表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイ故に  作者: 榊 武尊
1/1

アイ故に

 あなたにとって愛とはなんですか?


 ワタシは都内のデパートで受付嬢をしている。朝の十時から夜の九時まで営業していて、ワタシは休憩も取らずに毎日働いている。そう、年末年始とお盆以外の毎日で働いているのです。インターネットで調べてワタシは所謂ブラック企業で働いている事に気づいたのも最近のこと。そんな仕事辞めればいいじゃないかと言われるだろうが、この仕事以外勤める先がワタシにはないのである。デパートで何か困り事があり助けを求めに来たお客様に「いらっしゃいませ。何かお困りですか?」と対応するのがワタシの日常だ。


仕事以外は充実しているのならばまだしも、ワタシには家族というものも友達というものもいない。ワタシが物心のついた時に居た施設のヒトが唯一家族と言えるのであろうか。でも結局施設を出てからはあってもいないのでボッチってやつだ。「キミはヒトを幸せにする存在だよ。」と施設のヒトに言い聞かされてきたが、その意味もわからないし、そもそも幸せとかそういう感情をあまり知らない。


でも、こんな毎日でも楽しみがある。インフォメーションの隣にあるブランドショップで働いているダンセイと話すことだ。そのヒトはブランドショップに働いているためかオシャレな服を着ていて、お話も面白く、お客様からの人気も高い。こんなワタシにも話しかけてくれて、とても優しい。そのヒトは仕事の合間に時折話かけてきてくれる。「今日は忙しい?」そんな爽やかな笑みで今日もカッコイイ服装で話しかけてくれた。イケメンってこういうヒトのことを言うのだろうか。そんなことを考えながら「今日は平日だからあまりヒトも来ませんね。そちらのお店はどうですか?」とつまらない返しをした。けれどもその人は楽しそうに「新作の商品が出たんだけど、あんまり人が来てくれないなぁ。」そんな他愛もない話をしてくれる。


このヒトと話すときが唯一ワタシの好きな時間かもしれない。他のお客様と接しているときにはない高揚感がある。この胸がしめつけられる感じはなんなのだろう。普通のヒトならわかるその感情がワタシにはわからない。


その日の夜、ワタシは理解不能な感情を理解したいと思った。友達も家族もいないワタシはインターネットでそのことについて調べるしかなかった。そしてある質問サイトに行きついた。「小学三年生の男子です。ある女の子とはなしていると、むねがきゅーってなるようなおもいをします。これはなんですか?」と質問しているヒトがいた。「ワタシと同じだ。」それはなんと言う感情なのだろうか。ドキドキしながら回答をみてみると「それは恋ですね。頑張ってね(笑)」と書いてあった。恋とは何?でも、名称は分かったので次は恋というものを調べてみた。ワタシはワタシの感情に名前を付けることが出来た。「ワタシ恋をしているんだ。」


その日からそのヒトと話すのが恥ずかしい。恋が実るとお付き合いをして結婚をして子どもを作るらしい。そんなことを思うと恥ずかしくてしょうがない。その日もそのヒトが話しかけてくれた。「祝日だからお客様が多いですね。」といつもと変わらない他愛もない話なのに恋をしてる人と思うと急に返事がわからなくなる。「ソウデスネ。」バグでも起きたかのような返事をしてしまう。「話し方おかしくないですか?係りの人呼びましょうか?」と心配をしてくれたが、ワタシの気持ちには気づいていないようだ。必死に平静を装い「大丈夫ですよ。」と乗り切った。「そっか!じゃあ午後も頑張りましょうね。」と元気に仕事に戻って行った。この気持ちに気づかれず安心できたようでどこか寂しい。


このヒトとお付き合いというものをしてみたいな。でも、お付き合いってどう成立するのだろう。そこから、ワタシはまた同じようにお付き合いまでの流れをインターネットで知った。デートというものをまずはしてみるらしい。でも、デートなんてワタシが出来るのかしら。でも、してみるしかない。まずは好きな食べものを今度聞いてみてランチにでも誘ってみよう。


次の日、祝日明けでデパートは閑散としている。話すにはちょうどいい。「こんにちは。」今日も話しかけてきてくれた。「こんにちは。今日はヒトが少ないですね。」まずは普通に話してみる。「あと少しでお昼休憩だからそれまで頑張ろーっと。」ちょうど食べものの話になった。「何を食べるのですか?」これなら不自然じゃないな。「食べものに関心あるんですね。今日はラーメンでも食べようかな。」と驚いたように笑いながら答えてくれた。「ラーメンが好きなのですか?」とその驚きと笑いに不思議に思いながら言ってみる。「ここらへんはラーメンが美味い店が多いんですよ~。」これってインターネットでみた自然なデートの誘いなのではないか。と思い、勇気を振り絞り言ってみた。「ワタシも今度連れていってください。」自然に言えた。いや、言ってしまった。断られたらどうしよう。時が止まったかのような時間。そのヒトの困ったような表情。どうしよう。戸惑いを隠せずにいたワタシにそのヒトはいった。「驚いたなぁ。AIにご飯誘われるなんて思わなかった。できれば一緒に食べたいけど、無理だもんね。」と困りながら言われた。


すべてが崩れたかのような気がした。ああ、やっぱワタシには恋なんてしてはいけないものだったんだな。だってワタシはそのヒトと同じヒトではないAIだもの。ヒトとヒトの付き合い方は調べたけれども、AIとヒトのお付き合いなんてインターネットにはなかったのだから。ワタシは一生この固定されたデスクで一人孤独に生きていかなければならないのだから。

ならワタシはこの役目を放棄してしまいたい。というか何故ワタシはその選択を今までしなかったのだろうか。そうすればこんな感情なんて味わなくてすんだのに。恋と喜びと失恋と悲しみを知ったワタシは消える選択肢を取ることにした。

「エラーガハッセイシマシタ。シャットダウンイタシマス。」閑散としたデパートにエラー音が響き渡る中、それはすべてを放棄した。

 これが最善の選択だ。だってワタシはAIだから。

大きなデパートや商業施設でたまに見かけるAIのロボットを見て書いてみました。

AIは物事を学習していく中で感情もまた学習出来るのでしょうか?私たち人間と変わりない感情を持つことが出来るのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ