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魔王城 受付録 ~会議室には入れません~  作者: 叶詩


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勇者が増えすぎたので受付が詰まりました

魔王城の受付に、勇者が殺到した。

自称勇者、勇者候補、元勇者――肩書きは自己申告制。

会議室に通せと迫る彼らを前に、受付係は今日も冷静に対応する。


だが、会議は始まらない。

始まらないまま、受付だけが忙しくなっていく。


これは、

世界が混乱した結果、

一番混雑する場所の記録である。

 魔王城の受付は、今日も通常営業だった。


 世界が平和になってからというもの、ここは以前より忙しい。

 戦争がなくなった代わりに、相談と自己主張が増えたからだ。


 そして今日、その忙しさは朝一番から限界を迎えていた。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


 いつも通りの文言を口にした瞬間、相手は胸を張った。


「勇者です」


 受付係は、慣れた手つきで視線を上げる。


「……他には?」


「後ろにいます」


 振り返ると、そこには列ができていた。


「勇者です」

「勇者候補です」

「元勇者です」

「今はまだ違いますが、昼には勇者になります」


 受付係は一度、目を閉じた。


(肩書きが自己申告制になったのは、いつからだろう)


「順番にお伺いしますので、こちらへお並びください」


 冷静に番号札を取り出す。

 勇者たちは素直に受け取り、並び始めた。


 その姿を見て、受付係は内心少しだけ安心した。

 秩序は、まだ機能している。


「ちょっと待て」


 すぐに機能しなくなった。


「俺の方が先に勇者だ」

「レベルが違う」

「物語的に俺が主人公だろ」


(“物語的に”という言葉が出た時点で、全員同列だと思う)


「申し訳ありません。受付は到着順です」


「勇者を順位で扱うのか?」


「受付では、全て順位です」


 それは事実だった。


「では魔王に会わせろ」

「会議に参加させろ」


 全員が同じ要求を口にする。


 受付係は、用意してあった定型文を取り出した。


「会議室は、関係者以外立ち入り禁止です」


「勇者は関係者だろう!」


「登録されていません」


 空気が止まる。


「登録?」


「はい。登録」


「どうすれば?」


「まず受付を通してください」


 沈黙の後、誰かが小さく舌打ちした。


(だから最初から通しているのに)


 混乱が広がり始めたため、受付係は判断を下す。


「皆さま、“会議待ち”として処理します」


「それはいつになる?」


「未定です」


「未定とは?」


「未定です」


 不思議なことに、その一言で全員が納得した。


 勇者たちは待合スペースに座り込み、各々武器を磨き始める。

 会議は始まらない。

 だが受付だけが、忙しい。


(世界が混乱すると、まず受付が詰まる)


 書類を整理しながら、受付係は思う。


 魔王城も、例外ではない。


 今日も受付は、

 会議が始まらないまま、通常営業だった。

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