ホムラサヤオサメ
俺たちはその後順調に勝ち進み決勝まで進んだ。
今は闘技場の上。黒ローブの人影が一つ。不気味だ・・・だが、なんとなく雰囲気が俺の知ってる誰かに似ている気がした。
「久しぶりだな、清隆・・・・」
「どちら様?」
黒ローブが俺の名前を呼ぶ。聞き覚えのある声。本当に俺の知ってる誰かなのだろうか・・・・
「分からないか・・・・」
「分からないな、ローブを取ってくれ」
黒ローブが尋ねるが俺はなんとなくしかわからない。声と身長と雰囲気からして女性であることは間違いないだろう。
「しょうがないな。ローブをはずすからしっかり見てるんだぞ」
黒ローブが外され素顔が明らかとなる。
「あ、朱音・・・」
赤い髪、ポニーテール、髪を束ねている大きなリボン。一年前にに日本を去った幼馴染、紅月朱音だった。
俺は驚きはしたがどうしておまえがここにいるんだという質問はしない。なぜなら魔法師だからここにいるというのが明白だったからだ。それよりも朱音を見た明日香の反応のほうが意外だった。明日香は俺以上に驚いている。
「名門、紅月家の一人娘、紅月朱音・・・厄介な相手ね・・」
どうやら朱音を少なからず知っているらしい。
「朱音と知り合いなのか」
俺は明日香に尋ねる。
「いえ、でも魔法師たちの中では有名よ。彼女の腰にある鞘に収められている剣、紅月家の名刀、「ホムラサヤオサメ」を使える唯一の魔法師として」
「ホムラサヤオサメ・・・」
俺は明日香の言葉に驚きつつ朱音の腰にある剣を見る。
鞘と柄は赤く、壮大なオーラを放っている。いかにも名刀という感じが伝わってくる。
・・・・・・・・・・
そして、決勝が始まる。
決勝は特別ルールで一体一。闘技場には俺と朱音が立っている。
神は残酷なものだ・・・・久しぶりに会った幼馴染同士で学園の入学枠を争わせるなんて。明日香ではなく情勢と戦うのを嫌う俺が今ここに立っている理由・・・それは俺が朱音の幼馴染だからだ。どうせ戦うのなら幼馴染である俺が引導を与えてやるっていうのが優しさってものだろう。それに「ホムラサヤオサメ」・・・あの剣と戦って見たかったっていうのもある。俺はあの剣のオーラに惹かれたのだ。
「始め!」
審判の声で試合が始まる。
(宮野魔拳術一ノ型疾駆)
俺は朱音の目の前に瞬間移動する。
(宮野魔拳術ニノ型魔拳)
朱音に魔力を込めた拳を放つ。
「・・・・・!」
しかし、これは防がれる。俺の拳を防いだのは朱音の剣、ホムラサヤオサメだった。赤い刀身、朱音の背丈とは不釣合いな大きさの剣。ただ、さっきよりオーラが格段に上がっている。身の危険を感じた俺はとっさに後ろに身を引く。そして、朱音は剣を両手でしっかり握り八相の構えをとって魔法を放つ。
「はあああああああああああ!紅一閃!」
朱音が大きく剣を振り回すと剣から一筋の火柱が放たれる。明日香の火の魔法よりはるかに質がいい。
よけられないと感じた俺は拳を構え、朱音の火柱に対抗するために再び魔拳を放つ。
「う、うおおおおおおおおお」
俺の拳と朱音の放った火柱がぶつかる。
「うっ、あ、熱っ!うおおおおおおおお」
俺は拳から伝わる熱さに耐えながらなんとか火柱を防ごうとする。
「はあああああああああああああああ!」
朱音はさらに火柱の威力を上げてくる。
「うっ、がはっ・・・」
俺はついに火柱を防げずもろに腕に火柱が直撃する。
「うっ、なんて威力だ」
俺の腕はやけどによる痛みで悲鳴を上げている。痙攣している。
「驚いたぞ、まさかあの技を喰らってまだ立ってるなんて」
朱音は驚いている様子。
「まあ・・負けるわけには行かないからな。気合で耐えた」
俺はなんとか朱音に言葉を返す。正直言うともう一回喰らえば危ない。
「・・・・さすが私の幼馴染だ。それでこそ本気で戦う意味がある」
朱音は再び八相の構えをとる。
「まずい・・・そろそろ隠しておくのも限界だな」
朱音が再びあの火柱を放ってくると確信した俺は今まで隠しておいた秘密兵器を取り出す。
俺は右手をかざす。そして現れるのは楔の形をした刻印。
「紅一閃!」
俺が刻印に手を触れた瞬間、朱音が剣から火柱を放ってきた。だが俺は気にせず刻印から秘密兵器を取り出す。その時火柱は俺に直撃した・・・・
周りが炎に包まれる。だが、その光は紫色の光と変わりやがて消滅する。
俺は倒れていない。火柱は俺を気絶させるどころか痛みひとつ与えることもできなかった。
「清隆・・・なんだその剣は・・・」
朱音は俺が朱音の最初の魔法を耐えた時以上に驚いた顔をしていた。
それもそのはず、俺の両手にはさっきまで無かった剣が握られていたのだから・・・




