表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第八話 日曜日の出来事

いつも読んで下さっている方 ありがとうございます。


「あ〜つ〜い〜!」


「そりゃ夏ですからね…」


カイのもっともな返答に暑さも伴いイライラが募る。


「アンタは暑くないの?」


「えぇ…実体にならなければ」


今のカイは実体の無い状態。いわば幽霊みたいなモノだ。



夏休みが目前にせまったとある日曜日…。

叶は蒸し風呂の様な自分の部屋で叫んでいた。



今の叶の状態に効果音を付けるとしたら

「うがぁ〜」といった感じだろうな…


…などと考えながらカイは叶を見て少し笑ってしまう。



「ちょっと何がおかしいのよっ?!アンタ仮にも天会の人間でしょ。天候くらいなんとかしなさいよっ!」



暑さで苛つき最高潮な叶は理不尽な事を言ってカイに当たりだした。



「無理ですって…ι

僕の管轄外ですし…。天候管理は『地球部自然課お天気係』の担当なので…。」


「チッ…。使えないヤツ…」

「そこまで言わなくても…」


使えないヤツ呼ばわりされてショックを受けたカイは うなだれながら、床に『の』の字を書きだした。



…こんな風にいじけるヤツほんとに居るんだ…。



変なことにで感心する叶。

こんなに暑い今日に限って 叶の家に一台しかないリビングのエアコンは壊れていた。


母親の話しでは 業者の人が修理にくるのは明後日になってしまうらしい。

仕方なく 自分の部屋の扇風機の前にへばり付いていた叶だが


「う゛〜ι暑い…。暑過ぎるよぉ…」


日本の夏特有のジメジメした暑さに 叶は汗をかきながらダレていた。

最早、扇風機だけでは役不足な様だ。



「暑い暑いって言ってるから余計暑くなるんですよ…。ほら『心頭滅却すれば火もまた涼し』って言うじゃないですか…。試しに『涼しい』って言ってみたらどうですか…。」


暑さによるイライラをぶつけられて困り気味のカイは 叶に適当な打開策を提案してみる。



「涼しい…」


「…」


「涼しい。涼しい。涼し〜いっ!」


「…ど どうですか?」


「カイの嘘つき…」


「うっ!やっぱ駄目でした?」


じと〜っとした目で叶に睨まれカイはたじろぐ。



「暑い〜!!」


「僕にどうしろって言うんですか…ι」


さっきから この様な会話の繰り返しである。


「アイス食べたいなぁ〜♪」


「…。いきなり何言い出すんです?」


「買って来て♪」


「えぇっ?! 嫌ですって〜。実体になったら僕まで暑いじゃないですか…。それに他の人に見られたら…」


「だ〜いじょぶだって〜!今日はお父さんもお母さんも居ないし…近所の人だって親戚のお兄さんかな?くらいにしか思わないよ。」


「…僕に拒否権は?ι」


「ありません…」


にっこり笑って叶が即答する。



「分かりました。」


そう言うと 「ふぅ〜」

と溜め息をつきながらカイは実体になった。


先程までどこか存在感の薄く透き通っている様に見えていたカイがはっきりと見える様になった。




「うわっ!暑っ!」

実体になり急に暑さを感じだカイが叫ぶ。



「私の気持ちが分かったデショ?」


「出来れば分かりたくなかったです…ι」


カイが苦笑いしながら答える。




「わぁ〜。ちゃんと触れる〜」

初めてまじまじと実体になったカイを見た叶は 興味深々にカイの体をペタペタ触りだす。



「うわぁ…暑いんですからあんまり触らないで下さいよ〜」


カイが引きつりながら後ずさる。



「うん…私も暑い…」

「なら尚更やめましょうよ…ι」


「…うん」




「じゃあアイスよろしくねん♪あっ!カイのも買っていいから…。」


微妙な空気を打ち破る様に口を開くと叶はカイに500円硬貨を手渡す。


「なんで叶さん自分で行かないんですか?」


「外はもっと暑そうだから…」



「そうですか…ι」



カイは諦めた様な顔をしてしぶしぶ玄関を出て行った。



「ただいま〜」


30分後 カイがコンビニの袋をぶら下げて叶の部屋に入ると 叶が扇風機の前で丸まってすやすやと寝息をたてていた。


それを見てくすっと笑うと ベットに在ったタオルケットを叶にそっとかける。

日が傾いてきたせいか 窓から夕方独特の涼しい風が入って来ている。


風で髪のそよぐ叶の寝顔を見つめながら


「寝てると可愛いんですけどね…」


…と呟く。


起きている時の口の達者な叶が頭をよぎりふふっと微笑んだ。



叶さんの人生が幸多きものであります様に…

カイは ふと空を見上げ願う。

カイの胸の中にある手帳に書かれた叶の人生を思い描き 彼女の幸せを願った。




「アイス溶けちゃうな…。」



ポソッと呟くと 冷凍庫にアイスを入れようと部屋のドアを開ける。



すると 物音に反応し叶が目を覚ます。



「…うん?あぁ…カイおかえり〜」


まだ寝ぼけている様な声を出しながら目をこする。



「アイス買って来ましたよ。」


「うん…お疲れ〜。ありがとね…」


叶は軽く礼を言いながら アイスの入った袋を受け取り ゴソゴソと漁る。



「…なんでバニラばっかなのっ?!」



「アイスと言えばバニラでしょう?」


「アタシはかき氷が食べたかったのっ!」


「じゃあ行く前に言って下さいよ…ι」


苦笑いするカイ。


叶と会ってからどうも苦笑する回数が増えたな…

そんな事をふと思う。


「カイ〜♪」


「な…なんですか?」

叶の猫なで声に嫌な予感がして口元を引きつらせる。



「かき氷買って来て♪」


「嫌ですよもう…」


「お願い〜」

叶が甘えた声をだす。


「そんな声だされても…」



「行かないならカイの仕事に協力しないからっ」


ハナから協力するつもりなんて無い叶だったが ワザとカイが断れない様な事を言う。



「…分かりました。」

ガクッとうなだれるカイ。




更に30分後…。


「イチゴじゃなくてメロンが良かった〜」


「いい加減にしてください…」



カイの受難の日々はまだまだ続きそうである。

読んで頂きありがとうございました。

また よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ