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二十歳の誕生日は居酒屋にて①

「よう、すまんな。遅くなった」

 馴染みの居酒屋(と言っても法律的に酒が飲めるようになったのはつい最近のことだが)に入ると、さして広くない店内のためすぐに友人二人を発見できた。

「いいよ。むしろ、先にはじめちゃっててごめんね」

 小ぶりな友人が先に反応する。性別は男。身長は160に達していない。見た目的には美少年。女装が実に似合いそうな整った顔立ちをしている。平々凡々な見てくれの俺にとってはうらやましい限りだ。鷲主夏彦わしぬしなつひこことアルタ。俺の親友一号である。

「私たちの二十歳の祝いに遅れるとはなにごとだ!とりあえず飲め!!」

 大きいほうの友人が俺をなじる。性別は女。身長は175ある俺よりも高い。見た目は中身を裏切った感じの綺麗系。実際は、元気が有り余って安売りしている。しかしながら、今日はデートだったのか、珍しくスカートをはいている。と言っても、椅子の上に胡坐をかいてしまっているのだが。琴音織姫ことねべがことベガ。かわいそうなことにキラキラネームという俺の親友二号だ。

「アルタ、ベガは一体何杯飲んだ?」

 そして、俺。白鳥徹尾しらとりてつおことデネブ。お互いでこんなあだ名をつけたもんだから餓鬼の頃はよく、「夏の大三角形」などといわれたものだ。

 今日は七月七日―七夕。そして、アルタとベガの二十歳の誕生日。天気は晴れ。夜空に輝く満点の星がよく見えることだろう。


「えっとね、とりあえず生で乾杯して、梅酒、カシオレ、焼酎二杯、熱燗を2合かな。あ、でもカシオレは口に合わなかったらしくて半分も飲んでないかな」

「それは男前なことで、って待て待て待て。集合時間は7時だよな。俺が遅れたのは30分しかないのにそんなに飲んだってのか?」

 とても、30分で飲んだとは思えない量をアルタが提示する。ベガを見れば、目が据わって真っ赤である。

「よっぽどお酒を飲めるのが嬉しかったみたいだよ」

「いや。止めろよ。嫌だぞ、二人の誕生日祝いで急性アル中で救急車を呼ぶとか」

 とりあえず席に座りながら、アルタをいさめる。と言っても、こいつも酒を飲むのは今日が初めてか。ベガの親は破天荒な割には、酒・タバコに関しては厳しく、二十歳になるまでは絶対に飲ませてもらえなかった。彼氏でもあるアルタは当然ベガに付き合い、それまで飲まなかった。当然、俺も二人が飲まないのに飲むというわけにいかず、二人の前で飲んだことはない。

「先輩、俺はとりあえず生ください」

 皿を片付けにきた店員に注文をする。

「あいよ。てか、やっとお前らも飲める年になったのか」

「そんな、年寄りみたいな反応やめてくださいよ。一つしか違わないのに」

 この店員は、中学時代の先輩でいろいろあって、その頃からの付き合いだ。

「はっ。お前ら大学入ってからも居酒屋だってのに、酒を一滴も飲まないで、定食屋だと勘違いしてるもんだと思ってたよ」

「俺はちょいちょい来て、飲んでたじゃないですか。竹蔵先輩」

 竹蔵先輩は俺の言葉を鼻で笑って、奥に戻っていった。

「おいデネブ!飲んでるか!」

「まだ酒がきてすらいねぇよ!」

 ベガの絡みをいなしながら、今日の格好に言及する。

「それにしても、ベガちゃん?今日は随分とおめかししてますねぇ。珍しくスカートなんて'はいちゃって」

「いいだろ!きょうは、アルタとデートだったんだぞ」

 照れさせるつもりで言ったのに逆効果だったらしい。てか、自慢してきやがった。

「でもさ、でもさ。私も確かに近頃バイトで忙しかったし、レポートもあったしで、なかなか会えなかったけどさ。もっともっと、会いたいじゃん。一緒にいたいじゃん」

「すまんアルタ、ベガは何で突然落ち込んでるんだ?」

 さっきまでハイテンションでデート自慢してたかと思ったら、今度は突然机をいじいじしながら落ち込んでいる。

「あ~、多分一週間くらいお互いまともに会えなかったのが寂しかったみたい。ごめんねベガ。これからテストもあるから一緒に勉強しようね。そしたらいっぱい一緒にいられるからね」

「うん!」

 昔に比べて随分ベガの扱い方が上手くなっている。というか、多分酒でいつも以上に素直になっているだけかもしれない。

「あいよ、生お待ち」

 先輩が生を持ってきてくれる。

「よし、じゃあ乾杯といきますか」


「二人の」

「ベガの」

「アルタの」

「「「誕生日を祝して、乾杯!」」」


 そこから、暫く酒に呑まれてるベガの自慢と愚痴を三十分ほど聞かされた。どうやら、ベガがスカートをはくと余り良いことがないらしい。あれは、中学時代のベガがスカートを初めてはいた時も、周りを巻き込んで大概ひどい目にあった。主に竹蔵先輩が。まぁ、竹蔵先輩が原因でもあるんだが。

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