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三題噺もどき5

今朝の話

作者: 狐彪
掲載日:2026/06/25

三題噺もどき―はっぴゃくきゅうじゅうよん。

 




 テレビでは、今朝のニュースが流れている。

 左上には現在の時刻が刻まれ、家を出る時間が刻々と迫っていることを告げている。

 アナウンサーが何やら神妙な面持ちで話している最中に、画面下には文字が写される。

「……」

 私はそれをぼうっと見ながら、朝食を食べている。

 今日の朝食は、いつも通りの、ご飯と味噌汁。

 朝はパン派の妹は食パンを食べている。

「……」

 一口ご飯を運び、噛む。

 満足したところで飲み込み、次の日と口を食べようと箸を動かす。

 そのままさっさと食べ進められたらよかったのだけど。

「……、」

 そううまくいかないのが、最近の朝食事情で。

 胃に入ったはずの食事が、突然喉元まで戻ってくる。

 嘔吐するまでにはいかないが、その寸前まではやってくる。

 飲み込みたくもないけど、嘔吐するよりはマシだろう。朝からそんなことしたくもないし、誰も暇ではないのだ。

「……」

 妹はパクパクと食べ進め、さっさと部屋に戻っていく。

 いつもならすでに着替えているはずだが、今日は朝練がないのかパジャマのままだ。

 母はまだキッチンに居る。私の弁当を詰めてくれているのだろう。

 毎日ありがたいものだ。

「……」

 なんとなく落ち着いたころにまた一口食べる。

 今度はすんなりと受け入れてくれたようで。

 戻ってくることはなかった。何が違うんだろうという感じだが、私の体の事は私でも分からないのでどうにもできない。

「……」

 テレビに表示されている時間を見ると、もう少し急いだほうがよさそうだ。

 もうそろそろ着替え始めないといけない。

 全く時間に拘束されていると、ゆっくりもできないのだから嫌になる。人間はいつからこんなに時間という概念に拘束されるようになったんだろう。そんなものを開発した人が悪いんだろうか。……何をどうでもいい事を考えているんだろう。さっさと食べなくては。

「……」

 吐きそうになりながらなら、食べなければいいだろうと思うかもしれないが。

 そういうわけにもいかないのだ。

 母にはこういう症状が出ていると言っていないし、そもそも空腹ではあるのだ。

 起きて少しすれば、お腹が鳴るくらいには。

 それなのに、こうして食事をするたびに、戻ってくる。

「……」

 何が原因なのかも分からないし、いつからなのかも正直覚えていない。

 気付けばこういう風になっていたし、気づけばコレが当たり前になっていた。

 昼食のときはそんなことない……ハズなんだけど。

 まぁ、あの子と一緒に居る間はそんなことはないんだろう。

「……」

 残り半分ほど残っていたご飯をほとんどかきこむようにして飲み込み、味噌汁で流し込む。基本的にインスタントの味噌汁なので、具材はあってないようなものだ。

 それに先に食べてしまっているので、残っているのは汁だけ。

 もう少し時間が押せば、味噌汁とご飯で猫まんまを作って流し込む。

「……、」

 案の定ぐるぐるとしだした胃を抱えながら、立ち上がり、皿を下げる。

 キッチンには、すでに包まれた弁当が置かれている。

 あとはアレを保冷バッグにいれて、保冷剤と、冷凍されたゼリーを入れて終わりだ。

「……」

 母は脱衣所で洗濯を干していた。

 我が家は室内乾燥をする。基本的に夜に干しているが、たまにこうして朝母の時間がある時にも洗濯をしたりしている。夏場はパジャマも汗をかいたりしているから。

「……」

 茶碗を水につけて置き、弁当箱を保冷バックに入れていく。

 保冷剤とゼリーは当然冷凍庫に入っているので、それを取り、入れて、チャックを閉める。

 ここに置いておくと忘れるので、リビングの机の上に置いておく。

「……」

 自室に鞄とリュックを取りに2階に上がりつつ、未だぐるぐるとしている胃を何とか落ち着けと祈る。まぁ、今落ち着いたところで、登校中にも戻ろうとしてくるから、意味はないんだけど。ホントに勘弁してほしい。

「……」

 あとは、リュックに保冷バッグを入れつつ、歯磨きをして、制服に着替えて。

 今日もまた、学校に行く。あの子に会いに。











 お題:嘔吐・噛む・拘束

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