」

笑顔で聞いてきたから

「会えなくて寂しかったからよ」

と答えた。

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