クソ喰らえな世界
突然だが
俺はこの世界が嫌いだ
人間関係、仕事に恋愛
無駄に媚びを売り成り上がろうとする大人
正直者が馬鹿を見る世界
ずる賢い奴らが得をする世界
「あぁ……クソ喰らえ……」
時刻は24:35
スーツ姿でいかにも残業帰り
会社に馴染めず今日退職をした
その男はこれで7度目の退職、生気のない顔をし
横断歩道で信号が変わるのを待っていた
【最終日まで散々働かされるのかよ……クソ上司が……】
その男は都会に憧れ
5年前北海道の田舎町から東京に引っ越してきた
最初は見るもの全てが輝いて見え
高層ビルに地元には無いチェーン店
通勤ラッシュ時のJRのすし詰め状態
全てが新鮮で全てが輝いて見えていた
会社も大手企業に就職が決まっていて
全てが上手く行く
はずだった……
現実は思っていた以上にクソで残酷で
何度脳内シュミレーションで世界を壊したかわらない程
クソ喰らえな世界だ
最初の会社ではがむしゃらに仕事をして
その年で1番社内に貢献した人に与えられる新人賞も受賞した
給料もアップし役職まで付けてもらえた
その頃から同期の連中から嫌がらせを受ける様になった
期日までに提出する書類を隠されたり
「おはようございます」
「…………」
挨拶しても話しかけても無視
自分のミスを俺に擦り付けられたりもした。
だが……
それでも俺は会社を辞めなかった
心の支えが居てくれたからだ
同じ会社の同期で俺の彼女あゆみ
あゆみが居てくれるから
俺は会社を辞めないで居れた
その日
俺とあゆみの記念日で
同期からの嫌がらせで無理やり押し付けられた仕事を
俺は必死こなしてむしろいつもより早く仕事を終わした。
【帰りにケーキでも買って行くかな】
あゆみが好きなケーキ屋のチーズケーキを買い
足早にあゆみの自宅に向かっていた
【あゆみびっくりするだろうな!
こんなに早く終わるの半年ぶり位か…
いや……1年ぶり位か?…… まぁ…いいか】
いつもなら
仕事終わりの足取りが重いのに
不思議な事に今日は驚く程に軽い
【これが愛の力か!……なんちゃってw】
自然と笑みがこぼれる
傍から見たら間違えなく
危ない人認定確定な程俺は浮かれていた。
あゆみの住むアパートが見え
ちょうどあゆみの寝室に電気がついたのが見えた
自然と足取りが更に早くなる
あゆみの住むアパートにつき
少し錆びれた階段を駆け足で登り
206号あゆみの部屋のチャイムを鳴らした
【びっくりするだろうなw】
今にもびっくりするあゆみの顔が浮かぶ
チャイムを鳴らして2分くらいはたっただろうか
いつもなら
チャイムを鳴らしたら直ぐに
「はーい!ちょっと待ってね!」
そう言ってドアを開けてくれる
それが今日は反応がない…
家の中に居るのは間違えない
外から寝室の電気がついたのも確認した
【寝てるのか……?まさか?!倒れてる?!】
俺は心配になりチャイムを鳴らした
何度も何度も……
【俺……間違えなく……傍から見たらやばいやつじゃん。】
それでも
チャイムを鳴らし続けた
それでも反応がない。
俺は下の階に住む大家のおばさんに
鍵を開けてもらえないか頼みに行こうとした。
すると
ドアが少し開いた
俺はドアに手を掛けて開けようとした
ガシャン!
チェーンがかけられている
あゆみはその僅かに開く隙間から顔を出す
「え?!今日早くない?!……どうしたの!!」
あゆみは少し慌ててる様見える
当たり前かいつもなら仕事終わるのは23:00過ぎ
こんなに早いのは本当に珍しいから
びっくりしてるのだろ
「今日早く仕事終わしたよ!
記念日だろ今日!あっ!
あゆみの好きなあの店でチーズケーキ買ってきたよ!」
「あっ……ありがとう……」
俺は僅かに開いてる隙間から
あゆみの顔を見ようと覗き
「一緒に食べよう!」
あゆみは今まで見たことない位
青ざめた顔をしてる……
それに僅かに開いた隙間に顔を近ずけて気が付いた
タバコの匂いがする。
あゆみはもちろん俺もタバコは吸わない。
「あゆみ?誰かお客さんいる?」
「…………」
あゆみは下を見て
俺の顔を一切見ようとしない…
俺はその僅かに開く隙間から
玄関に男物の靴があるのが見えた……
「あゆみ?」
「…………」
嘘だろ……
嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だア゛ア゛ア゛ア
すると
「おーい!あゆみ!誰?宅配?」
僅かに開く隙間から
見え覚えのある男がパンイチ姿で
あゆみの後ろに姿を表した
あゆみはドアを閉めようと力強く引っ張る
俺はまるで取り立てみたいに
僅かに開くドアに足を入れドアが閉まらない様にした
「あゆみ……これは?なに?……お前……なにしてんの?」
あゆみは下を見たまま
俺の顔を見る事無く言った
「ごめんなさい」
「ごめんなさいって……なんだよッ!!」
あゆみは下を見たまま
力を込めドアを閉めようとしてる
その度俺の左足が何度も何度打ち付けられる
「お前……一体何してんだッ!」
自然と口調が強くなる
「お前……何しッ」
今日初めて顔を上げたあゆみの顔は
俺が今まで見たことの無いほどに
残酷で冷めた顔をしていた。
俺は無意識の内にドアが閉まらないように
僅かに開く隙間に入れていた左足を抜いていた
バタンッ!!
勢い良くドアが閉まる
あゆみと一緒に居た男
そのクソ野郎は会社で俺に嫌がらせをする
主犯格の男だった。
【なんで……なんでだよ… 。】
手に持っている
ケーキ屋の箱が気が付くとぐちゃぐちゃになっていた。
俺はその箱クソ女の部屋のドアに投げつけ
その場から気持ちを落ち着かせるため
いや……
その場から逃げ出したかったのだと今思えば思う
その後会社では
何故か俺があゆみにストーカー行為をしていた
など
全く身に覚えのない事を社内に言いふらされ
俺は退職するしかなくなった
今思えばあの時から俺は
何をしても上手く行かず
人間関係、会社、恋愛
全てが面白いくらいに上手くいかなくなった。
【本当に……クソ喰らえ……】
そして
今現在も俺に最悪なループはこびり付いて離れない
【自己新記録達成だな…w】
自分の哀れさに笑いが出る
【3ヶ月で退職……7社目の退職……】
信号が変わるの待ちながら
男は考える
目の前を横切る数台の車
【俺……今飛び出たら楽になれるかな?】
1歩2歩3歩と男は進む
プッ!!プッーッ!!
「危ねぇだろうがぁ!! 馬鹿野郎! 何考えてんだぁあ!」
情けない……
情けない事に恐怖のあまり自殺すら出来ない。
俺は尻もちつき地面座り
運転手の怒鳴る声を聞いていた
正直何を言われたか
何を言っていたか
全く覚えていない
これが心が死ぬって事なのだろ。
時刻は1:15
周りは暗く
一定の距離に街灯があり
スポットライトの様にその区間を照らしてる。
ここから自宅までは1時間以上かかる
JRやタクシーで帰る事も考えたが
明日からまた無職の収入無し
少しでも節約をしないといけない
俺は重たい身体を無理やり動かしならが
ただひたすらに歩く
持っているカバンがまるでダンベルの様に重く感じる
汗だくで気持ちが悪い
革靴の中は蒸れてぐちゃぐちゃ
腹が減ったし喉も乾いた…
【あぁ……だりぃ……】
時刻は2:44
1時間程歩いただろうか
見慣れた街並みを気がついたら歩いていた
深夜なだけあって人気がない
革靴の底が地面に当たり
コツ、コツと俺だけの足音が響いていた
しばらく歩くと
コンビニが見えてきた
自宅から徒歩3分のコンビニ
空腹と喉の乾きそれと
自宅のマンションが見えた事で俺は少し気持ちが緩んだ
【今日は仕方ないだろ。】
俺はコンビニに立ち寄り
缶チューハイ6缶
見るからにハイカロリーな弁当
ドレッシングの別売りのサラダ
酒のつまみになる物を数個買った
【5765円……デカイ出費だな。】
買った後に後悔をした。
貯金残高も多くは無いそれなのに
無駄遣いをした事にではなく
先の見えない現実から目を背けるために買った酒。
自分の弱さが情けなく感じる。
【結局……逃げてんだな……俺】
エレベーターに乗り部屋のある4階に降り
部屋まで向かう
407号俺の自宅
鍵を開け
持っていたカバンを玄関に投げ捨て
「ただいま」
【おかえり】
心の中でおかえりを言った
この瞬間が1番寂しく感じるのは
間違えなく俺だけでは無いはずだ。
しみじみと孤独を感じる
実家暮らしの時はただいまと言えば
必ず母親がおかえりと言ってくれていた
地元か恋しくもなる。
【はぁ……地元に帰るかな。】
俺はコンビニで買った物を
テーブルの上に出し1人晩酌を開始した
酒は決して強い方では無い
だからこそ
酒を呑んで酔い潰れたかった
晩酌をしながらスマホで求人情報を見てると
1つ気になる求人があった
【月収1000万?……いいじゃん!】
俺は酔いが回っていたせいか
普段なら怪しいと思って絶対に手を出さない
その求人に応募していた。
俺はそのままテーブルに顔を伏せた状態で眠ってしまった。
ピコン!!
スマホの通知音が鳴る
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おめでとうございます!
貴方は当選致しました!!
時期に迎えの者が伺います
その場所から離れず待機をお願いいたします
株式会社 Δ.labo
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