表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/117

第5話 スキルスフィア

 ジュル! (これはっ!)

 ジュルル!(信じられん!)

 ジュルッ!?(半分だけで効果が!?)


 バロメッツたちが驚愕の声をあげます。

 ステータス画面の記述も、

 

 ステータス異常:なし


 と変化しています。

 神餐のパンの状態異常回復(大)の効果は、半分口にしただけで出たようです。

 なんとなく、これ以上は食べなくていい、またはこれ以上食べると良くない、という直感のようなものが働いたのですが、正解だったようです。

 残っているパンを鑑定してみると、


 神餐しんさんのプチフランス(半)

 レアリティ :エピック(劣化)

 品質    :食べかけ

 食事効果  :バイタル全回復

        メンタル全回復


 となっていました。

 レアリティと品質が『食べかけ』になっていますが、全回復効果はまだ残っているようです。

 残った半分はナイフとフォークで三つに切り分けました。


「食べてください」


 メーッ! (いただこう!)

 メエェッ!(いざ!)

 メメェッ!(ブラボー!)


 理性が限界に近かったようです。

 バロメッツたちははじかれたようにパンに飛びつきました。


 バリバリメー!

 パリパリメー!

 モチモチメー!


 なにを言っているのかわからない声をあげた三匹は、あっと言う間に神餐のプチフランスを平らげてしまいました。

 食事効果が出ているのか金色のオーラを出したり、綿毛の体を膨らませたりパチパチと放電したりしています。


 メー (ご馳走様でした)

 メエェ(至高にして至福のひととき)

 メメェ(代金を支払わなければ)


 開いたままだったステータス画面に『800,000PPが振り込まれました』と表示されました。


「……もらいすぎでは?」


 食べかけの状態ですし、チュートリアル中の人間が受け取るPPではない気がします。


 メェ (意見は理解するが、正当な評価額だ)

 メエェ(君が対価を下げれば、それが先例となる)

 メメェ(血が滲む努力をして君と同等の境地に至った他の誰かの仕事を貶めることにつながる)


 メチャリ (そもそも)

 メチャー (対価を決める前に食べてしまったからな)

 メメチャア(対価をいくら積もうが我々の自由なのだ)


 メーメッメッメッ。


 三匹は悪者めいた声をあげました。


「そんなにPPを使ってしまって大丈夫なんですか?」


 メェ (我々は迷宮王アデスの端末のひとつでもある)

 メエェ(我々が味わった感動や衝撃は迷宮王の元に送られて共有される)

 メメェ(迷宮王からの評価と考えてもらっていい)


「私の個人情報も迷宮王に送られるということでしょうか」


 メェ (冒険者登録の時点で送られている)

 メエェ(君はこの世界における最初のレジェンダリークラス保有者だ)

 メメェ(既に最重要冒険者としてマークされている)


 大変なことになっているようです。


 メェ (それはさておき、君の持病は完治した)

 メエェ(冒険者を志した動機が失われたわけだが)

 メメェ(チュートリアルを続けるかね?)


「はい」


 アンデッド因子感染症が治ったといっても、なんらかの仕事はしなければいけません。


 メェ (では、次はバザールに出品をしてみよう)

 メエェ(秀逸なプチフランスを通常アイテムボックスに収容してくれたまえ)

 メメェ(収容したらアイテムボックスの管理ウィンドウを開く)


 指示に従い、残っていた二つの秀逸なプチフランスを通常アイテムボックスに収容します。

 手を触れなくても念じるだけで出し入れできるので便利です。

 続いてアイテムボックスの管理ウィンドウを開くと、


 秀逸なプチフランス:2


 と表示されていました。


 メー (秀逸なプチフランスを長押し、メニューから『バザールに出品』を選択)


 秀逸なプチフランスの文字列を長押しすると、『取り出し』『バザールに出品』『譲渡』『廃棄』といった選択肢が表示されました。

『バザールに出品』を選択すると、『1つずつ売る』『セットで売る』という選択肢が表示されます。


 メー(好きな方を選んでほしい)


 今回は『1つずつ売る』を選択します。

 次は販売価格の設定です。

 最低取り引き価格5,000PP、最高取り引き価格は8,000PPと表示されていて、この範囲外の額にはできないようです。


「やっぱりパンの値段ではないと思います」


 メェ (取り引き価格帯は効果ベースで設定される)

 メエェ(もうそういうものだと思って割り切って欲しい)

 メメェ(とりあえず推奨出品価格にあわせておけば困ることはないはずだ)


 推奨出品価格は6,000PPということなので、そのまま6,000PPと指定します。

 秀逸なプチフランスは二つありますが、まずは一つだけ出品することにします。


 秀逸なプチフランス

 出品価格6,000PP

 点数1

 以上のアイテムを出品しますか?

 (はい/いいえ)


 という表示に『はい』を選択します。

 アイテムボックス内の秀逸なプチフランスに『バザール出品中』という表示がつきました。

 数秒も経たないうちに『秀逸なプチフランスが落札されました』というメッセージが表示されました。

『秀逸なプチフランス』の数がひとつ減り、所持PPがまた増えました。


 メェ (随分早く売れたな)

 メエェ(普通はここまで速くは売れないんだが)

 メメェ(ともかくこういう流れでPPを稼いでいくことになる)


 メェ (バザールやダンジョンで素材を手に入れて生産を行い、バザールで売るの繰り返しだ)

 メエェ(PPが貯まったら道具や設備を増やしたり、スキルを上げたりしていく)

 メメェ(生産クラスのチュートリアルはここまでだが、なにか質問は?)


「もう少し安く売る方法はないんでしょうか?」


 メェ (バザールを通さず直販する分には価格設定は自由だ)

 メエェ(ただし、競合アイテムを扱う冒険者に敵視される可能性がある)

 メメェ(東京大迷宮としても推奨はしていない)


 メェ (当面は食事効果を落とすことを目指すといい)

 メエェ(今のところレジェンダリーのパワーに振り回されているが、慣れれば普通に美味しいだけのパンを焼けるようになるだろう)

 メメェ(そういうものならもっと手の届きやすい価格で提供できる)


「普通の値段で売るためには訓練不足ということでしょうか?」


 メェ (そういうことになる)

 メエェ(話が逆ではあるが)

 メメェ(こんなアドバイスが必要になった人間は君が初めてだ)


 バロメッツたちは苦笑いするように言いました。


 メェ (他の質問がないようなら、ダンジョン探索やクエストに関するチュートリアルをしておきたいが)

 メエェ(PPがだいぶ増えているな)

 メメェ(先にスキルアップやスキルの取得方法を教えておこう。『スキルスフィア』と念じてみたまえ)


「こうでしょうか」


 指示通りにしてみると、目の前に大小二つの球体が浮かび上がりました。

 大きいほうは直径三メートルほど、表面にはスキル名が記された六角形の模様がびっしりと刻まれています。

 もう一つは直径六〇センチ程度で、大きな球体のそばに衛星のように浮かんでいます。やっぱりスキル名の入った六角模様が刻まれていました。

 地球と月を思わせる位置関係です。


 メェ (これがスキルスフィアだ)

 メエェ(大きいものがメインスキルスフィア)

 メメェ(小さい方は汎用スキルスフィアになる)


 メェ (白く光っているパネルは取得済みスキルを示し)

 メエェ(青く光っているパネルは取得可能スキルを示す)

 メメェ(光っていないパネルのスキルはまだ取得できない)


 メェ (基本的に隣接するスキルを取得することで取得可能になる)

 メエェ(一定のスキルランクが必要になることもある)

 メメェ(汎用スフィアにあるスキルは隣接スキルとは無関係に取得可能だ)


 メインスキルスフィアに手を触れて回してみると、地球儀のように動きます。

 ベーカーで取得したスキル、ソルジャーで取得したスキル、キャンパーで取得したスキルなどがつながりあい、小さな島のように浮かび上がっている場所がありました。

 地水火風の属性魔法、召喚魔法、回復魔法と言った魔法スキルもあるようですが、どれも私のスキル島からは遠い場所で、取得は難しいようです。

 鑑定スキルなどもあると便利そうですが、これも新しく取得できる場所にはありませんでした。


 メェ (新規にスキルを取得するには一律十万P)

 メエェ(最初はEランクからだ)

 メメェ(EからDは百万PPかかる)

 メェ (DからCで一千万PP)

 メエェ(CからBが一億PP)

 メメェ(Aランクは十億PPだ)


「ランクが上がるごとに十倍に?」


 メェ (そうなるな)

 メエェ(Sをこえるともう時価の世界だが)

 メメェ(SSSなら最低でも十兆PP)


「十兆PP以上のスキルを十個以上持っていることになるんですが」


 さすがに異常過ぎないでしょうか。


 メェ (その通り)

 メエェ(東京大迷宮の年間ダンジョン予算に匹敵する)

 メメェ(まさにレジェンダリー)


 メェ (実際はスキルの運用具合に応じて熟練度が付与されるがね)

 メエェ(熟練度が99.9になれば消費PP99.9%オフ)

 メメェ(十兆PPのところをなんと百億PPのお値打ち価格でご提供)


「元の数字が大きすぎて」


 スキルランクAの取得に必要な十億PPが百万PPに減るくらいならもしかすると現実的かも知れませんが。

 S以上は基本的に取らせるつもりはない、くらいの数値設定に思えます。


「私以外にもSSSスキル保持者はいるんでしょうか」


 メェ (SSS保持者は君が初めてだ)

 メエェ(SSならば君以前に二人存在するが)

 メメェ(SS以上のスキルの複数所持者は君が史上初だ)


 やはり大変なことになっているようです。

 パン作りなどという全く想像外の分野なので凄さのイメージがいまひとつ掴めないところもありますが。

 Sクラスの戦闘スキルや魔法スキル保持者になると単独で戦略兵器クラスの破壊力を行使できるとのことですが、パン作りの分野で戦略兵器クラスというと何をどうイメージしていいのかもわかりません。


 とりあえずは地に足をつけ、低ランクのスキルの取得について考えてみます。

 Eランクのスキルをひとつ取得するコストは一〇万PP。

 バロメッツたちにもらった八〇万PPがあるので、ひとつふたつ試してみても良さそうです。

 現在取得できるスキルは、ベーカー、ソルジャー、キャンパー関連スキルの集まった三つのスキル島に隣接するスキルと、隣接スキルを取得しなくても良い汎用スキル。

 ベーカーのスキル島から肉料理、ソルジャーのスキル島の取得可能スキルからは投擲、キャンパーのスキル島からトラップを、全てEランクで取得してみることにします。

 どのスキルもベーカーやソルジャー、キャンパーの専売特許というわけではないので、他のスキル島や汎用スキルスフィアにも入っているようです。

 ひとつ取得すると他の場所にある同名のスキルパネルが全て取得済みに切り替わりました。

 他のクラスの専門スキルを取得する時には、こういった重複スキルを足がかりにして進んで行くようです。

最後に汎用スキルスフィアからネットリテラシーをEランクで取得しました。

 地上やダンジョン内のネットワークの利用技術をあげ、正確な情報を素早く見つけるスキルだそうです。


 メェ (優先的に取得を推奨する)

 メエェ(スターゲイジーパイに釣られるようではまずい)

 メメェ(変なサイトに引っかかりそうだ)


 という勧めを受けての選択となります。


 肉調理(E)

 投擲(E)

 トラップ(E)

 ネットリテラシー(E)


 で、四〇万PPを支払いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ネットリテラシーは大事だけど、この類いの小説でスキルとしてとってるの始めてみた。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ