第七話 友達に昇格
最近 カイのキャラが分からなく…ι
イメージ的にはぽやっとしたお兄さんなんですが…
「…俺の顔になんかついてる?」
教室の入口に立ったままの竜哉は自分へと向けられる視線に耐え兼ね頭をかいた。
ジャージ姿な所を見ると部活動をしていた様だ。
「うっ ううん。なんでもないよ。春日がいきなり入って来たからびっくりしただけ…ι」
「そっか…驚かせちまって悪かったな。ちょっと忘れ物しちまってさ…。……ところで。」
そこまで言うと 竜哉は叶の方を見つめる。
「何っ?!」
急に見つめられて 叶はドキッとしたのだが、よく見ると竜哉の視線は叶の隣に向けられていた。
「その人誰?」
「!?」
叶がバッと横に向くと、そこにはいつもの 白のシャツにジーンズ姿のカイ。
「…もしかして?」
カイだけに聞こえる様に小声で尋ねる。
「はい…。そのもしかしてです。実体になっちゃいました。」
頬をポリポリと掻きながら苦笑いするカイ。
アンタってヤツはなんでそうタイミングが悪いのよ〜!
肩をワナワナと震わせて心の中で叫ぶ叶だが今はそれ所では無い。
カイが竜哉に見つかると色々面倒だと判断した叶は
「あっ!春日見てっ!」
そう大声を上げ窓の外を指差しながらも急いでカイの方へ振り向き
「消・え・ろ」
…と口パクで合図する。
合図を受けカイはそそくさと姿を消した。
「なんだよ…何もねえじゃん。」
叶の言葉に素直に窓の外を見つめていた 竜哉だったが、
特に何も見付からず 抗議の声をあげた。
「あれ〜?おかしいな… 向こうの校舎で校長と教頭が抱き合ってた様に見えたのに…。」
因みに 校長も教頭も男である。
それもかなりいい年した中年のオジサンだ。
「うげ…ι変なモン見せようとしてんじゃねえよ…。」
という春日の言葉に
私もそんなの見たくないよ…
と思った叶だったが ポンッとリアルにその情景が頭に浮かんでしまい 思わず顔を引きつらせた。
「…んっ?!あれっ?さっきお前の隣に男の人居なかったか…?」
叶と同じ様に 校長と教頭のラブシーンを想像して青ざめていた竜哉だったが 突然思い出した様に 叶に尋ねてきた。
「やだぁ。春日ったら夢でも見たんじゃない?教室にはずっとアタシ一人だったよ…」
「ほんとか?マジでっ?あれ…おかしいな…。んじゃあ俺が見たのはなんだったんだ?幻か…?」
「うん。多分そうだよ…。幻覚見るなんて春日きっと疲れてるんだよ。早く帰った方がいいって…。」
「そうなのかな…。」
言いながら、ふと竜哉は叶の方を見る。
「ん?それって上原に頼まれたプリントか?」
「うん。そう。これ終わるまで帰れないんだよね…。」
と溜め息をつく。
「手伝ってやろうか?」
「えっ!?いいの?…あっ!でも駄目だよ…手伝って貰ったのバレたらまた上原に怒られるし…。」
竜哉の嬉しい申し出に 喜んだ叶だが 上原の言葉を思いだし再び溜め息をつく。
「大丈夫だって。先生なら、さっき帰ってったし…」
なぬっ!酷くない?
罰とはいえ 生徒に手伝いさせといて自分はさっさと帰っちゃうなんて…
叶は薄情な担任に心の中で毒づいた。
「だから遠慮すんなってっ 藤崎一人じゃ真っ暗になっても終わらねえぞ…。」
「じゃあお願いシマス」
竜哉のありがたい申し出を受け 叶はプリント折りという単調作業に戻った。
二人でプリント折り&綴じ作業を始めると 叶が一人でやっていた倍以上の速度で作業は進み20分程で終了した。
まぁ単に叶が一人でやっていた時は グチグチ言いながらだらだらと作業していたのだ。あれでは終わるものも終わらなかっただろう…。
「よしっこれで片付いたな…。んじゃ帰りますか〜」
最後のプリントを綴じ終え 竜哉はう〜んと伸びをする。
「ほんとありがとね。春日のおかげでやっと帰れるよ〜。」
…と 言うと叶は大袈裟に拝むふりをしながら竜哉に頭を下げる。
「いいって事よ。どうせ暇… ……じゃねえや 部活の途中だった。やべぇな…。先輩怒ってんだろな…」
サァーッと竜哉の顔が青ざめていく。
「ごめんね…。春日。私のせいで…」
「まぁ もう終わっちまってる時間だし、しょうがねえよな…。大丈夫だから気にすんなよ。」
「うん…。ごめん」
「さっさと帰ろうぜ。もう暗いし駅まで送るよ。…ってか…うわっ!俺ジャージのまんまじゃんっ! 着替えてくっからちょっと待っててな…」
そう言うと 竜哉は慌てて教室を出て行く。
「なんかいい感じじゃないですか…?」
にこにこしながら カイが現れる。
「そ…そんなんじゃないわよっ!」
「そうですか?仲良さそうに見えましたけど…」
「春日はただの友達っ!変な事言わないでよっ」
「昨日はただのクラスメイトって言ってませんでした?」
そう言うとカイはにやにやしながら叶の事を見てくる。
「っ?!いいヤツだし友達になってもいいかなって思っただけよっ」
「誰としゃべってんだ?」
気がつくと ドアの所に竜哉が立っていた。
「なんでもないから…。気にしないでっ!さぁ行こっ」
「おぅ」
駅までの道… チャリ通学の竜哉は自転車を押しながら叶の隣を歩いていた。
「なぁ…。いつまでも藤崎って呼ぶのも他人行儀だし カナって呼んでもいいか?」
「うん。いいよ」
何人かいる他の男友達からもそう呼ばれている為 叶は迷わず返事した。
「じゃあ…春日は〜 う〜んと 『たっちゃん』なんてどぉ?」
「お前は南ちゃんかよっ?!しかも俺 野球部だし…ι」
「何それ…?」
「ん?知らねえのか…。まぁ なんでもいいや…好きな様に呼んでくれっ」
他愛もない会話をする二人を空からそっと見ていたカイは この分だと仕事は順調に片付きそうだと喜んでいた。
…と 同時に少し淋しいと思う自分がいる事にはまだ気付いていない。
呼んで頂きありがとうございます。